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続き
父は、今年戻ってくると言う。
しかも…旦那を連れて…
「あーもう!」
持ち帰ったバッグを、ソファーに投げつけると、ハッと思い出し鞄の中を見る
「バナナぁー」
程よく熟したバナナが、見事にかばんの中で数本破裂している。
それを見ると、またゲンナリしてくる。
一人で棲むこの家は、広すぎる。
2Fは、全くの未使用で30畳ほどの空間がポッカリそこに
申し訳なさそうに、トイレが備わっている。
ブラックホールでも入るんじゃないか? うん、無理だな。
1Fは、自分の空間。
20畳の居間は広くて殆どこの空間だけでも良いのだが
風呂 トイレ キッチン。
6畳の寝室むかつくのでキングサイズのベットを
入れてやったら殆ど空きスペースが無いと言う暴挙!
着替えなども一応この部屋にあるが、枚数を多く持っているとか
お嬢様チックな事は一切無い。
そんな水希の生活は
規則正しく…ちょっとだけ美しい?
彼氏は居たが、旦那が居ると知るとすぐに居なくなる。
と言うか、母がすぐに言う!
男を連れ込むと、殴りこんで来るのだ。
「ありえん…私って一体なんだ?」
そう、本当に一体なんだ?
結婚も恋愛も自由に出来ず、挙句の果てに
顔の知らない旦那ともう、7年も結婚している事に成る。
離婚届を出せばいいものを…既にめんどくさくなって
放置していたのも悪いんだろうなと今になったら思う。
けれど、旦那はもうすぐ父とこの地に足を踏み入れる。
ニューハンプッシャーのマンチェスタで生活をしていたと言う
怪しげな情報は入っているが、なぜか父は一度も
彼の写真を見せようとしなかった
「ドンだけブ男なのかな?」
なんて想像を馳せる。
郵便の手紙を一枚ずつ見て行くと白いガハキが入っていて
良く見ると真っ白の、隅に小さな字で
「15days A father returns. 」≪15日父帰る≫
「は!?これって…明日じゃん!」
急いで母の元へ向かった。
クソオヤジは、到着時間すら書かないアホか?
と、内心思いながら母の食卓テーブルの上にハガキを置いた。
「まぁ、明日帰って来るのね?明日は何にしましょう?」
ずっと、置いてきぼりを食らってる母は、一切父の文句を言わない。
それは凄い事だと最近になって良く思う。
帰ると言えば、喜び、行くといえば笑って送り出す。
どう育ったらこんな穏やかな人間になれるのかとさえ思える。
入籍も快く、了解してしまう母なのだから…これはこれで珍しいのだろう。
水希は呆れて席を立つと自分の家へと帰る事にした。
明日は休みで、折角の優雅な時間を潰されると言う
悲しい現実と向き合う必要があったからだ。
風呂に、乾燥した薔薇の花びらを浮かせて携帯電話でポチポチとゲームを楽しむ。
これが水希の優雅な時間その1
この時間だけは、邪魔されずいたい物だと思うと、
急に旦那の存在にその大切な場所まで奪われてしまうと言う恐怖が生まれる。
「明日かぁ…」
正直見た事の無い旦那に思いは馳せない訳ではない。
けれど、突然旦那ですと現れる相手の事は考えがたい物があった。
「ったく…バカオヤジ」
浴槽に口が半分隠れるほどをブクブクと付けると、慌てて立ち上がる。
「落ち着いて入れやしない」
ザバッと風呂場から立ち上がっちゃったら、全裸なんですけど。
今は誰も居ないからいっか!なんてタオルを巻いて
居間の長椅子に座ってみる。
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