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狼と私2章⑧

Light and darkness

目が覚めた先は、私の新しい家。
賃貸だが、私だけの空間。

2LDKの部屋にシングルベットを入れ、一つはレンの荷物を押し込んだだけの部屋
彼の私物を捨てる事が出来なかった。

貴方を忘れる事は出来ないから
その思いを受け入れていく…。


【 Light 】

「クロ、おはよう」

頭をポンと撫でると、クゥンと鼻を鳴らすクロ。
水を入れ、餌を入れ、食べ終わる頃に化粧が終わる。
クロを連れて私は家を出ると、実家へクロを預けに行く。

通る道なので、全然苦にはならなかったが
母が、クロの散歩は行けないと良く嘆いている事が多い。

力が強くて引きずられるそうだ…
流石、箸より重いものを持たない人。

バスケをするため帰宅は6時頃だったのが
8時頃に変わってしまうが、それはもう母も父も何も言わなかった
時折疲れすぎて実家で寝てしまう事もあるが
大体が一人の生活。

私なりに、楽しかった。
今日もこれからバスケ部に顔を出し、顧問らしい事を一つ任された
練習試合の申し込み。

もうすぐ大学の大会があるのだ。
その前の練習試合のため、男女共に探すのは骨が折れたが
深夜まで自宅でその対戦相手のビデオを見たり
自分のチームの悪い所を見つけたりするのは
なんだか、時間をもてあます暇が無くてよかったと思う。

「あーこれダメだ…」

なんてブツブツ言う私の横には必ずクロが居て
急に寂しい病に襲われると、クロが暖めてくれていた。

今はそれでいい。

今をどうにか過ごせれば、絶対にレンの幸せにたどり着ける。たとえ彼と共に生きられなくても
それでも…レンの思いは私の中にある。

だから、幸せになってくれなくちゃ
私が怒るわよ?

【 darkness 】

俺はどこに居る?
あぁ…ここは、温もりのない森の中だ…いや、森の中でも温もりはあった。
今は?


「カイル様!」

「……アルか」

「うなされていましたので…」

起きなければ、あの闇の中でゆっくり眠れたかもしれないのに…。

「今度は起こさなくて良い」

「はい」

汗が酷くて、風呂へと向かうと
いつものように、メリッサが側に駆け寄ってきてキスをする。
もう、逃げるのも面倒だ…だが、彼女のキスを受けるつもりは毛頭無い。
俺は、まるで何も居ないように足を進めると

「もぉ~」

と鼻から抜ける声を掛けながら付いてくる。
目の前で裸になれば目でも隠すだろうか?
どうせ風呂に入るんだ、別に居ないのと同じ事…。

脱ぎ捨てたローブと下着を見ても、何も言わないメリッサに苛立ちが向かう。
けれど、そんな感情を表に出せるほど俺は出来た人間ではない

きっと…水希なら文句を言いながら赤くなるんだろうな

そんな事を思う。
間違った道に足を踏み入れ、水希の為にした事が
結局水希を傷つけた。

愛しているからこそ…側に居たかった
愛しているからこそ、結婚をやり直したかった…
だから式場を選んで、金も式と、新婚旅行くらいは出せるほど貯めた。
俺はどこで間違えたんだ…?

何故俺はこんな場所に居るんだ?

どうして…生きてるんだ?


【 Light 】

「おはよう!クロ」

私は朝練の為に、ジャージを着込むと服を持ちバナナをカバンに入れると
クロと家を出る。
最近は、そう言う日課。

レンの事は忘れられないし何度も夢に出てくる。
日本語がすさまじく下手なレンを思い出すと
なんだか笑顔になる。

”元気にしていますか?

私とクロは今日も元気です”

たったそれだけを毎日空に向かって呟く。
レンの幸せを祈るように

私は一歩を踏み出していく。

「練習試合きまったよ~?」
「うっへーどこ?」
「え~?猿って言わないなら教えるけど?」
「だって水希先生猿じゃん!?バナナ食わなくなったら呼ばないよ!」
「あーそりゃ~無理だわ」

なんて会話が、今は楽しい。

毎日バスケットの子達が色々と面白い事を言ったり
怒ったり泣いたり…色とりどりの表情を見せてくれる。

レンも同じように楽しく過ごせてれば良い…

「結婚…しちゃったのかな?」
「え?結婚するの?」
「え?」
「いや、今…」

心の呟きがどうやら漏れたようで、苦笑いしながら
友達がだ…と答えると、デスヨネーなんて返してくる子憎たらしいけど
憎めない子達。

アルの書いた手紙だと言ってたが…婚約者の話は本当だろう。
レンが王族に戻った事は、私も知っている。

だから、求めてはいけないんだ…

あの温もりも優しさも、愛情も。
【 darkness 】

「カイル様朝でございます」
「あぁ…」

その名を聞くだけで寒気がする。
もう、レンには戻れないのだろうか?

前にジョイに託した手紙を、届けたと言っていたが
本当に届いたのか?

俺はどうすれば良い?また手紙を書くのか?

「ジョイは今日来るのか?」
「はい…昼には来ると連絡が入りました」

今日は…少しだけ心がゆったり出来るだろうか?

そんな心だったが、結局は深い闇に飲まれていく事になった。

ジョイから聞いた手紙の話。
わざわざ自分の住所を記載して出してくれたものは
返事を待ってもきていないと言うこと。

それが何を意味するかなんて…

「俺は捨てられたのか…」
「違うかもしれない、でも…解らない」
「俺は、また…もう、ダメだ…解らない」
「おい、レン?」
「俺はレンでいいのか?その名を使う
権利はもう…無いんじゃないのか?」
「ちょ、良く解らないんだけど?」

そうだろう、ジョイは俺の過去を知らない。
何も知らないんだ…
きっと、誰も俺を知らない。

水希…俺を捨てるのか?

俺は…もう…生きてなど居ても仕方がないのかもしれない。
それでも、偽の母も愛し続けた…そして水希も、愛し続けるんだろう
俺は…なんだ?

「カイル様今日こそ、結婚式の打ち合わせを」

未だに、結婚をさせられそうになっている俺は
これを受け入れれば自由になれるのか?

「断る」
「カイル様っ!」
「アル、お前俺を殺せるか?」
「なっ…」
「俺の自由は…どこだ?」
「カイル様?」
「下らないな、俺なんか自由も無ければ愛情さえ欲しい人から貰えない
ただの人形だってのに…もう、死んでると変わらないか…」

「貴方は王族です、それは受け入れなければ成りません」

「じゃー勝手に入籍すれば良い、けれどあの女を
俺の家には二度と入れるな。それが条件だ」

その言葉にアルは目を大きく開いた。

「一度本気の恋をしてしまうと、周りが見えなくなるんですね」

「そうじゃない、周りなんてどうでも良いんだ…
もう、俺は生きることすら苦痛でしかない」

俺はそう告げると、アルは何も言わず出て行った。
水希、笑って生きているか?
もう、違う男は出来たのか?

既に半年と言う月日を過ごし、俺は…何をしているんだろうか

帰りたいのに、帰る場所は無い。

狼の群れに突き放された時、源蔵が言った言葉を思い出す。

突き放した愛情を解れと…
そんな、愛ばかり貰う俺は幸せなのか?


アルは、部屋を出ると深い溜息をはきメリッサにその事を報告した。
今はまだ結婚は無理だと。
だがメリッサも焦っているのは確かで、その言葉に憤怒していた。

アルはアルなりに考えてレンを縛った。
レンの父と母を亡くしたのは自分のせいだと…。
自由に二人を生きさせてやりたくて、王族から極力離れるように
手伝って来た。
そして、その結果二人とも命を亡くしてしまった。

それは全てにおいて、偶然が重なっただけなのだが
自分の責任だと思い込んでいたのだ。

桑本水希を徹底的に調べろ。

と、達しが出たのはアルと話したすぐ後だった。
レンを手に入れれば王族の順位が上がる
そして、レンも手に入れれる。

彼は異色の珍しさが有り、この世界ではかなり有名になっていた。
女達が群がっても、手を出すことも無く
そして逆に笑いかける事も無い。

そんな男が自分に笑いかければ、どうだろう?
優位に立てる。

王族の女達は野心家が多いから
下級貴族の人間は皆レンに取り入ろうとしている。
そんなのは、周りを見ていればすぐにわかる。

その思いが向いているのは、今は桑本水希である事が
憎たらしくて仕方がなかった。

「一般庶民なんぞ、この手で一捻りしてあげるわ!」

と、メリッサが動いた。

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