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なつめっぐ 保管場所

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狼と私2章⑳

続き

「残りの金はお前が俺から受けた傷を癒すのに使えば良い…
俺はもう、水希を裏切ったり傷つけたりしないし、したくもない
だからこれが手切れ金という形になる、どうだ?
戸籍は勝手に使えば良いし好きなヤツをカイルとして迎え入れても良い
もし何か有ればこの書類を出せば全て丸く収まるはずだ」

「それで、本当に良いの?何もかも無くすのよ?」

「俺は水希以外を無くしても痛くも痒くもない
アルだけは…本人の意思で付いてくるから
それ以外は俺はもういらない…この家も…
君も…だから約束してくれ、もう二度と俺たちの前に現れないと
そして、水希を狙わないと」

しばらく考えたメリッサがその書類を一まとめにして
自分のカバンへ押し込んだ。
それが答えと取って良いだろう。

「3ヶ月は掛かるわよ?」
「あぁ、それでいい…出国のパスポートは日本の名前が良い」
「名前を紙に書いて」

桑本レン

やっと、この名前に戻れる。
本当はこの書類はかなり前に出来上がっていた
財産の処分や移行や父の墓などの関係で
手間取っていたのは確かだったが、これを早くしていれば
水希と一緒に日本に帰れたかもしれない

書類だけが出来上がっていたので
実際その渡す作業を悩んでいたのは確かで
3ヶ月掛かる…と言うことは
水希を先に返すか、俺が一緒に帰れるか
微妙になってしまったのは自分の落ち度

もうすぐだ…

もう少しで水希、君に会える
メリッサが帰ると、どっと疲れが出た。
「アル…すまない」
「いいえ、大丈夫です」
「俺はまた日本に戻る…だから日本の抹消した戸籍を
どうにかできないか?」
「…抹消ですか…」
「ん?」
「いくらイギリスでも日本の政治などに手は出せないんです
勿論日本からイギリスへの戸籍とかもですけど…
ですので、貴方の名前は日本に帰ればレン様です」

「え?」

「結婚も、破棄されていません」

俺は、目を見開く意外出来なかった

「死んだ事と成ってるのかと」
「今回の事はメリッサ様に頼みましたから…貴方の戸籍は確実に
このイギリスから消えますけど…」
「そうして欲しいと頼んだからな…」
「では、私も日本へ渡る手続きをしなくてはなりませんので
しばらくお暇を頂いて宜しいでしょうか?」
「……あぁ、そうしろ」

とんとん拍子過ぎて…あっけないもんだと思った
今まで集めた書類を、こう言う形で出していなければ
きっともっと時間が掛かっただろう。

水希の一言で決めたこの決断は正しかったと
安堵した
これで…水希と会える。
怒ってるだろうか?

俺のこんな情けない姿を…あの人は受け入れてくれるだろうか?
俺は本当に…失敗ばかりだ

水希にあわせる顔が無い…

とにかく来月まであと1週間ある
その間に俺は仕事先を決めて、基盤を確りとしなければならない
墓の関係もある…母と父の墓
俺が引き継いだが、もうこの墓にも来れないだろう…

そう言う手続きなのだから。

俺は自分の父親の部屋へと入ると
大きく息を吸った。

まだ残された父の服、生きてきた形跡
全てを捨てると決めたのだから

「父さんごめんなさい…俺は、このまま水希を愛していく
この家ともお別れになると思う、父さんの思い出や母さんの思いではないけど
俺がこの場所で生きていけない事だけは解った

ごめんね…勝手な俺で
出来れば生前に会いたかった…

俺は俺の道を生きるだから、アルは連れて行くよ?
この家の中は俺が整理するから…何も無い状態で明け渡すつもりだから
だから父さん…数ヶ月だけどもう少し付き合ってね」

父の本棚から本を引き出し、ダンボールに詰め込んでいく。
遺産は全て渡すがここで働いていた分は手元にある
それにかなりの額が銀行に振り込まれているのは
王族の手当て。

しばらくは働かないでも生活が出来るが
アルを雇う以上俺は先に仕事も決めなくてはならない

ダンボールに詰めながら父との写真を見つけて
それを懐へと仕舞い込んだ。

笑ってる父が俺の口へ指を持っていって
それを吸おうと口を突き出してる俺に笑いかけてる母
これが俺の本当の家族だと解っていても
それは、既に知らなかった世界だし、これから知る事も出来ない
二人とも亡くなっているから

本をしまい終わると今度は机の整理を始めた
綺麗に整頓されてるのはきっと
アルが掃除してくれているのだろう。

バスケの写真や、契約書の写しなど
次々に現れるのは父の痕跡。

「もっと早くに見ていればよかった…
俺はこの世界に順応する事ばかりに気がせいていたのかも知れない」

水希とジョイを呼んだら、ジョイには墓守を頼まなくてはならない。
最後の机だけは鍵が掛かっていて開けれず
不要の室内照明等はそこに残そうと思った。

今日からしばらくは一人。

アルも出る用意をしているのだ
でも、水希の言う事を守るから…俺は来月まで
会いに行かない

その間に沢山彼女の事を考え
家の事、自分にできることをやっておく

あっと言う間に父の部屋の掃除が終わると
その物を全て玄関先へ出す

3日以上かけてやっと部屋の中の荷物が綺麗になくなった。
それをリサイクル業者に取りに来て貰い、渡すと現金で多少の金が手に入った。
後は居間などの片付けは後々でやって行けば良い。
私は、何をしに来たのだろうか?
上の空が多いレンは多分書類整理とか仕事とか
沢山の事を抱えてるに違いない。

でも、日はただ過ぎていくばかりで
レンの事を思いやってあげれてなかったのではないだろうか?

「バカか私は…」

心の奥でクッと笑った。
結局は何も話してくれないから解らない、どうしようも出来ないと
このレンの立場を解ろうとしなかったのかも知れない。

レンだって同じ事を何度も言う事や、仕事の話をしないで居れる空間を
私に求めていたのかもしれない

「レン…ごめんね」

胸がキュッと締まると、溜息を吐き出した。
好きだから知りたいのに踏み込めない、なのに自分に構えなんて
随分傲慢な考えなのかもしれない。

「水希…」
ジャリッと背後の石が人の重みで音を鳴らす。
「ジョイさん…なんか迷惑掛けっぱなしでゴメンナサイ」
「ん…」

近くにあった椅子に腰掛け二人で川を見ていると
急に溜息を吐き出したジョイに目を向けた。

「レン…王権放棄した、それと財産も」
「え?」
「きっと、この三ヶ月でやってたんだろうな、あの書類は結構手間が掛かるんだ」
「……そうですか」
「追い詰めたとか思ってない?」
「少し……」
「うん、だろうと思った、でもまぁ、レンは好きでそれをやったんだから
黙って帰ってくるのを待ったら良いと思うけどね」

好きすぎて…前が見えてなかったのは私かもしれない
一大決心してこの場所に来たのだから、お前だってそうしなきゃだめだと
考えてしまったのかもしれない

一緒に居たいのはレンも一緒なのに
折角作る休みを休む事も出来ないかもしれない

「私なんて事したんだろう」
「え?」
「レンに進んでいかない現状を苛立ちをぶつけただけなのかも知れない」
「あぁ…そうだな、それに至っては俺も同じかもしれない」
「折角一緒に帰ってきた意味が無いよな」

溜息を落とすとそんな事無いさとジョイが言ってくれて
苦笑いを向けた。

レンが動き出した以上、私だってやらなくちゃいけない
アメリカ行きの切符用意しないと

「アメリカ?」
「ん、レンの故郷…こことは違う彼の故郷だ」
「へぇ…アメリカか…」
「日本に帰る前に…経由していくのが一番なんだが
レンがいつ日本に戻れるかは解らないし
とりあえずは、それに向けてお金を用意だけはしておかないと」

その言葉にウンウンと頭を頷かせるジョイに
いつもありがとうと、感謝の気持ちを言葉に乗せた。

レンのために必死に動いてくれたんだから
協力してくれる人のためにも、レンと共に
頑張るしかないんだと結論に達した
「もしもし?レンです」

そう告げた電話の先の主が返事を返すと

「調べて欲しい事が…」

と、続けた。
快諾を得たので、レンは荷造りを再開する
明日は、ジョイと水希を呼ぼう。そして水希に全て話そうと
レンは、心に決めていた。

解らないよと突き放すのではなく
解って貰えるようにしたら良い
解ってもらえないならそれを受け入れつつお互いを
妥協していけば良い
何も怖がる事は無かったんだ。

「もしもし?ジョイ?」
携帯の先には水希も居るだろう。
俺は、彼女を手放す気は毛頭無い。

彼女が俺の全てなのだから


「明日来てくれないか?…昼過ぎに水希と一緒に」

だから、水希 待ってて

「そう、明日全て話すけど王権も全て放棄した」

俺は…もう何もいらないんだ
水希さえいれば

「うん、ある程度先が見えてきたから水希にも、ジョイにも報告するよ
今まで何をやったのかとか、これから何をしなければならないのとか」

俺はこの地を離れる。

水希と共に。


電話が終わると今度は、この地に来てから世話になっていた
一番側に居た、アルに電話をかける。

「明日、決めたよ昼から来るように呼んだから昼を一緒に食べよう?」

アルにかけた優しさはこれが初めて。
一緒に昼を食べるなど無かった事だから

「わかった、待ってるよ」

明日、水希に会うよ…君にゴメンネを言わなければ足を前に出せない
こんなに彼女を思うことが楽しいなんて

こっちに来てから無かったな。

だから明日…

そう、全ては明日水希に全てを伝え
もう一度、プロポーズをしよう
家の扉が開かれ、そこには水希とジョイ
俺は迷わず水希を抱き締めた

「ごめんね、嫌な思いさせて」
「私も悪いんだ…レンだけのせいじゃない」

そう言われてホッとした。
とりあえず、アルを紹介し食事をすることにした。

アルが用意してくれた食事をアル込みで食べながら
これから進むべき道を俺は語りだした。

「え?じゃー私達って」
「日本の俺はまだ水希の結婚相手のまま名前が残ってる」

それは探偵の池上に頼み調べてもらった。
だから間違いはない。

俺はこの数ヶ月この場所で必死に王権を放棄する手段を探し
財産を不当ではない方法で譲れるものを探していた
名前が残ると厄介になるから裏で動かす金として
メリッサにそれを託した事を伝えると水希はニッコリと笑ってくれた

墓をジョイに頼むとそれもあっさりとOKを貰えて
あとは…

「アル、自分から言え」
「かしこまりました…」

水希の前に出て頭を下げ
金を送った非礼をまず詫びた。
その後に、日本へ一緒に行きたいと
確りと日本語で告げたので、水希はレンが良いなら問題ないですと
答えてくれた。

そして3.4ヵ月後には決着がつく
それまでの間日本で待っててはくれないだろうかと
水希に頼むと、それも了承してくれた

後は、全て終わったのだ

今このイギリスの地でやる事を全て…終わらせられた

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