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束縛の花

珍しく、書き方を変えてみました。
カカシの独白のようであり、ストーリーもにわかに存在する
んな感じですw

ではどうぞ。

====================



ある昼下がり…
それはいつもの里の光景のように思えた…

けれど

通り過ぎる金に、目眩を覚えた…
それは、君が…泣いていたから。

【束縛の花】tessen


「ナルト?」

声を掛けずにはいられなかった。
どんな時も歯を食いしばるお前が、何故涙を流し
オレに気付いたのに、知らないふりをしているのか…

一緒に歩いていたクノイチが不思議そうに首を傾げるので
少し待っててくれと言い置いて、オレは金を追った。

怪我をしているようにも見えなかったし、痛みを堪えているような
そんな感じもなかった。
友や、知り合いに不幸があれば自ずと自分に通達が来る

だったら何をそんなに心を乱し、人前で涙も拭かずに歩いていたのか

気になりだしたら止まらなかった。

だが、もう既に己の宛てがわれた任務が遂行されているのも確かで
カカシは深い溜息を落とし、先程置き去りにしてしまったクノイチの待つ
その場所まで戻る事とした。

見失わなければ、胸の中で泣かせてあげれたのに…

不意に湧き出る私欲に舌打ちを一度して
カカシはクノイチと共に歩き出した。

一軒の店に入ると、カカシは酒を頼み、横に座る女も同じように酒を飲み干す
カランと音を立ててグラスの中の酒が消えていくと共に夜も更けていった。


数日前に遡る。
任務は、木の葉の里の不穏分子の摘発。
上忍任務なのは当たり前だ。
なにせ、木の葉の里に侵入して数年もこの場所で里に知られる事なく力を蓄え
今現在もその力を増そうとしているのだ。

そんな、大掛かりな反逆を知らなかったで済ませられない。
里内で起きた事件は数あるが…反逆を起こす者など皆無に等しかったのに
何故…今この状態なのか…

そう、綱手と言う火影が
この里に戻り、納めた事が原因でもあるのだろうと本人が言っていた。

悪い人間ではないし、現在は火影として十二分に力を発揮してくれているが
過去の彼女は、堕ちていた…と、悔しそうに呟かれた。

クノイチとしての仕事を放棄し、旅に明け暮れ
その旅先で”伝説のカモ”と呼ばれるほどの賭博好きでもある。
その影響が里を揺るがしている事実に綱手は頭を抱えていた。

実際、酒屋の主人の怪しい動きを暗部が嗅ぎ付けたまではいい…
だが、無論里の内部で怪しい発言もなければ
逆に里の危機の折、酒を振舞って活性化させた事実もある
その貢献度合いは、文句なしに素晴らしいと言っても良いだろう。

それに疑っているそぶりを見せてしまえば
逆に里に恨まれる事間違いなし…

綱手が最後の手段として、一部の暗部とカカシに頼み込み
中の様子を探る事となったのだが
それがどういう訳か、カカシの女癖が悪い…と言う噂に成り代わってしまっていた。

反論することは、綱手を裏切る事となりかねない今
カカシはその”女グセの悪さ”を背負って歩かなければならなくなっていた。

「カカシさん…」

「あ…どうも」

目が怒ってる…と、肩を竦めるカカシの前に
顔に一筋の横線を引いた男が立ち塞がった。

「アナタは…生徒を持ってる癖に、なぜそんな噂を流しっぱなしでいるんですか?」

まぁ、訂正できるものならしたいんだけどね…と心で思うも
任務である以上仕方がない事
それよりも、彼には聞きたい事があった…

「生徒…ではないでしょ?ナルトもサクラも今やオレと同等の
忍者であり、チームです。
ナルトが帰って来た時、彼らはオレから卒業したんです…」

「っ…た、たしかにそうかもしれませんけど」

全く、この中忍は何を考えてるのか…
カカシがフーっと息を吐くと、確かに現状ではマズイ事この上ない。
ナルトだけならまだしも…あのサクラにまで知れれば
質問攻め+言葉の攻撃により、自分の追い込まれる様がまざまざと見えるようだった。
けれど、今はそれではない…

「それより、ナルトが最近変なんですが…
理由、知りませんか?」

そう、これが一番の気掛かりだった。
泣いている彼を見て、心臓が鷲掴みされたように苦しかった。
いつも、笑っておちゃらけてる事が多い彼が
何にそんなに心を痛めたのか…

「知りません」

「そうですか…」

どうやら、噂が許せないのだろう。
元ナルトの先生とやらは本当に…お前に狂酔しているようだよ…

これ以上話しても無駄だと悟り、最後の言葉を吐き終えぬ内に姿を消した。

任務を遂行するようになって数日
既に里内全てに知れ渡った噂を、サクラが問い詰めてきた。
ヤレヤレと思いながらも適当にごまかしていると
久しぶりにナルトの姿を捉え
声を掛けた。

ナルトは、いつも通りで、噂のことを聞いてくるサクラに便乗して

「カカシ先生も隅におけねぇってばよ」

なんて告げてくるもんだから胸がモヤモヤとした。
サクラに問い詰められるより、ナルトに認められてしまった事に
心なしか、チクリと胸に何かが刺さったが、気づかないふりをした。

その正体を知るのが怖いと思ったから。

だったら、なぜ怖いのか…そこまで考える余裕もなく
いつものように、酒を口へと流し込む毎日になっていた。

「カカシ…アル中になっちまったのか?」

同僚に言われて、待機所で口に流し込んだお茶を吹き出した。

「なんでそんな噂流れてるの?」

「あ~いや、噂ってより、毎日お前が通う酒屋に…俺の妹が働いてるんだよ」

「え?」

意外な落とし穴…上忍のこいつの妹…いい情報源ではないのだろうか?
働いてるだなんて、そんな情報知らないぞ?
と言うか…五代目は知ってておかしく無い情報…だよね?

何かが変だ…そう思い始めたら、カカシの頭脳はフルに稼働を始める。

「妹ってどれくらい働いてるの?」

「は?何言ってんだ?もう3年も働いてるぜ?」

あぁ…これは、罠だったのか…五代目の罠。
恐ろしく、巧妙に作り上げた…気づく前に、何かを壊そうとしてる
何を?オレの地位?オレの名誉?…
いや、そんなもんじゃぁない…だったら何なんだ?

「そ、ありがとね…酒はもう飲みに行かなくても済みそうだよ」

纏まらないなら、纏めるまでさ…
その場を後にして、執務室に向かった。

が…

中に入る前に、カカシはナルトの顔をハタと思い浮かべてしまった。
もしかして…あいつが関係しているのだろうか?
自分が任務を貰ってから、ナルトとは2度しか会っていない

不可解な事だらけで、カカシは執務室のドアのノブを回さずに
踵を返した。

「………綱手様」

「ウルサイ」

「……でも」

「これでいいんだ」

カカシが来たのはすぐに理解した。
だが、問い質す事もなくこの部屋の中を見る事なく帰っていった
其れだけの事だと、綱手は言った。

カカシは、とりあえずナルトのあの時の涙の意味を知らなければ
前に進めないと思っていた。

それが何故かはわからない、ただ
ナルトが苦しい何かを抱えているのであれば
少しでも楽にしてやりたいと、そう考えて足を止めた

「楽にしてやりたい?」

声に出して呟くと、なぜそう思うのか…と
胸が軋む。

気付かないフリでやり過ごせないほど…胸の内を独占されてしまっているのではないだろうか
もし、全然無関係な事でナルトが泣いてたとしたら
自分は何にここまで必死になっているんだ?

「どうしたんだ…ったく、オレらしくもない」

深い溜息を落とし、カカシはナルトの家の窓を見上げた。
既に日が暮れ始め電気が灯されているそこに、あの子がいる
今ももしかしたら泣いているかもしれない…そんな不安に胸がギュッと掴まれる

「あらら…こりゃ、確定か…」

溜息しか出ない。
男の自分が、恋している?
しかも相手は…14も年下の教え子だって?
そして、その対象は…同じ性別の子…

頭を軽く振ると、トンとその場を蹴り上げて
カカシはナルトの家の窓をノックした。

「あれ?カカシ先生…どうしたんだってばよ?」

その出てきた姿に目を見開いた。
パンツ一枚…

「あー…それより、お前服着なさいよ」

「あー風呂上がったばっかりでさぁ~ちょっと待ってて」

ドタバタと服を押し込めてあるタンスを開き、上着を探しているのだろう
だが、先程浮かんだ恋心のせいか、カカシの顔は火照るばかり。
視線をどこへ向けていいか解らずに、宙を彷徨う

こりゃ、間違いなさそうだと、深い溜息が落とされたことに
ナルトは気が付かず、無論カカシも認めて間もないためか
口に出していたことに気が付けないでいた。

ナルトの着替えが済んで、カカシを迎え入れると
ナルトは器用にコーヒーを淹れだした。
と言ってもインスタントのお湯を注げば出来上がる簡単なもの。

けれど

「これ、ナルトが飲むの?」

牛乳が彼の飲み物の基本…と思っていた
知らない事が、なんだか胸を歯痒く燻った。

「あ~それはイルカ先生が来る時に持ってきたんだってばよ。
この前、商店街でくじ引きしたらこれが当たったんだって
んで、オレの家にはそんな洒落た飲み物なんか置いてねぇから
置いてった…カカシ先生も飲めるんだろ?」

「そう…飲めるね、ありがとう…頂くよ。」

イルカ…先日、カカシの前に立ち塞がり、噂を追求してきた
彼はどこまでナルトを思っているのだろうか?
師弟愛だけなのだろうか…

「で、カカシ先生は何か用事だったんじゃねぇの?」

「え?あ~…うん、先日ナルトを見かけてね?
お前、泣いてたでしょ…」

「え?」

何だか、思い当たらないと言う顔をされて
胸が急に不安に押しつぶされそうになった。
視線を左右の上に向けては、うーんと唸る姿に
微笑ましくもあったが、そこで他の可能性を考えてしまった。

ナルトは本来素直で、隠し事は苦手
ましてや自分に嘘を吐ける程狡賢い子ではない。

という事は…己の勘違い?いや、でもあれは泣いていたんだ…
だったら何だ?

互いに頭の中はその時の情景を思い出し、互いに考える姿は
傍から見ればかなり滑稽だろうなと思った途端だった

「あ~っ!あれか!綱手のばーちゃんの薬の試作品ってーの?
それを使ってみろってさ…渡されたんだけど、煙玉でよ~
目が、玉ねぎを切った時みてぇに滲みるのなんのって…
あん時は、マジで泣けたもんなぁ…」

「は…?」

「あれ?そん時じゃねぇの?」

「それっていつ?」

「2・3日前…演習所で使って、帰り道目が見えにくくて参ったってば」

「……」

この、数日間の頭の回転は…何のためだったんだ?
しかも、気付かなければ良かった感情まで解って、こっちはアタフタとしてたと言うのに
綱手様は一体何をしたかったんだ…?

黙りこくったカカシの前に立ち、ナルトがヒラヒラと手を振った

「おーい?カカシ先生ってば、生きてっか~?」

「…死んでるかも」

「なんだそりゃ?にゃはは」

なぜ、こんな事を…
ハーッと溜息を落とすと、カカシはコーヒーを飲み干しニッコリと微笑んだ。

「ごめんな、あの時泣いてたのが気掛かりだったんだけど
何でもないようで良かった…ちょっと、綱手様の所に行かないといけないから
またな?」

と、言い置いてカカシはナルトの部屋を後にした。

結局、あの泣き顔に振り回された。

綱手の所へそのまま向かえば
何の事はない、クノイチ達が、カカシと交流を深めたいが
任務以外ではその子達と飲みになど出歩かない…もういい年なんだし
間違いでもなんでも良いから、彼女を作ってしまえば
カカシも腹を括るだろうと言う…そんな策略に
ただ嵌っただけなら良かったのだが…カカシも気が付けなかった感情に
今は従うしかない。

「今後はそう言う変な企画はやめてください…
私は、好きな人位居ますから。
ただ…その人に付いてはまだ話すつもりも無いし探られても
付き合ってなんか居ないんであしからず」

そう言い切り、扉を閉めると深い溜息を落とした。

好きな人が、同性…それに、貴女のお気に入りですと伝えたら


「牢獄か?」

クスッと笑って、カカシが自宅へと戻っていった。

もう、逃げられない。
あの目、あの笑顔…全てに惹かれているのは解っていた。

けれど、気づかないふりをしてやり過ごしていたのに…

綱手様も、随分と厄介な感情に気付かせてくれたもんだよ、ホント

カカシは緩りと空の月を見上げて薄く微笑んだ。


FIN

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