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続きになります。
自分が居なかった2年半の間
その時間をこの場所でいつまで過ごすことになるかは判らないが
長く滞在すればその分歪が生まれるというのは
前にカカシに聞いた事があった。
時空を超えてこの場所へと降り立ったからには
何かをするのだろう…
それが何なのか…それが解らない。
戻るにしても、演習場のクナイの跡は、一切見て取れなかった
と言う事は、自分は向こうに戻る可能性を無くしてしまったのではないだろうか?
だが、居なくなれば…恐らく誰かが、いや…
カカシが自分を探してくれるはずだ。
早く戻らなければいけないと言う事だけは
頭に浮かんだが、それを解決する糸口が見えない。
一人上忍待機室でボヘーっと空を見上げると
ひょっこりと背の高い銀髪が入ってきた。
(ぁ…カカシ先生だ…変わんねぇなぁ…でも、少し若いかな?)
なんて頭で巡らせていると、目があった。
とりあえず、挨拶でもしてみるかとナルトが声を上げる。
「ども…」
「…え?」
(うっわぁ、驚いてるなこりゃ…なんか新鮮だってばよ)
と、内心で笑うとジーッと見られる視線が痛い。
「ナル…トか?」
「うん、そう」
「…で、オマエでっかくなってなにやってんのよ?」
一瞬の表情とは打って変わって、何やら本当に何事もないかのように動揺を綺麗に
拭い去ったカカシが声を掛けるあたり、流石カカシ先生だなんてナルトは思った。
「え?あ~…先生を待ってたってばよ」
綱手は、そっと横から覗き見。
カカシの驚く顔が見たかったのだろう…が
目を見開いた一瞬しか表情は読めず、そうなると
綱手も隠れている意味がないと思ったのか気配を隠すこと無く
その場から足を踏み出してナルトの今の状態と
現在この木の葉の里に二人のナルトが存在する事を告げた。
「へぇ…19歳ねぇ?」
「そ、19だってばよ!少しはでかくなっただろう?」
と、カカシの前に仁王立ち!
背はカカシには届かなかったものの、170台後半と言う身長を
見せびらかしてみると、薄く微笑まれて
ナルトの方が恥ずかしくなった。
「で、ナルトを明日までうちで面倒見ろって事ですか?」
クルリと綱手に振り返り聞くと
声も出さずに上下に頭が揺れた。
「…あ~明日はナルトの出立の日だから寝坊出来ないんだけどねぇ…」
イヤ、先生はこないってばよ…。
前の日に、しっかり別れを済ませて、出立の日は確か…
何かの任務が入ってたはず。
と、心で思うナルトに、ニッと笑った綱手がスッと一枚の紙を
カカシに手渡した。
「Aランク任務通知」
と、書かれたそれを受け取り大きなため息を漏らした。
(オレだったの?オレの任務のために…オレを見送れないの?
うっわぁ~綱手のバーちゃん酷だってばよ!)
と、心でボヤけば、綱手はにーっこりと笑って、お前ら頑張れよなんて
言い残して消えやがった…
ありえねぇ。
「…お前もタイミング悪いねぇ」
「おう、今それ思ってた…」
「でも変な気分だねぇ…オレと大した変わらないって事だよな?」
「…オレってば、カカシ先生と年の差縮んだってばよ!」
なんて、ニシシと笑うナルトにニッコリと微笑み返してきた。
「明日、お前とか?」
「うん、押し付けられたってばよ」
「…ククク綱手様がオマエにA任務渡すとはね…随分強くなったってこと?」
「…んまぁ、カカシ先生がオレを認めるくらいにはなったってばよ?」
「そりゃ、楽しみだねぇ」
なんて会話をしながらカカシ邸へと無事到着。
部屋へと入ると、カカシは椅子へと誘うが、ナルトの定位置は…ソファー
入る時だけは多少緊張したものの、ナルトにとってのその場所は我が家同然。
何も考えず、普通にソファーへと座るとカカシが苦笑いしてコーヒーを入れてくれた。
「随分…オレの部屋に慣れてるね?」
「あ…あ~先生の家に皆で集まって鍋したかんな!オレってば、
その日先生の家に初めて泊まったんだっけかな?」
「へぇ…オレが人を泊める…ねぇ?」
クスッと笑ってコーヒーの入ったカップをナルトの前へと差し出すと
それをスッと受け取り、ふーふーと何度か息を吹きかけてそのまま口へと流し込んだ
「あちっ…」
「ブラックでいけるのね?」
「ん?あぁ…一年前位からかな?苦いと思わなくなった」
「へぇ」
なんて…そんな会話を紡ぎながらも、ナルトとカカシの変な空間が出来上がっていく。
というより、カカシが何かを探るような…そんなチャクラを時折感じるのだ。
「せんせ?」
「ん?」
「結構…オレの事疑ってる?」
なるべく気配を消して探ったはずなのに…
感づかれたのか?
と、カカシは眉間にシワを寄せた。
上忍でもこの気配に気づける人間はさほどいないはず。
なのに、このうずまきナルトは、一瞬にしてそれを察知したという事だ。
仕方なしに答えようとため息を吐き出しながら紡いだ。
「…まぁ?少しはね」
「…ふぅん、そっか、まぁそうだよな~いきなり歳食ったオレと出会ったんだもんな」
「んまぁ、それはイイとして…それにしてもオマエ、気配を読むのは苦手じゃなかったか?」
「苦手は変わらねぇけど…オレってばちょっと特殊な訓練したかんな。
その御蔭で、気配だけは人一倍早く読めるようになったってば」
「特殊?」
「うん…言えねぇけど、特殊なんだってば」
「へぇ…」
カカシの中では、その特殊がどれに当てはまるのか…なんて
一切解らず、九尾関係での何か…としか思いつかずにうーんと
一度唸ってみるものの、ナルトから根掘り葉掘りと聞き出すことは
今後の不安定に繋がると思い至り口を閉じた。
ただ、今のナルトから感じるチャクラと現在横にいる男のチャクラが
かなり異種な気がしてならないのだ。
「あ~そっか、先生オレのチャクラが気になってんの?」
「え?あ…まぁそうだね」
「そっか、そうだよな…今と昔じゃチャクラもかなり変化したかんな!」
「…普通の人は変化しないでショ?」
「オレは普通じゃねぇだろ?九尾がいるんだから」
「あ~そうね、確かにお前のチャクラは九尾のと二種類のチャクラがある
けれど、それだけじゃ納得できない程の異質なチャクラを感じるのはなんだ?」
「あー悪ぃ…それは言えないってばよ」
質問に、悲しそうな顔で答えたナルトに、申し訳なく思い
自分の配慮が足りなかったことに、ごめんね?と告げると
苦笑いで気にしないでくれって言ってくる。
そのチャクラが善なのか悪なのか…それが気になり
綱手も自分へと預けたんだろうと、カカシは思っていたのも確かで…
「うん、先生が悪かった質問を変えるよ?」
「ん?」
「お前のチャクラは…良いものか?悪いものか?」
「……悪いとも、イイとも言えねぇ。
でも、オレはこれを受け入れる事を望んだし、オレ自身が変わる事は一切ないってばよ!」
そう、ニッコリと笑って言うナルトにカカシも少々安堵したのだろう。
探る気配は落ち着きを見せて、空間の中の違和感が
薄れたのに気付きナルトはホッと息を吐きだした。
「明日の任務、ナルトが隊長で行ってみようか」
「うん、いいってばよ?でも良いのか?カカシ先生いっつも
隊長やってんのに、オレに回したら給料減るんじゃねぇの?」
チラリと視線をナルトに向けてニッと口布の下で口角を釣り上げた。
「…へぇ、隊長も経験あるんだ?」
「へ?」
「そんなにすんなり、お前が了承するとは思わなかったし
給料に反映するのも知ってるって事は、お前は上忍にあがったのか?」
「あ~…実はまだ…」
なんて、照れくさそうに言うナルトにため息を落とし、彼を少し諭さなければならない
と言う先生としての責務が目の前を過ぎると、もう口は勝手に動いていた。
「…お前ねえ、実力つけても中忍の給料と上忍の給料じゃ大幅に違うんだぞ?
同じAランクでも全然違うでしょ?早く上忍受けちゃいなさいよ…ったく
なにやってんだか…」
「あーいや…その…中忍でも、なかったり?」
その言葉に、もはや何を返せばいいのか…と言う溜息混じりの声
「は?」
「えへ」
「ちょ!待ちなさいよ…って事は何?オマエ」
「下忍のままでスイマセンってば…」
カカシは深くそれは海よりも深いのではないだろうか?と言うほどの息を吐きだした。
それにしてはおかしくないか?
下忍が隊長と言う責務を負う事は今までにない事。
それを覆して下忍のまま、彼は…隊長を務めているのか?
「あの中忍試験…ネジに勝つほど頑張ったじゃない…
それなのにその後、受ける事をやめたの?」
「こっちのオレ明日修行に出るだろ?んでもって、その後怒涛の忙しさに見舞われるんだってば!
だから、オレってば受ける暇なくて…綱手のばーちゃんもお前だったらイイからって
勝手に高ランク任務渡すんだってばよ!」
「…綱手様か」
目頭を抑えもう一度息を吐き出すと、ピッピッピと電子音が給湯器から響き
カカシがソファーから立ち上がった。
「とりあえず、お前はそっちの時代へ戻ったら上忍試験受けなさいよ?
とりあえず風呂沸いたから…オマエさっさと入っちゃいなさい」
「へーい…あーあ、ここでもカカシ先生にやっぱ怒られてるじゃん」
と、ブツブツ独り言を言いながらナルトが風呂場へと足を進めていくのに
これまた不思議な感覚を覚える。
(普通なら遠慮と言う言葉がまず先に来ないか?
ナルトだって今まで、何度か接してて、こう言う人の家に上がったらどうするか
と言うのは一通りこなせていたはず…出来なくなった?
いや、違う…慣れ…って事か?)
膨らむ違和感に悶々としながらカカシがナルトの着替え…と
自分の服を用意し、脱衣場へ向かうと全裸のナルトと出会った。
「……」
「あ、着替え?」
「…あ、そう、これ着れると思って」
「うん、サンキューカカシ先生!」
湯けむりで、多少視界が悪かったが…
おもむろに見えた肉体は、綺麗に筋肉が付き、しなやかに伸びた肢体が
水滴を弾き返し玉になって弾かれていて、少し長くなった髪を全て後ろへ流していた
ナルトの姿に息を飲んだ。
(なんだってこんなに綺麗に育ってるのよ…)
「せんせ?」
「あ、うん…はい、湯冷めしないうちに着替えてね」
と、手渡しパタリと戸を締めると深い溜息を落とした
(オレ…男は範疇外だったんだけどねぇ…全く。)
落ち着かない心臓の正体は…とりあえず無視を決め込み、カカシは
上がってくるであろうナルトへ飲み物を用意し、ソファーに腰をかけると
迷うことなく引き出された本にそっと視線を向けた。
「あちぃ~」
なんて言いながら出てきたナルトに一度視線を向けるも
そのまま、本へとすぐに視線を戻し、机に冷たいオレンジジュースを用意した旨を
伝えるとそのまま、本へ視線を向けたまま
今起こっている事実を整理するために思考を巡らせていた。
「まーた…先生は考え事するたびに本みてんのな?」
「は?」
「ページ…進んでねぇってばよ」
「…お見通しってワケ?」
「いや…お見通しではないってばよ。
先生が自分で言ったんだ、本を見てる時は読んでる事が大半だけど
考え事をする時も、そうやっていれば声を掛けられないから考え事しやすいって」
「…どんだけオレってオマエに、自分の行動晒してるのよ…ったく」
と、溜息を落とすとパタリと本を閉じた。
今更何かを考えても無理だろうから
こんな事考えるくらいなら明日の任務のことを少し話そうと
ベストから渡された任務表を取り出した。
「で、オマエの意見教えて?」
「あ~コレね…」
カカシの手から受け取ると、それをジッと見つめてん~と声をくぐもらす。
「先生の写輪眼…5分使うとどうなる?」
「は?」
「5分…動く事可能?」
「…まぁ、そうねできれば3分位が望ましいケド」
「って事は制限時間3分か…」
と、また地図を見て指を這わせていく。
今回のA任務は
攫われた大名の奪還。
暗部の前持った調査で、敵側に忍びの人間が一人付いているが
上忍レベルであり仲間を呼ぶとしても、抜け忍の可能性が高いため
集まっても3人…忍とは団体行動を避ける傾向がある。
ただ、厄介なのがその三人すべてが忍びの場合…となる
一人であれば、カカシの幻術あたりでサクっと行けるだろうが
「忍の人数にもよっけど…一人なら先生の幻術でどうにか出来そうじゃね?」
「…まぁ…ね」
「二人以上の場合、恐らく力量にもよるけど1:1に持っていくだろ?
けど、三人の場合だ…もし、三人以上の場合は先生は大名の奪還を最優先で動いてもらえるか?」
「いいよ」
「そ?だったら、オレがその三人をとっ捕まえる間先生は大名を守って貰う事になるんだけど
一つ…お願いがあるんだってば」
「?お願い…なの?」
「うん、お願いなんだってば…オレの戦闘は見なかった事にして欲しい」
「は?何それ」
「先生も知らない…と言うか今は知らない術を使わねぇと
流石に3人はキツイから」
「…と言う事は何?オマエ一人で上忍三人相手にするって事?」
「もし…4人目が居たらって考えるとそれが一番良いと思う」
まぁ、何処までも憶測であり、本来そんな状況に陥ることはないほど
暗部の調べは確実なものが多いが、たまにイレギュラーが起こるのも事実。
それを先読みしたナルトがそう告げてくるのは、繊細な戦いの構図を
描けている事であり、それだけ実践を超えてきたと言うことにもなる。
「ハー…相変わらず無謀な作戦立てちゃって…ま、いいでショ
隊長はお前だからね、無理だと判断したら、飛び込むからね?」
「分かってるってばよ」
と、答え明日の作戦が立った。
カカシでは絶対に立てない作戦。
普通であれば、否カカシであれば、二人で陽動を仕掛けながら
大名の前に二人でたどり着き、守りながら倒していく…と言うセオリーから
思いっきりかけ離れた作戦ではあるが
攫われた大名の奪還と言う言葉通りの作戦に違いない事は確かだし
大口を叩いて、失敗しましたで済むような事ではないというのは
ナルトだって十二分に理解はしているだろうからと、カカシはその案を飲んだのだ。
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