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続きです
彼の名前は、花川優(はなかわまさる)26歳で大学の教授業務を手伝う言わば助教授。
ウイルスや、細菌の研究をしているのだ。
そんな彼と知り合ったのは1年前友達の彼の…知り合いだった。
優は、逢った日に告白をしてきたが、結局は旅館業務が忙しいと言う事で断ったが
結局は、何度か逢う内に、時折見せる仕草や思いに
これから好きだと思えるかもしれないと…
付き合うのを承諾した。
けれど、今の現状は…
その話しになった時に、閏葉の携帯が鳴った。
「その彼?」
ディスプレイを見て深い溜息を吐いた閏葉を見て、興味深そうに葵が聞いた。
「でなよ」
「でも仕事中で」
「作家が良いって言ってるんだからどうぞ?」
その言葉にスイマセンと言い
閏葉は電話の通話を押した。
「もしもし…」
「あ、閏葉?仕事中だった?俺明日休みだから、閏葉と逢えるかと思って」
「あのね?今仕事中で作家さんと一緒なの…仕事終わったら電話するから、待ってて?」
「あぁ、そうだよね、ゴメン」
そうして電話は切れた。
「閏葉…冷たいな」
「えええ!?だって仕事中だって解ってて掛けて来てるんですよ?
それ自体おかしいじゃないですか!!」
「仮にも愛する彼だろう?」
「愛するって…そんなんじゃ…」
「じゃーなんで付き合ってるの?」
「……。」
返す言葉が見当たらない。
何で付き合ってるんだろう?
それすら解らない。
「ん~?体の相性は?」
「っ、なななっ!何でそんな事言わないといけないんですか!」
真っ赤になった顔を隠そうと、袖で顔を隠し答える姿に目を丸くしたのは葵だった。
「閏葉って…まさか」
「葵先生!そんな所までプライベートすぎです!」
真っ赤になった閏葉に、これ以上追求しては怒らせるだけだと思い
葵も質問事項を変える事にした。
「ん、デートって頻度は?」
「…一ヶ月に一度か二度…」
「それって付き合ってる期間考えても…流石に少なくないか?」
「ええ、そうですね…」
「本当に彼の事好きなのか?」
「……。」
ここまで掘り下げられると、閏葉も言葉が出ない。
仕事と割り切って話したが結局は彼の事を殆どしらないし
彼も自分の事は殆どしらないだろう…。
けれど、唯一話が合ったのが小説の話し。
葵作、【狼と月】
この登場人物は、狼人間で人を人と思わなかった時期から
やっと人として認識するまでの話が書かれていた。
そして今回その作品が完結に向けて動き出したのだ。
その折に、担当がダメだと駄々をこねたここの男が、
閏葉を認め側に置いたと言う所である。
「ふぅん…閏葉から良い匂いがするのも分かる気がするな」
「何ですか匂いって!」
また顔を紅く染めると、閏葉が反撃をするも、
するものはしょうがないと言われれば、どうにも太刀打ちが出来なかった。
「閏葉、もっと良い恋をしろ」
「ほっといて下さい!」
「俺と…してみるか?」
ドクンと心臓が高鳴った。
けれど、彼は本気で言っている訳ではない…
きっと、恋を知らない彼は恋を探しているのだ。
その相手が閏葉のはずもない。
「や、嫌ですよ…葵先生」
「葵」
「ッ…からかわないで下さいっ!」
「本気なんだけど?」
「先生っ」
「葵だって何度言わせる?」
「っ…あお…い」
「うん、閏葉、いっそうの事俺を彼氏にしないか?」
グッと、身体を寄せて閏葉の髪を梳いた。
「ん?」
吸いこまれそうな瞳で問う憧れの作家…
これは恋なのか憧れなのか。
「それが閏葉の仕事…って事だったら承諾してくれるか?」
少し間があって、呟いた葵の
その言葉で現実に引き戻された。
そう、彼の目的は「狼と月」の完結
契約で彼氏になると言うのか?
「どうだ?仕事としてなら…受けてくれるか?」
「でもっ、私には彼が」
狼に睨まれる様な感覚。
ゾワリと背筋を這う悪寒が、嫌な気持ちで起こっているのか
解らないほどの魅了するような瞳の深さ。
「わ…解りましたから!近いですっ!」
「彼氏とは別れなくていい」
「は!?」
「閏葉が選べば良い」
クッと薄笑いを浮かべる彼の薄い唇が片側に引きあがるのが見て取れた。
「別れなくて良いさ」
その言葉に胸が痛む。
二股を掛けている訳ではない…だって仕事として付き合うのだから。
でも…
それでも、彼に心惹かれている部分があるのは確か。
閏葉は、葵に言われた資料調達の為に自宅から、会社へと向かう
その途中だった。
「閏葉!?」
「優さん!?」
会社の近くに居た優と出会った。
資料を用意してくる間待っていると言われ、閏葉はさっきの事が頭の中を駆け巡る。
引き上げられた唇を重ねたら…なんて、
一瞬でもそんな事を思った自分が居るのも確かで
それは、優には感じなかった思いであるのは確かだった。
優柔不断…その言葉が嫌にぴったり来るような今の自分に溜息が尽きない。
閏葉は決意し、葵に電話をして遅れる許可を貰った上で優と話す事を決めた。
ざわざわ…
ざわざわ…
人々が行きかうカフェで深刻そうな顔をした彼と閏葉。
手を握り、一生懸命閏葉に身を寄せながら話している彼に、今彼女は何を伝えているのだろう?
滅多に人前には出たがらない葵が、遠目に二人を見ていたのだ。
10分ほどで閏葉が席を立った。
男は肩を落とし、その席から動けないで居るのが見える。
(本気で別れたのか?)
姿勢の良い閏葉が、カツカツとヒールの無い靴を鳴らしながら、
葵の前を通過しようとした時だった。
グッと引き寄せて抱き止めた。
「えっ!?」
「別れたのか?」
「葵先生?」
「葵だって何度言わせる」
「あ…はい。別れました」
「別れなくて良いと言ったはずだが?」
「……それは私が許せないからってだけなんで…
先生、あ…葵が悪い訳でも無いし、
葵と擬似恋愛をする事に全く関係の無い事ですから」
きっと彼を、好きになる事は出来ない。
そう感じたのは昨夜
自宅へ押しかけてきたのもそうだが
どうも被害妄想的なところがあるのも解った。
でも、それが被害妄想で無く現実になったら。
きっと、もっと彼を傷付けるのは確かだし
それに…今目の前に居る小説作家に
心が傾いているのも、確かな事。
「私は、彼とは付き合っていけないと…そう思ったから別れたんです」
葵に何で彼と付き合っているの?と、聞かれるほど中途半端な気持ちになったのは
最初のうちは良かった
けれど、小説の主人公と同じ行動や言動は彼が気にしながら、演じていたから
付き合ってしまえば、自分を出さないで居ることなど出来ない事は良く解った。
彼の昨日の発言や、行動自分の行動やメールの規制電話の強要
正直疲れる。
「まぁ、閏葉が良いなら俺は何も言わない」
「小説を書き上げる期間の彼女役はお引き受けしますので…
その辺は心配しないで下さい。」
「……ああ」
契約として、二人の擬似恋愛が成立した。
一方、別れた優こと、花川優は別れた事に納得などしていなかった。
彼女に別れるときっぱり言われたのは確かだが
自分は承諾していない。
プルルル…
呼び出しが3度なるとその電話は直ぐに通話状態になる
「あ、ヒロ?俺…話があるんだけど良いかな?うん、
今夜…10時に加奈ちゃんとセントラルタワーのスカイラウンジでいいか?」
スカイラウンジ内定時に三人が集まった。
最初に現れたのは
竹中加奈(たけなかかな)、24歳。
ぽっちゃりとした子で、可愛らしい巻き髪を左に流して根元を花の髪飾りで止めている。
ピンクのレースのボレロの下は白いワンピース
ピンクのミュールを履いてやって来た。
次に優。
最後にヒロこと
小島洋(こじまひろし)26歳
閏葉と付き合えるようになったのも、この二人が居たからこそ。
「閏葉がメールで別れたって言って来てたけど…本当に?」
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