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続き
なんか、野生のレンを見て
サルと思った…のじゃなく、レンの過去が気になった
だから、聞いてみようと思う!
どんな過去を生きたのか
公園の帰り道、彼は間違うことなく家へと向かう。
狼の帰巣本能か?
狼…ねぇ。
「レン?」
前を歩く彼に話しかけると、くるっと振り向く姿に
なぜか心臓がせわしなくなる
が、それはどうでもいい!
「なに?」
「アンタの過去聞きたい」
「カコ?」
「うん…Past」
「yes Ok」
話してくれるんだ?
なんて思ってたら、何よ!この状態!!!!
何でいきなり手を握ったの?
手汗でるって!
恋人同士みたいで恥ずかしいんだけど!!!!
って…そうか、旦那だもん…普通か?
なんてモンモンしてたら、家に着いた。
カウチに腰を掛けると、レンが飲み物を入れようとしてたので
怪我をしてる彼にさせられないと私が用意した。
二人でカウチに腰を掛けると、そう言えばこんなの初めてかもしれない
なんて今更思う。
「過去…どこ?」
「ん?」
「生まれる?それか、源蔵と?」
恐らく彼は、生まれた時の話か、父と暮らした話か…
と言う選択肢をだしたんだろうなぁ。
「レンの嫌じゃない所で」
その言葉に押し黙った。
そうだろうなぁ…過去暴かれるのって結構恥ずかしかったり
辛かったり、嫌だったり…沢山の思いとかあるからなァ。
なんて思ったら、飲み物を一口飲むと
彼は、話し始めた…
ゆっくりと、そしてしっかりと…
レンの話は解りずらいので、単語を並べるより私が解説しよう!
バナナ差し入れしてよねっ♪
っと、冗談です。ハイ
レンの父はお酒のみ。
そして暴力を振るう男で母にも手を上げる人だった。
生まれて5歳まではその家族と、弟が居た。
父は弟には手を出さなかったがレンには執拗に殴る事を続けていた。
そして、母がレンを連れて逃げたのだという。
逃げた先は、森。
大きな森で、中に入れば沢山の動物が生きている場所。
そこの奥へと母の手に引かれひたすら歩いた
ドンドン奥へ入っていくと、母がごめんね…を繰り返したと言う
そして、疲れて歩けなくなった所で大木の根の部分の空洞を見つけて
そこで待っていてと言われ
レンはカバンと一緒にそこに身体を押し入れて母を待ったが
一日過ぎても戻る事は無かった。
けれど、捨てられたと言う気持ちより
母を待たなければならないと言う気持ちの方が大きくて
2日待ったが、母は現れず、食事はもう手元に何もなくなっていた。
お腹がすいて空洞から出ると、一匹の狼と遭遇して
慌てて逃げようとしたら、腕を噛まれ引きずられてしまい
もう、母には会えないと覚悟を決めた
決めたはずの覚悟は、4匹ほどの団体の狼によって
阻止される事となる。
ウゥゥウウ…
腕を噛みながら唸る狼に、オスの狼が近寄り、同じように
ドルルルルルと、低い音で喉を鳴らした。
しばらく均衡状態だったが、手を咥えていた狼が
その手を離して逃げ出して行ったのだ。
怖くて…でも涙が出なくて
父に殴られている時も、涙が出なくて枯れていると思ってたのに
手の痛みと、恐怖心とが一気にレンを襲い
ぽろぽろと涙を流し始めたらもう、止まらなかった
声を上げ、大きな声で
ただ泣き叫んだ
「 Mother … Mother … Help me」
何度叫んでも、声は空を切るだけで、もう自分は一人なのだと
実感したんだと彼は言った
そして、気を失ったレンは暖かさで目を覚まし
母親に助けてもらえた!と言う思いで目を開いて愕然とした
そこには、狼に囲まれて、その温もりを分け与えて貰ってた。
それが狼との出会い。
狼と行動を共にするには、必要以上に走ったり飛んだり
崖を登り、水を泳ぎ
全てが命がけだった。
そんな生活をしていたレンが普通の身体能力なはずが無い
と、普通に思えた。
細身の癖に力はあるし、ジャンプ力も結構なものだ。
その身軽さが脅威だったが、そう言う世界に
彼は生きていた。
「レンは、森が好き?」
「yes」
そして、長い年月を過ごし、出会った落し物。
「お守りだよね?」
「そう」
それを持ったときに自分は人間なんだと思い出したんだと言う。
彼はそれまで日にちも、年齢も、言葉も
必要なく生きてきた
そして、父とアメリカを出る決意をするのだが、それはまたの機会になる。
「レン…」
「?」
あなたは、人に愛されたいと願っているの?
そんな事を考えたら自然にレンに抱き付いていた。
静かに流れる空気と
穏やかな、心音。
奏でる音が同調して心地良い。
ハッハッハッハ…
そしてこの…荒い息
ハッハッハッハ…
え?荒い…!?息使い!?
バッと、レンの腕から逃れると、目の前に
なんで!?
「仔犬うぅぅ!?」
うるうるとした目で、私を見上げている。
って、犬?何故!?
「ど、どこから…?」
レンはフルフルと首を振る
私も気が付かなかった・・・。
と、玄関を見ると隙間が空いててそこから入り込んだんだ。
と思えたのは良いが…
レンの前でお腹を見せてクンクンと鼻を鳴らす様が可愛くて
私は思わず、抱き上げた。
「うっわー可愛い」
「触ると、帰れなくなる」
「え?」
「人間の匂い 嫌う」
「あー…でもここはレンの居た森じゃなく日本だから…きっと迷子」
玄関まで行くと…
「捨て犬…」
ダンボールに入れられて、拾ってくださいとベターな言葉が書かれていた。
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