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3話に増えてますけどww
================
★華=六=★
「法眼どうでしょうか?」「えらく中毒症状を発症してるな・・・・」
痛々しく成される会話に、総司の眉間が揺れる
「快癒するにはかなり掛かりますか?」
「沖田、お前ではセイはきっと堪えてしまうこの腕を見れば、おめぇも解るだろう?」
総司は首を上下に振って答えた
「だが、セイが信頼してるのはお前なんだよな・・・
だから、おめぇが決めろ、セイの薬が抜けるまでは恐らく30日ほど
15日ほどはかなり辛いだろうが、それからは恐らく自分の意思をしっかり持てるはずだ
本来なら此処にたどり着くのもおかしい位なんだぜ?それなのにこんなに頑張りやがって・・・」
「私が何を決めれば?」その言葉に法眼が、あぁ・・と言葉を続けた
「いや、お前に任せて良いのか、それともお里に頼んだ方が良いのか。
セイの薬は女の力で止められるほど生温いもんじゃねぇ。だが、俺も見続ける事はできねぇからな
ともあれ、今夜は此処で預かる。お前は屯所へ戻れ、返答は明日で良い。」
総司は法眼に頭を下げると頼みますと一言置いて屯所へ戻った
「沖田戻りました。」
土方の部屋の前、総司が着替える事もしないまま、土方の部屋を訪れた
からっと開かれた襖から鋭い眼光が総司を捕らえた
「で・・・その顔は見つかったか?」「その顔ってなんですかぁ~もぉー意地の悪い」
すっと、部屋へ導かれ、総司が後ろ手で閉めると事の成り行きを話し土方の指示を伺った
「あのバカ・・・・」土方も苦虫を噛むような表情を表に出し、握った拳がふるふると震えている
「ってぇと、あのバカを見る奴が必要って事か・・・」
申し訳なさそうに、総司が視線を下げた
「神谷さんも必死だったと思います。阿片だって、好きで吸わされた訳でもないし
鎖は切りましたが、洞窟の中で餓死するのではないかって程痩せこけていましたからね
今は法眼の診療所に居ますけど、明日お里さんの家に連れて行き、隊務以外はそこで
神谷さんを見ようと思います。」
「で?そのイカレタ二人は始末したんだろうな?」
総司は、苦笑いを浮かべ首を横に振った
「はぁ?」セイを助けるだけで一杯一杯だったとばれただろうか・・・?
総司が恐る恐る土方の顔を見上げると、腕を組みニヤリと笑った顔がそこにはあった
ばれた・・・・そう思った総司は真っ赤になり目を反らすとポツリと呟いた
「神谷さんが治り次第、あの子に任せます・・・。」
土方がフンと鼻を鳴らし、襖を大きく開いた
「総司!風呂でその小汚い格好を治してこい後、神谷の件は解った。」
その言葉に頭を下げ、総司は風呂場へと向かった
翌朝、早朝勤務の総司達一番隊が、巡察を終え帰って来た。
総司に至っては殆ど寝ていない状況にも拘らず隊務を遂行した
数刻後には、総司が法眼の診療所で異様な光景を目にする事と成る
「・・・どう言うことです?」
セイの姿を目に入れた途端、怒気の含まった声を法眼に投げかける
口には猿轡、両の手は棒に沿い縛られ、足も同様に縛り上げられ
身動きが利かないように束縛されている
「沖田、お前はまだ知らないだろう?セイのあの狂いようを・・・・
恐らく、3・4日辺りは、我を忘れるほど酷いと思うぜ?」
法眼が自分の腕をぐいっと持ち上げたそして着物の袖を捲り上げると
「歯型・・・・神谷さんですか?」
法眼はうむ。と頷くと、そこへドカリと腰を落とした
「里さんの家では・・・まずいですかね?」
「叫ばなければ、どうにかなろうが・・・まぁ、傍から見れば変態と思われるだろうな」
「真剣に聞いてるんですけど・・・・」
「俺も真剣に答えて居るぜ?」
むむぅ・・・と思考を深くまで探り良い方法を探す
「仕方ねぇか・・・・土方に頼もう」「えぇ?」
総司がそれは止めてくれと言わんばかりに、両の手を前に出し、ふるふると振るが・・・
「俺が何だって?」「土方さんっ!!!」
背後から仏頂面をした土方が入ってくるとセイを一目見て息を呑んだ
「咎人みてぇじゃねぇか・・・・」
眉間に皺を寄せ、法眼を睨むが、仕方のない事なのだと説明した
「うーううー」セイが目覚めたのだろう、必死に声を上げている
法眼がセイの目の色を見ながら、猿轡を外してやった
「かはっ・・・はぁはぁ・・・・こんな姿で申し訳ありません・・・副長
法眼すいませんが、私の昨夜の着物に・・・・・・」
スッと、法眼がセイの着ていた着物の下に置かれた手紙を取り出し
土方の前に置いた
「こりゃー・・・・」
「敵に奪われないように、確り抱えていた物ですから・・・汚れてしまいましたが
中身は、誰も見ていませんので。」
土方がぺりぺりと捲ると、中に書かれた文章は水で染み出て、文字も中々読み取れない
だが、自分の筆跡は自分が一番知っている。
長州に付いて・・・と読み取れる文章に青ざめ、セイを再び見上げた
「良くやった。お前が守った文は、確かに戻った、今日から休暇をやる、ゆっくり治せ」
「ありがとう・・・ございま・・す・・・」セイが唇と噛み締め、涙を堪えながら
土方の優しい言葉に胸が高鳴った
良くやったなどと、この男は吐かない。
だからこそ、重大な文章を守れた喜びと、ぶっきら棒ではあるが
治すまで休暇をくれると言う最高の褒美を貰えたのだ
しかも・・・・・
「総司、一番隊は他の隊長達に任せた、本日より神谷を治す事に専念しろ」
「待って下さい!そこまで甘える訳には行きませんっ!先日まで3日休暇を貰って尚
隊務までも、疎かにする気はありませんよ」
食い掛る総司に、土方が深く溜息を落とし、肩をポンポンと叩くと
「すまん、俺が見ても良いんだが、神谷が嫌がるだろうしな。お前に頼むしかねぇんだよ」
「はぁ?一介の平隊士ですよ?なんで土方さんがっ」
「あーうるせぇ。大事な事が書かれていた文を相手に渡さなかっただけでも十分の功績じゃねぇか
そんな大事な文を俺の勝手で一人で行かせたんだ、仕方ねぇだろうが!」
赤くなり怒鳴る土方・・・・
それに、総司がぷぷぷっと笑う。笑ってんじゃねぇと言葉をかけ、セイを見ると
体がビクビクッと跳ね上がるのが目に入り、土方が近寄ろうとした
「やめな。今は神谷清三郎ではねぇ・・・寄ったら怪我するぜ?」
法眼の声に土方が足を止めた
「神谷・・・さん?」総司も、声は聞こえていた。だが、どうしてもセイが
そんな事をする筈がないと、一歩前へ進んで足を止めた
涙をぽろぽろと流しながら小さな声で見ないで・・・見ないで・・・と
虚ろげな視界の中に誰も映り込んでは居ないのに、誰に向かって告げているのか・・・
「ううう・・・あぁ・・・・」怒りに任せて叫んでる風に声を荒げるセイに法眼が慌てて口へと
猿轡を嵌め込む。
ドンドンと、片足を畳に叩き付け、縛られた拘束具が、ピンと紐によって引かれると
セイの体は身じろぎ一つ出来ず、呻き声を荒げるのみと成った
「沖田、土方良く見ておけ・・・これが阿片だ。」
手に縄の跡がドンドン赤く付いていく。
擦れるほど、体を動かしているのだ。小さな体を巣食う阿片が、仲間を求めるようにセイの体を駆け巡る
口から泡のようなものを吐き出しながらセイは意識を失った・・・・。
凄まじいとしか言いようがない
土方が一歩後ろによろけたと同時だっただろうか、神谷さんと、叫びながら
手に付いた縄の跡を摩る総司を目にしたのは
自分の着物の袖でセイの口を拭い、擦れた跡を優しく撫でる総司を目にして
土方は苦笑いを浮かべた
法眼にポンと手を置き、目で合図を送ると、土方はその場を後にする
「沖田先生、土方さんがこれを」南部が、受け取った文を総司に渡すと
これから1里先に、寺があるそこの住職に頼んであるから蔵を借りれ。
簡単に書かれた地図と、その言葉が書かれており、総司はセイの紐を解き
セイを籠に乗せそこへと向かった
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★華=七=★ 龍雲寺と書かれた小さな寺
お堂の横にある蔵が開かれ、中に人が居るのを見て取れた
総司が歩み寄って、その人に声を掛けると、頭を下げ戻ってきた
「神谷さん、動けますか?」籠の中のセイが覚醒してるのを見て
総司が聞いた。
返事もないままではあったが、セイが籠から足を出し、やっとの思いで体を立てた
総司が右手を取ると、首の後ろに回し、セイの体を支えながら、蔵へと入って行った
ぎぎっと、閉められる扉に総司が慌てて歩み寄った
「なんで閉めるのでしょうか?」
「へぇ、土方はんが蔵に二人を入れたら鍵を掛けろとおっしゃったので・・・・」
「私までですか・・・・」ふぅと息を大きく吐くと相手が苦笑いを向ける
「えろうすんません。そう言う事伝なもんやから・・・これが、来たら渡せ言われた文どす。
何か変わり事があったら、呼んでくれはって構いません」
総司が文に目を通している間に、セイがすいませんと呟き、正座をしながら手を握り締めていた
「何を謝るんですか?仕方がない事です。命があっただけでも良しとしましょう?」
そう言うと、総司が声を大きくして叫んだ
「住職さん~?」へぇ。と出てきた人に鍵を開けてもらい、総司は刀を預けた
「先生!刀はっ!」「神谷さんに奪われて、自刃されたら困りますからね」と、笑顔で答える
周りを見渡すと2組の布団。それを総司がそそくさと敷き、呆けているセイにポンポンと布団を叩いて
此処へおいでと促す。
呼ばれるがまま、セイはその場に座り正面を向き合ってくすりと笑った
「縛って下さい。」セイが両の手を出したが、総司がその手をやんわりと手で包み、ポンポンと
セイの月代を撫でた。
「待って下さいよ!ダメです、あんな姿本当だったら先生にも見せたくありません」
その言葉を聞いてもただ、総司はポンポンと頭を何度も撫で上げる
「聞いてらっしゃいますか?」「えぇ」
すぐに返された言葉に、セイは声が出せなかった
「大丈夫ですよ、神谷さんの力に負けるはずありませんし
もし、私が神谷さんに負けた時は、考えますよ」
クスクスと悠長な総司に、自分の恐ろしさを知らないのだと
セイは思った。
あの、凄まじい光景が目に焼きつき
あの甘い声と快楽に溺れた女の声がどれだけセイを洗脳したか
それを・・・総司は知らない
言うべきか・・・・・
言わざるべきか・・・・・
だが、自分は恐らく、最初に総司を押し倒したように
きっと、その性から逃れられない気がする・・・・
打ち明けなければ・・・ならないのかもしれない
「先生、では、私一人で此処に残りますのでお帰り下さい」
セイは告げる
「ダメですよぅ~土方さんにお目玉喰らっちゃいますよ?」
軽くセイの言葉を流そうとしたが
「それでもです・・・・。」
と、強く言われて総司の顔が引き締まった
「いいえ、残りますよ。」
やはり、そう言われる気がした・・・と、セイは深く溜息を落とした
狂う頻度が多くなっているのは知っている
最後まで言えるだろうか・・・・
恥ずかしくて火を噴きそうだったが・・・・言うしかないけど・・・
羞恥心だけがセイを支配する
「では、縛って下さい・・・先生を傷つけたく無いんです」
セイの肩が震えて、涙を目尻に溜めて・・・
そんな事を言う可愛らしさに総司の心がぎゅーっと締め付けられた
「傷なんて、当についてますよ?貴女が私の目の前から消えたあの日から
探しても呼んでも・・・あなたは答えてくれはしなかった」
流されていたものを、どうしろと言うのか?と、不満げに顔を上げると
にっこりと笑いかけられて、セイも引きつりながら微笑んだ
「えっと・・・妙さんでしたっけ?」
総司の言葉に体がびくっと跳ね上がる
「あまり、こう言う話は得意ではないのですけど・・・・
あの妙さんが、神谷さんを助ける時に慎之介さんと事に及んでいたのです
目のやり場には困りましたが・・・・どうにか神谷さんを連れ出して
その先で、貴女は私に同じ事をしようとしていませんでしたか?」
この男は知っているのだ・・セイが自制してどうにか堪えたと思ったのに・・・知られている
「も・・・申し訳ありませんっ・・・う・・・止まらなくてうぅ・・
ずっと見せられて・・・頭がおかしくなりそうで・・・うううっ・・・・
助けて欲しくて・・・っ ひっく・・・・ううう・・・・・」
「私以外の人にもそう言う気持ちは生まれるんですか?
その行為をしてみたいと言う願望なんですかね?」
総司の手は、相も変わらずセイの頭を優しくポンポン叩き撫でるを繰り返している
「すいません。解らないです・・・願望なのか、先生以外にそう思うのかっ・・・
でも、私はっ・・・・私は他の人とか・・・考えた事もありませんし、ただ苦しみが和らぐような
そんな感じがあるだけなんですっ・・・だから、二度としませんからっ・・・・すいませんっ・・・」
赤くなった総司がまだ、スリスリと月代を撫で、ふぅ・・と深く溜息を落とし
きゅっと唇を引き締めて再び口を開いた
「本当にダメだったら、神谷さんが傷付かないのであれば・・・
最後の手段として貴女を抱きます。」
どくん・・・・どくん・・・・
セイの心臓が止まるのではないかと思うほど胸を苦しく締め付けてくる
女の自分を諌める訳でもなく、認めた上で抱くと言っているのであろう
だが、総司が女を抱くなど、言うはずが無い
では何で?
隊務・・・・・?
それなら・・・合点がいく。
仕事として抱かれる自分、薬に狂った自分を抱く男・・・・
総司が・・・穢れる・・・・
自分が・・・穢す・・・・・
「な・・何言ってるんですか!ダメです!本当に、先生が犠牲になるなんてダメです
自力で何とかしますから、お願いします、それだけは止めてくださいっ。隊務でも、惚れても居ない
女を抱くとか、そう言う事はして欲しくないです。命令でも何でも・・・だめです
先生が汚れてしまう・・・・。」
激情に任せて伝えた言葉。
総司の襟首を捕まえ、目の前で伝えた言葉
セイははっと自分の行動を思い起こし、手を離した
「すいま・・・っ・・・」
言葉を止められた。総司の温かい胸に押さえ込まれ・・・・
「私の鼓動が伝わりますか?」
ドッドッドッドと、強く激しく打ち立ててる鼓動が抱き締められたセイの体にも良く伝わる
「女の人を抱くとか言うの初めてですし、緊張するんですよ・・・・」
更にドッドッドと早く打つ脈にセイは頭を上下に振るだけで返答する
「伝え方が悪かったのでしょうか?
隊務とか、そう言うのではなくただ、神谷さんが楽になれるなら
私は自分の出来る限りで貴女を救いたいし守りたいと思っています
貴女を抱く事で、穢れると言うのであれば、穢れても構いません
それくらいの覚悟で言ったつもりですし
犠牲とか、隊務とか・・・・どうしてそっちに頭が行ってしまうんですかねぇ?
ただ、無理強いはしたくもないし、神谷さんが嫌だと言うのであれば
どうにか違う方法を考えたいとも思いますけど・・・・でも、貴女は
あの時私を確実に求めていたから・・・・・だから・・・・」
赤く染まった総司の顔と異常に高くなる体温と
酷く高鳴る心音が、セイの心に響く
だけど、こんな形で抱かれたいと願うはずが無い
「せんせぇ・・・・ぐじゅぐじゅっ・・・うー・・・・」泣き縋るセイが可愛くて
愛しくて再び強く抱き締める
「なんでも・・・して上げれますから、ね?一緒に薬を抜きましょう?」
首を上下に振り答え、セイは、布団に体を押し倒された
「え・・・?」
クスクスと笑いながら総司が布団を掛けるともう片方の布団をぴったりとセイの布団に寄せた
「お昼寝でもしましょう」セイを布団でぐるぐる巻きにしてぎゅっと抱きついた
「ちょっ先生・・・」「暴れん坊さんですから、これで良いんですよ」と、総司は言う
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★華=八=★
そんな優しさの塊のような総司が温かくて心が凪ぐ
セイは、薬で睡魔に襲われ続ける身。すぐに寝入ると総司がむくりと起き上がって
顔を真っ赤にして口を押さえた
(あんな事言って・・・大丈夫でしょうかねぇ・・・・私・・・・)
自信が無かった・・・・セイの色気に負けて襲ってしまうのではないかと
もしかしたらその予防策にあんな事を紡いだのかもしれない・・・。
だけど、薬に犯されてるセイを黙って見過ごすなんて出来ないし、極力、そう言う雰囲気を
作り出したりしないようにおどけるしかないと思っていた
はぁはぁ・・・・っく・・・・
夕餉の前、眠りこけていたセイが急に息を荒くして体をよじり出した
総司は、外を眺めて居たのですぐに気が付き、セイの体を布団ごと抱き締める
「苦しいですか?」
「ぐううっ・・・・うう・・・・・」
思考回路は遮断されている
「頑張ってくださいね・・・・」
暴れるセイを抑えるのに、総司も必死にセイの体を抱き締めるが
力が凄い。その力を感じながら不意に法眼が里では無理だと言った意味を理解した
そして、慎之介が言ったあの言葉を再び思い起こした
「あの人に逢えば、あなたも、そしてあの子も辛いですよ?それでも逢いたいと?」
(えぇ、逢いたかったですよ。苦しんでも、辛くても、この子を守るのは
私で在りたいと願うから・・・だから、どんな事でも受け入れますよ・・・・)
そんな事を思い出しながら抱き締めていたが、セイの様子がおかしい。ちっとも動かないのだ
「神谷さん?」不意に緩めた腕からサラリと抜け出し、セイが総司の体に擦り寄ってきた
四つん這いでセイは総司の顔を見上げ、布団で着崩れた着物の間から覗く胸の谷間に総司の顔が一気に
真っ赤に染まる。首まで赤く染まり、総司はセイの行動にどうして良いかと後ずさる
「口、吸ってくれますか?」総司の心臓が跳ねる
「す・・・吸う・・・のですかね?」「ハイ」ドキドキと高鳴る心臓にドンと自分の拳をぶつけ
大きく息を吸うと、はぁーーーーと、息を吐き出し、セイの肩に手を載せた
「口付けますけど、本当にいいんですか?」「ダメです・・・っ・・・だめ・・・」
その言葉に、ふっと心が和らいだ。
総司はセイを思い切り抱き締め、動きを止めさせる
「これは結構・・・きついですね・・・・」と、苦笑いしながらバタバタと暴れるセイを
総司がなだめる様に抱き締めた・・・。
かたり・・・と、音が蔵の戸口で聞こえ、ぎぎっと開かれる
夕餉をお持ちしましたえ・・・と聞こえ、総司がセイを抱き締めながら
置いておけと指示をすると、再びセイを見やる
バタンと閉められた扉、風が通す空間を閉められ、漂う魚の焼けた香り
くん・・・と鼻を鳴らし総司がセイの頬を軽く叩き目覚めるように促す
「あ・・・」「起きましたか?」セイの大好きな総司の笑顔が目の前で
あまりに近くで、驚き顔を赤らめた
「先程・・・暴れたと思いますけど・・・・すいません」
その可笑しげな言い回しに総司がぷっと吹き出した
「なんですかっ」「あんなに私を誘惑しながら記憶が無いんですか~?」
悪戯っ子のような目でセイを見ると、真っ赤に染まるのは当たり前の事
「え?」ばっと総司の体から自分を引き離し、胸に体に手を触れる
「何もしちゃ居ないですよ、さ、早く食べないと」
夕餉を差し向かえで揃え総司はちゃちゃと夕餉を平らげる
「かみひゃはんは、たへないんれすか?」口に物を入れながら話すな!と
いつもなら叱る場面だが・・・
「先生お食べになりますか?ちょっと、食欲が・・・・」
青ざめたセイ、薬の影響でご飯がろくに入っていかなかった
「食べて下さい、ソレが貴女の今の仕事なんです。早く治す為には
少し位我慢して貰わないとこっちが困ります。せめて半分だけでも良いですから」
置かれた箸を総司が持ち上げ、セイに渡すと、今度は白いご飯を持ち上げ
セイの左手に持たそうとしてハッと気が付いた
「あぁ、左は使えないんでしたっけ・・・」
自分の箸を置くと、セイの横に座り、茶碗を持ってセイから箸を奪った
「え?先生??」「ほら、自分で食べないとこうなるんですよ~はい、あーん!」
「ちょっ・・待って下さい!食べますからっ」
セイが両手で総司の行動を止めると箸を奪い返し
こみ上げる気持ち悪さと米粒を一緒に飲み込んだ
夕餉も終わり、風呂を貸してくれると声が掛かると
総司がセイを連れて風呂場に向かった
ふらふらと足取りは怪しいがセイにとっても、風呂は入っておきたいと言う
願いがあるし、好きな人と一緒に今蔵に閉じこもる状況で自分が匂わないかと
心配する辺りは女なんだろうなと苦笑した
「さて、どうしましょ?」
一人で入らせるわけには行かない・・・
いつ苦しむか解らない今、溺れでもしたら・・・・
「一人で入れますので・・・」セイが赤くなりながら言うが
総司も腹を括った。
「貴女は、男として私と風呂に入れば良い。
ちゃんと前は隠しますし、構わないでしょう」
「でもっ・・・・」「私も、極力見ないように手拭で目を隠しますんで」
そこまで言われると、セイもはい・・・と答えるしかなかった
久しぶりのお湯が体に染み渡る。じぃぃんと痺れを感じふぅ~と息を吐くと
温かさがセイを包む。
頭も体も洗い流した状態で、総司が声を掛けた
「入っても大丈夫ですか?」「・・・ハイ」
セイが全てを洗い終わったら、湯船に入る、そして総司が後から入り体を洗う
言わば時差を生じさせる事でセイの入浴を見る事もないだろうし
下手に目隠しをしなくても済む
そう結論が出るとセイを先に一人で押し込み。総司はその場で異変があればすぐに
飛び込めるだけの距離で待っていたのだ
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