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サイトに乗せていたので短くくくられています。
2・3話同時UPです
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★華=弐★
「うっ・・・・げほっ・・・・」喉の奥が焼けるようで胸も悪い
大量に水を飲み、散々あちらこちらを濁流にもみくちゃにされた
体が言う事を聞かない・・・・
「ここは・・・?」
藁で出入り口を羽織るだけの状態の部屋
着物は、既に脱がされ、つぎはぎだらけの着物
一体・・・
思い起こすが、セイの脳裏に焼きついて離れないのは
総司の驚いている顔だけ
(あぁ、濁流に飲まれたんだ・・・・)
体を起き上がらせようとして、左手を突いた・・・が
「っつ・・・・」激痛に眉間に皺をよせ、セイはその腕を見た
折れた訳ではないと知りホッと溜息を付き、力を入れたり抜いたりを何度か繰り返す
「折れては居ないけど・・・皹(ひび)が入ってるかもしれない」
右手で起き上がると、セイはもう一度辺りを見回したときだった
すだれが開き、女が入ってきた
「あら、起きたんだね?」そそくさと賄いを始める女にセイは声を掛ける
「すいません、助けて頂いたようで・・・・」
「あぁ、流れ着いた物の中に転がってたからねぇ~随分流されたんではないの?」
色気・・と言うのはこう言う事を言うのだろうなと
セイが思うほど艶のある声、肌、髪・・・・
ぼーっとする頭の中を振り払うのだがどうも頭が働かない
「それにしても随分豪胆な女子ですね」
クスクスと笑う
その言葉に驚き、セイは胸元を慌てて探った晒しの無い己の膨らみを感じビクッと背を伸ばす
その様子に、女が自分の懐から文を出した
「探し物は、これ?」
あっ、とセイが言うか女の手から文を奪うのが先か解らない速さで
大事そうに自分の懐へとしまった
「中身は。読まれましたか?」
セイの失態、文を他の人に読まれるなどあっては成らない
「見てはいないですけど、もう、読めないと思いますよ?」
水に濡れて、墨が滲み出している状態の文
濁流が相手だったのも文を汚すには最適だったらしい
「あなたのお名前を聞いて良いですか?」セイが申し訳なさそうに聞いた
「どの名前?」は?と、問いかけようと思ったら相手が笑い出した
「私の名前は、妙です」セイが、にっこりと微笑み
「神谷清三郎と申します・・・」と、流れに沿って名乗ったのだが
「女なのに?」と・・・また痛い所を突かれた
隠せるわけが無い、自分を脱がし体を拭いてくれて挙句
怪我の治療までして貰っているのだ
セイは、覚束無い口調で女の名前だけは伏せ経緯を話した、
まだ敵討ち相手が生きていると言う設定で
総司の事を思って自分の狂気によっている事を伏せた
時は既に十日を越えようとしている
「あの・・・飛脚などは何処へ行けばお願いできますかね?」
女がぽかーんとセイを見やると、ぷぷっ、とお腹を抱えながら笑い出した
外に行けと言うのだろう、指を差した先にセイが向かい簾を空いた右手で押し上げた
「あ・・・・・・」
その言葉に又女はケタケタと笑うばかり
外は密林、川が一本流れている以外は家所か人すらいない・・・・
「私ね、落ちたの・・・この生活に」
「え?」後ろから言葉が紡がれた
男に襲われ、身篭った。たった一度の事だったのにと、妙は呟いた
それまでは順風満帆と言うほどの生活
武家の生まれで何一つ苦労をしなかった
食べれるのが当たり前で、布団のある生活が当たり前で
その世界が、たった一度の恐ろしい出来事によって一変した
お腹が膨らむにつれ、父は油断していたお前が悪いと攻め立てた・・でも授かった命っを
育てたいと願った心までも否定され、子供を始末すると言い家を出た
だが・・・
そんな生活に耐える事なんて出来ず、川へと身を投げたのだ
そんな女に子は残ってくれる訳も無く、無残に流され一人生き残ったのだ
だから、子供が逝ったこの地で生涯を過ごし、生涯を此処で終えようと思っていると
そんな切ない話を聞けば、セイが涙を流さない訳が無い
どうにか戻ろうと説得するも、人が嫌いだと言う始末
セイは、深く溜息を落とし、この人を助け出す術は無いかと
胸の奥で探る。自分も、此処までは落ちなかったが似たような経験をした
いきなり一人になった孤独感、何を頼れば良いのか、何を目指せば良いのかも判らなくて
死にたいとまで思ったあの時
苦しさに押し潰されなかったのは、他に助けてくれる人が居たから
「セイちゃん、側に居てくれる?」
思考深く陥ってたセイに、声が届いたのは自分の女の名前を知ってるから・・・
「い・・今、セイちゃんって・・・?」
「え?清三郎だから、セイちゃん・・だけど、おかしい?」
名前を知られたかと、驚いたが、そうではないと知りほっと胸を撫で下ろした
「セイちゃん、女同士なんだし、ゆっくり治療していきなさいね」
妙に言われ、ありがとうございますと頭を下げて腕の回復を待った
セイが屯所から姿を消し既に10日
総司は、隊務と寝る以外は外に出てセイを探した
川沿いに進んでみたり、周りの人に話を聞いたり
必死な総司に、隊の数人が力を添えてくれる
土方に至っては、セイに書状を任せ、人が居ないからと
大抵なら他の隊士も付けるのに、セイ一人に頼んでしまったのである
しかも、出る時に死んでも渡して来いなんて言葉を掛けたもんだから
今回は怒る事すら出来ないのだ。
だが既に10日も過ぎ去り、文の一つも無い
この状況をどう見るか・・・普通だったら間違いなく
”死”を想像してしまう
ダン!と、橋の袂で総司がセイの消えた方を視線だけで見ると
くっ・・・と目を瞑り再び手を袂の木に打ち付けた
(神谷さん・・・・死んだらダメですよ?
絶対に帰ってきて下さい、私はまだ・・・貴女に側に居てもらわないと
困るんですよ・・・・神谷さん・・・・
あぁ、私が・・・もっと早く神谷さんを見付けていれば・・・・)
次から次へと後悔の念に押し潰される総司を横目で見ていた斉藤が
総司の肩をぽんと・・・叩いた
「・・・斉藤さん」
「沖田さん、あんたは神谷が死んだと思うか?」
「いいえ!いいえ、絶対にそれは無いです・・・そんな事許しません・・・・」
消え入りそうな総司の声に、斉藤がふぅと深い溜息を付いた
(結局はあんたも、神谷で無ければダメなんだろうが・・・
俺から奪う位の闘争心をもっと見せてやら無いと清三郎は気が付かないぞ?
俺は、神谷の思いの人ではないから・・・・あれを幸せに出来るのは
あんたしかないんだ・・・。)
と、自問自答する二人に声が掛かった
「神谷のと思われる刀が見つかりましたっ!」
かなり奥沢に入った隊士が持ち帰ったセイの刀
体に合わせて拵えた刀・・・・
「神谷さん・・・・」総司がその刀を抜こうとするが
既に錆がそれを許さなかった
大事に大事にしていた刀
総司が自分で武士の魂と与えた刀が、ぎぎぎっと音を立てて抜ける
血の染みが錆付かせていると理解すると総司の顔が一気に青ざめた
総司がそのままセイの刀を持ち、その発見された場所まで向かったが・・・
険しく立ち込めた木々や岩が邪魔をして安易に進めない場所
「くそっ!!!!」砂利に総司は遣り切れない思いを打ち付けた
血の臭いが清流に消されると、一陣の風が総司の髪を持ち上げ
不意にセイが岩陰から現れる錯覚を見てしまう
斉藤が、拳にそっと手を掛けると、総司が我に帰る
「沖田さん、探そう・・・」「はい。」
流れる川沿いに進める所まで進もうとするも、時間が許さなかった
日が落ちると密林は、恐ろしい闇に包まれる
この先に、きっと、寂しく身を縮めて待っているであろうと
総司が進んでいくのを、斉藤が手を取り止めた
状況がわからないでもない。戻るにしても、今までと同じだけの時間は掛かる
総司は苦虫を噛んだ
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★華=参=★
土方の部屋で俯き拳を握り締める総司に、いい加減諦めろと
諌めた所で、この男は首を縦に振らないだろうと解ってはいた
だが、あまりの傷心ぶりに、土方もどうしたものかと・・・
(総司は相当参ってやがるな・・・神谷・・・死ぬなよ
今お前に死なれたら、総司が狂っちまいそうだぜ。
いっその事、満足するまで探させるか・・・。)
土方が、手を足に置くと、総司の肩を掴み再び思考が回る
(一番隊に抜けられるのもまずいな・・・・)
総司率いる一番隊は、中でも手馴れを集めた隊
即戦力であり、心強いこの隊を手放すわけには行かないと論じるのも無理は無い
「神谷を探させてやる。ただし3日だ3日過ぎてもみつからねぇなら
・・・・・・・・・・・・死んだものとする。」
「待って下さい!神谷さんを探すなんて・・・
そんな事で、他の隊に迷惑は掛けれません。それに・・・・
私から仕事を奪わないで下さいよ・・・・」
小さな声になりながら総司が反論したが
土方の声によって、止めを打たれた
「勘違いするな、神谷が死んだのか、それとも生き延びてるのか
それを確かめる仕事をして来いっつてんだよ!文の行方も気になるし
そうなると、幹部の仕事だろ?」
ニヤリと笑う土方に、総司はありがとうございますと・・・頭を垂れた
総司は、一番隊に寄り、すぐに行李から適当に荷物をかき集め
その場所へ向かった。
「死んだなんて報告したくありませんからね・・・神谷さん・・・」
総司は、あの岩場を歩いて抜けようと決心し、セイの無事を祈りながら
足を速めた。
「セイちゃん、私の側に居て?」
「ごめんなさい・・・私には戻る場所がある」
そんな会話を綴ったのは5日前
だが、今は違った・・・。
傷も癒えている、皹が入った左手以外はもう既に完治していると言うのに
睡眠だけは異常に取りたくなる、しかも、先刻眠ったのは小屋の中なのに
次に目が覚めたときは大きな洞穴の中だった
鎖に繋がれ、出る事も敵わない状態に、セイは、目を丸くするばかり
必死に足を抜こうと格闘するも、それすら叶わずにはぁはぁと息を荒げるだけ
しゃり・・・・鉄の擦れる音に、セイは慌てて身を翻し辺りを一瞥した
「お前は女か?男か?」奥から聞こえる声にビクッと肩を震わせる
「誰だっ!」「寝てるお前を運んだ・・・女みたいに柔らかいのに月代があった・・・」
セイが、カーッと頬を赤くすると、叫ぶ
「私はっ・・・男だっ!」
そうか・・・とだけ発すると言葉を忘れたかのように沈黙が続いた
押し問答をやってる暇は無い、此処から逃れなければ
自分の身が危険だと胸の奥で警戒音が響いているのだ
その感情に引きずられるように、セイは鎖を引いて見たり、鉄の繋ぎ目を石で打ったりと
繰り返す。逃れる術を必死に探しては、無念に唇を噛んだ
「あら、セイちゃん目が覚めたの?」不意に掛かった声に
誰のものかはすぐ判った、キッと睨みを利かせ、低い声で妙に問う
「なぜ?私をこんな場所へ!誰も居ないなんて嘘!
ちゃんと男の人が居るじゃない!どうしてこんな事をするんですかっ」
「あら、起きていたの?じゃーそのときに逃げなかった
あなたも悪いんじゃない?」
クスクスと笑いながら紡がれる言葉に
セイは眉間に皺を寄せながら笑いを止めるように怒声を上げた
「私は眠って居ましたし、その人が声を掛けてくれなければ
今も人が居るなんて判りませんっ!」
その言葉に女の形相が一気に変わった
言い例えるならば、鬼だろうか・・・・
「そう・・・、貴女はこの人と言葉を交わしたのね?」
闇に吸い込まれたような瞳。無機質な瞳の中にゆらりとセイが映り込む
「慎之介さんは、こんな青臭い女が好みなのですね」
と、笑い出すと、セイの顎を持ち上げ、口の中に何かを押し込んだ
「むぐぐっ・・・・ん~~~~」薬臭い・・・そして甘い・・・・
口の中に広がるソレは、どんどんセイの脳を掻き乱し、心拍数が上がり
息が切れると、体の力が一気に失せ、今度は意識までも浚われた
とろんとした瞳
はぁ・・・と吐き出される吐息は甘く、気だるそうな動きに妙がにやりと笑みを浮かべた
その微笑が目に焼きついたまま、セイは気を失った。
口の中に押し込められた物は既にセイの口から押し出され
土の上に転がっている
とろんとした目を向けながら思考をゆっくりでは在るが働かせると
何で今まで自分をおかしくしていたのかを理解した
「あ・・へ・・・ん・・・・?」口からは締まりも無く涎が零れ落ち
それ拭うのさえ億劫なセイ。
体がそれを求めるようになっている・・・
長い間食事に盛られていたのだろう、大抵だったら気が付くのだが
セイが眠っている間に炊かれていたお香の香りや、食事にもその臭いが染み付いていて
気が付いた時には既に慣らされていたのであろう
(なんて事を・・・・・)覚醒しきらない脳が一生懸命何かを考えようとするが
それすらも出来なくて、倦怠感に体が包まれる
不意に奥の影が揺れた。
それをやっと視界に捕らえると・・・・
「っ!!!」
声を出さぬように自分の右手で口を覆う・・・・
蝋燭の炎が揺れる度に岩陰に映し出される姿・・・・
男と女の情事・・・・。
女が上にのり、男を貪るその姿に、恐怖と羞恥心が一気にセイを襲う
「・・・・・」声が小さくて聞き取れない
だから、聞かなければ良いものを
成される会話を拾う以外ここを抜け出せる訳が無いのだ・・・・
「あんな小娘に欲情したか?あんな男の形をした女の何処が良い?」
パシンと・・・音が響き、影が揺れる
恐らくは頬を張られたのであろう。
「私とは会話もしない声も出さない癖にお前はっ!」
パシン・・・・
「あの娘は、もう逃げられないさ、快楽を知ったからな
私が一人前の女に育ててやるよ・・・
だけど、お前には抱かせない・・・抱かせてやるっ・・・あぁあっ・・・もんかっ・・・・」
ゆらゆらと・・・揺れる影が一度仰け反り、男の体に倒れ込む姿を映し出していた
慌てて目を反らすセイ・・・だが、あの甘美な声にセイの体も
むずむずとおかしくなりそうな反応を示している
(先生・・・助けて下さい・・・もう・・・嫌だ・・・・)
それから、薬の玉を何度も口へ押し込められ
何度も睦言を繰り返すのを見せられ頭がおかしくなりそうだった
あれから既に5日は経過しただろう
中毒にさせるには十分で、セイの逃げ出す意欲が衰えていた
だが、この女も普通ではないのだ
沖田を思うと、逃げ出す策を考え、薬が切れると求め
堪えきれない激情が日に何度も繰り返された
数日この状態が続いた。女はセイには見向きもしないで男を貪る
与えられる物は、薬の玉と簡単な食料
痩せ細り、体の力が自然と入らなくなっても
セイの瞳の中の光は失わなかった
「この女、なんて強情なんだ・・・」足で小突きながらセイの頭をグリグリとすると
うう・・と小さく唸るが強い瞳で睨み返される
「そろそろ、男が欲しいか?」髪の毛を束ねた部分で持ち上げられるが
セイは、その掴み上げられた頭でふるふると横に振り乱した
ぷつりと切れた髪紐が床に落ちると同時にセイの顔も、砂利に頭を落とされ
気を失った
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