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贖罪14

【贖罪】37 ウズリの涙

【贖罪】38 終着

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【贖罪】37 ウズリの涙

事件から、二日目…
滴り落ちる水の音が嫌に耳に残るその場所で
女は静かに佇んでいた。

日の光も拾わないその場所は、女の姿を儚く映し出す。

「…拘束は解かれてるんだ?」

声がする方にゆるりと視線を向ける女が目を一際大きく見開いた。

「あぁ…そう、助かったのね…」

薄く微笑んで、視界を元の場所に戻す

「ねーちゃん、その…」

彼女は、背中でその声を聞く形となっている。
壁をじっと見つめて座っているだけ。
鉄格子に背を向けてはいるものの、話は聞いているようで
話しかけられた言葉を聞くよりも先に、自分の質問を投げかけた。

「どうして来た…の?」

彼女は表情を変える事なく、ゆるりと首だけをグルリと回しナルトを見据えると
そう投げかけて来た。

「カカシ先生が会ってみないかって言うから、オレってば会いに来てみただけだってば」

その言葉を聞いてクスッと笑うと、彼女は座って居る向きを変えて
鉄格子越しの彼をみやった。

「そう、カカシも随分残酷な男ね」

なんて言葉を吐きながら薄く笑うウズリにナルトが言葉を続けた。

「なんで先生が、ねーちゃんに会えって言ったのか解んねぇけど
先生は無駄にそんな事言う人じゃねぇからさ…
きっと、先生の意思があんだと思うってばよ」

「そう…随分とカカシを信頼しているのね」

「…先生だし」

「それだけじゃないでしょ?」

「…オレの、大事な…人だから」

「……そう」

ナルトは、スッとその場に腰を下ろした。
カカシのように後ろにあった椅子に腰を掛けるのが普通なのだが
ナルトは、目の前に座り込み、あぐらを掻いてニッコリと笑った。

「何でかわかんねぇけど…話するってばよ!」

いきなり何を言い出すのだこの男は…と、彼女が深い溜息を着くと
キツイ言葉がナルトへと向けられた。

「今更何の話があるというの?
カカシを騙して、貴方との付き合いを終わらせ、嘘まで付いて子供を生んだ私を
馬鹿にしに来た?それとも、罵りに来たの?謝って欲しいのかしら?」

クスクスと笑って睨む彼女の目は、深く闇に支配されているような
そんな悲しい眼差しだった。

「いや…それはもういいってばよ。
結局先生が記憶を失った事と、ねーちゃんと出会ったことと…
そう言うのが全部重ならなければ、スイは生まれなかったし
カカシ先生だって生きてたかも解らないってばよ。
ねーちゃんは、カカシ先生を生かしてくれた…それだけで
オレには十分にありがたい事なんだってば」

良く言うわね…口が上手い子だったんだ?
なんて笑われて、ナルトがポツポツと口を開いた。

「オレってば…口下手だってばよ?
上手いことなんか言えねぇ…思った事しか言わねぇし
言いたい事の半分も伝わらねぇ事が多いんだ…
だから、ねーちゃんに言ってる事も、嘘なんか一つもねぇし
オレは…本当に先生が生きてるだけで十分だったんだってばよ」

悲しげに笑うナルトに苛立ちを徐に見せた。

「だったらなんで、あの人を独占するのよ…
私に心なんてあの人はくれなかった…
本当に欲しかったのは、あの人の心だったのに!」

苦しそうに眉間にシワを寄せたウズリが
鉄格子に掴みかかりながら、ナルトに問いかけると
ナルトはそっと、その手を上から握り締めた。

「そんなの、ねーちゃんのワガママじゃねぇのか?
先生が誰を好きになるとか、心が誰のものになるとか…
そんな事じゃねぇだろ?

自分が大好きだったらそれで良いんじゃねぇの?
好きで、離れられなくて…胸を締め付けて
そうやって、思いを気付いたって、相手が自分を見てくれないなら
見てくれるように努力すりゃぁいいだろ?

オレなんて、男同士で見込みなんて全然なかったんだかんな!
ずっと好きで、ずっと見てても、先生は気付いてくれねぇし
オレの気持ちも知らねぇで、先生が女と付き合った事だってあるってばよ?

それでも、言えない自分が悪いと思ったし
先生が選んだ相手なんだからって…

そうやって、気持ち押さえ込まなくちゃいけない時期だってあったんだ…
この前だってそうだ…別れてるわけでもねぇのに
妻と子を連れて帰ってくる先生を迎えるのがどれだけ…胸に穴を開けたかなんて
ねーちゃんには解らねぇだろう?」

ナルトが、そう言ったっきり、顔をしたに向けてしまい表情は伺えないが
恐らくは酷く辛そうな顔をしているのだろうと
想像できてしまう。

「……ねぇ、そんなに私我侭だった?」

「ワガママ過ぎるってば」

「君からカカシを奪って…子まで生んだのに気持ちが貰えないって
わがままばかりを彼に押し付けてたのかな?」

「そんなんは、どうだっていいってば…オレはどうでもいいんだ
でも、先生は記憶を無くしてねーちゃんを選んだから子が出来たんだろ?
どうしてその先生の思いを無視してるんだってばよ」

「無視?無視なんてしてない…カカシはいつも私を見てはくれなかった」

「それは!ネーちゃんが勝手に思ってる事だってば!
カカシ先生はそんな安い男じゃねぇ!
気がない女抱くような、同情で一緒にいるような、そんな人じゃねぇってばよ
先生の思いまで、そうやって貰えてねぇとか、見てくれねぇって言うなら
なんでスイが生まれて戸籍を調べるんだってばよ!?
何で籍まで入れて一緒にいるんだってばよ!
先生は、たとえ忍を忘れたって、はたけカカシだろう?」

その言葉に、ウズリの言葉が止まった。

激情に任せて吐き出した言葉…
嘘偽りはないが、先生を思ってる人間が自分だけではないと言う事に
嫉妬心のような、虚無感のような…色々な思いが錯誤してしまい
ナルトの中では既に収拾がつかなくなっていた。

ただ…

カカシの行動や思いまで否定されるのは何よりも嫌だったのだ。
彼は十分に苦しんでいる…口には出さないし、何時も何を考えているのか
解らないような表情でいるから、気付かれることは少ないかもしれない
けれど、それは付き合う前の彼の全て…

付き合ってから知った彼の些細な動きや、気持ちの変化…
自分へ対する思いの深さや、愛してくれる時の表情…

全てが自分に焼きついて消えてくれる事はないのに…

「オレ…小さい時から両親共いねぇから…
家族が大事だって思ってるし、今だって、そう思える
けどさ、確かに家族って…大事だけど
家族を知らないオレが、その言葉を出す事自体違うと思う…

だって…オレは知らねぇから

でもさ、オレってば、父ちゃんと母ちゃんに会って
たった一度だったけど…会えて
愛してるって…たった一言貰っただけで、寂しさとか
苦しさとか全部吹っ飛んだんだってばよ。
だから、スイにとっての母ちゃんは…ウズリさん…アンタだってば
そして父ちゃんはカカシ先生なんだ
だから、オレは身を引いたし、自分からは先生に好きだなんて
ずっと言わないでいたんだ」

「なに?それって私にカカシをくれるつもりだったって事?」

クスクスと笑われてナルトが唇を噛み締めた。

「カカシ先生は…アンタを選んだって事だろ?
オレが横から壊していいもんじゃねぇし、これから先
カカシ先生に良い人が出来れば…オレは、身を引くしかねぇ
そんなの、今までのオレ達を見て来たアンタならわかるだろう?
カカシ先生の、優しさ…思いやり、温かい手…大きく包み込むような
心とか…何も貰えてなければ、アンタはここまでする程カカシ先生に惚れてなかっただろう?」

瞳が、揺れる。
苦しいんだと全身で訴えるナルトに、ウズリが溜息を落とした。

「私にどうすれって言いたいのよ」

「今まで…先生がアンタに注いでいた愛情は…
本物だって気が付いて欲しいだけだってばよ」

「気付いたからって今更じゃない!今更元になど戻らない…」

ううっ…と、泣きながら伝えてくれるウズリの手をそっと包んだ。

「戻らねぇかもしれねぇ…でも、ねーちゃんの思いはカカシ先生に残るってばよ」

「私を残したカカシでも…アナタは受け入れれるの?」

言葉を発さずにコクリと頭を上下させる。
そして、極上の笑顔でウズリに笑ってみせた。

「カカシ先生は何があろうと…カカシ先生だってばよ!
オレは、どんなカカシ先生でも良いんだ…傍に居られなくても
オレは先生を生涯思い続けていくって決めてっから」

「……呆れた、何よそれ…信じてるとかの範疇を超えてるじゃない」

「先生はオレの…半身なんだってばよ!」

ニシシと笑うナルトに溜息を付き、ウズリはナルトの温もりを手放した

「もう帰って、疲れたわ」

「おう!またな!」

スクっと立ち上がって、手を大きく振ると
ウズリは自分の胸から下がったペンダントをナルトに向かって投げた

「え?」

「それ…スイに渡しておいて、それが…陰陽師の血脈の証だから」

「…んなもん、オレに預けていいのか?」

「あんただから渡したのよ…それと、カカシにもそう伝えておいて」

「……おう」

首を傾げながら、ナルトが牢を出ると、ウズリが
ポロポロと涙を落す。

「卑怯よ…カカシ…あんな子恨めないじゃない…」

そう呟いたきり、彼女は体を横たえ目を閉じた。


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【贖罪】38 終着

ナルトが、スイへのネックレスを持って
カカシの部屋を訪れた。

部屋の中には上忍が住んでいるはずだったよな?
と思うほど、室内から聞こえる音がドタバタとしていた

「カカシセンセ?」

呼び鈴を鳴らすと、腕まくりをして
足まで巻くり上げて…素っ裸のスイと部屋の中を走り回っていた

「あ…ナルト」

「…なにやってんだってば?」

「え?あぁ…スイとパックンを風呂に」

横目で見やれば、敷かれたタオルの腕にびしょ濡れのパックンが
手をペロペロと舐めている姿。
風呂場にはまだ、他の気配があるってことは…

「先生スイと犬たちを一緒に入れたのか?」

「あ、スイが入りたがってたから、脱がして遊ばせてただけで
風呂に入れてないよ?」

「……部屋、ぐしゃぐしゃじゃん」

「だって、ウズリが居た時は、コイツラ(忍犬)風呂に入れてやれなかったし…」

はぁ、とナルトは溜息を落とし、机の上に置かれたドライヤーを
おもむろにコンセントに差し込むとスイを呼んだ。

「うっきゃ~なっとぉ~!」

小さい子の素っ裸には全くの羞恥心の欠片も伺えない。
両手両足をガバっと開き、小さな体が、めいいっぱいの力で飛びついてくる。

パシッ…と、飛びかかる寸手でナルトはスイを止めると
カカシが持っていたタオルを貰い受け、スイの体を包んだ。

「手伝ってくれるの?」

「このままじゃ、スイが風邪ひくってばよ」

「ま、そこまでヤワじゃないと思うけどね?」

と、クスクスと笑ったカカシがパックンの体をゴシゴシと拭きだし
ナルトはスイの頭をドライヤーで乾かしに掛かった。

「わんわん!なっとぉ~♪」

手にはアヒルの人形…前に来た時にスイに持ち帰られた
ナルトの幼少時代のお風呂の必需品。

「それは、ア・ヒ・ル!」

「あひゆってばよ?」

「アヒルだってばよ」

「あひゆってばよぉ!」

「る!」

「ゆ!」

二人の言葉の格闘にカカシが苦笑いしながら
パックンをガシガシと拭いていくと、短毛のパックンはあっと言う間に乾燥してしまう。
カカシがパックンを開放すると今度は奥からもう一匹の犬…
順番待ちを浴槽の中でしている犬たちが次々とカカシの手で綺麗にされていく中
ナルトとアヒルの言葉問答が飽きたのか、スイがコクリコクリと頭を上下させ
ナルトの腕の中にグリグリと頭を埋め込んできた。

「ったくしゃーねぇな…」

ナルトがグッと抱き上げて服を全て着替えさせると、ユラユラと揺れているうちに
コテンと頭が垂れ下がり、完全に眠った事を知らせた。


「ナルトは流石だねぇ」

「ん?」

「子どもの心がわかるみたいだね」

「なっ!ガキくせぇって言いたいのかよ」

唇を尖らせるナルトに、違う違うと言いながら
ポンポンとナルトの頭を撫ぜると、子供の扱いが上手いってことだよ
と、補足を足され、ニッと笑うと寝室にスイを寝かせた。

「ねぇ、ナルト…?」

カカシが口を開いたと同時にナルトは自分が今何をしに来たのか
それを思い出してポケットを探った。

「ん?あ、そうだった!これ」

目の前に出された、梵字の刻まれたネックレス
見覚えがないはずはない、カカシは一瞬で誰のものかを理解すると
目を丸くした。

「…え?これって」

「スイにだってよ…先生が話せって言うから話してきたってば」

「…って、オマエまさか一人で?」

「え?そうだけど…」

はぁ~っと、盛大な溜息が落とされた。
行けというから、言われたとおり実行したのに
その呆れ返ったような態度は何なんだとナルトが憤怒すると
カカシが言う

「ねぇ、会えと言うより、会わないか?と聞いたはずだよね?オレ」

その言葉に、うっと詰まった。

「お前一人で行ってどうするのよ…ったく。何もなかったか?」

ブツブツと文句を言われるのだと思ったら、途端に自分を気遣うセリフに
構えていた力が一気に脱力した。

「え?」

「何もなかった?」

「…あ、う、うん…」

「良かった…」

「ちょ、せんせ!!」

ナルトの体を優しく包み込むと、ギュッと抱きしめた。

「ネックレス、ナルトが貰ったの?」

「スイにって預かった…カカシ先生にも”オレだから渡した”って
伝えれば解るみたいなこと…言ってたけどなんなんだ?」

「…そう、うん…なんだろうね?」

「わかんねぇのかよ」

「解らない…お前とウズリがなんの話をしたのか」

「ふ、普通の話だってばよ?」

「そう、なら、オレがお前と聞きに行こうと思ってた
答えがそれなんだろうと思うよ…」

「も、もっとわかりやすく説明しろってば」

「オマエを認めたんだと思うよ…スイの家族として」

「は?」

「…ナルトもうオレを拒まないでくれ」

舌先がペロリとナルトの唇を舐め上げ
抱きしめられている体はカカシから逃れる事をさせてはくれない
傍で見ていた忍犬達は、やってられんと消えていく中
カカシの行動はそれを見ても止まる事はしなかった。

「なっ…んっ…せん…せっ…待て…って」


言葉を紡ぎたいのに、カカシの舌先が己の口内を無心に彷徨う。

「んっ…んっ…っふ…ん」

話がしたいと、カカシの体を押し返すのに
それは許されなかった。

ぐっと押し付けられる熱にナルトが目を大きく見開いた。

「んむっ…へんへ…っふ…ひゃめ…」

ナルトの舌先を吸い上げていたカカシの口がするりと離すと
苦笑いで髪をなでながら

「お前…舌絡めあわせながら喋っちゃ噛んじゃうでしょーよ?」

「う、うっせーってば!勝手に、ち、ちゅーしてくるからだろ!」

「ぶっ!ちゅーって…オマエねぇ」

「こっちは話がしたいんだってばよ!そんなキスなんかすんな むぐっ」

再び重なる唇は今度は深くナルトの中へと押し入り
舌のしたへと滑り込んだり、上顎をざらりとなぞってくるカカシの妖艶な動きに
耐え切れずにナルトがカクンと膝を折った。

「お~っと…なぁに?腰に来た?」

クスクスと悦に浸った表情でナルトを見やると赤くなって目を背ける。

「っ…」

それに快くしたカカシが、薄く笑ってナルトの体をグッと抱き寄せた。

「話ならベットで聞く」

「ダメだってば!!」

「オレだって我慢の限界なんだよ?解ってんのオマエ…」

「んなもん、我慢し続けろってば!
先生が記憶無くさなければ、こんなに触れ合わない事だって無かっただろう!
それに!オレってばもう、先生が居なくたって我慢できるし!」

フーフーと背中を逆立てる猫のように噛み付いたものの…
カカシの真剣な眼差しに、ぐっと息を飲んだ。

「ねぇ、確かに記憶を無くしたのはオレの責任だよ?
でもさ…我慢できるってなに?
オレが居なくても、オマエは我慢できるって言うの?」

ギラリと、捕食動物が目の前の獲物を喰い千切らんとするような瞳に
ナルトが負けじとギッとにらみ返す。

「今まで我慢してきたんだ!出来るってばよ!」

「へぇ…そっ…」

スッとナルトを支える腕をするりと抜き去るとニッと笑った

「その言葉…忘れるなよ?」

と、一言置いてカカシはナルトから渡されたネックレスを持って
ナルトに留守番を頼み部屋を出て行ってしまった。

「…な、なんだってばよ」

カーっと一気に赤くなる頬、抱きしめられたあの感覚に
先日カカシが自分を放出する手伝いをしてくれた夜を思い出し
中心に熱が篭もりだして、慌てて首を振った。

入浴後という事もあり、ナルトは昔のように
カカシの風呂場を掃除し、洗濯機に入れられた犬を拭いたタオルを
洗い終えると、部屋に作られた洗濯を干す場所が目に入った。

「あ~…これってウズリさんが…」

一瞬躊躇ったが、それをパサリと干すと、他の物も全て終え
カカシが戻るまでの間に夕飯でも作っておこうと腰を上げ
冷蔵庫を開ければ、自分では決して買わない食材がこんもりと入っている。

「…オレの仕事じゃ…ねぇよな」

パタン…と扉を閉めて溜息を吐くと
ナルトはソファーに腰を落とし、ぼーっと洗濯物を見上げた。

そこでハッと思い出したのが、カカシの預かっていた荷物達。
記憶が戻ってからも、渡してなかったソレを、影分身に取りに行かせて
ナルトは、再びやることを探すも、自分の仕事ではない…と
もう一度呟いてボーっとカカシを待ったが
なかなか帰ってこないので、スイの眠っていた部屋へと入ると
目覚めたばかりのスイがニッコリと笑った。

「スイ」

「にゃっとぉ…」

泣きそうな顔で抱き付いて来た。

「どうした?」

「あんま…あんま~」

母親を呼んでいる…すぐにそれが分かり
胸がギシリと鳴った。

まだ、母親が傍に居て欲しい時期…父親のカカシがウズリが
決めた答えであっても何も知らないスイは二人を求める。
ましてや、カカシよりも絶対的に長い時間スイと生きてきたのは

ウズリ…

ナルトがグッとスイを抱き締めた。

「ごめんな…オレにはどうしてやる事も出来ねぇってばよ」

「あんまぁ…ううっ…」

「スイ…ホラ」

ポケットから、綱手に貰った飴を見せると
ニッパーといきなり微笑んでそれをクレと口を大きく開く
こんな誤魔化し方しか出来ない…苦しそうに笑ったナルトが
スイの口の中へと棒付きの飴を剥いて押し込んだ。

「んま、んま」

きっと、何度もこうやって母親を思い出し泣く日が来るんだろう

”ナルト…”

腹の中から聞こえた己を呼ぶ声にビクッと背筋を伸ばした

「なんだってばよ?」

”そいつは、ワシの声が聞こえるようだな”

「え?」

振り向いてみれば、スイがジッとナルトの腹を見ていて
アメも手に持ったままジーッと穴が空くのではないだろうかというほど
大きな目を見開いている。

「スイ?」

「ぽんぽん…?」

「クラマってんだ」

「きゅらまだってばよ?」

「ク・ラ・マ」

「きゅらまぁ~」

グリグリと頭を押し付けて来るスイに手から落とされたアメをナルトがキャッチすると
クラマが、何やらブツブツと文句を言い出す。

だからガキは嫌いなんだとか、煩いとか…まぁ、クラマが言いそうなことは
大体予想はつくが、その通りの言葉を吐き出すから、ナルトもニッシッシと笑う。

”ワシの妖力がコイツを過敏反応させるなら、ナルトお前がこの気を絶って接すればいい”

「は?どういう事だってば?」

”お前にはあるだろう?自然エネルギーで動く方法が”

「って事は、スイと居る時は仙人モードになれって事か?」

”そうだ”

「無理だってばよ!そんな長い時間無理だ」

”お前は今2・3時間は持つだろう?何が無理なんだ?”

その言葉に、あ…と思ったのはナルトだった
既にカカシとスイと一緒に住むと言う思考があったため
その時間が短いと感じたのだ。

思考に囚われている最中に、スイがクラマに話しかけたのだが…

「きゅらまぁ~わんわん?」

”ワシは犬じゃないわ!キツネだ、キツネ!”

「こんこん?」

「ぶっ…クラマ…スイ相手にムキになるなって」

ナルトはクックックと笑って腹を摩った。

”もう一つ…手段はあるんだが、それをすればお前に負担がかかるぞ?”

「どういう事だってば」

”陰陽師の契約には、二通りある。
まず一つは、命果てるまで生涯その陰陽師を守り通す
コレが、陰陽師で言う本契約…何かあれば直ぐに駆け付けれる場所に居なければ成らず
距離は然程離れる事は許されない契約だが、コレをする前に
もう一つの契約を済ませなければならない…

それが仮契約とでも言うか…
今のお前とそこのガキに薦められる一つの手だが
ワシを名指しで指名して呼ぶ事の出来る権利だ…
お前は渦巻一族だから、生命力が高いとは言え
呼び出されて長時間お前の体から抜ける事があれば
お前は間違いなく死ぬ”

「…オレの命もスイ次第って事か?」

”あぁ、そうなるな…火影もそれを許可はしないだろう・・・夢の道が遠のくぞ?”

「………でもそれしかないんだろう?」

”カカシのガキにでも相談して見ろ”

「…先生は首を縦には振らないってばよ、きっと離れて生きる選択をする」

”ならそれが良いのだろう”

「クラマは解ってるだろ?オレと先生との関係を…」

”あんなに繋がりあってて知らない方がおかしいだろう”

「うへ、薮蛇だ…」

”それと、そこのガキの力を抑える方法を見つけ出せば
どうにかならん事もないぞ?
力を抑え切れれば、ワシは引き摺り込まれる事はないからな”

「そうか…ありがとうだってばよ!」

そうして、会話は終わりを告げ、スイはクラマの声が聞こえなくなって
残念そうにナルトの腹をパンパンと叩く。

それでも声を拾う事は出来ず
諦めたスイが、次は棚を漁って、お菓子を物色し始める

「おいおい…スイってば」

「なっと~!あい!」

にっこり笑って差し出してきたオヤツにナルトが苦笑いを向ける
食べさせていいものなのか…先ほど、アメを食べたばかりなのに
他に物を渡していいのか…
そんな事が気に成りだした時、ガチャリと扉が開く音に
スイが走ってその人を迎に出る

「ちち!」

「はいはい、ただいま~いい子にしていた?」

コクコクと首を縦に振るスイを黙って見ていると
カカシがスッとナルトの頭を抱え込んでただいま…と告げた。

「…お帰りってば」

「ネックレスは綱手様に預けてきた…数日で見聞は終わると思うから」

「そっか…ってか、離せってば」

「ん?なんで」

「なんでって…だって…」

「はいはい、解ったよ」

スルリと腕から離され寂しさが込み上げるが
これでいいのだと、ナルトは思う。

「ウズリだけど…明日暗部と一緒に、国境まで出てから
一人で火の国を出る…国外追放ってので綱手様が手を打ってくれた
3年は木の葉に、火の国に入る事は許されないけど
それ以降は、スイに会う事も許可して貰ったよ」

「ホントか?」

「うん、それでオレも良いと思うし…
ナルトもその方がイイんでしょ?」

「……ありがとう、先生」

「感謝される事なんてしてないよ…でも、これで全て決着が付いた」

ふぅ…と、ソファーに座り込んだカカシを見て
ゆるりと微笑むとナルトは自宅へ帰ると、カカシの家を出た。

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