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なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

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狼と私⑲

うわうわうわ~
旅行って怖い!
こんなに怖いものなのか?
うぎゃーやめろー
恋愛脳よ!去ってしまえ!!!!!!

はぁはぁ…疲れる




夕飯を食べるために、部屋を空ける。
レンは大勢の前で食べるのが初めてで、怖いと言っていたが
本気で人が多い。

あと2時間もしたら花火が始まるから、それに間に合わせようと
人がぞろぞろとその食堂へと集まってくるのだ。

「レン?大丈夫?」
「うん、水希いる大丈夫」
「解った、じゃー行こうか」

食事券を中の女性に渡すと席を案内してくれて、そこからなんと花火が見える
凄い良い位置だった。
スイート専用で、この場所は自分で取りに行かなくても持ってきてくれると言う

「レン取りに行く?それとも持ってきてもらう?」
「取りに行く」

レンは好き嫌いは無いのだが、こう言うバイキング形式は初めてだという。
お盆を両手で持ってキラキラ目を輝かせる小学生か!?
と思うが、何も言わずに彼の後を付いて行った。

あれこれチラチラと見て歩くレンと私に注がれる視線は
もういいや…レンがかっこいいのは認めるし
だからって引き立て役になりたくはないんだけどね…。

胸元が少しはだけて、男の色香…ってのも十二分にある
この私でさえ、ドキドキするんだから仕方ない。

まぁ、それはどうでもいいが…なにやってるんだあいつ…。

「レン!」
「水希!これ!うまいいっぱい!」

何故ここでラーメン3個とかなんだ?
解らん…この男は何を考えてるんだ…

「他のもてないでしょう?」
「これでいい!食べてまた来る!」
「え~?ラーメンしか食べないの?」
「どれ危険じゃないか解らない」
「危険って…」

あぁ、そうか…そう言う人だった…

「私が少し持っていくから、持ってたの食べて。
ラーメンは一個頂戴ね?」
「OK」

レンはそそくさと箸を持って席へと戻っていく姿を見て苦笑いが出る。

色々なものを適度にお盆に載せると、一人の女の人と目が合った

「?」
「あ、あの…さっきの男性って…」

ここでもか…正直うんざりだな。

「彼が何か?」
「あっ、いえ、その…どういう関係なんですか?」

後ろで女の子の友達だろう、2人が柱の隙間から覗いているのが目に入り
お前は、○飛馬の姉かっ!と思った。

「夫だが」
「そ、そうですよね…すいません」

と、帰っていった。
全くあの男は罪作りだな…こんな状態だったら気が滅入る。
周りにもかなりの人数が居たため、結構気持ち的に余裕がなくなってしまう。
嘘は言ってない。
夫と言うのは間違いではないのだから。

「レン、これ食べて良いよ」
「水希、知り合いいた?」
「あーレンの事が気になるらしい」
「俺?」
「そう、アンタ」
「どうして?」

何故私に聞くんだお前は!!!!!

「知らない!さっさと食べな!」
「yes…」

怒ったわけではないんだけど…ちょっと…きつく言っちゃった。
後で謝るか…はあ。

その後ちょっとお互い気まずかったが、
花火が始まる館内放送屋上を開放したと言う台詞に
レンが行きたいと言い出した。

さっきの負い目もあるし、この部屋でも見れるが
二人きりは居心地が悪いと思って屋上へと向かった。

レンが、手を繋いできたが、それは結構慣れてたりする。
少し恥ずかしい思いもあるが、それは別に嫌な行為ではなかった。

「水希、見える?」
「ん…上がったら見えるよ」
「…そう」

レンの身長は180を超えているから、よっぽどの事が無いと
彼の前をさえぎるものは居ない。
数人背の高い男性も居たが平均からしたら少ない方だ。

パーン…と、上がった花火に皆が一斉におおお~っと声を上げた。
レンも嬉しそうに見ている、それだけで良い。
1時間ほど経っただろうか?急にレンの手が汗ばんできたのに気が付いて
顔を見ると、どうも青く見える。

「レン?どうした?」
「ん…わからない、胸気持ち悪い…」
「戻ろう?」
「まだ終わってない」
「部屋から見れるって」
「うん…」

部屋に戻ると、ベットにレンを横たえて水を持って来た。

「飲める?」
「ん…あ」

レンの手からするりと落ちた水が床にシミを作る。

「力入らない…」
「みたいね?」
水をレンの口へと運んで飲ませようと思ったが
口へ入れるには彼の身体を起こさなければならない。

「起きれる?」
「我慢する…動くの無理」

コトンと私はコップを置き、本を開いてレンの横に腰を掛けた

「眠っていいよ」

不安げに見てくるレンにニッコリと笑うと、彼は目を閉じた。
時折何かがこみ上げてくるのか、ケホケホと咳き込んでは
はぁ…と、吐息を吐き出し寝る体勢を変える。

「眠れない?」
「喉、渇いた」
「水?」
「飲みたい…水希飲ませる?」
「は?」

何だこの解釈どうすればいい!?
口移しで飲ませろという事か!?
そんな事して、吐かれたら逆流して口の中がうひゃあああああ!
無理だな…

「ミズ…キ?」

あぁ、やっぱこの目で見るのかお前は。
知らんぞ…こんな、こんな事して自分がどうなるか…
本当に知らんぞ?
いいのか?
水希!!!!!と、自分に問いかけても答えは出ない。
キスなんて何度もした事はある。
付き合っていた男が居たから、でも、レンは…あ、狼の本来の
挨拶は口と口か…だったら問題ないか

私は軽い気持ちで水を口に含んだ。

「ありがとう」

と、言うとレンは静かに目を閉じた。
こう言うときに目を伏せる事を、知っているんだ?
なんて浮かんでるうちに、唇がレンのそれと重なる擦れ擦れの場所にあった。

「水…早…く」

手をするりと回され、私の首がレンの手に閉じ込められると
自然に唇が重なり、レンの舌先が私の歯列を割って来た。

「んっ…」

おかしい…

「んっ…ん」

なんだこれ

「んっっふ…」

なんで?

「んんんっ…」

含んだ水分が無くなっているはずだ…
何故レンの舌が絡んできてるんだ…
そして…なんで私はそれに答えているんだ?

「っは…水希…」

時折離れるのに、また重なってきて…
腰の辺りがゾワゾワとするのは、身体が…レンを求めている。
身体が逆らえなくなる前に、離れなくちゃ…
離れなきゃダメ!

「レンっ…離…して」


怖い怖い怖い怖いー!

てか、なんでこんなキスを知ってるのよっ!!!!初体験じゃないのっ?
それに、すごい力で私を抑えてるじゃないかっ!!
動かないって嘘だったのー!?

身体が熱を帯び、腰から下が異常に脈を強める…

ダメ!

舌先は絡み合い、こんな葛藤など
レンには伝わらないだろうけど。

「レン…んっ…おね…がいっ…んっっはっ。」

その願いが聞き入れられたのだろう
チュッと音を立てて離れた形の良い唇。

私は、自分の唇を手で覆うと
スーッと足りない息を吸い込んだ。

レンは真剣な眼差しを向けたままただ、私を見ていて、
多分、拒否された事に怒っているのかもしれない。

「あっ、あのね?」
「ゴメン水希、悪くない。」

レンはそのまま布団へと潜り込んでしまった。

「ゴメン」

小さくなったレンは、布団の中から謝ってくる。

「怒ってないから、気分治ったら起きておいで?」

「うん…」

レンに溺れるのは、私の性に合わない。
それに、男に溺れた友達に私の存在理由を消された。
彼を受け入れて、捨てられたら私は
どうすればいい?

振られ慣れてるの…

だから、恐い。
恋に一途になれないの…

だから、恐い。

レンと初めてキスをした。
私の心臓が、激しく悲鳴を上げている。

認めれば楽になれるのに、認められない。

ごめんね…
レンは、多分悪くない。

私の心が防御壁を外そうとしない。
だから、あなたに心をすべて上げることが出来ないの。


バナナを半分食べて口が止まった。
レンの舌が口内を這い回る感覚を忘れたくて食べたのだが
もう一方の潜在意識の自分は忘れたくないらしい。

本を読む事で紛らわせた。
と…

カタリと音がして、視線を向けると
申し訳なさそうな表情でレンが立っていた。

「気分治った?」
「うん、人に酔った思う」
「そっか、散歩にでも行く?」

「…水希、怖くない?」
「なにが?」
「俺。」

笑ってあげるよ。
上手なんだよ?

「大丈夫」

ホッとした表情に私は、もう一度笑顔を送った。

「散歩いく」

読んでた本をパタンとたたみ、財布を持つと部屋を出た。

既に真っ暗なロビーを抜け、手を繋いで外に出ると、川の音と人の笑い声。

近くにお店があるんだろうなー。

「行こう!」
レンが手を引くから付いていった。
数人が飲み会をしているのだろう、その場所から少し離れると
川のせせらぎが心地良い、そんな場所に椅子が置いてあった
私は彼を拒んだ訳ではない。
拒みたいわけでもない…ただ、気持ちが怖い。
レンは解ってくれるだろうか?

シンと会話も無いまま時間が過ぎると
レンがいきなり、水希の肩を抱いた。

「ほえ?」
「さっき、ごめん…俺、抑えれなかった」
「ん、大丈夫」
「水希嫌違う?」
「…うん、嫌じゃない…けどね?ちょっとまだ気持ち的に
そう言うのが出来ないと言うか…私不完全なの」

私は昔の彼に、捨てられた。
それも何度もそして必ず、自分よりも良い人が出来ていて
そして必ず”君は強い”と繰り返された
それは、母も一緒。
水希は強いから…水希は出来るから…
言われた頃は嬉しかったし、それに答えれるように必死に生きてきた
なのに、それを違う人も口に出し、そして
それがいつの間にか恐怖になっている。

信じられないとかの前に、まだ自分がはっきり出来ていないのと
恐怖が連動しているようで…
どこまでの愛を受け入れて良いのかとか
ソコまでの思いをどうしたら良いのかとか

解っていないの

だから、恋愛をする事自体が怖いと言うのが
今の私…

そっと、レンの手が頬に当ると、ニッコリと微笑んだ。
嫌いじゃないむしろ気持ちにストップを掛けなくちゃいけない
それ程の人だから…

「キス嫌違う?」
「うん」
「していい?」
「へ?い、今?」
「うん、キスだけ」
「……うん」

そっと、唇を重ねるだけのキスを彼はくれた。

心が自由になってくれれば…もっと、もっと彼を受け入れれるのに

「ごめんね、レン」
「うん、俺もごめん」

私の頭がレンの肩に乗せられた
彼に引かれて…。

「俺も水希話す…」
「え?」
「俺も怖い」
「怖い…の?」

レンは遠い目をして川の流れをみていた。
私は黙るしか、出来なかった…。

小さい頃に捨てられた彼は、家庭の不安を抱えていた。
大事な家族に愛情を注がれなかった為、愛情の与え方が
まだまだ手探りだと言う事。
私に対しても、どうすれば喜ぶのかなど考えても
思い付くのは、肉を与える、抱くなどの動物的行動で
父に相談したんだと言う。

父に教えてもらいながら、これはダメこれは良い…
そんな分別で今まで来たのだと聞いて
父にクソオヤジ!と思ったのは言うまでも無い。

抱くに関してはまだ一度もその行為はした事が無く
その感情はあっても、それ以上はどうして良いかもはっきりとは解って居ない
今日は、水希が本気ですると思って居なかった為
暴走したとの事だった。

あそこで”しない”と言う選択肢があった事を忘れるほど
彼に魅了されていたのかもしれない。

でも彼はまだ…私を喜ばせたり守ったり、もっともっと
沢山の愛情を与えたいと思ってはいるのだと言ってくれた。

とても大事だと…

それだけで、十分にレンは人として生きて行けているのに
私が臆病なばかりに、前へ進めないのだろうか?
でも、レンの行動は否定は今まで一度もした事が無い

ふざけたり、適当にしているものではないと
感じていたから。

「最初はかなり怒ってたんだよ?」
「怒ってる怖い」
「うん、そうだよね…ごめんね」
「でも俺もわからない事一杯だったから」

恋人のように指先を組んで、彼の肩に体重を預けて
私は今幸せだと思う。
でも今度はそれを失う恐怖で動けなくなる。

人間なんてそんなものだと和香が言っていたのを思い出す。

部屋に戻ろうか?
と、レンに言われて、私は部屋へと戻った。
ベットに横になったレンを見て
露天に入りたいから、もう少し時間をくれる?と
聞いた所、快諾してくれて

私はそのまま暖かいお風呂に足先を入れようとしたとき

「一緒入る」

と、レンが下着一枚でやってきた。

「えええええ!?」
「嫌?下着あれば…見えない」

いや待て、レンクン!君は根本的にさっき言った事を
解っていないだろう!?

「俺、遠慮しない水希楽になるまで」

あ…解ってたのね…
でもだからって、一緒にって!

まぁ、プールも水着で入るし…いやまてまて
それは違うだろう!
いや、夫婦で下着姿ではいるのはどうなんだ?
いや、それは問題ないだろう…
いやいや・・・・なんて思ってたら、ザプンと人一人分の容量が
風呂の角からザーッと流れた。

「……入ったし」
「うん!」

元気よく返事するな!
私はまだ裸なんだ!!!!!

「ちょ、着替えるからそっち向いてて!」
「なんで?」
「は?恥ずかしいからに決まってるでしょう!」
「別に大丈夫、俺恥ずかしくない」
「だめっ!これだけは譲れない!」
「………yha」

レンが後ろを向いたのを確かめて、慌てて半そでと下着を着けた。

「いい…よ」
「うん」

二人並んで見上げる露天の空は星が一杯散らばっていた。

「凄い星」
「星?」
「あの光ってるのが星」
「水希のネックレス」
「へ?」
「あれ一杯ある」

劣化してはいけないからと、外して風呂に入ったのだが
そうだね、空の星があのネックレスみたいだ。

「レンって意外にロマンチスト」
「そう?」
「うん」

そんな他愛も無い会話を綴って1時間ほど入り、二人で風呂から上がると
ベットに潜り込んだ。

なんかぐっすり寝れそう…
そんな事を思って、レンと手を繋いだ。

二日目は、お土産を買ったり、近くの岬まで行ったりと
楽しい時間を過ごした。
今まで付き合った男たちはまず自宅ダメならホテル
そんな事を繰り返したからこんなに歪んだのかな?

今はレンを見ているのが凄く楽しかった
そしてそれは凄く心を穏やかにしてくれる。

初めての魚釣り、レンが竿なんてまどろっこしいと
手で取りに行った時は流石に驚いたが…。
釣るよりかなり効率が良かった。
回りの人間に迷惑そうに見られるのは仕方が無い。
魚の居そうな石の下で石をぶつけると、驚いた魚が失神して浮いてくる
そんな事もきっと、森で自分で身に付けたのだろう。

帰りに買ったソフトを二人で半分ずつ食べて
舌先が触れ合って笑い合う。

そんな恋人と変わらない事をしながらも
心はまだ、大きな砦を壊してはくれなかった。
最終日の夜ということも有り、出かけずにまた一緒に露天に入った。
流石に二日れんちゃんで半そでを着ると、翌日の服も無いし
諦めて下着だけを着けて入ることにした。
レンが背中を流してくれて、私がレンの背中を流して
本当に甘い一日が過ぎ去って行った。
大浴場は初日に一度入ったっきり、もう入る事は無く、
私達はそのスイートルームを後にした。

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