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続きです
毛布をかけてやろうと引くと
閏葉の胸元が仄かに伺えるブラウス。
ぷちっ…
悪戯心で一つボタンを外すと、胸の谷間が露になって何とも言えないきめの細かい肌が現れた。
「……。」
ギシッ…ベットの上に乗った閏葉の上へとゆっくりかぶさるとちゅっちゅと
キスを繰り返し、それでも目覚めない事に気を良くしたのか、
指先がブラウスの衿をクッと押し上げ
風通しのよくなった首筋に
葵が顔を埋めた。
「んっ…」
首筋に花を咲かせれば、身を捩る閏葉。
紅く咲き誇った葵の所有印が
心を弾ませると、もう一度…と、今度は首筋に舌を這わせた。
「んっ…ぁ…」
艶の乗ってくる声に、葵の欲情が沸き上がってくる。
「閏葉…」
「…ん…あお…い」
するりと、閏葉の腕が葵に巻き付き、更に引き寄せる。
「このまま襲っちまうぞ?」
「ん?え…あ!うわぁ!!」
夢で心地良い感覚に身を委ねていたのに
気が付けば、目の前に凄く距離の近い葵。
驚いて、今の状況を把握しようと見回すと
葵が、閏葉の胸に手を置き
頬にもう片方の手を置いて…
「って!葵ッ!」
「起きたか?」
「お…おお…起きたかじゃないでしょう!」
「起きないお前が悪いんだ」
そう言うと、被さっていた身体をよけ、ギシッとベットに腰掛けた。
「きらったか?」
「え…えっと…」
「いや、良い…言うな。待つと言いながら待てなかった俺が悪い。すまん」
閏葉は慌てて胸元のボタンを締めると、帰ると言い残し部屋を出た。
「あーったく余裕ねぇ…」
ゴンゴンと自分の額を両の手を併せて握った手で叩いてみるも、落ち着かない。
「はぁ…本気になりかけた…参った」
いまだ悶々と気持ちが落ち着けず、余裕の無くした身体を冷やす為に外へと出た。
200年生きて、閏葉が小さな時にも何度か彼女を見かけてはいた。
それがこんな成長を遂げて自分を魅了している事が、不思議でならない。
「最後の恋…なんて、ロマンチストじゃあるまいし
口には出せないが、恐らく閏葉が俺にとって最後の女」
例え振られようと…
閏葉を見て生きて行きたいと願う。
この先何年生きるのかさえ解らない自分は
閏葉は通過点に過ぎないのかとも考えたが…
こんなに恋焦がれた事は
きっと一生来ないとまで思う。
「怒らせたかもしれないし、明日謝らないとな…」
育って行く月を見上げながら思った。
約束の日。
夕方に掛かるよりチョット前に二人は部屋を訪れていた。
前の襲いかけてた事件?は、翌日閏葉も怒ってる訳ではなく
はずかしかったのだと
丸く収まった。
さて…
「まぁ、種も仕掛けも無いのは解ると思うが…
もうすぐ満月が出る。目の前で色が変わって行けば…
嘘じゃないと解るだろう?」
「え?その為に呼んだの?」
「そうだが…不都合があるのか?」
「へぇ、葵さんはそこまでして嘘じゃないと言い張りたい理由って…?」
加奈のその言葉にニッと、口角を上げた
「閏葉に本気だと解って貰いたかったから。それと、
友達のあんたに、嘘つきとは思われたくなかったから…だな」
部屋に入ってから、1時間は過ぎただろうか?
真っ黒の髪が徐々に色を落としていく。
だが時間をかけてゆっくりな為、今はアッシュグレーに近い色だった。
「1本抜いてみ?」
「う…うん」
閏葉は、丁重にその毛を手に取りぷつんと一本抜くと
毛の色が一瞬で真っ黒に戻った。
「なにこれ…」
「それが、月の力に影響しているって事だろうな」
そして、彼は自分の過去を語り出した。
生まれた時…満月だった為彼は全身真っ白の毛を纏って生まれた。
母親は、さほど気にもしていなかったが父親は違った。
毛色の濃い二人から生まれるのが、白っておかしいだろうと、
悲しそうな瞳で話を続けた。
当時、写真を撮る習慣の無い時代だったから何も残ってはいないがと…
一枚の絵を見せてくれた。
男の子…そう、葵が10歳ほどの感じだろうか。
値段:3千円 ~1万円
と言う看板を持って立っている。
「そこに書かれた値段が俺の一晩の値段」
「え?」
「俺は成長が遅かったから母親が逝く時まだ8歳か9歳だった。
周りからは蔑まれ、親戚には縁を切られ…
母が亡くなってからは家が無かったんだよ。」
加奈が、瞳を潤ませているのがわかった。
「じゃ…人を信じれなくなったのは」
閏葉の言葉に静かに頷いた。
「俺は見世物にされたと本では書いたが…売られてたんだよ。
毎晩違う人間が俺を抱いた。男も女もだ」
「………。」
何も答えられない二人に、悲しそうな視線を一度投げるとまた、続け出した。
小説に書いているのは15歳ほどから。
知能は、案外まともだったらしく逃げ出すって道がある事を知り逃げたんだ…
既に人間不信にはなっていたけどな。」
その話を聞いて、閏葉も加奈もどう彼に伝えれば良いのかわからない。
慰めの言葉などイラナイだろう
同情の言葉は逆に聞き慣れているかもしれない。
「いいよ、気にしないで。俺が二人に話しているのは、
これから先の俺の事も踏まえて閏葉が悩む事があったら…
きっと加奈さんに連絡するだろうから話してるんだ。」
その言葉に、閏葉がえ?と言う表情を見せた。
「閏葉は、俺の事好きだろう?」
「なっ!ナニその自信!」
「違った?」
怪しく光る瞳は、いつの間にか赤く染まり閏葉の身体に痺れを与える。
「それは…」
「クス いいよ、言いたくなるまで待つから、でも、あまり待つとこの間みたく見境無くなるかもしれないけど?」
妖艶な瞳は、そのまま閏葉を射抜き
その二人の会話に、加奈はハイハイと、呆れたように部屋を後にした。
「まってよ!加奈」
「追いかける?」
背後からギュッと抱き締められて、閏葉は動きが取れなくなった。
「ねぇ?」
チュッと耳を軽く吸われ、体の力が抜けていく。
「閏葉…単純な言葉でごめん。 愛してるよ」
「わ…私も…好きです」
「うん、ありがとう」
二人は唇を深く重ねた。
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