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狼と私⑰

アナタは何を思う?

見えない人に恋するなんて…ありえる?

交流さえない彼女を大事にしたいと思えるのは
どうしてだったのかな?



コーヒーを入れて、テーブルに置くと
私達は対面で座り、話を始めた…。

お守りを拾った時、父ではない優しい匂いがしたそうだ。
その香りの正体が知りたくて、彼に近付いたのも確かだが、結局その中には
匂いの主は居なかった。

だから、父に聞いたそうだ
この持ち主はどこに居るのか…
帰って来た答えは、日本。
凄くこの匂いに惹かれ、逢ってみたいと思った。

狼の群れに、自分は不釣合いだとは理解していた
けれど、その群れから離れる事は死を意味していたあの時
それをどうしても忘れる事が出来なかったが
父が何度もレンに与える餌、そして話しかけてくる言葉は
レンには何もかもが新鮮だった。

当時は髪も長く、癖が強くて巻いてはいたものの
木の蔓で背中でまとめて居た。
服も当時来ていたものは全て小さくなり自分は大きくなったんだと
そう思ったらしい。

後に生まれる狼たちも、結局は仔を成しレンのグループは大きくなっていった
自分は異色な存在だと気が付いていたが、結局仔を成す事も
グループを大きくする事も出来なくて負い目を感じていたのに
更に抗争があり、グループは二つに分かれるのだが
その時の敗因が、人間の自分。

「水希、見て」

シャツのボタンを全て外すと、レンの逞しい身体が目の前に現れ
わき腹に傷を負っているのが見えた。
結構えぐれたのだろう…そこは、少し皮膚が凹み、色が白くなっていた

「痛そう…」
「死ぬ所だ思う…これ見る」

くるりと、背中を見せられて、水希が手で口をふさいだのは
驚きで声が出てしまわないため。

狼の爪の後が2箇所背中を斜めに裂いている。
そして、右側の肩口に噛まれた痕。

「酷い…」

「よく生きてた思う」
「うん」

狼の父が助けてくれたんだと言う。
そして、レンは群れを離れる事を考えていた。
その傷が治った頃に、源蔵と知り合い、彼に言葉を
そして、あのお守りを見て、自分は人間だったと
思い出したんだと言う。

レンは、その後父に習い日本語と英語を勉強し
人としての箸の使い方、スプーンフォークの使い方などを習い
2年を言う年月を過ごした。
その間は地獄かと思うほど意思の疎通も出来ず
狼の世界に逃げては戻りを繰り返し
狼の父に、もう来るなと…牙を剥かれた

帰る場所が絶たれたのだ。

その後、その森には帰っていない。
そして…残りの年月を過ごす中で、レンは父の荷物から
私の匂いのするお守りを貰ったんだと言う。

レンの首から掛けられた…皮の紐の先に結ばれてるのは
よく見れば自分が送った、お守りだった。
このお守りに自分は守られて、この日本へ来たんだと言う。
お守りに何度も苦しい気持ちを開放してもらい
何度も、心を癒してもらった物。

だからそれを送った水希は、自分の命に掛けて守る人であり
そして、何よりも愛して行かなければいけない人間。
何よりも、愛する存在…そう思ったのだと…。

それを父に話し、決意を固めると
水希とレンの結婚を伝えてきた。

結婚と言うのは、自分の家族を持つということ。
水希を守りたければ、もっと勉強してもっと努力をしなければならない
人との接し方、交流の持ち方、空気を考える、その人の気持ちを考える
沢山の事を一気には出来なかったが
我侭が無くなり、人と話をして笑うと言う事も出来るようになった。
そして、その間も水希を支えに頑張ってきたのだと彼は言う

その話を聞き、私はただ…黙るしかなかった。

レンの深い思いは、今もあり
私を大事にしてくれている。
時には、勝手な事もするけれど、普通の人間と一緒に暮らせる
それ自体彼には苦痛ではなかったのだろうか?
それでも、それを選び、私を守るために日本まで来て
言葉を覚え側に居る…

何故そこまで深く愛せるのか解らない…

私は愛を知らないから。

ポロポロ流れる涙に、どうしようもない思いが巡る。
帰ってきても数日しか居なかった父
いきなり出来た結婚相手
全てが突然すぎて、そして自分を大事にする母に
いつも嫌味を言いながら生きていた自分とは違う。

彼氏は出来た。レンと出会う前に3人ほど。
流されるままに出来た男を愛する事も出来ず
結局は決め台詞で去っていった…。

水希は強いから、大丈夫だよね?

そう、次から次に付き合い、去っていった男たちは
浮気ではなく本気になったと言う言葉で

どれだけ私は傷ついただろう…。

愛そうと努力もしたし、愛されたいとも願ったが
その愛は全て、偽者にしか思えなかった。

父も然り…

けれど、そんな私を知ってたのかな?

父は。

なんて今なら思える。

「レン…話してくれてありがとう」
「水希、俺水希大事」
「うん、ありがとう」

知らない間に、お互いに抱き合っていた。
でも今は恥ずかしいとかそんな思いは一切無く
ただ、ゆっくりと流れる時間がこのままゆっくりと、時間を紡いでくれればいいと思った

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