倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 【優2】7 | | HOME | | 【優2】9 ≫ |
続き
★番外編<総司と麻耶>★
【優】 最終話≪補完完了20011.6.11≫前編(二話になってまいました;;)
総司は、公園で麻耶を見送り、一人動けずに居た
嫌いになった訳ではない…なんて、ずるい逃れ方をしてしまったのか…
先程繰り広げられた会話を思い出しては、掌を握り締めていた
彼女に何をして上げれただろうか?
幸せを上げていただろうか?
悲しい顔など、今まで殆どしていなかった
いつも優しく微笑んでくれていて、なにをするにも受け入れてくれていた
そんな彼女を、自分の想いだけで、傷つけてしまった
でも、それでも、あの子に幸せに成って欲しいから
あえて身を引いたのだ
お試しをやめようと言った自分
「ははっ、怖くなったのか、沖田総司」
前髪をクシャリと握り締めて呟き、掌をふっと見やると、指先が震えていた
むせ返るような湿気が総司の器官を急激に圧迫し、ごほごほと咳き込んだ
急激に喉が焼けるように熱くなり、ゲホっと強く咳を吐き出すと
脳内で声が響いた
手放しては後悔しますよ…
そんな声が脳内で響いた…そして、意識が朦朧としてくると、声が再び聞こえた
「沖田先生~」
私の思いを、私の願いを、貴方に託しますから…
「だめですよ~沖田先生っ!食べすぎですぅ~」
今度は、きっと一つになれますから…
「私は、女子ではありませんっ!」
私の愛しい人を…離さないで下さい…
はっと、目が覚めると、自宅のベットの上だった
総司がガバッと身体を起すと、ふらりと眩暈が襲う
「っ…」
「お?起きたか?」
自分の机に父親が座っていた
「あ、私は…」
「貧血だと言ってたよ。公園で倒れてて、近くのオバさんが知らせてくれたんだ
車は私が持ってきたから、心配せず寝てなさい。もうすぐこの家を出るんだ
体調管理だけは怠るなよ?」
「…はい、ありがとうございます」
その言葉を聞くと、母に知らせに下へと階段を下って行った
愛しい人、離すな…そんな事を今更言われても
「麻耶、ごめん…麻耶、麻耶っ。」
枕をぎゅっと握り締め、総司はそのまま眠りに付いた
「総司~?用意は出来たのか~?」
メールも電話も、あれ以来していない
自分が今日旅立つ事も、きっと知らない
総司は、綺麗に荷物を整理した部屋をボストンバック一つで後にした
「では、行ってきます」
家族が見送る中、総司は警察学校へと向かった
が
車を走らせた先に立っている少女
(…麻耶?)
車は自然に止まり、総司が気が付いた時には彼女を抱き締めていた
「沖田先生」
「麻耶、麻耶っ、苦しめてごめんなさい」
離れなければ
そう思うほど離れない自分に嫌気が差す
「待ちますから…待っています」
「え?」
「先生の気持ちが、私から離れるまで…待たせてください」
「麻…耶?」
「どうか…ご無事で」
トン…総司の身体が麻耶の手により離され、麻耶はそのまま
走り去っていった
今の出来事が理解できずに、頭で思考をめぐらせていると
プップーと、けたたましくクラクションが鳴って
自分が車を離れていた事を思い出す
思考も追いつけないまま、総司はスイマセンと頭を下げ
車に乗り込み学校の官舎へと入った
「…沖田先生」
目を瞑ると、彼女の笑顔が降って来る
だが、ケジメは付けなければ…
確りと、ここで別れなければならない
先日無意識に抱き締めた衝動を思い出すと
急に怖くなり、総司は電話をする決意をする
逢ってしまい、再びこの腕に掻き抱いたなら
気持ちが収まる訳がない
休日、総司は充電を終わらせた電話を持ち、深く溜息を吐いた
ボタンを押す手が震えるのをどうにか堪え
発信ボタンを押した
「はい」
透き通るような声
子供らしさが抜け始めた声は、気持ちを増幅させる
「こんにちは、総司です。」
「はい、お待ちしていました」
総司の敬語が、付き合っていく中で身に付いた麻耶の言葉と成っていた
元より、麻耶自身も敬語を使ってはいたのだが
総司と付き合うようになってからは一段と綺麗に発するようになった
「やはり、待っていたんですか?」
「ええ、でも、迷惑だとは解っています…」
「気持ちが離れるまでと、貴女は言いましたよね?」
「……」
その問いに一呼吸置き、麻耶が言葉を続けた
「沖田先生の気持ちが離れても、私の心が離れてくれないんです
先生と離れたくないと、心が泣くのです
会えなくても、心が繋がっていると思えるだけで良いんです
お側に置いて下さいなんて言いません
どうか、どうか…私を見捨てないで下さいっ」
「麻耶さん、ごめんなさい、今度こそお別れです」
「っ…」
「気持ちが離れました、もう貴女を心の中で思い描けないんです」
「沖田っ…せんせぇ…」
「長い間に成ると思います。研修後、神戸か大阪の警察署へと転勤すると
決まっているんです、そんな中ずっと待たれても私には迷惑にしか成らないんです」
「…っ…は…い」
「では、別れると言う事で、良いですね?」
「…はっ…は…い…」
ぐすっと鼻を啜る音が聞える
「では、お幸せに、さようなら…」
総司はそのまま電源を落とした
もう、二度と使わない携帯
そのまま、携帯は机の中へと仕舞われた
再び胸が締め上げられ、倒れた当時を思い出す
また、もう一人の自分が文句でもつけるのだろうかと
覚悟はしていたが、その苦しみだけで終わった
それから、三ヶ月経った。
お互い連絡も、メールもしない状態…
否、麻耶は何度か送っていた
けれども、解約されてしまった携帯電話には
その言葉が届く事はなかったのだ
その間に総司は、仕事仲間の女性とトラブっていた
彼女からの告白で、抱けないと解った瞬間に振られると言う経験をしていたのだ
否、振られたとは言い過ぎで
総司はそんな気持ちはなかったのだが、彼女のほうがしつこく付き纏ったのだ
酒の勢いで、ホテルに入り、抱けない事が発覚すると別れましょうと言われた
正直そんな女に、ウンザリする気持ちが沸いて来る
別れるも何も、付き合っても居ないのに…と、総司は空を見上げた
麻耶は、次が有ると…言ってくれたっけ
しんみりと思っていた
「ねぇ?もう、いいでしょう?私を虜にしてるのは貴女なんだから…」
空から視線を足元に落とし、ポツリと呟く名前は
風が攫っていった
自分が今何を言ったのか
慌てて口をふさいだ
自分の言葉なのか?
出た言葉は、いつも自分が呼んでいる名前ではなかった…
”神谷さん…”
今日は酔っている…そう呟き立ち上がった
やっと気持ちが回復し、自宅へと向かった
別れたあの日から
丁度三ヶ月
そろそろ心に決着を付けないとなぁと漠然と思いながら
翌朝を迎えた
先日から、実地研修
総司は、パトロールを先輩と二人でしていた
「警察のおにぃしゃんー、ありしゃん!」
幼稚園の子が警官の制服に身を包んだ総司にニッコリと笑いかけた
「はいはい、ありさんですねぇ~」
パトロールの最中に、子供に呼び止められて
幼稚園の前で子供と戯れる
子供好きの総司には、嬉しい事この上なかった
「ホラ、そろそろ行くぞ」
先輩に促され、総司は再びパトロールを再開する
そんな日々にも少しづつだが、慣れだしてきた
半月後には、一人で出る事も多くなった
と、そこに、珍しくも絡まれている女子高生を見つけてしまった
二人に声を掛けられて居る状態に、総司がその場所へと向かった
が・・・・
「いい加減にしてください」
大きな声で相手を威嚇するその姿に胸が締め付けられた
(麻耶…?)
男達は、周りの目線が痛かったのだろう、辺りを見回して
その場を立ち去った
(……やっぱり、麻耶だ)
大丈夫かと、声を掛けたいが、今側に行けば
どうなるか自分でも解らない
ぎゅっと帽子のつばを下げ、深く被ると一歩を踏み出した
が…
「あ、あれ?」
辺りには、その子の姿が既になくなっていた
結局、何事もなく過ぎたのだから…
そう思って、総司は踵を返した
実地訓練は、何度も何度もする事で
その環境に慣れていくようにするのだが
総司の場合まだ入りたての新米なので2,3時間と言う決まりが有る
それを終わらせれば、今度は机上
ちょっとした些細な事から、置いていかれるような大きな事件まで
流石大都会と言う程の仕事の話があった
そんな話を同期とし、不意に想うのは、麻耶
恐らく、高校の制服なのだろう
ブレザーに赤いリボンが可愛かったのを鮮明に思い出した
レポートを提出するのに、収集を申し付かった総司が
寄宿舎へと戻ると、今日総司を訪ねて人が来たと言う
男性で身長が180ほどの長身だったと言う言葉に
はっと、思い付いたのは拓海
麻耶と確り別れたと告げた時も、仕方ない…と言ってくれて
納得してくれた彼が自分を探しに来てくれたのかと
慌てて、携帯から拓海の番号を探してかけた
「もしもし…?」
「あっ、拓海?」
「え?総司か?知らない番号だったから出るの躊躇った~」
携帯を変えたんだと、申し訳なさそうに言う総司に
拓海が、総司を探した理由を切り出した、ストーカーに付いて
相談をしたかったと言うのだ
「お前がされてるのか?」
「お前バカ?麻耶だよ、まーやー」
「え?」
はっきりとは解らないし、警察に相談に行くほどでもない状態ではあった
麻耶の部屋に人が入った痕跡があったり
下着や、小物が無くなったり
そんな些細な事なのだが、はっきりと無くなったか?と考えると
違うかもしれない…程度のもの
目ぼしい人影も見た事は無いのだが
一度だけ、付けられた事があったのだ
数日前、名前を呼ばれ立ち止まったら
小柄な男と、ちょっと背の高めな男が
麻耶に、ぶつかったと因縁を付けたのだ
無論。反対側から来ている自分とぶつかる訳が無いと言い張ってた麻耶だが
二人の男に、ぶつかったと言い張られて、頭に来て良い加減にしろ!と
怒鳴りつけたらしいと言う
(それって…)
数日前に出くわした、あの現場。
まさにその事だった
「でも、大抵ストーカーは姿を見せませんよ?」
「あぁ、だから違うと麻耶は思ってるんだが、俺さ…」
数日前に、麻耶の後を歩いている男が居たのを拓海は見たと言う
それが、先程言った男と類似しているのだ
「…うーん、でも、それだけでは警察は動いてくれませんね。」
「あぁ、解ってるよ、だからこれからどうやって予防したら良いか
証拠を掴むならどうしたら良いか…教えて欲しいと思って…」
拓海が危険な目に逢うのは不味い
だが、本物のストーカーなら、麻耶が危ない
総司は、話だけでも聞くという事で
次の休みに、拓海と逢う約束を取り付けた
================================
2011.6.12
≪ 【優2】7 | | HOME | | 【優2】9 ≫ |