倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 終焉 | | HOME | | 朧月② ≫ |
この作品は、オリジナル作品として
エブリスタ様に投稿した文章です。
新月
偶然ってものがあるんだと
再認識した。
こんなに近くで彼と話せるなんて…
今までの色のない世界が急に色付き、妖艶な世界へと惹かれて行く
新月
偶然ってものがあるんだと
再認識した。
こんなに近くで彼と話せるなんて…
今までの色のない世界が急に色付き、妖艶な世界へと惹かれて行く
「いつもご贔屓(ひいき)にありがとう御座います。
またのお越しを従業員一同心よりお待ち致しております。」
何時ものように挨拶が交わされるのは、老舗旅館の『川かみ』と言う店。
高級料亭でもあり、礼儀だけは人一倍煩(うるさ)い。
しかし、その煩い中で小さな頃から育った閏葉(うるは)は、
既に若女将と呼ばれてもおかしくない礼儀は身に付いていた。
「いやぁ…今回も快適だったよ。」
帰り際のお客様の声に、ニッコリと微笑みありがとう御座いますと告げると、
横に置いていた手荷物を
靴を履き終わったタイミングで手渡した。
「あぁ、そうだ…閏葉さん?」
「はい、なんでしょうか?」
スッと、スーツの内ポケットから取り出された名刺には
”小金井出版”と書かれていて、名前付けは””専務”だった。
帰り際のお客様の声に、ニッコリと微笑みありがとう御座いますと告げると、
横に置いていた手荷物を
靴を履き終わったタイミングで手渡した。
「あぁ、そうだ…閏葉さん?」
「はい、なんでしょうか?」
スッと、スーツの内ポケットから取り出された名刺には
”小金井出版”と書かれていて、名前付けは””専務”だった。
両の手で受け取ると、その名刺に素早く目を這わせ表情一つ変える事無く、
閏葉は男を見上げる。
「うちで今、人が足りなくてね~良ければ秘書として
人が見付かるまで来ては堪えないだろうか?」
「おやおや、吉田様…うちの閏葉を引抜ですか?」
「いやいや、人が見付かるまでなんで…長居はさせませんよ」
母親の妙子が、ニコニコとしながら吉田と呼ばれる男を見ると、直ぐに頭を下げた。
「ふつつかな娘ですが、社会勉強の為お願い致します」
それに驚いたのは、閏葉だった。
「女将っ!急に決められてもっ…」
「これ、閏葉…お客様の前で大声ははしたないと何度言えば解りますか?」
その言葉に反論さえさせてもらえず、すいませんと小さく謝った。
強制的に決まった、閏葉の仕事は出版社の秘書。
接待業務には慣れているとは言え、まさか秘書をやる事になるとは…と、
深い溜息を付きながら、踵の低めのパンプスに、
リクルートスーツと言う格好で名刺の会社へと向かった。
個人の会社に行く事など、女将の営業でしかないのだが
その営業に同行する事も殆どなかった閏葉にとっては、
その言葉に反論さえさせてもらえず、すいませんと小さく謝った。
強制的に決まった、閏葉の仕事は出版社の秘書。
接待業務には慣れているとは言え、まさか秘書をやる事になるとは…と、
深い溜息を付きながら、踵の低めのパンプスに、
リクルートスーツと言う格好で名刺の会社へと向かった。
個人の会社に行く事など、女将の営業でしかないのだが
その営業に同行する事も殆どなかった閏葉にとっては、
初めての会社訪問と変わらない。
今日は面接だけだと言う吉田の言葉に従って、目の前に聳(そび)え立つ大きなビルを上から下まで見やった。
「うわぁ、大きいなぁ…」
ふぅと、息を付くと
自動扉で一度立ち止まり、スッと中へと入っていく。
スーツに身を包む人間が多い中、ジャージ姿の人間や、ジーンズにオシャレ着をした人など沢山の人間が居るのは、ライターや写真家だったり、漫画家だったりと言う所か。
≪ 終焉 | | HOME | | 朧月② ≫ |