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なつめっぐ 保管場所

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朧月②

続きになります

一息ついて、閏葉は受付と書かれたロビー中央にあるカウンターへと向かった。

ドキドキと高鳴る心音を一度落ち着かせると、ニッコリと微笑みながら
受付に預かった名刺を渡し、

「桜塚閏葉と申します13時の予定です」

と、伝えると
綺麗な受付嬢が、お待ち下さいと言い残し電話を掛ける。

名刺を渡され、セキュリティの為か『Visitor』と書かれた
名札を首から下げる形の物に入れて渡される。

「社長秘書室ですので58Fになります」

その言葉に目を大きく開いた。

「しゃ、社長室う!?」

バン!と、カウンターを強く叩くと、ハッと我に返りスイマセンと付けたし、
慌ててエレベーターの前に立った。

ポロン…

開いたエレベーターに、タイミングが良いと乗り込むと
既に数名が乗り込んでいて
何階ですかと聞かれる。

「あ、58階で…」

その言葉を言ってから急にざわつくエレベーターと、女の人が押している、
開くの他の押しボタンには50階…とまでしか書かれて居ないのに気が付いた。

「50階までなので、右のエレベーターでお願いできますか?」

その言葉で、慌ててゴメンなさいと告げ飛び降りる。

右手にあるエレベーター。
50階より上に停止します今乗ったエレベーターが…
スーッと閉まって行く。

もう、初っ端から、ナニが何だか…

当たり前だが全てが初体験。

何事も勉強とは言われたものの…いきなり社長秘書室なのだ

「うは…」

エレベーターに乗り込むと、鏡張りの背後と、
前のエレベータとは違った内装に、
溜息が勝手に出てくる。

専務だから上層階で面接!?ありえない!!!

職場見学も兼ねてと言っていたのだから、恐らくは…社長の秘書。
それが、仕事なのだろう

「あっ、でも社長秘書って…沢山勉強してる人しかなれないんだよね…?
しかもこんな、大会社」

と、自己完結してしまい気が緩むと同時にエレベーターがフワリと58階に停まった。

会社なの?

まず一歩踏み出した閏葉は思った。

日本一を誇る出版社ではあるが実はこの会社だけではないのだ。
小金井グループと言えば、色々な仕事に手を出していて、
それを成功させて来ている。日本屈指の資産家でもあるのは誰もが知っている。

「だからって…悪趣味」

元々【和】の中で育って来た閏葉にとっては、
【洋】のシャンデリアや、ふかふかの絨毯に慣れないのだ。

「おー!若女将!良く来て下さいました」

「あっ、吉田さんこの度はどうもありがとう御座います。」

日本人の礼は綺麗だと良く言うが、閏葉の礼は一味違う。
リクルートスーツに身を包んでいるとは言え、優雅な身のこなしをするのだ。
その姿に、吉田はウンウンと頷いた。

「あの…秘書って」 

「うん、秘書って、程でもないんだよ。実を言うとね…」

とある作家を担当していた職員が、挨拶が悪いと言うだけで返されてしまい、
それから挨拶や、礼儀をしっかりできる者だけを寄越せ。
と、突っぱねるらしい。

そのお陰で原稿は遅れるわ、職員は行きたがらないわで
かなり困惑していると説明を受けた。

まあ、確かに旅館内での礼儀はかなり煩く躾けられたが、
ここに来てまで同じ仕事内容かとため息が出る。

「では私は、原稿を頂いて来るだけで良いんですね!?」

「あっ、いやいや…」

早い話が、その作家の自宅まで行き締め切り以内に仕事をこなせるように計らう…

監督役と言う所だろう。

「では、その作家さんの名前と住所を…」

持ってきたメモに、胸元のポケットに差し込んであったペンを取り出し
書き込み始める。

作家名: 葵

「え!?」

「ん!?」

「あっ、すいません…読んだことのある作家さんと同じ名前で…」

薄く頬を赤くしながら、続きを書くように、メモにペンを乗せると

「有名作家だからね」

と、付け足された。

今だから言えるが、現在付き合っている彼が、
その作家の書いた男性に近かったから。

言動や行動が、あまりに似ていて惹かれた。

彼からのアクションで2週間前から付き合い出したが、
お互いの時間が折り合わずまだ片手で足りる程度しか会ってはいなかった。
勿論朝帰りどころか、キスさえしていない状態なのだが…

キャラクターと重ねてしまったせいで、彼を受け入れられない部分もあるのだ…

「閏葉ちゃん!?」

思考の縁から呼び戻され
閏葉は、慌ててペンを走らせた。

明日から、葵先生の所で原稿を管理しなければならない。

取りあえず、承諾して
会社内を見て歩く。

社長秘書室と言うのは、人気作家さん担当の人が使うフロアで
パソコンの中には膨大な資料と、スケジュールが入って居るらしい。

だから名前は、社長秘書室

限られる人間しか入れない場所なのだから。

しかも、会社内でも知っている人は数少ない上層幹部のみと言うもの。

そんな、会社の秘密に触れていいものかと一瞬悩むが、
専務がそれで良いと言うのだから
これ以上閏葉が悩んだ所で解決はしないだろう。

「では、明日お昼の12時に葵先生のご自宅でご挨拶してから必要書類を聞いて、会社で用意した後にお持ちする形でよろしいんですよね!?」

よろしく頼むと、吉田が言うと、閏葉はお辞儀をして帰路に着いた。

なんて一日だったんだろう…

疲れがどっとでて、メールを見るのさえ忘れ閏葉はぐっすりと眠った。

「若女将!?」

襖の向こうからする声に覚醒し、慌てて起き上がると返事を返した。

「あの…花川様が、お目にかかりたいといらっしゃってますが…」

その言葉に、慌ててメール画面を開くと

着信13
メール25

その数に驚き、急いで彼の待つ部屋へと向かった。

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