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なつめっぐ 保管場所

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優3

続きます

★=戦闘=★







剣道の試合が近い・・・・


そう聞いたのは、先週
セイも、慣れない世界を勉強しながら、剣の指導をしていた
ふんわりと、優しく笑うセイは大人の部でも人気度が高く
どこかで狙ってる人は、恐らくこの中の半数は越えるだろう

だが・・・・

高校生の裕は面白くない。
大会と言えば、裕が優先だろう。
それなのに他の男達がセイにちやほやするのが許せなかった

「おい、神谷・・・稽古付けてくれよ」
「裕は、相変わらず呼び捨てですか・・・ハイハイ、やりますか・・・・」

苦笑いはするものの怒りはしない
他の人達が神谷さんもしくは神谷先生と呼んでる中で
自分だけが特別の呼び方をしている気になれるのだ
裕の男心は憧れなのか本心なのかは解らないが、神谷セイを十二分に意識していた


日は過ぎ剣道大会。東京道場の集まりで大会は開かれ
裕は最優秀賞まで貰った
最高の名誉をセイにあげれると、素直に喜んだ
大好きで、たまらなくセイと居たい・・・・
若い彼は素直に想いに付き従った


「セイちゃん~コレは見たことある~?」
「なんです?これ・・・・」
数字が並び、+だの-だのがあったり、Cとか不明な物が並んでる
「これって、そろばんと同じ機能なんだよ?みててね」
ぴっぴっぴと叩かれ数字が並ぶ
羅列した数字にセイが目を丸くした
「うわぁ~本当に凄いですね!なんと言う名ですか?」
「電卓って言う名前よ」孝の言葉にふふふと笑い、セイが電卓を叩いて遊ぶ

(あんなに剣道強いのに、子供みたいで可愛いわね。。)
孝の顔が優しく微笑むと、セイも釣られて微笑を返す。
沖田の習性そのものなのだが、孝はそれを知らない・・・・
「あっ、今回優勝は出来なかったけど、裕君が最優秀賞貰ったから
勇さんが遊園地に行こうって言ってたわよ?」
「えぇ!?あの、ぢぇっとこーすたーとか、こーひーこっぷ?がある場所ですよね?」

TVで何度か説明を受け、セイも乗ってみたいとは思っていた
だからこそ、ウキウキが隠せない
「えぇ、そうね・・・私は行けないけど、セイちゃんは先生だから
楽しんで来てね?」
その言葉に、ハイと元気良く返事をし部屋へと戻る

孝は、今妊娠中で、乗り物には乗れない
なので、今回はいけないのだ
手を振る孝に、お土産を買ってきますと告げ、セイもバスに乗り込んだ


「神谷!ここ・・・・」
裕が手招きし、セイの席を指す。
他にも空いているのだが・・・・・

「あ、いいよ、近藤さんの横に座るから」
見事に裕の思いは終わりを向かえ項垂れる

「神谷君・・・そろそろ総司に逢いたいかい?」
近藤の言葉に胸が高鳴った・・・・逢いたい・・・けど・・・・
「そうですねぇ、逢えても私の中の先生はあの人だけでしたから・・・・
今逢ったからと言って、何も変わる事は無いと思いますけど・・・」

意外な言葉が返ってきて、勇も言葉を読もうと考える
ふむ・・・とだけ返し、遊園地に到着するまで何やら考えていたようだった


「では、解散!」
勇の掛け声で道場の仲間がバラバラと色々な乗り物に向かった
無論セイも向かうのだが、どうも乗り方が解らない・・・・
(うーん・・・・困った・・・乗りたい!でも・・・・うーん・・・)
ジェットコースターの前でセイを見つけ裕が手を捕まえようと差し伸ばした瞬間
瞬時にセイの身体が遠くなって、行き場を失った手がバランスを保てなくて転びそうになった

「かーみーやぁー・・・避けるなよ・・・ったく、ジェットコースター乗ろうぜ!」
セイの手をもう一度掴みなおして、ジェットコースターへと進んだ

「ね、ねぇ?これって凄く早いんじゃない?」
「あ?ジェットコースターだからな!」
「これって、人が乗っても大丈夫なの?」
「はぁ?何言ってんの、神谷・・・お前怖いのか?」
「うーん・・・初めてだからね・・・緊張するかな・・・・」
誰でも、幼い頃から乗った事が有るだろう物に初めて乗ると言うセイに
はぁ?と投げかけながらも、期待に膨らんだ黒目を見て深く溜息を付いた
いつも、自分は剣でこたこたにされている・・・・
セイの脅える顔が見たくて、裕も違う意味で緊張する

「ほら、俺らの番だよ」セイの手を引き、座ると安全バーを掛ける
ぼけーっと座ってるセイのバーも引き下げてやると、ありがとうと返され照れくさくなった

「うわぁ~たかーい!」セイの目に映る東京
聳え立ったビルよりも上に上がった時にセイの目が輝いた
途端・・・・
急速に落とされる感覚にセイが息を呑んだ
声は出せず、ぼーっとしている内に、それは終わった・・・・

「神谷、大丈夫か?おーい・・・?」
裕の呼び掛けに、うんとだけ答え立ち上がると、足がカクカクと笑っている
「すごい・・ね・・・」ドキドキと心臓が早鐘を打ちつけ、気持ちを落ち着けるのに
近くのベンチで座る事になった
「ぷっぷっ・・・あーっはっは!神谷おもしれぇ~」
「あんなに早いなんて知らないもん!笑わないでよっ・・・・もぉ・・・・」
「何か、飲む?そのほうが落ち着くんでね?」
喉が渇いてる訳ではなかったから、その言葉をやんわりと断り
何度か深呼吸をして、気持ちを落ち着けた


「へぇ、あんたあん時のねーちゃんじゃねぇか・・・・」
その声に二人が慌てて上を見上げた
座っている二人の前に現れた男二人・・・・
「お前らっ!」裕が、セイを背にし、睨み付けた
「裕、やめなさい」スッと立ち上がると、まだ、少し足が言う事を聞かない事を判断し
裕の袖を引いて、横に押し出した
「神谷っ!」「近藤局長をっ呼んできてっ!」
裕を守りながらこの二人と戦うのは、然程苦ではなかったが
今の自分の足で、何処まで出来るか解らなかった
「はやくっ!!!!!」セイの怒声で、裕が走り出した


「あーちょうど良い、あのお子様邪魔だったからな。
あんたに用があったんだよ。
まぁ、言う事を聞かなければ、道場炎上とかになっちまうけどな」

セイの脳裏に焼けた昔の家の映像が浮かんだ
「卑怯者っ!素直に戦えば良いじゃないか!」
怒鳴って相手を威嚇した所で、この男達には効かないだろうと解っては居たが
総司の颯爽と切り込んだ姿を思い出し
セイの胸が熱く煮えたぎった

「今夜9時に、あの時の川原で待ってろ、一人で来いよ」
二人の男が、そう告げると何もしないで消えていった
何があると言うのか?
自分は、近藤の道場にまで迷惑を掛けるのか・・・・
セイは胸の中で深く深く考える

「神谷っ!」「あ・・・裕」
「神谷君どうしたんだ?」
近藤に、先日起きた事を話し、申し訳ないと頭を下げた
少なからずと、今は昔みたいに恨みを買う事など、殆ど無い世界で
また、セイの行動によって恨みを持たれたのが悔しくてならなかった

家で話を聞くと促され、夕方バスは道場へと着いた
家の前で皆と別れ、セイは近藤と道場で先程の話をしていた

「と言う訳です、本当にすいません」
下唇を噛み締め、セイの悔しさが溢れてくる、だが、近藤は肩をポンと叩くと
「君は家の大事な子を、助けてくれたのだから、決して君が悪いわけではないよ?
むしろ感謝しなくてはいけないほどだよ。」

相変わらず優しく話す勇に、セイはすいませんと告げる
「で。。その続きがあるんだろ?」

「はい、ですが局長・・・私を名指しで来ています。これは
私に任せて貰えないでしょうか?」
「しかし、神谷君、それは・・・・」
近藤が、座っていた体を立ち上げ、セイに声を掛ける
「そうして下さい!私が自分で拭いたいのです・・・・」
「君は悪い事はしていないんだから、何を拭うと言うんだ?」

「この時代に・・・私が必要かどうか・・・・解らないんです
沖田先生にも逢いたいでも・・・会ってしまうのが怖い・・んです・・・・」
「だからって・・・・」
「えぇ、解っています、けれど私が行かなければどうにもならないんです
ご心配を掛けると思いますが、どうか一人で・・・行かせて下さい・・・。」

セイは、そう言うと自分の部屋から刀を持ち出し、走り出した
勇がその刀を見て、慌てて止めに入ろうとしたが
セイは既に走り去っていた


「あぁ・・・どうしたらいい?孝・・・・」
「セイちゃんは人を殺さないと誓っていました・・・・それを信じるしか・・」
門の前で二人が佇んで、セイを待つしかないのだろうと深く溜息を落とす
「警察に知れたら、セイちゃん戸籍ないし・・・心配です」
「あぁ・・・無茶をしないでくれよ・・・神谷君」

「はぁはぁ・・・・」セイが道場から一気に掛けてきたそこには
車が一台とまっていた

「・・・・・。」
車を横目に、セイは川原へ降りようとした時
かちゃりとドアが開き、中には先程の男。
「約束どおり来たんだから、道場に火は掛けるな」
セイの声にぷっと笑う男
「取り合えず乗りな、逢いたいと言う人が居るんだ」
「だったら、本人が来たら良いじゃないか!」
「そりゃー無理ってもんだ・・・まぁ乗りなよ火は着けないって約束する」

その言葉にセイはしぶしぶ車へと乗り込んだ
「もう一つ、あの子にも金輪際近寄るな・・・・」
刀を抱いたセイが前を見たままで隣の男に声だけで凄んだ
「あぁ・・・解った。」
その答えを聞いて少し気が楽になったのだろうか
セイの険しさが和らいだ。


「なぁ、あんた今まで何をしてきたんだ?」
「は?」
「いや、抜き身を見ても怯まない女なんて、そう拝めるもんでもないからな」
あぁ、とセイは返事をしその先は答えを口にする事は無かった

10分も走っていないだろう、結構な敷地の豪邸に着いた
「よながぐみ・・・・?」
「いや。余永(よえい)だ」
「ふぅん・・・・で、逢いたい人は?」
男に遅れを取らずに歩くセイに、苦笑いをしつつも、部屋へと通され
更に待たされると、そのまま道場へと連れて行かれた

薄暗い廊下を通り抜けると、近藤道場ほどではないが
剣道の試合を出来る程度の広さが有り、その中央に
白髪の老人が座っていた

(殺気・・・・・)
セイは刀に手を掛け、老人を睨み付けた

「殺気にまで反応するか。。。末恐ろしい女だ」
一瞬にして殺気を解き、男はセイの前へと進んだ

「うわっはっは、こんな豪胆な女子見た事無いわ!
殺気を放てる人間だって、この世界ならではのモンだと言うのに
こりゃーうちの手下がやられる訳だなぁ・・・・」
ニヤニヤとしながら、セイの周りをくるりと一周し、老人は言葉を更に続けた
「あんたの目は人を何人も殺して来た奴と同じだ、血に飢えている
きっと、あんた見たいな奴を待っていたのかもな・・・・」
男はスラリと腰に差していた日本刀を抜き、剣先をセイの眉間へと向けた
「怯まぬか・・・・・」
セイの凛とした目に、無論周りに居た男達も息を呑んだ

「一本だけ、付き合ってくれんか?わしはもう老いぼれなんでな
あんた見たいな奴と戦ってみたかったんだよ。」
「戦えば、もう金輪際私たちに近寄りませんか?」
「あぁ、そうだな・・・悪さはしないよ」
「解りました。あなたの刀は真剣です、私も刃引きの無い刀でお相手しても良いでしょうか?」
「ほぉ。刀まで持っているのか・・・・」
「この刀は、二度と振るわないと決めた刀です、だけど、守る為に今一度この刀を振ります」

セイの身長に見合った刀

沖田が自分の為に、思い入れをしてくれた刀
あの人の大事な刀を、もう血で汚さないと
この時代に来て思った

本来は身を守る為に作ってくれた刀なのだから
それに答えるべく、セイは刀を封印したのだ


「では、やりますかな・・・・」
男が手首を返し、チャキリと音が響くと、セイを圧迫する殺気に
セイも慌てて身構えた

「いつでも・・・・」
そう発したと同時に老体が思ったよりも素早くセイの懐へ飛び込んで
刀をブンと振りあげた
下から競り上がってくる剣先を見つめ、セイの刀がその行く手を阻むと
キィンと懐かしい音が響いてきた
お互いに命の一歩手前で剣先が踊り、セイの小柄な身体が踊っているようにも見えた

「なぜ、かかってこぬ?」
その言葉を待っていたかのように

セイは前へと身を乗り出し、刀を老人の顎先で止めて終止符を打った

「なんじゃい・・・殺してもいいのに・・・・あっはっは」
老人の声にセイが無理ですねと付けたし、刀を鞘に収めた

「良い刀だ。」
「えぇ、自慢の一振りですから。」セイはそう言うと、先程自分を連れてきた男の前で
ピタリと足を止めた

「帰りたいので送ってください!」

その言葉に、老人がまた大笑いをする
「おじいちゃん、笑いすぎですよ・・・心の蔵が止まっても知りませんからねっ」
笑われた事に膨れたセイが一言残し、道場を出る手前で止まると
頭を深く下げた

「見上げた女だ・・・嫁に欲しい位だわ!あーっはっはっは」
セイを見送りながら言った




「孝、やはり・・・もう2時間は過ぎてるし・・・・」
「勇さん・・・・・」
二人は黙って門の前に立っていた
いつ帰るかも解らないセイをひたすら、待った・・・・

「神谷君・・・無茶をしてなければ良いが・・・・」

その声に、通り過ぎようとした男が立ち止まった
不審な動きをする男を感じ孝を自分の背に隠すと、勇はぎろりと鋭い眼光を向ける

「あんた、近藤勇か・・・・?」闇から聞こえる声に、勇が警戒しつつ
「いかにも、私は近藤勇だが・・・・」と答えた途端だった


「勝っちゃん!」懐かしい呼び名で、抱き付いた男・・・・

「・・・・と・・・歳か!?」
懐かしい局長と副長の呼び名が暗闇を埋めた
「こんな近くに住んでやがったか・・・・」
「なんだ、お前は側にいるのか?」
「あぁ、今日からだが、転勤で北海道から今日着いたんだよ・・・・」
「あぁ、孝、歳だよ・・・・」抱き合い背中を叩いてた勇が
やっと土方を解放し、孝を背後から惜し気もなく出してきた

「で、神谷って言わなかったか?」
その言葉に、嬉しかった再会を堪能する自分を戒め、話出そうとした時だった

襟元で束ねた髪が揺ら揺らと揺れ動きながら、セイが走って戻って来たのだ

「あぁ、セイちゃん!」孝が、セイに飛び付き、心配掛けて!と怒り付けると
小さくなってごめんなさいと謝罪する、そして近藤の側に立つと
己の刀を出し出した

「局長、申し訳ありませんでした。」
近藤は刀を受け取り、血糊のない事を確認すると、ふぅと緊張の糸を解いた
「あまり無茶はしないでくれよ?」
近藤の声に、にっこりと微笑み、続けた
「この刀は先刻まで封印していましたが、沖田先生はきっとこの刀で
身を守る以外に使うのを嫌いますから、ですから持って出ました。
人は斬っては居ません。本当にご心配を・・・って・・・え?」


「・・・・・。」


「えええええええ!?」


「・・・・・・・・・。」

「うええぇぇえええええ!?」

「だーうるせぇ」ゴン・・・・。
頭上に落とされた拳骨に、懐かしさがこみ上げて抱き付いた
「副長うううううううう~~~~~~~」
「だーかーらーうるせぇってんだ!」
「だってーだってだってー生きてる~!」

相も変わらず、二人は騒がしかった。。。。。。





2009.09.29

=======================================

★=【土方歳三と沖田総司】=★








「へぇ、こんな場所に変に似合った名前の奴が来るとはなぁ・・・」

警察の上層部の人間が、土方を連れて、生活安全課へと導いた
美しい男に見とれる女をよそに、土方は転勤先の課へ誘導され、まさに紹介されようとしていた

机の上に乱雑に置かれた、書類やお菓子
(なんの巣なんだよ・・・・)呆れたように髪を掻き揚げると
視線をぐるりと這わせた

「北海道からこの度転勤して来た、土方君だ。
沖田君と良い、土方君と良い・・・新撰組みたいな名前が揃ったな・・・」
薄ら笑いを浮かべる薄頭の上司の言葉に、土方がどくり、と脈を強めた
(沖田・・・・?総司か!?)
周りを見渡しても、それらしき人は見つからず
同じ名前名だけかと、溜息を落とした

一通り挨拶を終えた上司が土方の背中を強く叩き、自己紹介を促した

「あ・・・・土方歳三と言います。主任になりますのでよろしくお願いします」
ぶっきら棒で、自分を紹介するなど大の苦手
取りあえずの一言で終わった時だった

バン!
開かれたドア
そこに立つ男・・・・
「取調べ終わりました~!」
一斉に室内が溜息が漏れ、上司に至っては、青筋をぴきぴきと立てていた
場の雰囲気を読めない男NO1なんだろう・・・が・・・・
土方は彼を一目見て、こいつが沖田だと、確証を持った

先日主任が転勤して行き、今回新任に主任を任せると
そんな噂が流れ、警察内も、落ち着きが無かったのだが
土方の出す雰囲気やら、鋭い眼光に誰も文句のつけ様が無かった

「では、頼んだよ?土方君」
上司が薄ら笑いで、これから始まる試練を想像しているのだろう

(嫌な目つきだぜ・・・まったく)
土方は席に付き辺りを見回した
総司には後ほど声を掛けるのが得策だろうと
書類の整理などを始めた

婦人警官が2名ほど手伝ってくれたお陰で、あっさりと終わり
明日から頼むと一言残し、土方は総司の机へ向かった
黙々と書類を書いてる総司の机にトン、と爪で音を鳴らすと
ふっと視線が合った

「お久しぶりです、土方さん」

「食えねぇ奴だな・・・」
ふふふと薄笑いを浮かべると、総司は再び机に向かった
「吃驚しましたよ、まさか、記憶まで一緒の人が居るとは・・・・」
「ほぅ、ではお前はまだ他の奴らに会ってないのか・・・」
その声に、書き掛けの報告書をバンと叩き付け、立ち上がった
「え・・・?って事は・・・え?」

狼狽する沖田が懐かしくもあり、土方は総司の肩をポンと叩くと
報告書を待ってるからな
と・・・言い残し、他の人へと挨拶へ行ってしまった

総司は頭がぐるぐると報告書ではない方へと向かう
近藤はどうしたのだろう・・・・隊の皆は・・・・そして

神谷さんは・・・・

目まぐるしく考えた所で、きっと答えは報告書を持って行かなければ
聞けないだろうと、机へと向かった

時折、聞こえる土方の声に、懐かしさを感じ頬を緩めた総司が
報告書を書き終えたのは昼に差し掛かるときだった

「総司、昼飯おごれ」
提出してその返答がこれだ・・・・
ハイハイと二つ返事に、机に戻りスーツの上着を持って、土方の机へ戻った
「積もる話もあるな・・・・」
遠い目で伝えて来た土方
総司の死後、何が起きたかはある程度は本などで調べが付いていた
だが、その全てが事実とは限らない・・・。

昼に蕎麦を食べながら、二人は話を始めた
一番気に掛かる事は、今でも近藤やセイが生きているかどうか・・・・
だが、土方の口から聞かされるのは幕末の話
「総司・・・おめぇ、聞いてるか?」
「えぇ、ただ、やはり本などとは違うものもありますので
色々と考えてました・・・・」

考えるのが苦手なお前がか?と笑われ、総司は罰が悪そうにはにかんだ
「近藤さんと会ったよ・・・」
その言葉に、目が輝く総司に、こっちが本命かと笑う
「今日でも会いに行くか?神谷も居るぞ・・・・。」
心臓が悲鳴を上げた
逢いたい・・・・抱き締めたい・・・だが・・・

「神谷さん・・・お元気でしたか?」
「あぁ、奴は相変わらずじゃじゃ馬だな・・・・」
ならば、元気ならば・・・会わずとも・・・・
「なんだよ?会わねぇつもりか?」

言葉が出なかった。
逢いたいが、今更どの面を下げて会えと言うのか。
不甲斐なく命を消し、置き去りにしたあの子にどう詫びれば良いのか・・・・
あの子は・・・一体どう生きたのか・・・・
私情に囚われ残して挙句に、あんな乱世を過ごさせた思いが、冷たく総司に圧し掛かった

「神谷さんに・・・もし良い人が出来ていたら、耐えられないかも・・・?」
「そっちかよ!お前の気にする所は!」
「いえ、そうではないんですけど・・・」
「いやな・・・神谷が気になるんだよ・・・」
「え?土方さん神谷さんを好きなんですか!?」
「おめぇは、どうしてそっちだよ!
あいつ・・・殺気を放ってるんだ・・・・」
その言葉に総司が動揺する。

「待って下さい!それ、おかしいでしょう?殺気って言うのは
今の時代の女性には必要のないものですよ。何故神谷さんが殺気なんて
この時代に居ながら籠められるのですか!?」
ふーふーと背を立てて感情をむき出しにしてくる総司に、土方が驚いた
昔だったら、間違いなく己の言う事を第一に考え、意見するって事は
そうそう無かった。

「わからねぇよ・・・ただ、あいつは、そのままなんだ」
「そのまま・・・ですか?」
土方は一度考え込むと、この話は後でしようと総司に提案した
今考えた所で、昼休みと言う短い時間は思考をふんだんに使うには少なすぎたのだ
昨夜のセイは、刀を持っていた。人を殺してないと言いながらも、刀を振るったような事を
土方の前で語っていたのだ。
警察としては、銃刀法違反に当てはまり、処罰の対象でもある

(総司に会う前に直接話すか・・・)

昼食を終え、総司と一度戻ると土方は地図を持ち、この界隈を覚えたいので
歩いてくると言い残し、一人その場を離れた



「めーんっ!」「肘が浮いてるよ」
子供の部なのだろう、セイが子供に優しく厳しく指導を施していた
気配を消し、道場の中を見ると
師範代:神谷セイとあった。
「あんのガキが師範代かよ・・・・」思わず漏らした言葉
「悪かったですね!」と、居るはずも無いセイが土方の背後から一声掛けた
「!!!!!」


しんと・・・静まり返る道場
子供の訓練が、もう終わると5分ほど待たされ、その後の大人の部まで
4時間はゆうに時間があったので、近藤の部屋へと案内されていた


「近藤さん、神谷のことで聞きたい・・・・」
苦笑いする近藤が、声を大きくしてセイを呼んだ。
テーブルを挟んで、土方近藤と座り、その前にはセイ
「神谷、てめぇ、昨日刀持って何処行ってた?」
その言葉に、ビクッと背中が粟立った
「副長には関係ないじゃないですか~」
よっぽど言いたくないのだろう、はぐらかして見るが、土方の視線は本気そのもの
それに痺れを効かせたのが、近藤だった

「まずは、神谷君・・君が此処に来た時の話をしよう・・・・」
ハイ、とセイが返すと、自分が転生ではなく、この場所に気が付いたら居たと言う話
「だから、昔のままなのか・・・・」と、返された言葉に近藤も些か驚いた様子だった

「おめぇが、俺と最後を迎えずに総司に呼ばれて消えたのは、最後の記憶として残ってるんだ」
その言葉に、セイが目を大きく見開いた
「やはり、あの時副長は・・・・」
「あぁ、痛くも痒くもなく感覚が消えて行ったな・・・」
「そう・・ですか・・・」
「まぁ、てめぇが消えなければ、死んだお前を見て痛い思いはしただろうさ」
笑いながら伝えられた言葉に、セイの心が少し軽くなった気がした

そして、余永組の話をし、刀を振った事
人を殺してはいないが、刀を人に向けたのは事実だと認めた
だが状況も状況、ましてや、その前に人を助け、そのとばっちりでこの状態になった
戸籍も無いセイ・・・・土方がふぅと溜息を落とした

「刀もこの時代に一緒に流れてきたってこったな?」
セイがこくりと頭を振ると、急いで部屋へと戻り、すぐに手に抱えて持ってきたものを
土方に見せた

「こりゃ~・・・・」
血糊などそうそう取れる訳も無い。洗った所で知れている
薄茶けた白の模様入りの着物
沖田が昔良く愛用していた着物を自分が着れる様に仕立て直し
それを身に付ける事で、総司の魂と一緒に戦えると
セイは愛用していたのだ

そして、肩に記された誠
袴・・・・
「そうだ・・・こりゃーあん時のお前の装束だ」
セイはコクリと頭を下げる
「まだ、こちらの世界に来て間もありません。
お孝さんや近藤先生に生活の仕方を聞きながら生きて行くので精一杯なんです
だけど、身の危険は自分で守らなければ成りませんから
私が身を守る刀は、これしかないと思っています」

かちゃり・・・と前に出された刀
手抜緒が付いた、綺麗な手入れの行き届いた刀
土方がすらりと引くと、輝かしいばかりの光が土方の目に飛び込み
背中が粟立った

「懐かしいな・・・・だがな、神谷・・・
この世界には警察と法律がある、こんな物を持って歩けば
銃刀法違反って言う規律に引っかかり、お縄が待ってる
総司を思うも良しだが、これはもう金輪際使うな。」

「武士の魂を捨てろとおっしゃるんですか!」
総司から引き離される・・・そんな悲痛な想いがセイにはあった
既に彼は思い出の中でしか会えない。
大事な大事な想いがこの刀には宿っているのだ

「捨てろとは言わねぇよ、ただ、明日許可書を出してやるから
家の外へは持ち出すな。それが、お前の為でもある
戸籍が無いなら、近藤さんの名前でこの刀をここに置くも良し
引き離したりしねぇから・・・泣くな・・・・・」

ぽん・・・と頭に手を乗せられ、その言葉で初めて自分が泣いていると知った
「あ・・・涙なんて・・・まだ出るんですね・・・・」
セイが、それを拭うと既に涙は止まり、解りましたと答えると
自分の部屋へと向かった

「なぁ、歳・・・お前の仕事って・・・」
「あぁ、警察だ」
「やっぱりか・・先程の言葉で解ったよ・・・」
「でだ、近藤さん、総司が居るんだが・・・連れてくるか?」
「なんだって?」
驚いた近藤が、ガタンと机に圧し掛かり、その勢いで茶がカタカタと揺れている
孝が、慌てておさえると、それは静に止まった

「どうやら、あいつも神谷に引け目を持ってるらしい・・・
逢わせて良いもんか、判断がつかねぇ・・・・」
「会わせて見てはどうだろう?どの道会う事に成る・・・あの二人は
そう言う運命だと思える。でなければ、総司が何故呼んだのか
解らないだろう?」

そうだなと返し、土方が腰を上げた
夕暮れが迫り、総司と話をする事を約束した以上早く戻らなければ成らなかった

コンコン・・・ノックされた戸の奥でセイがハイと返事を返すと
「俺はそろそろ戻るが、もう少ししたら又来る・・・・総司と一緒に・・・・」


ドキン・・・・

セイの脳裏に沖田を失ったあの時を思い起こさせた
先生は・・・死んだんだ・・・・
そう思い込まなければ死を乗り越えられなかった
先生はもう会う事が出来ないんだ・・・・
そう言い聞かせなければ、理性が保てなかった
先生は武士だった願いがある・・・・・
その思いだけに突き動かされた
なのに、今更生きていたなどと受け止めれるのだろうか?
会える事は嬉しい
だが
自分は、転生もしないままこの世界へ降り立った
呼んだのが総司であったとしても
彼は既に転生をし、血生臭い世界を一度は綺麗に流したのだ


「どうしよう・・・・・」
不安だけがセイを埋め尽くし、その夜は眠る事さえ出来ずにいた
2009.10.4

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