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続きです
寂しがり屋なんです
だから、風は草を囁かせ、木々を鳴らすのです
★風-参-★
「っ・・・・・・んんっ!」ドン!と、強く跳ね除けられ
総司の体が、畳へと突き飛ばされた
「イタタ・・・神谷さんったら病人の力じゃないですよぅ~」
のほほんと答える総司に、真っ赤になりながら手元にあった枕を投げつける
自分の上に圧し掛かり温かさを与えていた布団も、既に総司の体に投げつけられ
手元に何も無くなったセイが今度は涙をボロボロと零し始めた
「怒っちゃいましたか?」
悪戯を咎められた子供のように、申し訳なさそうに覗き込む総司に
いつもと変わりが無い総司にほっとしてしまう・・・が・・・・
「解っているのですか?私は伝染病なんですよ?人に染る病なんですっ
なぜ!・・・なぜ・・・くちっ・・・・口付けなんか・・・・するんですかっ!」
「ん~・・・なんだか、神谷さんの唇が桜餅に見えちゃって・・・・・」
「さくっ、さくっ・・・桜餅とか、ありえません!ご自分のお体なんですよ?
側に居る事自体危険だと言うのに、接触するなんて信じられませんっ!
早く出て行ってください!、ってか、でてけー!!!!!」
足で蹴りだし、総司の目の前でピシャリと障子が締められた
「神谷さぁ~ん?入れて下さいよぅ~お団子・・・そっちにあるんですよ~?」
その声に、団子だけを障子から出し、再び締め切られる。
「神谷さん?聞いててくれるだけで良いですから
昨夜のあなたの言葉に感動したんですよ・・・。」
セイは涙を堪え、両足を抱え丸くなっている
涙は零さないように、一点をじっと見つめ、座り込んでいた。
”沖田先生が何度も守ってくれた命を、私の勝手で絶つ事は出来ません
沖田先生はきっと、死ぬ事を望まれないでしょうし、あの優しい先生に
私の死までも背負っては欲しくないのです。”
「あんな事、言われたのも初めてですし・・・・
其処まで思ってくれて、自分は幸せ者だと感じました・・・。
だから、私もあなたの思いに答えれる言葉を捜したのですが・・・・
生涯、女子を妻と娶る事はしないと思っているのですが・・・
でも、神谷さんとは一緒に居たいのです・・・あれ?・・・・・・
なんかへンですね・・・・あはは・・・」
不器用な総司が必死に自分の側に居てくれと
セイに伝えようとしているが言葉が繋がらない
「私は病気なんです、先生と共に居れる訳はありません、帰ってください!」
しどろもどろの総司に口で勝てる訳が無かった・・・・
ピシャリと吐き捨てられた言葉に、言葉が詰まり総司もまた、
小さく足を抱えた・・・そして唇をゆっくり自分の指でなぞると耳まで真っ赤に染まった
「先程の接吻で・・・・私も染ったかもしれない、それでも一緒に居れないと?」
そう、桜餅は単なる言い訳・・・セイを繋ぎ止める方法として
総司はセイに唇を寄せたのだ。
「っ・・・・先生ずるいですっ!だったら何でそんな事するんですかっ」
「神谷さんと・・・共に散りたいのです。武士としてそして、神谷清三郎と沖田総司として
あなたと共に歩んだこの3年苦労をし、支え合いながら来たと思っています
だって、武士のあなたはいつも側に居てくれるのだから・・・・。
私は、自分の想いとも向き合えない弱い男です。
でもあなたに育てられ、あなたを育てて今の私が出来たのです。
今まで貫いてきた矜持があなたの言葉で態度で揺るがされ
その度に情けない自分に出会い、気付かされました。
神谷さん、あなたが大切だと・・・・」
総司の言葉に熱く込み上げて来る思い・・・・だが・・・
この思いを叶えてはいけない。
自分が今まで奪った未来を考えれば自分だけ幸せになどなれない
更に、自分の病気によって愛しい総司の未来を奪いたくなかった
「でも・・・それは先生の勝手事です」
「解っていますよ、だから勝手に神谷さんの側に居ます。」
「そんなの許されませんっ!先生には大事な任務があります
大事な思いが、誠があるではないですか!それを壊すような真似をしている私を
大切になど思わないで下さい!」
「無理ですよ・・・今更引き返せる訳ないじゃないですか・・・・」
総司は、意を決したように扉を開け放った
「入ってはダメです!本当に今度こそ染ってしまう・・・止めて下さい、先生
後生ですから・・・やめて・・・・っく・・・・うう・・・・」
総司は小さくなったセイの涙を拭い、顔を自分の方へ向けた
「本当に泣き虫さんですね?」クスっと笑った総司の表情に氷のように固く出来上がった
突き放そうという思いが、一瞬にして崩れていく
だが、総司を守りたいと願い共に逝きたいと願った自分も其処には居て
強張りながらも逃げるように体を押し返した
「もう、私はあなたに囚われているのです。」
涙がポタポタと音を立て、顎から落ちていく・・・。
「私の替わりに、泣いてくれてるのですね・・・」ぼそりと言葉を掛け
やんわりと抱きしめた
「すいません・・・・」赤くなった総司がそう言うと
目をまん丸にしたセイを強く抱きしめた
「ずるいと解っています。でも・・・・
神谷清三郎っ!あなたは、本日付けで沖田小姓となり、私の休憩所にて
私の身の回りの世話を命じます、これは局長命令であり、隊規に背く事は出来ません
解りましたか?」
見開いた目を総司に向け、この人は何を言い出すのかと
呆気に取られていた
「神谷清三郎、返事は!」
「はっ、ハイ!・・・ぁ・・・・」
習慣とは怖いものだと・・・・今更ながらに苦笑した。
絶対に応と言わないだろうと予想して土方が考えた最後の手段が
これだった・・・。
「でも、先生は休憩所を持っては居ませんよね・・・?」ふと、病気など忘れるほどの疑問
これほどまでに側に居て共に過ごしたというのに、いつの間にそんな場所を持っていたのかと
疑問がセイを襲った
「要らぬ詮索はなしです。向かいますよ?」手を差し伸べた総司に、涙ながらに
セイの手は、恐る恐るではあるが差し伸べられた
法眼の薬を手に、総司に連れて行かれた先は、それほど大きくは無いが庭も付いている
居間にはてかてかと日が差し、二人で住むには十分の大きさだった
「神谷さん、これから何年この場所に居れるかも判りません
これからどんな事が起こるかもわかりません
だから生涯妻はいりません。でも、神谷清三郎・・・と言う隊士は私の愛弟子です
どうか、私から逃げ出さず、付いて来て下さい、貴女の望む形で・・・・
我侭を通してるのは十分承知です。だけど、私の側から消えないで下さい
恋心を抱く男性が現れても、隊士の貴女は私の側に居てください。
お願いします・・・。」
セイに紡がれた言葉は総司の本音
嘘など言える訳は無い・・・だってこの男は不器用なのだから。
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