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なつめっぐ 保管場所

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狼と私2章⑰

苦しい日々に少しずつ
優しい光が差してくる。

沢山の思い出と沢山の苦しみ
そんなの、何処にだってあるし

誰だって抱えてる

それを丸ごと愛せるんだって…
思える相手は本物だと思う


突然鳴り響いた電話に、和香が出る
「ワカ?」
「レ…レンクン?」
「日本今何時?」
「え?あ…夜中の3時だけど」
「あ・・・ごめん、だから水希出なかったのか…」
「え?」
「俺明日日本帰れる、14時に到着するから
それを言いたかった、遅いのにゴメン」

その声に和香が探偵に視線を送った。
「え?なに・・・?」
「レンクン帰ってくるって」
「ちょっと、電話変わって!」

池上が慌ててその電話を受け取ると
手短に話を切り出した。

「旦那さん?」
「え?」
「前に…イギリスで逢った池上です」
「あ…池上?なぜワカと?」
「帰って来たら話します…空港まで私が迎に行きますから」
「ok 待ってる」
「電話番号、和香さんから聞いておいて良いですか?」
「ok」

そして切られた電話に驚きを隠せない…

「タイミングが良いのか…?」
「ど、どうなのかな?」
「言った方が良いのかな?」
「水希…強がるからなぁ…どうしたらいいかな?」
「…和香さん、明日水希さんと一緒に居れますか?」
「うん、大丈夫…会社は休む」
「じゃー旦那さんの反応を見て逢わせるか…決めましょう
受け入れれないなんて目の前で言われたら…」

と、水希の顔を見やると、疲弊しきった顔
眠っているのに眉間に寄った皺に胸が苦しくなる。

「レンクンに限ってそれは無いよ…いくら性格が変わったって言っても
水希に惚れ抜いてるのは、レンクンなんだし…」
「そうだったね…」

薄く微笑んで、今日は和香もこの家に泊まる事にし
探偵は奥の部屋で眠りに付いた。
「ん…っ…」
目覚めると、知らない空間で慌てて身体を抱きしめキョロキョロと辺りを見回し
はたと気が付いた。

「そっか…池上さんの家だ」
「おはよぉ…水希」
「え?和香!?」
ソファーの下で横になっていた和香が起き上がって声を掛けてきて
驚いた…そう言えば昨日…来てくれていたんだっけ…

「って!今何時?」
「ん、昼かな?」
「えええ!?仕事っ!電話してないっ~~~!」

眠い目をこすりながら和香が、朝から父に電話で
和香の家で熱を出したという事にしてくれている…
と言うことを聞かされた。

「ごめん…なんか、全部ゴメン」
「んったく、水希は巻き込みたくないとか考えたんでしょうけど
言われない方も辛いわよ?」
「…うん、そうだよね」で、気分は晴れた?」
「あ…多少?かな…やっぱりまだ少し気持ち悪いけど
そのうち忘れるさ…と思う」
「うっわぁーめっちゃ曖昧」
「あはは…だよね」

困った顔をしてる私に
ん!と差し出された袋。
中を見るとサンドイッチと缶コーヒーが入っていた。

「え?」
「飯!池上さんが買ってくれた」
「あぁ…そっか、一緒に食べよう」
「うん、とりあえず…私のもあるから食べちゃおう」

と、和香は袋を取り出し私の横に腰を掛けた。

「忘れなよ?あんな事」
「うん、解ってる」
「レンクンに負い目感じたらダメダよ?」
「それは十分解ってるよ」
「そう?」
「うん」

もぐもぐと食べ終わると、風呂を借りることにして
昨日も入ったその風呂へと足を向けた。

メリッサのやり口が汚い…正々堂々とレンを手に入れれば良いのに
それが出来なくてここまで手を伸ばそうとするなんて
本当に王族って…

「汚い人間が多いのかも」

ジャーっと上から降り注ぐシャワーを浴びながら
レンを思い起こして身体を抱きしめた

こんな事で負けるもんかと、気持ちを強くした

風呂から出た水希は、携帯を確認すると
着信3件…
2件が父…そして3件目で目を見開いた

「レンの名前…?」
「ん?」
「レンから電話来て…た」
その言葉に和香があぁ…と答えたもんだから
私はびっくりして和香に知ってるのか?と言う問いを投げると
苦笑いで答えてくれた。

「日本に…?」
「今池上さんが迎に行ってるよ…」
「そ、そうなんだ…帰ってこれる様になったんだ?」
「良くは解らないけどね…で、あんたの答え次第だけど
どうする?池上さんに言って貰う?それともあんたが言う?
それとも、言わない…?」

何の事かなんてすぐにわかる。
昨日の出来事。

「言う…」
「解った…でも、昨日私の携帯に掛かってきて
今の状況を少し知ってると思うよ?」
「…そっか…じゃー池上さんが言ってるかもしれないんだ?」
「…かも」
「解った…」

レンにはあまり知られたく無かったけど…
仕方が無い…か

私は深い溜息を吐き、レンと池上さんの到着を待つ事にした。
レンが、日本にこれるようになったと言う事は…凄く頑張ったんだろうなと
私はおもった
一方、空港で合流したレンと池上が車に乗り込み
池上の自宅へと向かっていた。

「久しぶりだね…旦那さん」
「旦那さんって?」
「あー…レン?カイル?どっちで呼べば?」
「…ここではその名は呼ばれたくないんでレンで」
「わかった」
「で、水希に何があった?」
「うん、実はね…メリッサの仕業と解っては居ないんだけど
昨日水希ちゃん攫われたんだよ」
「……。」

そこから始まる話は、気持ちが悪くなるような全貌。
それで水希は、どう思ったのか…
何を考えたのか…

水希は大丈夫なんだろうか?

「水希…」

手を握り締める俺に池上が言う。

「水希ちゃんは強いから」

違う…水希は強くなどないんだ
虚勢を張っているだけ…強く見せているだけ
本当に心の優しい弱い子なんだよ。

それを、探偵に教える気は無いけど

それを知ってるのは俺だけで良いから。

「すぐに逢えますか?」
「大丈夫か?その…水希ちゃんを受け入れれるのか?」
「なんで?水希は水希でしょう…」

俺だって…そうやって受け入れられたんだ
嫌悪感なんぞない、今は水希の心だけが心配だった
カチャリと開かれたドアに
私は視線を向けた。

きっとその先にはレンが居るから。

ドキドキと早まる心臓と共に、レンはこんな私を知って
受け入れてくれるのだろうかと言う不安が押し寄せてくる。
吐き気に似た感覚に胸を掴まれ
呼吸がドンドンと荒さを訴えると、既にソレは止めることが出来ず

「水希っ!」

横に居た和香が慌てて私を揺り動かす。

「水希ちゃん!?またか!」
池上さんが慌ててキッチンに行ったのを見てから
視線を前に向けると…

笑ってる?

レンは私に笑いかけてて…

「大丈夫だよ」

なんて優しく言ってくれて…勝手に涙がポロポロと落ちた
久しぶりに会うのに、こんな事になってる私に苦笑いしか出ない。

浅い息を繰り返すと、池上が私の口へと袋を当てる

「水希、ゆっくり…息をゆっくりして?」

和香が場所を空け、そこにレンが来て私を抱かかえてくれる。
逢いたかった…そして真っ先に抱きしめてあげたかった。
「ごめ…ね」
「ほら、気にするな…ゆっくりでいい、水希10日もこっちに居られるんだ
だからゆっくりでいい…ゆっくり、ゆっくり…」

と、何度もゆっくりと言う言葉を吐き出し
私は呼吸が楽になってきた。

「レンクン、今日は水希の家にいこう?実家にクロ迎に行くから
レンクンは水希についてて?」
コクコクと首を振るとレンは水希をギュッと抱きしめた

「水希…」
久しぶりに名前が呼ばれて、嬉しい…だけど
素直に喜びきれず、下を向いてしまう。

「おかえりなさい…」

「うん、ただいま…」

ぎゅっと抱きしめられればその温かさで
心が温まる。

「水希、10日時間を貰ったけど
俺はまた帰る…今度は水希を連れて帰りたい」
「え?」
「もう、離れて暮らすのは…嫌だ」
「……私で良いの?」
「俺は水希じゃないとダメだって前から言ってるよ」

優しく抱きしめられたまま…そんな嬉しい言葉を言われ
レンの身体を抱き返した。
好きで好きで…たまらなかった

自宅まで送られて
レンの部屋を教えると前よりはるかに狭い場所
そこに押し込まれた家具に手を伸ばし触れる。

「ここが俺の部屋?」

「うん…狭くてゴメンね」

「水希と居れるならどこでも良いんだ」

一通り回りを見て歩き、その後ソファーへと腰を下ろした。
二人でこの空間にいるのが凄く…不思議な感じがする。
クロはまだ戻らないけど…私が一人で頑張ってきた空間
レンに捨てられたと思っていた私の空間

そこに本人が居るもんだから気恥ずかしい。

「水希…」
「ん?」
「辛い思いさせてゴメンね」

シュンとなったレンに私は寄りかかり体重を掛けた。
「そんな事言って欲しいんじゃない…ただ、笑ってくれれば良いよ」

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