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なつめっぐ 保管場所

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狼と私2章⑨

どんな事にだって、自分を先立たせれば
きっと…いつか壊れるもの。
例え一度成功しても、次は成功するかもわからない・・・
人を思い、相手を思い、生きていける勇気を下さい。


※シリアス継続中!

【池上探偵事務所】
と書かれたさびた看板がぶら下がる地下に伸びた階段を降りると
押すだけでギギギ…と音を立てるようなドア
そこを抜けると、小さな机と応接セットが置かれているだけの小さな事務所。

大体は作業をする為に、この部屋には手伝いの女性が一人居るだけなのだが
今日に限っては仕事が上がったばかりで時間を持て余した仁も
事務所に居た。
鳴り響く電話に出ると国際電話だと言われ
心当たりのさなに頭を捻る。

「池上ですが…」

依頼が舞い込んできた。
しかも、イギリスのかなり有名な所のお嬢様だろう。

依頼の内容は
桑本水希を調べろとのこと。
そして、物騒な誘拐に近い依頼も言い渡されたが
それは受けれないと丁重に断った。

彼女を調べる…それだけで日本円にして100万と言う
大きな仕事に、仁が溜息を落とした。

「どーしたん?先生が浮かない顔で仕事請けるなんて」

掃除をしていた手伝いが不思議そうに見てくるので
仁は報酬の大きさと前金で50万入れてくれる旨を伝えると
彼女は大喜びで仁に飛びついた。

「いつも、安い仕事しかしないくせにねぇ」

なんて相変わらずバカにされるが、別に金がそんなに入らなくても
困る事は無かった。

ともあれ、桑本水希の素性を調べる事から始めようと思い
身体を起こして、まずは住所の検索から始める事にした。

池上は、あっと言う間に住所を調べ上げると
その家へ足を向ける。
近隣の家等で調査をしなければならない。

あの、お嬢様の言葉と
本来のターゲットが同一の人間かを見極めなければ成らないのだ

桑本水希に関することで、そのお嬢様より聞いた話では
かなりの性悪女だと言う。

イギリス人と一緒に住んでいたが、いい男が出来た。
その男はアメリカ人で、家に住まわせ3人で生活していた。
それに耐えられなくなったイギリス人が、国へと帰り
アメリカ人もそんな桑本水希を見限って出て行くと
今度は、帰ってしまったイギリス人に連絡を取り、寄りを戻そうとしているが
イギリス人には婚約者が居て、それを拒否すると
桑本水希が、それを許さずしつこいのだと言う
金を送って解決しようとしたが、送り返して来てこんなはした金は
受け取れないと言うのが大体の筋書きだった…。

「国際的な、結婚詐欺か?」

と、一言呟いた池上は深い溜息を吐いた。
池上は、水希の事を調べようと動く…。

同じような建物が二棟建っていて、
一つは桑本源蔵と言う名前が記された表札だった

そこから調べる事一週間。
水希の現在の住んでいる家も掴んだ。
そして調べていくと、どうもその女の言う事と辻褄が会わないことが出てくる。
確かに、どこかの国人間と思われる2人がこの家に入ったのを
目撃している人も居たが、実際最初に住んでいた男とは
入籍までしている。

こう言う辻褄の合わない事はとことん突き止めたくなる性質の仁は
ニヤリと目の奥を輝かせた。
「おーっす!」

キュッキュと、体育館の中をスキール音が響く。
時折ダムダムと、ボールが床に叩き付けられる音と
それを守る人たち。

「あーっ!水希先生またバナナ食べてる!」
「むぐっ…まだ練習始まってないもん!」
「もん!って、あんたガキか…」

男子生徒に飽きられらながら…バナナを食い終わり
私はスクッと立ち上がる。

男子と女子の体力差はあるものの、時折混合で試合をしたり
女子7人に対して男子レギュラーの5名とかで、体力差をカバーしながら練習

なんて事をしながら、既に一ヶ月が過ぎた。
まだまだ覚える事もやる事も沢山あるが
それはそれで、思考を巡らせる分レンの事を考えないで済む。

毎日帰宅は9時過ぎ。
家に帰れば汗だくで、風呂にすぐはいらないと気持ち悪い。
クロと自宅へ戻ると、餌を入れてあげてから風呂に入る。
出てくるとご飯。
これが毎日の私…

今日も、ネットでどこが強いかとか、どんなプレイが良いのかとか
沢山調べて寝るだけなのだが、今日はなんだかレンが気になって仕方がなかった。
いつもなら、すぐに吹き飛ぶのに。

「クロ?レンは今何してるのかな…?」
「くぅん…」

と、首をかしげるクロに抱き付いてレンが幸せにと願った。

水希は朝起きると、家を出て実家へと向かう。
後ろから男が付いて来ているのは、最近知った。
クロが過剰反応するから。

でも、何か悪さをするわけでもなさそうで良く解らない。

ストーカーと言う訳でもなさそうだった。
そうではないのかもしれない…でも、気付いてから10日ほど。
何か変わった事が有るわけでもないし
友達の和香に相談したら、最初は気にしていたが
流石に5日を過ぎる頃には”ほっとく”と言う結論に達した。

クロを預け大学へ、そして帰りも同じように実家によって
クロを連れて帰宅する。

一連の流れはそれだけだったが、流石に15日過ぎると
相手も姿を何度も見せるようになり
私の方が痺れを切らした。

「クロ、いけっ!」

手綱を離すと、男の腕へと飛び掛り、かじりはしないものの
顔をペロペロと舐めだした。

「うわぁっ!」

眼鏡がずれて、なんとも情けない姿にぷっと吹き出した。

「ちょ、笑ってないでやめさせてよ」
「もう、ストーキングしないならやめさせても良いけど?」
「うわっ、こら、口を舐めるな~~~~!」
「どうします?」
「やめるから…早くどかして!俺犬嫌いなんだ」

と言うわけで…どけてあげた。
パンパンとズボンの埃を払い、男はペコリと頭を下げた。
「私、探偵事務所の者です」

と、差し出された名刺には池上仁と書かれていた。

「はぁ…探偵ですか…」

「はい。」

不信な目はとりあえず、そう言う人間であればストーカーではないのだと
理解はするものの、その探偵が何の用で私を付回すのかが解らなかった。

探偵事務所の池上さんは、とある人物に依頼されて
私を監視と言うか、調べていたらしいのだが
どうやら、依頼内容と全然違う私の行動に興味が湧いたらしく
解るように付けていた…という。

自分から声を掛けると言うのは、一応仕事として
成り立たないので気付いて貰えるのを待っていたと言う。

まどろっこしい仕事だ…。

「で?」
「え?あ、そうですね…2・3お聞きしたくて」
「どうぞ」

公園で腰を掛けて、深夜に探偵と密会?
本当に、最近の私は何事もなく過ごせていたのに…
厄介そうな人物の出現に深い溜息を吐いた。

「一緒に住んでいた外人さんはどうしました?」
「ぶっ…核心つきますね」
「すいません、遠まわしも面倒なんで」
「レンは、国に帰ったと言うか、戻った?ってのが正解かな」
「そうですか、レンとおっしゃるんですね?」
「あーう、うん、レンでいいと思う」
「随分適当ですね?」
「結婚していた時はレンだったからな」
「ふむ、そうですね…」

この男は私の何を調べたいのだろう?

探偵は、どうやら私が想像した女の像とは全く違う
というのに興味を持ち、依頼者の嘘はどこまでなのかと言うのを
知る為に私に接触したらしい。

レンは帰った…と言うには、元々の地元の記憶が無いのに
そう言う言葉の使いまわしはおかしいだろうと思ったから。
けれど…帰ったという所が…私の家でない場所だったのが嫌だったから
そう言う否定をしてのだと、自宅に帰ってから気が付く事になるが
それはまだ後の話。

「レンさんは、イギリスのどこに居るんですか?」
「…探偵業務ってそう言うの調べるのに居るんじゃないの?」
「あ~そうですけどね、遠い国までは…ねぇ?」

なにが、ねぇだ!知るかそんなもん!
私だってレンの居場所は知らない…手紙も来ない
電話もメールも来ない…そんな中半年も過ごしてるんだ
私から聞きだそうとすること自体おかしいだろう?

「知りませんね」
「え?元夫ですよね?」

まぁ、ずけずけと…人の傷口に塩塗りやがる。

「そうですね、元!夫ですけど、知りません
籍だって勝手に抜かれてるし」
「は?同意じゃないんですか?」
「離婚届は、まだ家にあるよ…レンの名前の入ってないヤツが」
「え?それって…?どういう事?」
「それも…貴方が調べるんじゃないの?」
「…複雑過ぎやしませんか?」
「そうだな、レンに付いて知りたければ…」

言って良いのか?
でも、この人と連絡を取れば…レンの状況が知る事出来るかもしれない
遠くからでも、レンの状況は…知りたい。

「条件付きで、教えます」
なんか久しぶりにドキドキする…。
レンの事が知れるかもしれない…たったそれだけなのに
心が、レンに逢えるかのように、ドキドキを止めない。
彼の答え次第では…私は、この先レンを知り続ける事が出来るかもしれない…
ほら、早く言って?
そんな考え込まないで?
ほら、早く…

「飲みましょう」

やった~!これで、レンの事が少しでもわかれば…
ドキドキしながら、私は条件を伝える。

「私は、レンとは別れてはいるが…その、なんだ…まだ思いはあるんだ…
でも、レンは結婚して幸せに暮らしているかもしれない、その邪魔はするつもりは無い
ただ…少しでもレンの情報が欲しいんだ…」

「……それって、まだ好きって事?」
「思いは…ある」
「へぇ…レンさんを調べて出てきた事を貴女に伝えれば
俺は彼のことを聞けるって事か…」

手を顎に当てフムフムと考える探偵さんに私は答える。

「いや、今教える…情報の交換条件ではない
だから、探偵さんが私に伝える気が無くて解らないと言うのであれば
強制はしない…ただ、知りたいだけなんだ…」

「俺が教えなければ、水希さんの教え損って事を解ってて言うと言う事ですかね?」

私は首を縦に振った。
どこからも入ってこないレンの情報。
だからと言って自分の目で確かめるほどまだ気持ちは冷めていない。

「レンについて知りたければ”ライアン・カーレリンス”について調べるといい」
「…あのバスケット選手の?」
「知ってるのか?」
「まぁ…あ~、って事は失踪した息子ってのがレンって人になる感じですかね?」
「…想像に任せます。後は調べて下さい私はこれ以上は話しません」
「ええ、ありがとう…助かりました…」

(名前を聞いた時に、お嬢様が言い淀んだのが解る気がしますね)

糸口が見えて、池上は口角を上げた。
これは調べがいがある。
とりあえず、ターゲットに見付かったと接触した事だけは
報告する事にして、池上はライアンについての昔の記事を
引っ張り出し、翌日には関係者だった当時のメイドのナタリーの
自宅へと向かう手はずを取った。

池上は、大きく溜息を吐いて日本の地を踏んだ。
大体の彼らの流れをつかめたのだ。

ノアに話を全て聞いた。
レンは水希を愛している、そして水希もレンを思いながら
今は王族と言う事から引き離されていると言う悲惨な現状。

唯一自分が関わっている女、彼女の正体を掴むために
イギリスの国へ足を向けようと思った。
水希を連れて行けないだろうか?
動くのは一人で動いた方が良いが、彼女は既に半年も彼に会えていない
状況になる。

そしてそれをお互いに受け入れているのだろうか?

無理に引き離された二人…

「まるでロミオとジュリエットか…」

なんて、シェイクスピアが浮かぶ辺り、俺って紳士!何て思う。

日本に帰り、桑本水希に逢う事を決めた。
そしてその前に、報告は自分でしたいと相手に伝え
イギリスでのアポを取る事が叶った。

ただし、相手はお嬢様ではなく執事らしいが。

「桑本水希に関する結果報告書」
と言う物を作り、調べた全てを書き込むと
プリントアウトしてからデータをフロッピーに落とした。

「王族が絡むとはな…」

と、仁が溜息を吐き水希に連絡をする事にした。




コンコン…
「はい?」
「あ、すいません池上ですけど」
「は?池上…あ、適当探偵!?」

この女は…適当探偵とは酷い言われようだ。

「ええ、適当探偵です」
「今日は出れません」
「そうですか、ではここで、桑本レンに付いて話します」
「ちょ、家の前でやめて!」
「ジャー開けてくれます?」

シーンとしてから鍵の開く音が聞こえた

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