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続きでございます!
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【紫陽花】 五 捜索
「気配が消えるなんてありえないんだけどねぇ…」
カカシがポツリと零した。
ナルトの血痕から、先に進んだ気配がない
しかも、下も上も何の気配も感じない。
人の気配や殺気などは敏感なはずなのに、それすら掴む事が出来ず
苛立ちを口に出していた。
手がかりは、パックンが持ち帰った、ナルトの服の切れ端…
オレンジ色のそれは、恐らく木にでも引っかかって
ちぎれたのだろうと予想はできるものの、どこへ向かったかは
ナルトの血液と、一直線に結ぶ方法以外は分からず
そちらへ忍犬を数匹向かわせたが、未だ発見の合図は無かった。
「カカシ…本当にナルトはココにおったのか?」
「あぁ…ここに居た、あの血液も聞いた話だと
本当の出血だろう…ま、アイツは九尾の力があるから
出血だけでは死には至らないだろうけど…」
ギュッと布の切れ端を握り締め、カカシがジッと目を凝らす。
なんでもいい…何か一つでも
何か…搜索の足しになるものを見付けて欲しいと願った。
◆
「…っは、っは…っは…」
途切れながら吐き出される短い息。
大きな台座の上に寝かされ、手足を太い黒い布で封じられ
ナルトは動く事が出来ずにいた。
額から溢れる汗が、だらりと引力に従って下へと落ちる。
自分を今、縛り付けている人間…それを思うと眉間に刻まれたシワが深くなる。
「お目覚めかい?ナルト」
「……」
目の前にいる男は弓なりに目を緩ませて自分を見てくる。
その姿はやはりカカシのもので、だけど、それを認められない自分がいる以上
彼を”カカシ先生”とは呼べなかった。
「あら、凄い汗だね…今お薬飲ませてあげるからね」
男に顎をこじ開けられ、無理やり押し込まれた薬に
むせ返ると、徐に水を流し込まれて更に噎せた。
「げほっ…うう…っ」
「美味しいかい?イルカ先生だっけ?あの人は助けてやったからね?」
クスクス笑う男にナルトがギロリと睨み付けると
男は肩を竦めてコワイコワイとその場から立ち去る。
胃に流れ込んだ薬が、ナルトの体をこれでもかと蝕んでいく。
紅潮する体、ふわふわと浮遊感にそのまま身を委ねたくもなる。
「これは…何の薬…だってばよ」
辛うじて溢れた薬をナルトはソっと自分のジャージの襟元で拭う。
こう言う形でしか残せないが、毒物の対処法はカカシに何度も教わってきた。
勿論、効き目を弱くして飲み込んだ事もある。
それが忍者としての、里を守る行為の一環でもあるから。
襟元に付着させたのは、薬の成分をいち早く調べ上げるため。
体から抜くのと、元の薬とでは治療法が格段に変わってくる。
「カカ…シ…せんせ…」
掻き毟りたい程の喉の渇き、止まる事なく流れ出る脂汗が
ナルトの体に纏わり付いている。
「サク…ちゃ…」
はぁはぁと息を切らしてナルトは気を攫われた。
◆
「カカシ!このすぐ近くに小さな里がある
そこにナルトの気配を一瞬感じたんだが…」
それからまたすぐに途絶えてしまった…と言う
そんな報告を聞いてカカシはその村へと向かった。
里…と言うよりは小規模の集落。
住人は恐らく、50を切る程の小規模な集落に
カカシは足を踏み入れた途端、急に襲い掛かってくる目眩に足元をふらつかせ
集落に入るのを一度留まった。
「結界…か?」
ゆるりと視線を這わせてみるも、結界を張っているチャクラも
忍の気配もない。
額当てを、クイッと上げると写輪眼を惜しげもなく晒す。
が…
「なんだこの違和感…この中に本当にナルトが居るのか?」
じっと見つめるカカシの前に足を出し、グッとその場所を睨みつけてから
パックンが口を開いた。
「…恐らくは、だが中には入れんのだよ」
「パックンもか…」
ふわふわとした感覚に、忍としての感覚が危険だと伝えてくる。
それは、恐らくカカシ程の能力を持つと当たり前に感じる物だろう。
カカシが一考してから、踵を返し、まずは綱手に報告をさせるために
忍犬を呼び寄せ、この村を里の方でも調べてくれるように
書かれた文を受け取ると、忍犬がザッとその場から飛散した。
【紫陽花】 六 暗部
古い記憶を呼び起こす。
この場所は、なんだったか…
己の記憶が正しければ、この場所には遺跡のような物が
建っていて、その遺跡に過去里の忍者が調査に来た事があったはずだ。
その手前にあった里…人を拒む里だったと…記憶している。
「ん~どうも腑に落ちないねぇ」
ハーと、息を吐き出し里の入口近くの林に身を潜め
カカシがパックンに指令を出した。
この辺りの調査。
人の気配が全く感じられない里など
存在しているはずがない、だからと言ってこの里の全貌を
幻術だけで作り上げているのであれば、どれだけの術者なのかとも思う。
カカシが座り込んでいた場所、入口からほど離れていない場所で
里の方から見ると、この場所はさほど見つかりやすくはないであろう。
岩があちらこちらに点在しているお陰で身を隠すには最高の場所でもあった。
その場所へ、カカシの部下の忍犬が暗部一名と一緒にその場所へ降り立った。
漆黒の忍服に身を包み、鳥の仮面をつけた男。
髪は黒く、後頭部が跳ねているその姿は幼い彼と重なる。
「久しぶりだね…サスケ」
「その名で呼ぶな、今は鷹だ」
「ハーイハイ…で、あの里なんだけど」
スッとカカシが指差す先、サスケ、否鷹がギラリと紅い目を光らせると
中の様子を見る事がやはり叶わず目をゆっくりと閉じるとため息を落とした。
その様子だけで判断出来たのだろう
カカシが一緒にため息を落とし、ナルトの
ジャージの切れ端を握り締めた。
それを、横目で確認したサスケがため息混じりに声を上げた。
「カカシ」
「なによ」
「アンタ、ナルトに惚れてんだって?」
イキナリ面と向かって言われては、答えがどちらだとしても
驚くのは無理はない。
カカシはその言葉に、ポロリとナルトのジャージの切れ端を落としてしまい
慌てて拾い上げた。
「いきなりだねぇ、しかも、その聞き方だと人に聞いたって感じみたいだね?
オレは自分の心を誰に告げた事もないし、それも、どうか答える義務はないでしょ?
だから、それに応えは返さない」
「へぇ、イルカが…こっちへ向かってる。
あんた、負けるぜ?」
不敵な笑みを浮かべながら告げる暗部姿に、苦笑いを向けるしか方法は思い当たらなかった。
「……なによ、好きだって前提みたいな言い方して。
イルカさんに負けるってのは、お前の直感?」
「……オレは、ナルトが」
そこまで告げたサスケの声を遮ったのは
サクラだった。
「カカシ先生~!ナルトは見つかりましたか?」
サクラの後ろに中忍一人、さらに後ろに今話題の人間の姿を視界にいれ
カカシが溜息を大きく吐き出した。
サスケも、この話はもうこれ以上は出来ないと
諦めて大きな岩に体を預けることとした。
サクラも、暗部が誰なのか…一度ジッと見つめてから
ペコリと頭を下げた。
「春野サクラです、よければお名前を」
「…鷹」
「分かりました、鷹さん…状況説明となにか作戦があるならそれを」
サクラが何事もないように会話を続ける中、一緒に到着したイルカも
無論サスケに気が付いた。
自分は実践慣れはしてはいないが、それでも実践に出た事がないわけではない
けれど、暗部を元の名で呼ぶ事は許されるものではない。
サスケと…呼ばずに良かったとイルカは胸をなで下ろした。
報告書によれば、ナルトがサスケと戦闘をし、互いに力の限りぶつかり合い
里へ戻ると約束をした。
ただし、今までの裏切り行為を見逃してまた仲間と呼ぶ事がどれだけ大変かも
忍として生きていれば理解はできる。
五代目も、カカシもサクラも。
ナルトに望みを託したのだ。
サスケを取り戻す望み、そしてこれから共に里で生きていく望み。
アカデミーで祈るしか出来なかった自分よりも
傷を負い、それでもサスケを追うナルトの姿に心惹かれていたのだろうと
イルカが薄く微笑んだ。
「現状は、目の前の結界をどうにかする事と
ナルトの居場所がここなのかは、ハッキリしない
ただ、カカシの忍犬がこの場所でナルトを一瞬だが感知した。
だから一番この場所が濃いとは踏んでいるが、作戦はまだ何も立ってはいない」
スラスラと現状を語るサスケに視線を一度向けてから
「そうですか…」
とイルカが答えるとカカシが徐に立ち上がり、指先を重ねて印を結ぶと
ぼひゅんと音を立ててもう一人のカカシが生み出された。
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