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続きです
「えーなんであんなに怪しいの!?」
「後で、それも話すよ」
そうこうして閏葉の部屋へとついた。
全て話し終えたのは、もう夜が明け始めた頃。
翌日から3連休と言う事もあり、二人は尽きる事無く話しこんでいた。
「じゃ~あの作家の人が…人間じゃないって事?」
「人間だよ…ただ狼の血を受け継いだから…」
「200年ってドンだけ年の差カップルよ!」
その言葉に、閏葉は久しぶりに大笑いした気がした。
「一眠りしたらさ…逢わせてよ?その葵って人に」
「逢ってくれるの?」
「うん、逢わないと解んないし…それに嘘かもしれないしね?」
「嘘?」
「200年も生きたなんて話普通誰も信じないよ?
髪だって色入れてるだけかもしれないし、
眼だってカラコン入れればごまかせるしね」
まぁ、それもそうだが…と
閏葉も共感した。
昼下がり、鶴の間の前に二人が立っていた。
「本当に…ここに居るの?」
何度も、閏葉の家に来て遊んではいたものの
離れは絶対に余計な人に進入を許さない敷地。
閏葉とて、何度も行ける部屋ではないのだ。
そんな豪華な部屋を借り切ってるのだから、
財力のある男だと言うのは直ぐに理解できた。
「閏葉です。」
ノックをすると直ぐに戸が開いた。
漆黒の髪に、濃いブルーの瞳。
「今日は友達も一緒なんだ?」
「うん…葵の事話したの」
「そう、どうぞ…入って」
二人は直ぐにリビングの長椅子に腰を掛けた。
向かえ合わせで、ギシッと音を立てながら無造作に座る葵が、グッと身体を前に出した。
「加奈さんだったよね?」
「はい」
「俺の事…嘘つきって思ってる顔だね?」
クスッと笑いながら言う葵に加奈は何も答えなかった。
「信じて貰えなくても良いよ。俺は俺このままで過ぎていけば良い…」
立ち上がると、コップにペットボトルのお茶を注ぎ二人の前に出した。
「変なもの入れたりしてないから安心して?」
「加奈?」
動きもしない加奈に、閏葉が手をひらひらとさせる。
「あっ、ごめん…なんか色々と考えてたんだよ」
優が悟ったのは、閏葉の気持ちがこの男に向きかけていたから。
それは目の前の男を見れば解る。艶やかな笑顔陰のある瞳の奥。
誰だって惹かれるかもしれない。
「閏葉を泣かせないって約束できる?」
「約束は…出来ない。でも泣かせたくは無い」
その言葉にシンと静まり返った。
「まだ、閏葉の答えも聞かないうちから、
俺って言う特殊なものを押し付ける気は無い」
椅子に再び腰を落として足を組むと加奈がキッと葵を睨んだ。
「閏葉を大事に思う気持ちはあるんですよね?」
「勿論そうでなければ無理にでも恋人にしたさ」
その言葉と視線がイヤに妖艶で、閏葉は眼を背けた。
「無理に…ですか?」
「あぁ、抱かれちまえば、心なんて関係無しに俺が欲しくなるだろうからな。」
「凄い自信家ですね-」
その言葉にクッと笑い、昔からそうだったからと付け足した。
とりあえず部屋を出て二人でもう一度話をしようと言う事になり、
閏葉と加奈が部屋を出ようとした時、10分だけ閏葉を貸してくれと葵に言われ、
加奈は一人で閏葉の部屋へと戻った。
「葵?」
「キス…今日してない」
「は!?」
何を言ってるのよと、部屋を出ようとしたらその腕に引き止められ、既に拘束の中に居た。
「キス…昨日は許してくれただろう?それとも、気分が乗らない?」
「そ…そうじゃないけど、でも、まだ付き合うって んんっ…」
塞がれた唇の隙間から、濡れた音が響く。
舌先が絡められると、閏葉の腰がカクンと抜け落ちる。
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新月
偶然ってものがあるんだと
再認識した。
こんなに近くで彼と話せるなんて…
今までの色のない世界が急に色付き、妖艶な世界へと惹かれて行く
満月
「…うん」
その答えで不安が一気に喜びに変わる。
自分から”したい”など…言った事が無かったなと、葵は思った。
チュッと軽く啄ばむ口付けが一瞬交わされ
後に深く唇が重なった。
「閏葉…」
「ん…」
満月
そう、葵は200年と言う時を過ごして来たのだ。
「なぜ母を?」
「健吾の、初恋の相手だったんだ」
「え?」
自分の父親は、生まれて直ぐ亡くなった…まさか、そんな!
「もしかして…その人が私の?」
満月
孤独な狼が…里を見つける。
そんな感覚だと、彼は笑った。
「だから、もう擬似恋愛は終わり…閏葉考えるんだ。
こんな俺を受け入れれるかどうか。
今は一時の感情かもしれない
だから、閏葉が俺を受け入れるまで待つつもりはある。
それに、何個か約束できない事もある…
満月
戸籍が無い事。
お前と年を取って行けるかは正直わからない。
もし受け入れてくれるなら
お前の手で俺を葬ってくれて構わない」
悲しそうに微笑む彼に、何を言えば良いのか…
解らなかった。
下弦の月 最終章
と背中が粟立った。
「葵…ちょ、ちょっと駅まで」
「…こんな時間にか?」
「…うん」
「解った、待ってろ」
葵が、上に一枚ジャケットを羽織り目深に帽子を被ると少し後ろを歩くから気にするなと言い、トンと
閏葉の背中を押した。
下弦の月 最終章
欲しかったの」
「解った…ちゃんと説明してくれるんだよね?」
「うん」
二人が駅を出ると、後ろから背の高い男が帽子を目深にかぶって付いてくる。
「ねぇ、あれって…」
「うん、担当の作家さん」
下弦の月 最終章
」
優が悟ったのは、閏葉の気持ちがこの男に向きかけていたから。
それは目の前の男を見れば解る。艶やかな笑顔陰のある瞳の奥。
誰だって惹かれるかもしれない。
「閏葉を泣かせないって約束できる?」
「約束は…出来ない。でも泣かせたくは無い」
下弦の月 最終章
「は!?」
何を言ってるのよと、部屋を出ようとしたらその腕に引き止められ、既に拘束の中に居た。
「キス…昨日は許してくれただろう?それとも、気分が乗らない?」
「そ…そうじゃないけど、でも、まだ付き合うって んんっ…」
塞がれた唇の隙間から、濡れた音が響く。
舌先が絡められると、閏葉の腰がカクンと抜け落ちる。
下弦の月 最終章
「ひから、はひらないひょ…」
「俺が支えてやるから大丈夫だ」
唇を重ねたまま話す葵に心底悔しくなる。
葵は自分を好きだと言った。
それなのに夢中になるのはいつも自分で…
悔しくて。
「んっ…うる…葉」
舌先を絡められた先で軽く吸い上げてやる。
チッと音が響き、驚いた葵がガタッと後ろの壁にぶつかった。
「っ…お前反則」
真っ赤になった閏葉が、ベーッと赤い舌先を見せて部屋を出て行った。
「っ…強烈…」
壁にもたれ掛ったままの体がずるずると床に落とされた。
いつも自分はする方で
昔に吸いついた女は居たが、ここまで腰砕けにした女は居なかった。
好きだと…
思うだけで凄まじいほどの力を持ってしまうのだと
葵は思った。
一方、閏葉はと言うと
真っ赤になりながら、自分の激情を知った。
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