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続き
★番外編<総司と麻耶3>★
【 -優- 】
総司に連れられて車まで辿り着くと、黒のBBが停まっていた
運転席と、助手席が分かれていないので
麻耶の手が自然と膝の上に乗せられる
無言で、車を発進させたが
麻耶は先程の出来事で、唇を噛み締めるだけとなった
「で…呼び出して行き先決めてないんですけど…何処かありますかね?」
その言葉に、麻耶がプッと噴出した
「とりあえず、沖田さんにお願いがあって連絡したので
良ければ、聞いてくれますか?」
「うん、言ってごらん?」
車を走らせながら、クスッと微笑むと、”話しって事だったらドライブでも良いね”
と、続けて総司は車をグンと加速させた
「えっと、沖田さんは忙しいですよね…?」
「え?今?」
「はい。実は…」
麻耶が恥ずかしそうに、言葉を紡ぐ
自分の学校の指導に来てくれと言うだけなのに
何故か緊張して言葉がナカナカ紡げない
「へぇ、指導ねぇ…てっきり今現在なのかと思っちゃったよ」
「あっ、すいません…」
言葉がかみ合わない二人が、その空間をシーンとさせる
「うん、週2だったら良いよ」
「え?」
一週間に二回ほどだったら、と、総司が時間を作る約束をしてくれたのだ
「本当にありがとう御座います!」
「うん、私で出来る事だったら、手伝いますからまた何か相談あったら連絡下さいね?」
「え?良いんですか?」
「ええ…前に稽古で時間取れないと断った事が有るでしょう?
その後、全く連絡してこないもんだから…言い方が悪かったのかなって思ってた所だったんですよ」
麻耶が薄く微笑み、気に掛けて頂きありがとうございますと告げて
自宅まで総司に送ってもらった
車の中で、決められた曜日は火曜日と金曜日
自分のバイトと重なっているので、短期のバイトが終わるまではこの日程で
バイトが終わり次第、木金と連日にすると話し、5時半から、7時までを約束してくれた
一応先生に連絡を入れ、先生が逢いたいと伝えて来たので
麻耶は再び総司に連絡を入れなければ成らなくなった
深く溜息を落とすと、ゴクリと喉を鳴らし、携帯を手にした
電話を掛けるだけで、その労力は計り知れないのだ
RuRuRu…
「麻耶ちゃん?」
電話を掛けると、直ぐに出てくれた総司に先程のお礼を伝え
先生が一度逢いたいというのを伝えると
月曜の朝一番だったらと言う事になり
結果を知らせると伝え電話を切った
「はぁ…緊張するなぁ…」
再びOKを先生から貰うと、電話を掛ける
「沖田さん、月曜で良いそうです」
「ぷっ、麻耶ちゃんご苦労様です解りましたよ。朝伺いますね?」
「ハイ、よろしくお願いします」
「でも…ぷっ、メールでも良かったんですよ?返事」
「え?あ…」
「声聞けてよかったですけどね」と笑う総司に今度からは気を付けると伝え電話を切った
「ありえないーもぉ~~はずかしー」
頬が赤く染まる、心臓は痛いほど高鳴っていて
その胸苦しさが何処から来ているのかなど判っては居なかった
「神谷さん!」その声にビクリと背中を震わせ、麻耶が振り返る
その声に胸がキュ~っと、締め付けられ、呼吸を忘れてしまう
けれど、ニッコリと微笑んで側に駆け寄ってくる総司に
心が奪われる
「あ、あの…?」
「おはよう?神谷さん♪」
ニッコリと微笑んで彼は告げてくる
「何キョトンとしてるんですか? ぉ~ぃ?」
麻耶の目の前で、手が上下に振られると、ハッと意識を戻し、おはようございますと返した
「神谷で、良かったですよね?」
「え?あ、はい」
彼女の名前
神谷麻耶。
「なんか…慣れないです…」
解っている、神谷と呼ばれるのが嫌なだけ
なんだか、そう呼ばれることに嫌に懐かしさを感じるのだ
けれど、そんな理由を押し付ける訳にも行かない
それに、名前で呼ばれて居る時は、もっと彼を近くに感じた
けれど、その名を呼ばれると、とても…とても…遠くに感じてしまうのだ
「先程先生から話しは聞きました、明日より来ますので色々と教えて下さいね?」
ニッコリと笑った総司に、ハイと返事を返し、校門を出て行く総司と入れ違いで
麻耶は学校内へと向かっていく
嬉しい…素直にそう思えた
明日から、あの人が先生となり
自分は、その彼から剣を教えて貰える
雑誌で何度か見た事があった
実際会って、優しさに触れた
微笑まれて胸が苦しくなった
(なんか、恋する乙女になったような気分…)
トントンと軽く胸を叩いて、麻耶は教室へと向かった
おはよう~と、楽しげな声が教室に響く
「なぁに?麻耶ったら今日はご機嫌なのね~?」
クラスの子が、麻耶の肩に手を添えながら、話しかけると
そんな事無いよと、先程の浮かれ気分を胸にしまいこむ
多感な年頃では有る
恋とは何か…愛とは?…解らない事が多い時期でも有るのだ
「麻耶?今朝の男の人って誰?」
「ええ!?」
(見られていたの?)
こそこそと会話が続けられると、先生が教科書で麻耶と隣の女生徒を
パコパコッと叩き、罰として漢字の発表をさせられてしまう
結局その話題は昼休みに散々追求される事となり
素直に答える麻耶に女生徒は、恋だと捲くし立てる
(告白…とかって、どうすれば良いのよ~解るわけないじゃない!)
結局、好きだと伝えるんだと言われその話題は、終わった
男が基本好きではない
そんな自分が、唯一受け入れれる存在
その男に。
はい、これは恋ですよ、付き合いましょう
なんて言えるわけない
「もぉ、皆好き勝手言っちゃって…」
はぁと、深く息を吐き、麻耶は胴着に袖を通した
道場へと足を踏み入れると、深く息を吸い込み、ペコリとお辞儀をしてから
床の上へと裸足の足を滑り込ませる
女性部員は10人ほど
その中から、5人が大会に出られる
麻耶と仲良くしている子は、一人居るが
ナカナカ活動には顔を出さないでいる
別に苛められていると言う訳ではない
ただ、この部活動の女性軍の、嫌味なまでの行動がどうにも好きになれないのだ
彼女自身、剣道が上手い訳でもないのだが
有る日、麻耶に教えられ、先輩から一本奪った時に
大はしゃぎした事が原因で、ネチネチと陰口を言われているのを耳にし
その場で口論となった
別に殴ったり、戦ったりする訳ではないが、面白く有るはずも無い
麻耶は。気が向いたら出てきてねと声だけはかけているものの
ナカナカ活動には顔を出さない状態だった
顧問が常に居る訳ではない
その、緩さが気の緩みを大きくしたのだろうと
麻耶は感じていた
家に帰り、直ぐに公園で素振りをする
其れが小学生からの日課だった
小学一年に上がって直ぐに、近藤道場と言う
近藤勇が経営する道場へと通い出した。
そこで教えられた、活動が今も身に付いているのだ
残念な事に、中学と同時に親の関係により、道場通いは辞めたものの
剣道だけは捨てられず、道具も揃っているのでと
中学の剣道部に入部したのだ
自分より強い人など沢山居た
自分より、弱い人も居た
けれど、この部活動のように、理不尽な事ばかりなど
決して無かった
「おい!麻耶か?」
その声に、ヒッと背中が冷えた
気が付けば、既に日が落ちている
「もぉ、拓海兄ぃ!びっくりしたじゃない!」
にかっと笑うと、悪ぃ悪ぃと、頭を掻きながら麻耶の側にやってきた
「あ~総司から聞いたわ、あいつお前の学校で、剣道するんだってな?」
「う、うん、ごめんね、相談もしないで勝手に決めちゃって…」
「良いんだけどよ…お前、総司が好きなのか?」
「え!?え、っと…あのっ…はっきり…解んないの」
その言葉に、フッと微笑んで、ポンポンと頭を撫でて家まで送ってもらった
余計な事を聞かれたり、友達の時のように告れ!なんて言われたらと
内心冷や冷やしていたが
麻耶の男嫌いは、拓海の耳にも無論入っているからだろうか?
「明日、沖田さんが来る…」
部屋に戻った麻耶がポツリと呟き、部屋の電気を落とした
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2011.4.10
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