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なつめっぐ 保管場所

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紅蓮

短編

【紅蓮】
心が焼けそうだった・・・もう、止める事など出来ない思いが既に芽吹き、
貴方を思うだけで胸が締め付けられてしまう
貴方は何を考えているの?私の事?・・・それとも・・・・


さわぁ・・・木々が揺らめく昼下がり、何気に向かった先はご神木
カサカサと音を立てながら揺れ動く木々と草。
揺れ動かされる葉は、風に吹かれ気持ち良さげに揺れ動き、心までホッとしてしまうほど穏やかだった
目の前に現れた、あの光景を見るまでは・・・


『犬夜叉・・・』『・・・桔梗』
切っても、切れない・・・そんな事は分かってる。
私の入る場所は・・・無いのだと・・・分かっている
でも、それでも・・・・


ざざざぁぁ
私の走る姿が、木々をざわつかせ、穏やかさは私の足音で消し去られた
静かな空間を引き裂く気なんて無かったけど・・・もう、其の姿を目に焼き付ける事はしたくなくて
私は・・・現代へ向かった。

もう・・・逢えない・・・
そう思うだけで涙は流れ落ち、枯れる事を知らない涙は・・・未だ私の布団の枕を濡らし続けた
一瞬だったけど・・・目が合った。それでも、私を追っては来なかった犬夜叉
きっと、きっと・・・本当に答えを出してしまったのだろう・・・・私ではなく・・桔梗だと


四魂の玉は桔梗が捜してくれる・・・霊力が高くって・・・何も出来ないのは私の方だ
犬夜叉を怪我させて・・・助けてくれることが・・・当たり前になってしまってる
分かってる・・・弥勒様のような法力も無い・・・珊瑚ちゃんのような腕っ節もない・・・・
それでも、側に居たかった
何時も犬夜叉を見て居たかった・・・忘れるなんて出来ない
こんなに・・・
こんなに

『っつ・・・こんなに好きなのに・・・・』

苦し紛れに出た言葉は・・・思い・・・紅蓮に焼かれた恋心
行く宛を失った渡り鳥のように・・・心が落ち着かない
今頃・・・貴方は・・・あの人と何をしているの?
重ねている唇を・・・深く求め合っているのだろうか?

『嫉妬・・・』
ポツリと・・・そう呟いたのは、きっと、もう・・・心が限界なんだと・・・そう言ってるんだ



ちちちち・・・・翌早暁(翌朝)犬夜叉は、静かに瞳を閉じていた
眠る訳でもなく、昨日の桔梗との逢瀬を思い出していた。
昼下がり、かごめと視線がぶつかってしまった・・・
見られたと言う事より、誤解してる・・・そう思ってはいたが、桔梗が絡むとかごめの物分りも
良くない事は犬夜叉も何度か経験していた
それでも、かごめは己の元へ戻るとそう信じているだけだった

『何かありましたか?』『かごめが帰ってこねぇ・・・。』『昨日・・・桔梗様と?』『あぁ・・・』
逢ったと言えば逢ったのだ、それはそれで仕方が無い。
『追わないのですか?』『今追えば・・・かごめは納得しねぇ』『そんな姿を見せてしまったのですか?』
弥勒は勘が鋭い、何時もの事ながら、犬夜叉に痛い言葉を掛けてくるのだ
『桔梗が・・・まだ完全じゃねぇから・・・ふら付いた時におれが・・・支え・・・それを・・・』『見られた?って事ですか』
犬夜叉は声に出さず只頭を擡(もた)げた
うなだれる様な暑さもあり、少し休もうと楓の小屋へ身を寄せていた午後、犬夜叉は奈落を探すのが遅くなると
文句を付け、その場を飛び出した
別に桔梗と待ち合わせをしていたとか、そんな事は全く無く、ふら付いている時に見付けた死魂虫を
追いかけただけだった。
桔梗は何度も・・・何度も・・・己の封印されていた場所を指先でなぞり、犬夜叉・・・・そう呟いていた
出て行く気はなかったのに・・・其の言葉に心を突き動かされて・・・桔梗の前に出てしまった

既に・・・かごめの匂いは・・・嗅ぎ取れる位置まで来ていたのに・・・
心の安心感から・・・また、かごめを傷付けた
こんな場面を見られても・・・きっと分かってくれると・・・そう・・・思い込んだ己の間違い

『迎えに行って見ては如何(いかが)ですか?』弥勒が悪気の無い顔で犬夜叉に囁いた
犬夜叉は・・・桔梗に言われた言葉を・・・・弥勒に反復した

『なぁ、かごめはおれと居ると・・・辛いのか?
おれが・・・無茶するから。。。怖くなっちまうのか?
かごめを・・・守る事は・・・あいつにとって重いのか?』

『・・・。そうですね、辛いでしょうね・・・怖いでしょうね・・・それに、重いでしょうね・・・でも、
かごめ様はそれを承知でお前の側に居てくれる・・・違うか?』
『・・・。』
風は、楓の小屋の簾をサワリ・・・と、優しく持ち上げ、其の度に吹きぬける風が犬夜叉の白銀の髪を揺らす
其の髪を押さえる事もせずに、只、弥勒の言葉に耳を傾けて居る外無かった


答えは・・・きっと・・・出ないだろう・・・
弥勒の脳裏にふと呼び覚まされるように浮かんだ犬夜叉は恐らく・・・答を出す事を恐れて居るのだと


現代からかごめが戻った・・・目を腫らしたまま、犬夜叉の顔を見る事無く、七宝に、冥加を連れて来て貰い
かごめは聞いた
『犬夜叉のお母さんのお墓・・・遠いの?』『雲母で行けば2刻(おおよそ4時間)だが・・・一人で行くのか?』
『犬夜叉とは・・・今は会いたくないの・・・だから・・・雲母呼んで来てくれる?』
冥加も少し考えたが、あまりのかごめの真剣さに折れた

珊瑚から雲母を借りて出て来たのは冥加・・・かごめが帰ってきてると言う事は犬夜叉も匂いで感じてはいたが
自ら会いに行く事が出来なかった・・・否、怖かったのだ
(このおれが・・・怖いだなんて・・・)

遠ざかる匂い

(このおれが・・・・人の心を・・・恐れてる?・・・はっ、笑っちまうな。)
かごめの心中が怖くて、犬夜叉は苦虫を噛む様な微笑を一つ二つ・・・

ざぁ・・・・
『けっ、考えたって仕方ねぇ!』うだうだと悩むのは本来の犬夜叉の性格には合わなかった
それならば、誤解を解くほうが良い
それならば・・・信じてると伝えた方がいい・・・・
其の思いから犬夜叉はかごめの香りの向かう道を辿る

『雲母?雲母に乗って行きやがったのか?あいつに知り合いなんていねぇのに・・・』

ざぁぁ・・・木々が犬夜叉の飛躍により揺れ其の葉を鳴らす
擦れ合った葉達は、己が落とされまいと必死に枝に捕まり其の身を守る
ぴし・・・ぴししっつ・・・
何度と無く、木々の間を駆け抜けると、其の方向に何があるのか・・・
犬夜叉には心当たりがあった・・・・
『ちっ、冥加か?お袋の墓に・・・・向かってやがる』
そう一人呟くと眉間に皺を寄せ、考える・・・

(かごめが・・・苦しんでるのか?おれの・・・お袋に何を告げるんだ?・・・・別れ?・・・まさか)

この世界で己達以外信じれる者が居るのだろうか?
かごめは・・・悩みを告白する相手を、この世界で持っているのだろうか?

不意に沸き上がる疑問。弥勒や珊瑚なら相談をしたら何かしら犬夜叉自身にアクションを起こすが
其れの為に、かごめは皆にも言えない悩みを誰に相談しているのだろうかと・・・不意に考えた

(最近・・・お前の事しか考えてねぇ気がする・・・かごめ)

匂いが段々と・・・犬夜叉の鼻に強く届いて来るようになると、確実にかごめは母の墓に居ると
そう思えた、否、それ以外かごめがここに居る理由が見つけれなかったのだ



『よし!満足!』『こらーかごめ~そろそろ帰らぬと』『ん。わかった。』
ぱんぱんと、両の手を口元であわせ瞳を伏せる。
『犬夜叉のお母さん?聞きたいの・・・・』

墓を綺麗に掃除した後、かごめは瞳を伏せ、口を閉ざした
(犬夜叉のおかあさん?犬夜叉は・・・優しい。だから・・・時折分からなくなるんです
誰が好きなのか、誰が一番なのか・・・だれを・・・守りたいのか・・・・
私は、犬夜叉が大好き、きっと、其の思いはお母さんなら分かるよね?
犬夜叉のお父さんを愛した人なんだから。不安もある。恐れる事もある・・・・でも
私は犬夜叉が大好きで、犬夜叉は・・・・・私を・・・)

ぽつり・・・・ぽつりと
冷たい雨のように、涙がかごめの白い肌を這い、其の雫が地へと落とされる

『かごめ?』『っつ・・・あ、冥加じいちゃん・・・ごめんね・・・もう。帰る』
かごめはくるりと向きを変え、雲母が先程摘んだ花を口から受け取るとそっとお墓に添えた

『ごめんなさい。また・・・来ますね?』
そうとだけ告げ、かごめはその場を後にした。犬夜叉の存在はかごめを始め、冥加も雲母も気が付かなかった


ドサリ・・・母の墓を背に犬夜叉が座ると母に告げる
『かごめって・・・良い匂いなんだ・・・お袋の墓・・・綺麗にしてるかごめの匂いは凄く甘かった』
切なそうに瞳を伏せ、犬夜叉は紡ぐ

『お袋・・・おれ、桔梗を忘れれねぇ・・・でも、かごめはそのせいで苦しんでる。
お袋はどうだった?親父は・・・どうだった?何も教えてはくれなかったよな・・・・
親父も・・・お袋も・・・・どうすればおれはこの思いを貫けるんだろう?
かごめを失いたくねぇ・・・桔梗を・・・忘れられねぇ・・・・我侭だと言うか?
苦しんでるかごめを・・・・見たくねぇのに・・・手放せねぇおれは・・・甘えてるのか?』

ふわりと。
一瞬だったが犬夜叉を温かな風が包んだ
『おふく・・・・ろ?』
頭に響く声は・・・母の声

≪お前の大事な者達を守りなさい、愛しなさい・・・答は出そうとして出るものではありません≫

其の温かな風はふわりと消え、其の後からヒュゥゥと、冷たい風が犬夜叉の髪を揺らす

揺らされる髪に表情は読めなかったが、ただ、静かに犬夜叉はその場に立ち尽くした



『かごめ?』

『なーに?』

そんな会話が胸を過ぎる
『私、これから皆の所に戻るね?』『もう・・・いいのか?』『ほっといたら犬夜叉怒り出しそうだし』
(心は・・・決まってるから)
『冥加じーちゃんは?』『わしも少し留まるとするか。』『うん』
(迷って、間違って・・・そして、新しい道を開けるんだから)
『雲母もごめんね?』其の声にギャゥーと、嬉しそうに雲母も声を上げる
(犬夜叉が・・・居てくれる間は・・・私は側に居るって決めてるんだから・・・もう迷わないよ。)

さらさらと流れるように風はかごめを包み込み、今一度声を向ける
≪信じて・・・あげてくれますか?≫
どこからとも無く聞こえる声にかごめは細く笑う
『うん!勿論!』『?誰と話してるんじゃ?』『内緒♪』


紅蓮に燃ゆる恋心
いつかは答が出されるであろう
それでも、其のときを・・・
かごめは待つと決めた
どんな答が待っているかなど分かるはずもない其の答を
犬夜叉の、
彼の言葉で聴けるまで。其れまでは・・・・
そう願いかごめは前を見据える

広大な大地に、聳え立つ

そんな大きな山並みを一つ越えるとかごめは思う
『犬夜叉に会いたいな。。。』
其の言葉を冥加と雲母がうっすらと微笑みながら聴き受け
雲母が速度を速める
鬱蒼と茂る草々を超えると、大きなご神木

今日はとっても気分がいいと、かごめは呟く


FIN

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