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なつめっぐ 保管場所

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狼と私2章⑲

凄い場所へ来てしまった…。
ジョイの家に着くまでは本気で怖かった

解らない言葉…

合いたい時にそこに居ないレン

今までとは違う環境で、レンを待つのは
恐怖でもあった。


やっと、たどり着いたレンの友達の家
ジョイさんは、妹のマリアさんを紹介してくれて
女の人が居ることにホッとした。

今夜はレンの帰国を祝ってホームパーティらしいが
ジョイの両親は私を快くは思っていないらしく
時折冷めた視線を向けてはジョイに何か言われていた

言葉が解らなくて良かったと思う反面
凄く怖くなる。

「レン…」
「うん、ごめんね…俺もそろそろ帰らないと」

解っていた事だ、苦笑いを向けて送り出すと
レンは後ろ髪を惹かれるように帰って行った

マリアが英語しか話せないのにはちょっと苦労したが
翻訳の機械をレンに貰いそれを互いに打つことで会話は成り立った
何の努力もしないで…ここまで来たのか?
いや、沢山努力はしたでも英語は本当に苦手で
どうしても覚えられないのだ。

既にホームシック状態の私が、この姿を見せないようにするのが
まずはこの家の中での私の課題。

レンは月に2度ほどこの家へ来る事が出来る。
それまでは研究所で私は私の仕事をする事にした

平賀とは毎日メールで会話をしているので
向こうの進行状況とこちらの進行状況を照らし合わせながら
仕事を進めていく。

全て英字の本の中から日本語で書かれてるものを探すだけで
凄く時間が掛かる。
図書室の男性がそれに見かねて
日本語の本の棚を作ってくれるまでは
かなり時間をかけていたが、それを作ってもらい
欲しい本は言えばどうにか一週間ほどで入手できるようになった

そうやってただ…日々を過ごすだけで何も変わらず
レンも2週間に一度私の所へ来て帰って行くことを繰り返していた

一ヶ月も過ぎると、ジョイさんが急に話しがあると
私の部屋へとやってきたのだが…。

「なぁ、レンのヤツ本気でアルを落としてるのか?」
「解らないけど…私は信じるしか出来ないから」
「だよな…最近俺もあの家にナカナカ行く機会が無くて
今のレンを知ってるのは水希位だからな…」
「ジョイさんは忙しいの?」
「あぁ、今はちょっとな」

紅茶を飲んでそう言うと、カップをそこへ置き
レンのいる家の方角を見た

「あんたが来て安心してんじゃないだろうな?」
「…まさか?」
「電話して行って見るか?レンの家に」
「え?私が?」
「うん、そうすればアルにも会えるし」

と、答えを待たずに電話をかけるジョイさんに苦笑いを向けた。

はぁ…と溜息が落ち私の側にジョイさんが腰を下ろすと
首を横に振った。

ダメだった…と言う事なのだろう。
レンが今何を思い何をしているか…
それを考える毎日は結構辛い。
レンは遊びに来ても何も言わずただ、がんばると言い続けるだけで
具体的に何を頑張っているとか何をしていると言う類の事は一切言わないから
私が言葉にしてと言うんだが、それも時折濁してしまう

もう、私がここに居ることで
レンには重荷になっているのかもしれないと思っても
不思議ではない。

マリアが離れてて良く平気だねと…私に言う
平気なわけは無いし、レンにもしその気が無いなら
私だってこんな場所で燻りたくは無い

でも、レンを信じてこうやって来た以上
信じるしか道は無いんだから

そう思い悩んで、3ヶ月が過ぎた。
レンは一ヶ月に二度私の所へ来て帰る
何の収穫も何の情報も無いまままた今日も彼は来る
「あと3ヶ月だぞ?」
「うん、解ってるよ」
「レン…私はとやかくは言いたくないが情報くらいは教えて欲しい」
「何の?」
「何に…対して頑張ってるとか、アルさんと面談するためには
こうしてるとか…何でも良いんだ」
「うん、アルは会っても良いって言ってるよ、ただ俺が時間無くて」
「そうなのか?」
「うん、また仕事が増えて…手に負えない」
「……どんな?」
「水希に言っても解らない」

あぁ…こんな言い方をする人だったか?
私が、今度は私がレンを変えたのか?

不安が大きくなる一方で、胸がキュッと締め付けられる。

「レン…私はお前の邪魔なのか?」
「え?何でそうなるんだよ…水希に逢いにくる為に頑張ってるんだ!
邪魔なわけない!それに、水希が俺の唯一の居場所だって言っただろう?」

「レン…仕事に追われて…何もしないで居るなら私は何でここに居るんだ?」

「え?」

「私はレンの何だ?」

「水希…?」

「ごめんね、少し考える時間が欲しい…今月もう一回来る時間を作ってると思うけど
来月にしてくれないか?離れるわけじゃ無いから…私はレンに逢えて
我儘に成ってるのかもしれない…だから時間を下さい」

そして…まだレンの帰る時間の前に私は部屋を出て
ジョイさんにレンを頼んだ。
変わったのは私か?それともレンか?
イギリスと言う国は…私を受け入れはしないだろう。
メリッサの事もどうなったかさえ解らず、アルさんとの話も出来ないまま
半分を過ごした。

このままではきっと、何の収穫も無いまま私は帰国する事になる

水希の言葉は、なんだったのだろう?
離れる訳ではないと言っていた…けれど、心は前のように自分を思ってるかと聞かれると
答えられないほど水希の目は…暗かった気がする。

入れ替わりにジョイが入ってきて
俺は溜息を落とした

「時間をくれって言われた」
「やっとかよ」
「え?」
「どうだ?そう言われた気分は」
「…最悪だな」

「一ヶ月何の変化も無いままあの女は必死に仕事に出かけ
なれない英語でへとへとになりながら帰ってくるんだ解るか?」
「…何の事?」
「お前にはわからない…」
「は?何言ってる?」
「そう言われた水希も、お前にそう思ったんじゃないのか?」
「え?」

「俺とすれ違う時、お前の事を解ってないと言われたって凹んでたぞ?」
「あ…」

確かに言った…

けれど、手続きや書類や…財産放棄の事柄や
そんな事をしながら、水希を思いやる時間が…
無かったのか?

「ジョイ、俺…水希に何も話してない」
「今頃だろう?3ヶ月も経ってるんだぞ?」
「前と同じことの繰り返し…か?俺が何も言わずここに来た時と
同じ事を俺はしてるのか?…側に水希が居るって…安心してたのか?」

ジョイは溜息を付いて窓を開けた。
結構冷えた空気が室内に入ってくると
俺はジョイに目を向けた。

「俺はもっと前にそれをレンに言えと
水希に言ってたんだよ…でも、レンを信じるからと頑張ってた
まぁ、俺が水希と話をしたのも来てから2ヶ月目に入ろうとしてた時だったし?
タイミングは悪くなかったはずなんだけどな」

「ジョイが?」
「そう…俺が」
「…俺そんなに回り見えてない?」
「うん、かなり鈍い」
「…ごめん」
「お前も今日は帰ってゆっくり考えな…自分が日本に居た時
どうやってその場所に慣れたか、そしてどうやって彼女を愛したか
そうすりゃー答えも見つかるさ…でもな、あの女はあと3ヶ月で帰るんだぞ?
恐らく、レンがこのままだったらあの女はここで別れを切り出すと思う」

「え?」

「お前の重荷に成ってると思ってる」

「水希が?」

「…多分な」
正直、この国での自分は常に一人だった
だから誰に甘える事も出来ず誰にそれを言う事も無かった…
そしてあの時はどうだった?

水希の家へ突然俺は住んだのに
水希は受け入れてくれた・・・。

今俺はきっと、何かが欠落してしまっている
水希が自分が我儘になっていると言ったけど、それは俺のことだ。

そこに居るからって・・・彼女を後回しにしていた。
好きで好きで…離れがたかった彼女がイギリスに来たという事で
俺は…甘えてたのか?

「何やってんだ…俺」

凄く悔しかった…守りたい女悩ませて
結局自分しか守れて居ない事に今気が付くなんて…

謝って許してもらえるだろうか?
全てを話せば…この苦しい仕事を乗り切れるだろうか?

俺は本当に…バカなんだと思い知った。

「アル!メリッサを明日呼んでくれないか?」
「え?メリッサ様ですか?」
「正式に婚約の解消を求める」
「……それは…無理だと思いますけど?」
「この書類…何かわかるだろう?」
「これはっ…」
「慰謝料には十分だろう…」
「…私も、貴方様の財産に入るわけですよね?」
「メリッサの所で幸せに執事をすればいい」

アルに見せたのは財産放棄の書類。
これはアルに用意させないで自分で全て手に入れて書き込み
調べたもの…。こんな事で水希にやったね!と喜ばれるとは思っては居ないが
何かひとつでも形に出来れば、俺は水希に胸を張って言える
愛していると…だから
水希がくれた時間を大事に使うことが俺の償いだろう。

アルが一歩俺の前へ足を進めて
食い入るように俺を見た。

「貴方様は私を捨てるとおっしゃるんですか?」

「お前を雇う金は少なくなるが、それでも良いなら日本に来るか?」

「水希様の所でございますか?」

「あぁ…そうだ」

「会うという話しは…?」

「会わせるよ…全て終わらせたらな」

「待って下さい、もしや…」

「あぁ、王権も放棄する」

「…父上の思いは?母上の無念は…どうされるんですか?」

「アル、俺の心の赴くまま生きてみたい、こんな縛られる生活は
本来俺の生き方には無かったんだ…。
愛した人が日本人で、その人に俺は命を救われた
そしてその命を今度はその人に注ぎたいという思いは
お前にだって解るだろう?」

「…はい」

「その水希が、イギリスに家があるなら行けと言ってくれた
俺はそのままでも良いと言ったのにだ

それはお前が新聞に載せた記事が切欠だった…
俺の家族に会わせたい…俺の無い記憶を埋めたいと
必死になってくれた水希や桑本家の優しさだ…

それに対してお前は金を送っただろう?
そして別れを告げた水希に安心したか?」

「………。」

「アル、俺はまた水希を…失いそうなんだ……
それだけはやっちゃいけないんだよ」

「解りました…私はメリッサ様をここへお呼びすれば良いんですね?」

「あぁ、頼む」

ペコリと頭を下げたアルが部屋を出て行った。
何度も失敗する俺を、きっと水希は呆れてるだろうな…
なんて思うと苦笑いが出る。

翌日、アルはメリッサを呼び夕方には会えることを告げてきた。
俺は、俺なりに今までやってきたはずだったのに
一人で耐える事の方が楽なっていたのかもしれない。

水希はきっと今頃一人で耐えていると思う…

「アル、来月にでも水希に会え」
「かしこまりました…私は日本にお供しても?」
「水木が良いって言うなら、俺は何も言わないよ」
「だったら、水希様に気に入られなくてはなりませんね?
何か好きな食べ物はございますか?」
「……バナナ」
「バナナ…でございますか?」
「あぁ、それすら…忘れてたよ…次は渡せるかな?
今度行く時は持っていかないとな」
「私が持って参ります」
「そうか…頼む」
「カイル様…もし良ければこの家へ招待してはどうでしょうか?」
「…いいのか?」
「ええ、誰もダメとは言っていませんよ?
それにこの家でしたら十分におもてなしを出来ますから」

と、笑うアルに…俺はしてやられた。
行く事ばかりを頭に入れてて彼女をここへ呼ぼうなんて
一切思いつかなかったから。

そうか…きっとこれなんだろうな
一人で考えるより沢山の案を出し、その中で最善の答えを導けば良い
そんな事も…出来なかったんだな。

夕方に、メリッサが凄いドレスを着て現れたのを
俺はただ目を見開いてみるしか出来なかった…。

メリッサは家へ入るなり俺の部屋へと行こうとするのを
静止した。

「なんで?呼んだのはカイルよ?」
「話しがあるからな…とりあえず、居間に行くぞ」
「イヤよ!二人きりじゃないと話ししたくないわ」
「だったらなぜ来た」
「カイルが私の事を呼んだからじゃない!」
「だったら俺の言う事に従うのが普通じゃないか?」
メリッサは口を閉じ、黙って居間へと入った。

長い机のど真ん中に俺が座ると右横にメリッサが座った
そして俺の後ろにはアルが居る形となった

「メリッサ、今まで色々と曖昧な態度を取って悪かったと思ってる
で、君は俺の婚約者と言う立場だと俺も受け入れれなかった
俺には好きな女がいるからな…だから正式に君に言おうと思って
今日は来てもらった…悪いが、婚約は解消する事にする」

「なに…よ、呼び出したと思ったらそれなの?」
「あぁ…今回は本気だ水希に手をだしただろう?」
「な、何のことよ?」
「イギリスの話をすれば良いか?それとも…日本の事件を言えば良いか?」
「な、何よそれ!」
「この国を出る前にメリッサ君の所有しているマンションに水希が監禁された事は
知らないとは言わせないよ?それと、日本の一件も…裏は取れてる
探偵の池上が調べてくれたからな…だから言い逃れは出来ない」

メリッサはその話を聞くとわなわなと震え
私が悪いんじゃないと机を強く叩いた。

「これを…」

王権放棄と書かれた書類を目の前に出すと
メリッサは目を大きく見開いた

「私に王家を退けと?」
「良く見ろ、俺の名前だ」
「…あ」
「婚約解消…応じるだろ?」

コクンと首を縦に振ったメリッサにもう一枚紙を差し出した

「俺の財産放棄の書類だ、これで俺はこのイギリスでの全てを
綺麗に出来る、この金を使って俺の存在を消してくれ
そして二度と王家に関わる事はしないし子供が生まれてもその血筋とは
全く無関係のイギリス人として俺は生きるつもりだ」

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