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年末最後の作品になるかなぁ?
ではどうぞ!
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【刹那の幻】9
ゴオオォォー ――
ゴオオオオ ――
流れる滝の中へと押しやられたナルトは、滝の裏側へと足を進めた。
入る時にベチャベチャに濡れてしまったが、中へと入ると
細い道が見えた。
「ここか…?」
三日月渓谷から、20分ほど走っただろうか?
相手もチャクラで走る走り方を身に付けていたため
本来の人の足では4・50分ほど掛かるだろうその場所
「仲間が待ってる」
と言う男の言葉に、ナルトが身を引き締める。
中へと足を進めると、人が二人歩いて通れる道を抜け、3方向に別れる
穴がポッカリと空いている空間に出た。
空が、光を落とすその場所はポッカリと空いている自然の穴の中。
ここが滝の裏側などと誰も想像など出来ないだろう。
人が踏み荒らした形跡もあまり見受けられないその場所
男がスッと一番小さく開けられた穴に体を滑り込ませると
ナルトもそれに続いた。
後ろ手で縛られているとは言え、チャクラ封じさえしていない縄を抜けるのは
安易に出来てしまうだろうが、アイジの無事を確認するまでは
素直に従おうと言う腹だった。
その細い穴も少し推し進めば、四方に開けられた穴
「まるで迷路だってばよ」
ポツリと零したナルトを無視して突き進む男の後に付いて
ナルトも足を早めた。
3箇所ほどの同じような穴を抜けて、やっと辿りついた時には
ナルトも既にどの道を来たのかが解らなく成っていたが
それはそれで、どうにかなるだろうと、相変わらずの楽観振りに
カカシやサジ辺りが一緒に居たら溜息が落とされる場面だろう。
「ついたぞ」
男の声にナルトが体を前に出すと、目の前に広がった空洞。
奥に檻のような柵を見やるとそこに横たわる男が目に入り
ナルトは慌てて傍に駆け寄った。
「アイジさん!」
その声に返事は返さない男がただただ、回復を待つように眠っていた。
「なんでこんな牢に入れてるんだってばよ!」
「…攻撃を受けたら、俺らじゃ敵わないだろう?」
「だからって!」
「鍵は掛かってねぇよ…」
その言葉で、ナルトは後ろ手にかかった縄を外し、鉄格子の中へと体を
滑り込ませ、アイジの確認をしたいが為に進もうとすると…
「……お前バカだろう?」
ガチャリ…と、音が聞こえて振り返ると
男の指先に掛かった鍵と、締められた鉄格子…
「……ぬあ―――ああああっ!しまったってばよ――!!!!!」
両手を頭に置いて、両膝を付いている姿は、サクラなどが同伴していれば
間違いなく大きなため息が聞こえるようなミス。
項垂れるナルトに、苦笑いでそんなに簡単に檻に入って貰えるとは思ってなかったよ
と付け足されて、更に項垂れた。
あまりに感じなかったチャクラであり、少ししか忍として稼働していない者
と、頭が油断を促したのは間違いないが、それよりも何よりも
天然の意外性NO1という事だろう。
「はぁ…やっちまった…って、アイジさん!」
簡単に落ち込んでなどいられないと、慌てて振り返り
ベットに体を滑り込ませてアイジの息を確認すると
スースーと上下する胸や、首筋に宛てがった指先が確実に強い鼓動を感じていた。
「大丈夫だよ…その人の傷は治れば動く事が出来る」
「お前が…治療したのか?」
「あぁ、そうだ…」
「……ありがとう、オレってば本気で、アイジさん見つかんねぇって
かなり凹んでたから、生きてて、こうやって息をしてて良かったってば」
「…変な奴だな」
と、男が言うとザワリとその男の背後から人の気配を感じた。
「あら?ヒジキったら、また忍者を拾ってきたの?」
女が声を上げながら入ってくると、その後ろから
溜息を吐きながら図体の大きい男が「ったく物好きだな」と続けて入って来た。
「拾い物じゃねぇよ、俺が頼んで来て貰ったんだ」
「んじゃぁ、何で檻にいるの?」
「…自爆しやがった」
「は?」
…まぁ、事の顛末をヒジキと呼ばれる男が話し、本当にこの人は
そんな有名な忍者なのか…と言う疑問が冷たい視線としてナルトに降り注いだ。
居心地が悪くなり、唇を尖らせながら、ナルトがたまたま油断しただけだってばよ!と
強く言ってみるもしらけた視線は、温かい物に変わることはなかった。
洞窟内で、焚き火をするのは、本来無謀な行為ではあるが
この場所に限ってはそれはなかった。
風が通るのは、恐らく外と続いているのもあるだろうが
先ほど見かけた空洞になっている場所以外にも穴があるのだろう
風の通りがかなりいいのだ。
大男が、獲ってきたであろう魚を串に刺し込み
その薪の横に魚を差込み、焼けるのを黙って見つめているが
女の方はナルトが気になるのか
檻の前でジッとアイジの世話をするナルトを見ていた。
「…何だってばよ?」
「その人起きないよ?」
「え?」
「薬で眠ってるから…暴れられても困るし、回復するまでは
寝せ続けるから起きない…けど、ヒジキがアンタに忍術を習いたいって言ってるのよ…
どう?その男を治す代わりに…教えてあげてくれない?」
「…忍術?」
「そう、忍術」
ひとつ考えたナルトが、檻の前まで体を進めてから
遠くにいたヒジキを見ると、深い溜息を落とした。
「あのさ、オレってば人のチャクラ見るのとかそんなに上手くねぇけど
あいつも、あんたらもチャクラ量が足りねぇだろう?
すぐバテねぇか?」
その言葉に目を見開いた女が檻に手をかけて
「解るの!?」
と…形相が変わった。
「解るっつーか…普通解らねぇ方が、おかしいンだけど」
と、続けるとあっさり罠に掛かったお前はどうなんだと女に突っ込まれ
言葉を続けられずに目を反らし汗を垂らすナルト。
それを横目に女が檻の鍵を開けた。
「おい!イチミ!」
「大丈夫でしょ?」
徐に開け放たれた鉄格子の外にナルトが体を押し出し
一歩前へと出ると、イチミとヒジキがナルトの前に立った。
「……忍術の前にお前らはチャクラをもっと沢山練らねぇと
分身すら出来ねぇじゃねぇか…」
その言葉に、ずぅんと空気を重くしたヒジキが小さく呟いて
何度もその言葉を繰り返す
「…分身…ブンシン…ぶんしん…」
その姿にナルトが目を点にする。
「まさかと思うけど…お前ってば分身もままならねぇのか?」
その言葉に吹き出したのは、イチミだった。
「あははは!ヒキジは分身をすると常に潰れた分身しか出せないの!」
「ちょ!そんな事言わなくてもっ!」
バタバタとイチミを追いかけるヒジキを見て、ナルトはフーっと
一度息を吐きだし、年齢的には自分と大差ないはずの者たちに
まるで、木の葉丸と一緒だなと考えてしまったら、何故か笑えた。
「よし、まずは足にチャクラを溜めて水上を歩ける訓練でもすっか?」
「「え?」」
いきなり切り出してきた言葉に唖然となる二人。
結局のところ何故この場所に連れて来たのかも、本来の目的がなんであるかも
一切聞かないナルトに、驚いたのは実際に連れてきた二人となった。
「こいつ正真正銘のアホだろ?」
「……うん」
ジッと見てくる二人に呆れたようにナルトがニッと口角を上げた。
「お前らには、アイジさんが世話になったかんな!アイジさんが動けるようになるまでなら
修行を見てもいいって言ってんだよ」
「お前さ…本当にうずまきナルト?そんな甘っちょろい事でいいのかよ?」
「ん~甘っちょろいのかどうかってより、お前らは真剣に修行したいって思ってるんだろ?」
両腕を頭の後ろで組むとナルトが照れ臭そうにニッシッシと笑った
「だからさ、アイジさんが世話になった分は教えるってばよ!」
「…いいの?」
と、答えたのはイチミだった。
「理由は…聞かねぇのかよ」
「言えるなら聞く、けど…言えねぇのに無理に聞こうとは思わねぇってばよ」
そこから、イチミが苦笑いして口を開いた。
「コショウ、こっちへ…」
イチミに呼ばれたコショウと言う大男が、スッと二人の横に着くと
そこに座り込み、ナルトを見上げた。
勿論、話を始める雰囲気を読んだナルトもそこに腰を下ろし、彼らのアカデミー時代が
語られた。
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【刹那の幻】10
ワォォォ―――
ワワン ――
犬たちの声が響き、カカシが向かった先は崖を越え滝を登りきった場所。
大きな穴の中、空洞の中が見えたカカシが、横に集まった忍犬に問う
「ここから?」
「間違いない、ナルトの匂いはこの中からだ…あと
ここから2キロ先にも同じようにナルトの香りがあったのを
仲間が勘付いてくれた…どっちから行く?」
「…そっちも見ておく必要ありそうね」
スッと覗いていた穴から身を離し、カカシは指先を立てると
どろん…と消えていった。
◆
「オレ達…アカデミーを卒業できなかったんだ」
「落ちたのか?」
その、ナルトの問いかけにコクッと首を上下にした。
本当に忍とは酷な世界…その世界に耐え得る力を持つ者以外
忍には成れない。
それはナルト自身経験を積んできた過去を振り返れば
こんな所でアカデミーに戻されてたまるかと…
必死にカカシの鈴を狙った記憶が鮮明に蘇った
「オレ達は、とある大名の命令で…武士だった父と母から離れ
アカデミーに通いだした…」
「大名?」
「兵器として…従順な忍が必要という事だ」
コトン…と、茶の入ったコップをヒジキがそれぞれの目の前に置き
ヒジキは自分のを持つと、腰を落とし話を続けた。
「…オレ達は任務が来れば、それに命を掛ける…
命令に背くってのは、里を裏切るのと一緒だから、それはやっちゃいけねぇだろう?」
ナルトの言葉に悲しげな目を向けて、コショウが初めて口開いた。
「オイラ達への直接命令は…里を裏切っても大名を裏切らない下僕」
その言葉にナルトが目を見開いた。
「だから…里が命令をだしても大名が許可しなければ、それは無効…
忍を雇う金を掛けるくらいなら…戦争に回した方が沢山の支給品を
配れる…だから、里に依頼するのではなく…里に申し出て引き連れた小隊と
オイラ達での切り込みが必要なんだ」
「なっ…それって」
ナルトが持ち上げたコップの中身がゆらりと揺れる。
「先陣を切ってどれだけ多くの人間を倒せるか…それが一番重要なんだ」
「……その為にお前らは、アカデミーに通ったのか?」
ナルトの声に素直に3人で頷くと
口に入れようとしていたコップを地面に戻しナルトは3人を睨んだ。
「チャクラの御蔭で、身体能力は飛躍的に上がる…刺されれば傷も出来るし
病気にだって掛かる…急所を叩かれれば、苦しむし痛みだってない訳じゃねぇ
修行だって簡単なものじゃねぇ、それなのに兵器と同じ扱いしかしねぇ大名って
おかしくねぇか?忍は大名の駒じゃねぇってばよ!」
三人が頭を垂れていると、ナルトが言葉を続けた。
「それでお前らは、何で武士に戻らねぇんだってばよ?」
ヒジキが、あぐらをかいた両膝に乗せた手をグッと握り締めた。
「まるで生殺しだった
武士としては、今更戻れない…アカデミーはどれだけ頑張っても
卒業できない…見よう見まねでチャクラを使えるようになっただけで
それ以外の忍術は、分身とか体にチャクラを流して使うすべしか知らない。
アカデミーで習得できるものは、その程度だから…それ以上を望むなら
自分でやるしかねぇんだよ…」
ナルトが大きくため息を落とした。
「お前等さ、忍になりてぇのか武士に戻りてぇのかどっちだ」
三人は顔を見合わせて、苦虫を噛み潰したような顔を向け合った。
「んな中途半端な覚悟で、忍に成りてぇなんて甘えてるも良い所じゃねぇか!」
ナルトが立ち上がると、ギシリ…と、檻を開き中へと体を滑り込ませた。
「アイジさんが目覚め次第オレはこの人を連れて出るってばよ。
本当の忍を舐めんな!」
それ以降、ナルトは背を向けたまま、三人の方へと向き直ろうとはしなかった。
「あ~らら、なぁんか珍しくお前が説教してると思ったら
ちゃんと説明もしないで背中向けちゃうの?」
その声に背中をビクッと揺らしたナルト。
それとは全く別にその声に驚いて振り向いた3人
すべての視線がゆるりと絡み合うと、目の前に木の葉の額当てを
斜めに掛けた銀髪の男。
「っ…カカシ先生!」
「はいはい、戻って来ないからパックンたち使って探してみれば
お前は何やってんだか…ったく」
呆れたように髪をボリっと掻いたカカシが瞬身で牢の前に立つと
ナルトが扉を開けて横に並んだ。
「随分出入り自由な牢ね…それよりお前さ…良く考えなさいよ?
お前たちのチームがほぼ壊滅したって聞けば五代目が動かない訳ないじゃない…
どうしてガマを使って、伝令でも出しておかないのよ…
御蔭でパックンのオヤツ増やさなくちゃいけないじゃないよ」
「…う、わ…悪かったってば」
バツの悪そうにナルトがペコリと頭を項垂れるとカカシがグシャグシャと
ナルトの黄色い頭を混ぜる。
「で、そこの3人はアカデミーを卒業出来ないからって
各々個人で技を習得して行こうと考えてここにいるって事?」
三人は首を縦に振るとカカシが深い溜息を落とした。
「ま、いきなり来ちゃってビックリしてるかもしれないけど…
アカデミーは全部の人に平等だよ?
君たちの志は…恐らく大名に向いている、だからそれを汲み取った
アカデミーの先生が卒業させなかったって事じゃぁないの?」
「でもっ!」
ヒジキが訴えると、カカシが薄く微笑んだ。
「忍とは、依頼者に命を預ける仕事だってのは解ってるのかな?
でも、依頼者に殺してくれと言う訳じゃなく、依頼者のために命懸けで
仕事を遂行しなければならない…それが敵でも味方でも…だ。
死ねと言われたら死ぬ…そう言う筋の通らない事はしないけどね?
それがもし任務で必要に迫られれば…ここにいるナルトの小隊だった
隊長も、そして仲間も…死んだんだよ。
この任務は、大名を守るだけの任務だったのにね…
それの意味する所がわかるかい?」
カカシの言葉に、それぞれが頭を回し答えを導き出している時だった。
ドォン!と、爆音が響き、地が揺れ黒煙が洞窟内に立ち込めて来たのだ。
「あーらら、見つかっちゃったねぇ~さっき敵国の忍が居たんだよねぇ~
ナルト!動けるか?」
「おう!」
ギュッと額当てを強く引いた。
「影分身で、誘導を頼むよ?」
「任せろ!」
指先を重ね、ナルトが術名を言うとポンポンと5人の同じ姿が現れ
各方面に、姿を消していく様を見て、3人はただ、目を見開くだけだった。
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