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悪夢再来
いい事の後には、決まって悪い事が起きるらしい…
ほんと、疲れるわ
旅行から帰ってきて、二人の交流は
深まった気がする。
私の思いとレンの思いは互いに理解しつつある。
「和香!お土産だ!」
レンとの進展は和香はきっと喜ぶだろうなぁ。
レンは、父に私は和香に
話をしに行った。
「上がってく?」
「うん、そのつもり」
和香の家は小さいアパートで、数年使わなくても良いように、最低限の生活をしている。
アパートは、1DKの8畳。
その中で、レンとの旅行に付いて話した。
「で…何あったの?」
「あぁ…キスしたかな…」
「はっ?あんたが?」
流れを話しながら、ある程度の理解した上で、彼がもう一度
キスしたいと言ってきた。
だから、受け入れたが
正直どうして良いか解らない。
まして、レンも、同じように悩みを抱えているから
二人とも、家庭や付き合うことに対して極端に恐怖心がある
カチャ…コーヒーの落ちる音が
コポコポと聞こえると同時に、鼻に届く香り。
「ねぇ、私は何でこんなになったのかな?」
「純粋だからじゃない?」
「は?なにが?」
「アンタとレンクン」
コーヒーをコップに注ぎ、和香が温かいコーヒーを差し出してくれて、
それを受け取って口の中へ流し込む。
「…レンは、すごく純粋で綺麗だよ。私みたいに汚れてない。」
「またか…自分を汚い物みたいな言い方
いい加減にやめなよ?本気で怒るけど、良い?」
私は、小さくなって謝った。
「レンクンを受け入れれてるんだったら、あんたは大丈夫。
レンクンもあんたが受入れてくれるから救われてるんでしょう?」
「解らないけど…でも、レンは私を守るのが幸せだと言ってくれた。」
「だったら、水希がレンクンを守れば良いよ。
お互い守りながら受け入れながら進めばいい。」
うんと、答えてコーヒーを口に含んだ。
父とレンは一体どんな話しをするのかなんて解らないけど
一度父とは時間を作る事をしたいと考えていた。
最近はこんな事ばかり考えて、楽しい事が全然思い付かない…
本当に恋という病魔は怖いな
和香と話をして多少すっきりした
翌日から仕事が始まり、梅木ともまた逢うだろう。
だけど、今は怖くない。
レンが、守ってくれるし
私も、レンを守るから。
家に着くとレンは、既に二階に上がったみたいで私も顔を洗うと、寝室に戻った。
翌朝は、早めに起きて朝食を作った。
白いご飯に、豆腐の味噌汁
焼き魚…
珍しく、焦げずに出来た。
幸先が良い!なんて思いながら
仕事の支度を終わらせ、レンを起こすために、未知の2階へ上がる決心をした。
「朝だぞー?レーン?」
最初の第一声では、ベットの塊はピクリとも動かない。
私は、一歩踏み出して
ギシリと床が軋むと、私は周りを見渡した。
階段をまっすぐ上がるとトイレ
左側はまるまんまフロアがあり
トイレ側に、ベットが置かれていた。
そのベットの周りを囲むように黒で統一されたラグマットと、テーブル
ベット横には、本棚があり中にはすごい数の本があった。
その奥に、大きな籐の籠があり
中にはクロ。
私の来訪にクロが気付き、クーンとヒト鳴きすると、おはよう。と
声をかけ、レンの布団へと手を伸ばし何度か揺するも起きない。
「レン!!!朝だっ!!!」
ばっ!と布団を引き剥がすと
今までに会った事のない彼と対面する事になる。
凄く眉間にシワを寄せ、苛立ったような舌打ち。
そして、睨んだ先に
わ.た.し.
「何?起こしちゃ悪かった?」
「え?あ…sorry」
「ぷっ、寝ぼけてるよ?」
「水希?」
「朝ご飯作ったから!食べない?」
「あ、ん…今行く」
私は、そのまま下へと降りて
鍋を見てビックリ!
「あうわぁー!火止めるの忘れたー煮立ってるー!!!
せっかく上手く行ったのにーっ!」
「水希!」
慌てて走ってきたレンに、悲しそうな顔を向けて煮立った…と伝え
火を止めると、しょんぼり…せっかく幸先よかったのに。
2人で食卓に座ると、いただきますと
声を揃え食べる。
「水希、起こすありがとう」
「うん行く前に、レンとご飯食べようと思って」
綺麗に食べ切ると、レンはご馳走様と声に出し私の食器まで下げてくれた。
「俺洗う」
と、スポンジを持ったレンに、ありがとうと伝えると
私は、コーヒーを落とす。
「ん、」
皿を洗い終わったレンへコーヒーを渡すと私も飲み込み家を出た。
大学へ着くと、白衣を着込みバナナを一房ロッカーに仕舞うと
研究室へ向かう
「水希さん、お久しぶり」
「おはよう平賀」
「かなり有りますよ?」
うん、わかってるっつーの。
流石にあれだけ休んだからな…
PCの前で座った途端に立ち上げてペラペラとページを捲りながら頭に入れていく。
「平賀!お前字が汚い!」
「あー、スイマセン」
「少し丁寧に書け!」
へーへーと、軽口で返す平賀に
ペンを投げた。
「いったあっ!」
「土産だから拾って使いな」
「了解!」
資料の多さに追いかけられているうちに
あっと言う間に昼になった。
「水希先生!レン帰ってきた?」
「出掛けてたと何故知ってる?」
「えー自宅に行きましたから♪」
「レンは、私と旅行に行ってたから、私が居るならレンも、帰ってるだろう?
それに、レンと、連絡を取ってるなら私に聞かなくても解るんじゃないのか?
いい加減絡まれるのは疲れるんだ。」
「えーっ?なに、その突き放し感。
レン取られてイライラぶつけられても困るー!」
「取られたなんて誰が言った?平賀か?それとも教授か?」
「え?」
「確かめてやるよ?言ったこともない事広められても困るからな。
平賀ーっ!ちょっと出てこい!」
その言葉に梅木は確実に慌てているのが解った。
「はっ!あんた何考えてるのっ!
人に聞かなきゃ自分の言った事さえ判んねーのかよ!」
「梅木、あんたじゃないだろう?
私は、先生だ梅木と対等だと勘違いするな」
「はあぁっ?ばっかみたい!行こう!皆」
相変わらず男が数人付いて来ていて、そいつら共々帰って行った。
部屋から首をヒョッコリ出した平賀が、クックックと笑っていたので
手に持っていたノートで頭を小突いてやった。
「随分言い返すようになりましたね?」
「あ?まぁ、レンにソの気が無いのに付き纏われてもウザイからな」
「ふーん」
そして、午後の時間が始まりそれまで
感じなかった視線を急に感じるようになった。
「平賀?」
椅子をクルリと回して辺りを見るが、結局は誰も居なくて
私は、再び机に向かう
「水希」
名前を呼ばれて、振り返る。
けれど、人は居なくて寒気が走る。
この前の二の舞は嫌だ。
私は、バナナを諦め机に向かった。
ロッカーと違い、この部屋には監視カメラがある。
と言うか、動物の監視用だから
声までは拾わないが…
だから、私は、動かない事を決めた。
気持ちが悪い。
背筋に感じる視線がねっとり絡んでくる気がして
苛立つ。
身体を隅々まで見られているような
気持ち悪い感覚に、何度か振り返るがやはり
何も居ないし何も見えない…
もしかして、あれか?あの類か?…幽霊
そんな事を考えたら、一段と寒気が強くなった。
「うへーヤダヤダ気持ち悪い!」
今日は図書当番で午後から平賀が図書館の
貸し出し担当をしている為一人でこの場所に居るのだが…
正直耐えられないかもしれない。
机の左側においてある電話を取って
平賀に電話をしてみる事にした。
「はい、図書室」
「平賀か?」
「先生?」
「休憩は?終わりは何時だ?」
「何ですか~?旦那が居るのに他の
男の事を気にしちゃまずいでしょう~」
「……お前は。アホか!私がお前なんぞ気に止める訳ないだろうが」
「ハイハイ…で本当の用件は?」
「…いや、すまんなんでもない」
平賀と話したお陰で手の震えが止まっていた。
気にしすぎかもしれないと思ったら、平賀を呼ぶのをためらった。
さっきより視線が、無くなった訳ではないが
憎悪のあるような視線ではなくなった気がする…
ともあれ、全て気のせいかも知れないし
私は、入力作業を始めた。
何かに集中して居たかったから。
(やっぱり視線感じる)
と、神経が張り詰めている時だった
ポンと、肩を叩かれて、背筋に悪寒が走る
「ヒッ!」
「何だよその声」
「っ…野村」
「また凄い噂聞き付けたから、確認取りに来たぞ」
「噂なんだからいちいち私に確認取らなくてもいいだろう」
「今回は、なかり生徒が知っているからな…
ウチの教授が確認とってこいと、俺が来た訳だ。」
「教授にまで迷惑を掛けるようになったか…今日はっきり言ったのだけどな」
「何を」
「レンの事だ」
「ねぇ、そのレンって男さ…本当に二股かけてないの?」
「ありえない」
「でも裏で何かやってる可能性は?」
「ない」
「何で言い切れるの?」
「信じてるから…で?お前の聞いた噂を話せ」
「あぁ…」
ギシッと平賀の椅子に腰を掛けると、ずっと続く噂と
それに輪を掛けた今日の噂の話が野村の口から聞かされる。
レンと私は、親の関係で無理やり結婚させられた。
レンは反対していたが、結局は父の圧力に勝てず
好きでもない、私と一緒に住む事となった。
そんな時に梅木に出会い、彼女と本当の恋に落ちてしまい
私が疎ましくて仕方がない。
けれど、離婚を望んでもしてくれず、私がレンを縛っていると言う事らしい。
そして今回の噂は
梅木とレンが二人で旅行計画を立てた。
その日にちにぶつけて、私が旅行をかぶせてきた。
梅木の方へ行こうとしたレンを、離婚してあげるからと
最後の旅行だからと泣きつき渋々了承した…と言う事だった
そんな旅行だったら、きっと
あんなに甘く優しい旅行は出来ていなかっただろうなと
苦笑いさえ生まれるような内容。
「で、どこまでが本当だ?」
「私とレンは離婚をすると言う話は一切していない。
梅木とレンが付き合っている可能性もかなり低い
まぁ、よっぽどレンが女好きだったなら話は違うだろうが
私はそんな認識はしていない。
旅行は父の貰った物をレンにやったらしく、レンは私を誘った。
梅木でも誘えば真実味が増すんだろうが…残念ながら
貰ってすぐに私に言って来ているからそれは無いだろうな。
ここまでが真実」
腕を組み、椅子の背もたれに大いに背を預けてふぅ~んと
返事を返す野村。
でもおかしくは無いか?
教授が校内の噂を気にして一人で聞きに来るなら解るが
なぜ、野村が動いているのかって所だ。
嫌な感じが拭えず、沈黙が続くと流石にこっちもイライラとしてくる。
「全部話した、私は作業に戻るぞ」
パソコンに視線を向けた途端…野村が椅子を倒して立ち上がった。
それに驚いて野村の居た方を見ると倒れた椅子だけが視界に入り
からからと、椅子のキャスターが廻っていた。
そして背後から強く…抱きしめられていた。
「水希、好きだ」
は?何ナノこの急展開?
てか、抱き締められるの気持ち悪いんですけど!!
「ちょ、野村離せ!」
「好き…水希が好きなんだ」
「解ったから、少し話しんんっ!!!」
強引に上を向かされて唇を重ねられた。
レンとの思いが一気に引き裂かれたようで、
嫌で嫌で…強く胸を押し返してもビクともしない野村を
何度も何度も押し返すのに、その度に
舌先が唇を何度も這う。
イヤダイヤダイヤダ!!!レン!!!!
口内に侵入してこようとする舌先を強く噛むと野村は
私の身体から一瞬離れ、その隙に突き飛ばすと
私は自分の口に付いた野村の血液を拭った。
きっと、結構な深手だろう…。
何でこんな男に奪われなくちゃ成らないんだ!
レンを裏切る気なんてないのにっ!
「野村…私はレンの妻だ、お前に心を許す気もなければ
お前を好きになることもない!帰れ!帰ってよっ!」
ドンと、野村をもう一度突き飛ばそうとした時
パン!と、頬に衝撃が走った。
キョトンと言う言葉がぴったりだろうな
驚いていると、再び野村が私の腰を引いた
口の中に、何かを入れると、
奥歯でガリッと噛む音が聞こえたと思ったら
私の手を制しながら顔を寄せてくる。
「やっ」
「水希…レンと別れろ」
「っ、お前には関係ない、どけ!」
「キスするよ?」
「さっきしたじゃないか!もう、嫌だ気持ち悪い!吐き気がす…んっむ…」
血の味がする…
気持ち悪い…
角度を変える野村の口付けは、深く深く舌先を口内に押し込み
逃げるように手で叩くのに、微動だにしなくて
変に甘い香りが口の中に広がった。
「もう吐き気はしないだろう?」
「っふ…ううっ…」
涙が止まらない身体が熱い…
「それ、結構効くらしいよ?インドのスパイス」
「インド…」
最近学校内で流行っていた、快楽の薬。
数人が試したと言っていたが、まさかそれをコイツが持っているとは。
「生徒から没収したからな、本物だって言ってたし
俺も、結構効いてる…水希、しよう?」
「いや…だ」
「ねぇ、我慢できないでしょう?」
「離せ、私は…こんな事でレンを裏切りたくは無い」
「このタイミングを狙ってたんだよ、平賀が図書の時お前一人だからな
もう一人助手付けて置けばこんな事無かったのに・・・クスクスクス
水希…君に拒否権は無い」
舌先がもう一度唇の上を這うと、嫌悪感で身体に寒気を呼び起こすのに
すぐに熱に変わり、腰の辺りがゾワゾワとする。
まずい…
逃げなくちゃいけない
そう思っても…身体は野村に拘束されて
白衣とブラウスが一気に引き裂かれて我に返った。
露になる、私の首筋と白い布に隠された胸
それをじっくりと舐めるように見る野村が
心底気持ち悪かった。
「俺に落ちない女は居ないんだよ」
片手で私の両手を羽交い絞めにして、
片手でブラウスの中に手を入れようとした時だった
「水希先生っ!」
あっと言う間に野村の身体は突き飛ばされ
平賀が私の前に立ってくれて、ホッと胸を撫で下ろす。
こんなことで負けない、やられた訳でもないのに
こんな所で弱くなんてなれる訳が無い!
「電話の様子が変で見に来て良かった…」
「平賀助かった…」
「んっとに、先生はトラブル女ですね」
「何だそのトラブル女って!」
「はいはい、後でレンさん呼んであげますから待っててくださいね」
「っ…ばっ、バカかお前は…」
「ツンデレ結構ですけど、その前にコイツ…どうします?」
本気でコイツバカにしてやがる…くっそー
っと、そうだ、野村の話だ…
「野村、好きだって言うのはありがたいが
私はレンの妻だ、結婚している女に横恋慕なんて
お前が苦しいだけだろう。」
「…水希、お前がこの仕事についてからずっと好きだったんだよ
俺の方が早かったんだ!あんな男に負けるなんて」
「悪いが、レンは私が18の時に結婚している。
お前よりレンの方が私を見つけるのは早かったよ」
「っ…だったらなんで今まで黙って!」
「言う必要に迫られなかったからだ」
白衣の胸元を手で抑え、やっと立ち上がった私は
野村の前へと足を進めた。
「だけど、こう言う手段で手に入れようと思うお前は間違えてるだろう?
落ちなかった女が居ないんじゃなく、恐怖でお前と付き合ってた…
だから長続きしない…違うか?」
「俺は水希を諦めないぞ!」
「いいよ、何度も断ってやるから」
「っ…どうしてそうやって受け入れるんだよ」
「受け入れてなど居ないだろう?梅木もそうだが、お前たちは思い込んでいるだけだ
受け入れると、お前達の気持ちを認めるのは違う。
私は何度でもお前に断る事は出来る、何度だって何度だって断ってやるよ。
ただ、好きだと思う心まですぐに消せるものでもないのも私は知っているからな」
私は溜息を付きながら、自分の席に腰を掛けると
机の下のカバンに手を伸ばし、荷物を取ると中に私物を押し込んだ
「訳わかんねぇよ…」
「判られたいとは思わないから別にいいさ」
「どうすればいいんだよ」
「自分で決めればいいんじゃないか?人に害をなさないように
自分で自分の気持ちに決着を付けるしかないだろう」
私は、携帯を出して電話を掛ける
レンに…
「話は終わってないだろう」
「私はもう話すことが無い」
3度ほどの呼び出し音の後にレンが出ると
迎に来てくれないかと、伝えた
すぐに、了解が貰えたので、上着を一枚頼む。
「水希着替えどこ?」
「寝室のクローゼットの中に掛かってるのなら何でもいい」
レンは何も聞かず了承すると、今から迎に出ると言ってくれたので
電話を切った。
「ねぇ、水希先生…コイツの事このまま野放しで良いの?」
その言葉に、ニッコリと微笑んだ
二度は無いと…思えよと笑顔で野村に伝え、私は
平賀に連れられて、ロッカールームでレンを待った。
裂かれた服や、薬が抜けていない体
このままではまともに歩く事もちょっとキツイ。
歩く振動さえ、変な感覚が沸きあがってくるのだ。
「それにしても、野村先生とは…」
「ん?何が」
「この学校内に水希先生を好きだと思ってるのが居るって
噂は聞いてたんだけどね…」
「どんな噂だよ…全く…」
「だよな、俺の事かと思ったけどね」
「は?」
「んまぁ、俺水希先生にかなり過保護だし?
それに家族的な感覚ってはたから見れば好きな人に見えなくも無い
とか思ってね」
「過保護って…お前アホか?」
「…まぁ、そうとも言うか」
なんて会話の最中に、レンが息を切らしてロッカールームの戸を開いた
「水希!っ…」
ギロリとレンは平賀を睨む
「待って待って!俺じゃないって」
両の手を前に出し、目の前で振る姿に一歩詰め寄った所で
私は彼の勘違いをとこうと声を上げた
「レン違うから」
「…水希、口…血」
「え?あ…どこ?」
ペロッ…と、舐めて拭われて、
驚いた私は口を隠し真っ赤に染まる
トマトになってるに違いない…とても完熟なトマトだ…
ナイフを入れたら、中からドロッと汁が出るんではないか?
うわぁ、平賀が赤くなってる!
ってか、見られた!!!!うわぁぁあああ恥ずかしいわ!
この外人め!周りを気にするとか無い訳!?
いやいや、そうじゃない…そうじゃないんだ
レンの手の中で丸くなっているものが目に入ると溜息が落ちる。
「水希、着替える」
うん、何となく…判ってはいた
君に頼んだらこうなるかなと、想像も出来た…
片手に確り握られたブラウス…しわだらけ。
「レン、袋に入れてくるとか出来なかった?」
「そう、袋ないから持った!」
「いやいや、そこは探そうよ…」
「ごめん…」
レンから、服を受け取ると着替えるので二人に出てもらい
平賀があらすじを話して置くと言うので頼んだ。
ボタンを掛け間違えて、改めて自分が怖かったんだと
気が付いた…手が凄く震えだして、ボタンが掛けられない…
指先が氷のように冷たくて、時間が掛かっていると
ガン!と、凄い音が響いた。
私は、慌てて下のボタンを掛けないまま研究室へと戻ると
レンの拳から血が滴っている
「レン!何やってるの!もう大丈夫だから」
「水希…」
私に抱きついてきたレンが、何度も頭を撫でる。
「俺、守れてない…」
そんな言葉を言わせるために呼んだんじゃない
「違うよ、ここは学校だ、レンは入ることもあまり無い
ここで起こる事は自己防衛が必要なんだ」
「違う!水希守れてない!」
「守ってくれてる!レン、全てを護ろうなどと思わなくて良い…
心を、私の心を護ってくれるのはレン、お前しか居ないんだ」
コホン…
んっ…んんっ…ゴホゴホゴホ
あからさまだな平賀…。
私はレンをそっと押して抱き付いていた場所からくるりと
体勢を変えて、カバンに荷物を詰める。
野村の姿はここには無かったのに心底ホッとした。
けれど
「ここに居た男名前なに?」
「は?どうした」
「小屋の匂いと一緒…」
やっぱり、あれは…野村が犯人か?
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