忍者ブログ

なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

魂2

1の続きです

味い・・・・・

だが、それを総司に求めるのもお門違い・・・非常に困った
客との仕事をしていないと思われるのではないかと言う不安
一層の事総司に途中まででも、声を少し出せる程度に触ってもらおうか・・・
(あ~もぉ、バカセイ!ムリムリムリムリ!あんな野暮天が出来る訳が無い)
自分の事を棚に上げつつも、セイは一人悶々と思い耽った

「あ、そやこれ・・・」
手には、桜柄の拵えられた帯止め
「これに変えるんですか?」
「嫌やわぁ、セイちゃんにあげるから、身に付けて置くと良いよ。」

クスリと笑って渡された帯止めは、セイに良く似合う桜の文様が織り込まれたもの
「あ、ありがとうございます」そう告げると早速帯びに掛ける
「それがあれば、安心やから」
何が安心なのか?それを聞く前に彼女は仕事だと消えていった


セイは舞妓の踊りを覚えろと言われ、必死に練習をする日々だったが
まぁ、練習中と言う事で、座敷に上がらせてもらえる事となった
しかも、その座敷は先日の秋の相手の男達の座敷・・・・

(沖田先生、頑張りますっ!)
力一杯握り締めた手が、かすかに震えているのに気が付き、上を見上げ息を整えた
舞妓の装束は、普通の服装ではないお陰で、男の服を大半として着込んでいたセイには
ただただ・・・重たかった
(こんなの付けて踊るなんて・・・・沖田先生も女を甘く見ているのかも・・・すっごく重い・・・。)

赤い衿の裾引きを着ると、セイの足元を、ずるずると引き摺る裾が気に掛かる
足元で開かれているので、問題はないのだが、セイの場合ドジと言う言葉が良く似合う
(ひゃー引っ掛けて転んでしまうかも・・・・)
そんな不安を他所に、秋が名指しで座敷指名してくれているのだから、それに答えて
より良い情報を手に入れようと必死である。

着付けが終わり、帯の苦しさと長さに耐えられないと、くるくる回る様は、
尻尾を追う犬のようであると・・・回りは思っていた

三味線が奏でる音に合わせ数人の妓が、座敷へと上がる
姉芸妓の横で見よう見まねに踊りながら、時間を過ごすと
今度は酌をして回る事となり、丁寧に杯に注いでいく

「へぇ、お前は舞妓か・・・芸は売るけど女は売らんってか?うっはっは~」
ニヤニヤと舐め回すような視線に微笑みながら、今日の収穫はゼロだと
セイはうな垂れた時だった
『へぇ、お前秋の友なんだな』と・・・・
男が声を掛けてくる
「え?」セイの帯止めはなるべく付けて置くようにと言われていたので
帯の端に括りつけて、携帯していたのである
その帯止めを指差すと、ニヤリと微笑み、男が耳打ちをしてきた


『お前が今度の生贄だから・・・・』
「は?」

解る訳が無い、生贄とは何だろう?
今度と言う事は、毎度生贄が出されていると言うのか?
うーん・・・・・と悩んでも答えが出ずに、秋にその事を後で聞いてみようと思った

「セイちゃん。お客はんから指名どすぇ?」
「え?・・・あ、はい・・・」
指名してくるのは、総司だろうけど、今日やって来る事は聞いては居なかった
慌てて舞妓の装束のまま部屋へ上がると
「浮っ!!!!」
寝転んだ浮之助(慶喜)がニヤニヤとセイを見やった

「ほぉ、舞妓に化けるのか?」
「いえ、もう化け終わりました・・・・。」既に終わった座敷の事を告げ
セイはその場に座った途端だった
「あっ!」膝に圧し掛かる重み・・・
「いいじゃん、金払ってるんだし、沖田も見てねぇし」
「だーめーでーすー」鬼の形相でティッと慶喜の頭をどけると
セイは少し離れた場所で再び腰を落とした

「念者に悪いってか~?」あははと空笑いする慶喜を見て、一気に顔が青ざめた
「だめっ!隣に来ますっ!あの人達・・・・」
慶喜が、顔を顰めると、窓から手を出す。
それに逸早く反応する黒い影にセイも、体が強張った

「沖田にだ・・・」「はっ。」
影の人間だと彼は言うが、殺気でもなく、なんと言うか
本当に居るのか居ないのかわからない気配の消し方は、セイをも青ざめさせるものだった

『あっはっは・・・』どやどやと廊下を歩く音
聞こえる男の声に、セイはドキリと胸を鳴らす
「浮さん、奥へ・・・・」
セイに引かれて床へ行くと、そこで待てと言われ、それはそれで面白くないと
慶喜がセイの帯を引っ張り、酒を持ってこさせろと言う

(こいつ・・・本気で緊張感無さ過ぎっ!)
セイは、スラリと襖を開くとその男と目が合った
『あ、舞妓ちゃん!可愛い子ほど、啼く声も可愛いんだろうなぁ~』
セイが、中の人間を見られないように、無作法ではあるが後ろ手で襖をしめると
ほろ酔いなのだろう、秋が両手でごめんと言うかのように合わせる
頭をフルフルと左右に振るセイを見てから秋は男の手を引いた
「ほら、こっちや・・・・」
セイは、何事も無かったように下へと行き、酒を2本持つと、上へ向かおうとした時だった
「あ・・・お・・じゃなかった・・総司さん・・・・」
慣れない呼び名に悪戦苦闘のセイを他所に、今から大丈夫ですか?と聞かれるが・・・・
お銚子を2本お盆に乗せているのを、総司に見せた
「あ、浮さんですよね?呼ばれたんですよ・・・・」
セイが、え?と声を発し、良く見ると総司の肩が揺れている
荒い呼吸、額に流れる汗。先程呼びに行ったにしては俊足過ぎる
「まさか、走って来られたのですか?」「えぇ・・・まぁ、そうですね」
セイは、胸元にあった懐紙を取り出し、額の汗を拭ってやるとその仕草の女らしさに
総司の頬が真っ赤に染まる

「お部屋へ案内します。」

「今日はまた・・・動きにくそうな服装ですね・・・」
「えぇ、今日は舞妓をしていたので・・・・」
セイの真っ赤な引き摺られた帯を見て、好奇心が騒ぐ
クイッと引くと、階段を登っていたセイはそのまま、背中をぐら付かせ、総司に支えられる羽目になった
「なっ!何をするんですかっ!」「着替えてらっしゃいな」「え?」「動きにくいでしょう?」
確かにと納得し、セイはお盆を総司に預け前の部屋ですからと教えると、着替えへと向かった


「失礼します。」
総司が入る前に一声掛けると、おう とだけ返事があり、部屋へと入った
「ヒラメか・・・」残念そうに溜息を付く慶喜に、苦笑いしか向けられない
「で、すっ飛んでくるにしても早いな・・・」
「必死でしたし・・・」
ぷっと笑う男に、またしても苦笑いしか送れない。
身分の差がありすぎなのだ。どんなに貶され様とも、逆らう事は出来ないのである


「あんな文よこされたら、誰だって慌てますって・・・」一応の反抗


「まぁ・・・そう怒るなって、念者の貞操の危機だったんだ、飛んできて当たり前か」
「あ・・・」
今の今まで忘れていた・・・念者と自分からこの男に告げていた事を
「あ?なんだよ?」「い、いいえ・・・」「ヒラメ」親指をくいっと襖の奥へと向けた
「ヒラメって酷いですねぇ・・・・」そう言いながら何かを察知した総司が襖の向こうへ耳を澄ませる


「えぇ?生贄どすか?」
『あぁ、あの舞妓は可愛いからな・・・至極良い生贄になる。お前も良い友を探したもんだ』
「違いますえ?あの子は普通に友達に成りたかったんよ・・・」
『解ってるだろう?目に留まれば、誰だって生贄だ』
「・・・・はい」

酒でも飲み交わしながら会話を紡いでいるのだろう。
時折食器の擦れる音や、お盆に置く音が一緒に混じって聞こえて来ていた

「な?貞操の危機って奴だろ?」慶喜がニヤニヤと笑うと、総司はこの男は何処まで
この男達の内情を知っているのだろうと疑問に思い始めた

「一献どうだ?」持ち上げた杯に手でいいえと答えると、小さな声で隊務中ですからと告げた
「全く、お前は真面目だな~そんなんであのガキを抱いてるってんだから、全く・・・見かけによらねぇな」
その言葉に顔を真っ赤にしてしまう総司を見て、慌てて耳元まで寄ると、総司に、まだやってないのか?と・・・
あからさまに聞いてくる言葉に、何を返して良いか判らない状態に陥った

「ただ今戻りました、お待たせして申し訳ありません・・・・」
しずしずと部屋へと入ると真っ赤になった総司と、横で薄ら笑いを浮かべる慶喜
「なんなんですか?」
「あ~ヒラメがお前が可愛くてこっぱずかしいらしいぜ?」「は?そんな訳ないでしょ・・・・全く」
と、全くこのセイまでもが野暮天だから進展しない関係を続けているのだろうが・・・・
「あ~そうそう、おセイちゃん~膝枕っ♪」
凝りもせずこの男はそう言う事を軽々しく言うのだ・・・ふぅと溜息を落とすと
総司の横に座り、浮さんはダメですからっ!と、総司の腕を取った
「かっ、かみっ・・・ん・・・」名前を言われたら、もし聞かれていたら・・・ばれる可能性が高くなる
セイは慌てて、総司の口を手で押さえた

「セイですよ?」手をゆっくり離しながらにっこりと笑いかけると
あぁ、そうだったと心で思いセイに手を合わせ手振りだけで謝ると
総司はほとほと困る・・・目のやり場が無いのだ

だが、先程の生贄と言う言葉に総司は神経を張り巡らせていた

「浮之助さん、何処までご存知なんでしょうか?」
堪りかねた総司が聞いた
「・・・・・。」飲んでいた酒を止めると、ふぅと深い溜息を落とし
慶喜が、お猪口を置くと、奥の部屋へと手招きする

「お前ら、呪術って知っているか・・・?」その言葉は、新選組にはあまりにも縁の無い言葉
実力が全ての組なのだ、呪いだとか、術を掛けるなどと言う事は
するものも居なければ、興味を持つものも居ない・・・恐らくは居るとしたら、伊東位であろう・・・だが
女と言う性を持ったセイだけは違った

「占い師・・とかなら知ってますけど・・・」
女なら、恋占いだとか花占いだとか沢山の占いに胸を躍らせる時期がある
まさに、セイもその時期は少なかっただろうが、あった。
「奴はその術師なんだよ・・・。」「はぁ。」二人は良く解らないと顔に浮かび出しそうな表情を向ける

「相手を呪い殺す方法として、蠱毒(こどく)と言うものが在るんだ
言い伝えではあるが・・・・・」

慶喜は語った・・・・蠱毒に付いて、そしてその方法・・・・

この蠱毒をかける術者を蠱主(こしゅ)という
その蠱主が、先程の男であり、秋もそれに利用されているであろう事

様々な生き物を、入れ物に居れ、共食いをさせ、最後に命を残したものが
蠱と呼ばれ、その蠱が3年に一度だけ、人を喰らわなければならない。
なので、その蠱毒に食われる生贄に選ばれたセイと言う訳であろう
大概の者は蠱を虫や、小動物で補うのだが、何度も人を喰らい強力になった術力には
きっと・・・・今の殿が狙われているのだろうと読んでいる事を話した

「とても、信じられません・・・」セイが青くなってその言葉を頭の中で反復する
だが、聞いた事も無い、否・・・・
「あ・・・・あ・・・そうだ・・・」
医者をしていた父から一度だけ、そう、たった一度だけだったがセイは
聞いたことがあったのだ。

「お医者の父が、まだ私が幼い頃に言っていたのを・・・思い出しました」
「医者だったか?お前の父は。」
「はい、当時呪われた人間を一度見た事があります・・・。」

何かに脅えるように宙を見つめ、カタカタと身体を震わす
体の中に何かが住んでいると言い出し、セイの父が腹を切ると
そこから取り出された一匹のカエル
驚いた父が、それを裂くと、血が真っ黒で、その血を見ながら
これが蠱毒と言うものか・・・・と

「ふむ・・・清三郎は、その蠱の餌食にされようとしている。
早急に守る手はずを整えても、恐らくは間に合わん」
その言葉に難しい話には入れなかった総司も、堰を切ったようになぜです!と強く言うと
再びセイによってその言葉は封じられた

「先生、まずいですよ・・・大きな声は」

(あぁ、そうだった・・・その神谷さんを連れ去ろうとしている輩は隣に居るのだ)

総司の身体に殺気が漲るそのピリッとした緊張感が伝わり
「先生っ」ぎゅっとセイが抱き付くと、怒りで鬼に変化するのを止められ
総司はふっと、薄く笑った

(あぁ、神谷さんだ・・・私の矜持を唯一揺るがす子・・・・
殺気を孕んだ空気を一気に溶かしてしまう・・・・)

「すいません、もう大丈夫ですから・・・」
そっとセイの身体を離すと、いつもの落ち着いた瞳がセイに向けられ
真っ黒な瞳の中の光に視線を向け、コクリと頷いた

「二人の世界やめてくれない?俺無視されんの一番嫌いなんだけど・・・・」
昔その台詞を聞いた事がある・・・そう、深雪の一件だ
「そうでしたね!」と、セイがお酌をすると、満悦そうに笑う慶喜
総司も、側により酒を注ごうとすると、「ヒラメは良い」と断られる
がっくりと項垂れながらも、隣の部屋が空き部屋になるまで
とりあえず時間を過ごし、セイ救出方法の策を練ろうと言い出したのは慶喜
仕方なしに、付き合う総司だったが、隊に何も言い残していないので
今頃、土方辺りが大目玉で探しているだろうからと一度隊に戻った



=============================================================
2009.10.10

拍手[0回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]