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贖罪8

続き

【贖罪】22 還った思い

「風遁!螺旋手裏剣!」

カカシの体のすぐそばでその術は発動した。
地面で受けるはずの衝撃すら解らず、カカシが目を薄く開くと
自分の体が、ナルトによって抱き上げられてるのに気付いた。

「生きて…た…?」

「先生 無茶ばっかするなってば」

涙ぐんだナルトを見て、あれ?と頭を捻る。
目の前でもナルトが戦っていて、自分を抱きしめてるのもナルトで…

あぁ、影分身か…と、理解するのに時間を要した。
そんなカカシを、そっと木の幹に預けるとナルトが飛び出そうとして
カカシ言葉に足を止めた。

「お前が生きていれば、オレは満足なんだよ…ナルト」

「ばっ、バッカじゃねぇの?スイはどうすんだよ!」

「スイ?何それ…」

「え?」

とりあえず、話している暇はないと、ナルトが飛び出し
どうにか敵を倒し終え、カカシを寝かせていた場所へと
ナルトが戻ると、クスッと笑ってカカシは頬に手を伸ばしてきた

「カカシ先生?」

「ん~?」

何時ものゆるゆるとした回答に、ナルトは変な予感を感じた。
近寄る顔、指先が口布を下ろそうとして…それが付いてない事に気がつき
あれ?なんて声を漏らしながらも、寄せてくる唇…

「何…すんだってばよ」

震える声で聞いてみれば

「キスだけど?」

なんて、とんでもない事を言い出して、慌ててナルトが声を上げる

「は?ちょ、まっ…んんっ!!!!」

強引に引き寄せられて、頭をしっかりと固定されると
暴れるまでもなく、重ねられる唇。
絡まってくる舌先、零れ落ちる程の唾液の交換は
昔の彼を見ているようで…
甘く痺れた脳を制御してナルトはカカシの体を強く押し戻した。

「何してるんだってばよ!」

グイっと口を拭うと、カカシが眉間にシワを寄せた。

「なによ…その態度」

「先生はスイがいるだろ!奥さんだって居るんだからオレに手を出すなって!」

「は?何それ…」

「え?」

「さっきから、スイって誰よ?奥さんって?…それより、オレのキス拭うなんて
お前浮気でもしてんの?ってか、なんでお前ここに居るのよ…
オレはサスケと任務中…って…あ、あれ?」

場所は…自分の戦闘時に居た場所とはかけ離れていて
カカシがまだしっかり動かない体をギシリと起こし、もう一度見回して
ナルトの顔を見やった。

驚愕の真実が受け入れられず、ぽかんと口を開けたままでいると
カカシに笑われた…。

「…何よ、そのアホ面」

ため息混じりに言うカカシにナルトが喰ってかかった。

「アホって!先生は本当にカカシ先生か?」

「…オマエねぇ、オレ以外誰がいるってーのよ」

クスクスと笑ってナルトの頭を昔のようにクシャリと撫でた。

ライドウとアオバが、向こうの敵を倒し拘束して戻った時には
カカシの腕の中で逃げられずにもがくナルトを見る事となった。

「カカシさん何やってるんですか?」

「え?あれ…お前らも居たの?」

「え?」

「何言ってるんですか?」

「いやいや、何言ってるのって聞きたいのこっちなんだけど」

キョトンとしているものの、カカシの手はナルトを離すまいと
拘束を緩めず、ちゃーんと話してもらうよ?ナルトクン…

なんて言葉を掛けていると

「記憶…戻ったってことですか?」

と、いち早く気が付いたのはアオバだった。

「記憶?って…何それ」

カカシが問うと、アオバが一通り説明をする事となった。
説明を聞いている間もナルトは離して貰えず
口さえも腕で塞がれて話せない状態で、バタバタと逃げ出すのに必死なのだが
そこはツボを心得ているカカシ。
離す気は毛頭ないですと言わんばかりに、拘束を強めるだけだった。

「へぇ…んじゃ~口布ないのって…そう言う事ね…それでナルトのあの態度…
って事かホラ、ナルト喋っていいよ」

一瞬で解かれた拘束。
一気に捲し立てるように話しだしたナルトを誰も止める事は出来なかった。

「な、な、なんだってんだ!
記憶戻ったならそう言えってば!オレ、オレっつ!!!」

フルフルと震える腕にカカシがそっと手を伸ばした。

「この任務は終わり?」

優しく聞いてくるカカシに、ナルトはコクコクと首を上下にするばかり
ライドウとアオバは、まだ中の片付けを終わらせなければならず
戻る事になっているが、ナルトとカカシは護衛と言うだけの任務の為
これにて仕事が終結したのだ。

「そ、んじゃ、帰るよ…ナルト」

「……ん」

既に泣きそうなナルトを見て、よっぽどカカシが戻ったのが嬉しいのだなと
付き合いの知らない二人は薄く微笑んだ。

「カカシさんも記憶を戻したばかりですし…
取り敢えず、俺達は中に戻りますので、ゆっくり帰って下さい。
お疲れ様でした」

と、言葉をもらい、カカシがナルトの手を引いて戻る事となった。
と…ボフンと現れたパックンにカカシが驚くと
綱手からの伝言をそのままその場で伝えてきた。

「カカシ、綱手様より伝令じゃ。
四方封印術の一つで、人型により身代わりを…」

うんたらかんたらと、パックンが全てを伝え終わるまで黙って聞いていたカカシが
うーん?と頭をひねるが、先程までの戦闘を全て記憶の外に投げ出してしまっているため
カカシ自身も何があったか掴めないでいると
ライドウが、その報告を聞き先程その事に辿り着き
カカシとナルトが殲滅した旨を伝えた。

「四方封印如きで綱手様に伝令送ったの?オレ…」

「そうだってばよ」

「…まぁ、脳みそ空っぽだったのかねぇ~記憶無くしたオレは」

はぁ…と深く溜息を付いて、カカシはナルトの手を取り
パックンにお礼を言ってから直ぐに木の葉へ向かって歩きだした。

「さ、もう誰もいないよ…おいで?」

両手を広げるカカシに飛び込みたい気持ちが大きかったが
顔を下に向けると、頭を左右に振りそれを拒絶した。

「ナァルト~?」

「ダメ…だって…ばよ」

「どーしたのよ?ホント、お前訳が解らないよ?
それとも何、スイってのに気を使ってるとか言うの?」

ナルトがその言葉に溢れた涙をそのままに頭を上下させた。

「……そんなに、オレとの繋がりの深い人なの?スイって」

「カカシ先生の…子供だってば」

「え?ちょ…ちょーっと、待ってナルト…
子供って?オレの?だからさっき奥さんって言ったの?」

首を上下させているナルトに、カカシは嘘ではない事を理解したが
なぜこんなことになっているのか…と、疑問が生まれる。

「ナルト…お前オレと別れたってこと?」

「そう…だってばよ」

「…オレはそれで、結婚して子供を作ったの?」

「そんな質問攻めすんなって!オレってばまだ頭混乱してて
何から言って良いかわかんねぇ…」

ポタポタと落とされる雫に、カカシはフーっと息を吐き出し
自分の知らない記憶をナルトに埋めて貰うのを諦め
そっと、ナルトの体を抱き締めた。

ビクッと慄いた体だったが、直ぐに腕の温もりに
互いに心が満ち溢れていく。

「ごめん…まだ良く解ってないけど…凄くお前を傷付けてんだって事は
解ってるつもりだから、ごめんな?ナルト…オレはまだ、お前と付き合ってる時の
気持ちしか持ってないから、そんなの出されたらお前はもっと辛いだけだよな?
とりあえず、綱手様は知ってるんだろ?だから、綱手様に全部聞くよ…」

ぎゅっと、ナルトを抱きしめて
涙が止まるのを辛抱強く待った。

=============================

【贖罪】23 失った記憶と、取り戻した記憶

落ち着いたナルトがポツリポツリと話しだした事は
カカシにとっては驚愕するものだった。

まずは、3年もの間記憶を無くしていたこと。
そして逆にその3年の記憶の一切を無くしてしまっていること。

何が起きたのか…

木の葉に到着すると、すぐに執務室へと向かった。
横で困惑したままのナルトを強引に引っ張り、カカシは執務室のドアを開けた。

「なんだ帰ったのか…ん?ナルト、どうした?」

「あ~綱手様…報告は私が…」

前に出たカカシに、綱手が視線を送ってくる。

「四方封印の話ではなさそうだな…カカシ」

ジロリと威圧的な目で見られて、カカシが居心地の悪そうな顔で伝えた。

「はい、それは解決したみたいです…
それより…私は、どうやら記憶を取り戻したらしいんです」

「は?記憶ってお前…まさか」

「はい、その代わり…3年分の記憶を無くしました」

「な…なんだって?」

「全て…お聞かせ願えますか?ナルトは、話せる状態ではありませんので…」

チラリと視線を向けると、泣き腫らした目と、噛み締めた唇
今にもまた泣き出してしまうのではないだろうかと言う、不安定な表情を
晒していた。

執務室の一角で、ナルトとカカシが座り対面に綱手が座って
まずはカカシの話を聞かせろと言う綱手に
覚えている事を語った。

「サスケとの任務で、滝壺に落ち…その後助けられたんですけど
私の記憶はそこから少し曖昧なんです。」

「曖昧?」

コクリと座った席で頭を上下させると、口を開いた。

「かなり、ダメージもありましたので…記憶が途切れてるんです。
覚えてるのは、目を…写輪眼を狙われて、助けてくれた女性まで
巻き込んで、戦闘になった事位です。
写輪眼を取り出して移植すると言ってた男は雷切で始末しましたが
その時に、どうやら何かしらの術を掛けられていたらしく…
そこから記憶がプッツリ切れています。
ただ、献身的に傷の治療をしてくれた女性、名は確か…」

「ウズリだろ?」

横のナルトの声に目を見開いた

「まさか、妻ってウズ…リ?」

ナルトに問いかけると、コクっと頭を上下させた。
まさか…と、カカシが頭を抱え込むと、ナルトはそれに続けた

「カカシ先生は記憶をなくして、そこの家でウズリさんと暮らしてたんだ
2年間…オレが仙人モードで探しても見付けられなかった」

その言葉に、カカシが抱えていた頭を離し、ナルトに詰め寄った。

「ちょ、それはないでしょ?お前の仙人モードはオレのチャクラを簡単に
見つけ出せるし、木の葉の国内での事だっただろう?」

「カカシ先生は…」

ぎゅっと手を握り締めたナルトに変わって、綱手が口を挟んだ。

「お前は忍と言うもの自体を忘れてたんだよ…カカシ」

「…忍と言うモノ自体…を?だって、オレはさっきまで任務に出て」

綱手の言葉が納得いかないと、両手を机に突き出し、身を乗り出すと
綱手がギリッと唇を噛んでから、言葉を吐き出した。

「ナルトが教えたんだよ!チャクラの練り方、技の出し方、それと、
記憶を無くしたお前が自力で掴んだ力で、忍に帰り咲いたんだ」

その言葉に、カカシはドサリ…と、ソファーに身を沈めた。
信じられない…己が忍を忘れチャクラを練る事すらしていないなど…
そんな自分が、信じられなかった。

忍をやめるなんて出来るわけないし、しようとも思った事がない
ましてやこの仕事が天職とまで思ってた自分には有り得ない話だった。

「そこまで…オレは堕ちたんですか?」

「堕ちたという表現はどうかと思うが…サスケがオマエに任務依頼されてな
それでお前を知るまでに2年掛かったって事だ」

「任務依頼?」

「あぁ、依頼書をここに!…シズネ!」

綱手が手を出して、シズネが火影の机の引き出しから一枚の紙を取り出し
綱手の手の上に乗せるとそれを机の上に乱雑に置きカカシの前まで押し出した。

【依頼書】 火の国の古里 ウズリ

火影様、忍を使って私の素性を調べては頂けませんでしょうか?

記憶を失ってしまい、世話になった人と、この度結婚を決めましたが
子が生まれ戸籍がないままでは、あまりにも子供が不憫でなりません
値は言い値で申し付けて下さって結構です。
もし、払えなければ尽力を尽くして用意させて頂きますので
どうぞよろしくお願いいたします。

「稚拙な文だね」

読み終えたカカシが深い溜息を落とした。

「違うぞカカシ…自分が書いた文だ
そう感じるだけで、この手紙を受け取った時は
私も何とかしてやりたいと思ってた…ただ、手の空いた人間がいなくてな…
サスケと上忍一人を向かわせ…報告を聞いたときは驚いたさ」

「……本当に、結婚したんですね」

「あぁ、そうだ…だからナルトが身を引いた」

ズキッと胸の奥が傷んだ。
先ほどのナルトの警戒心や、スイと言う名の我が子
ウズリと言う嫁…
ナルトは、カカシを嫌って別れたのではない…
それが痛いほど解ってしまう。

「ごめん…ナルト」

「あ、謝るなってば…」

互で互を傷付けあっている今
戻れる訳もないのだろう…カカシがグッと手を握り締め
続きを聞かせてくださいと、綱手に申し出た。

木の葉の里に戻ったのは一年前。
記憶操作の可能性がある事や、ナルトがカカシの仕事を
身代わりになって受けていた事や、子供の事…
カカシが妻を不審に思っていたので
その事と、送ってこられた巻物の事…
話していく内に時間だけが過ぎ、日が暮れた頃に
ナルトが、グッタリと力を抜いた。

「眠いのか?」

「いや、頭使い過ぎてもう、腹減ったってばよ」

表情は暗いままだったが、こんな大事な話をしている時に
腹が減ったとは…と苦笑うシズネに綱手が視線を送った

「…シズネ、一楽のラーメンを出前してやってくれんか?
私とお前と、カカシの分も頼む…
話はまだ終わらなそうだからな」

と言う綱手に目を輝かせて飛びついたのはナルトだった。

「オレ、運んで来るってば!待ってろバーちゃん!」

注文も聞かない内から飛び出したナルトに深い溜息を送った
が…それだけではない。
今話している内容は、妻の事…そして子の事…

ナルトには辛い事だったのだろうと、綱手は視線を落とした。

「ナルト…苦しそうですね」

カカシの言葉に視線を上げて答える。

「あぁ、お前は自分の半身だからって、アイツは苦しい事も飲み込んで
今までお前の護衛を勤めていたんだ…けどな?アイツはスイを裏切るお前を
見たくはないんだろうよ…」

「……スイですか」

「サクラに聞いたが、スイを自分と重ねて見てる節がある。
ナルトは幼い頃から、父も母もいないからな…
カカシの子にはそんな思いをさせたくないんだろうよ」

はぁ…と、深い溜息が落とされ
カカシは現状をどう打破するべきかと頭を回すも
彼女のことも、子供のことも…無かったこと等には出来ない。

「カカシ…お前がウズリの荷物からこっそりこっちに送ってきた巻物は
特殊な暗号が書かれててな…解読中だが
兄の…まぁ、お前が殺した男のと言えば良いか?
そいつの私物だろうな…元は木の葉の忍らしく、今知っている者を
探してはいるが、同年代で見当がつく者が居ないんだ…もうしばらく待てるか?」

「…ええ、解りました。で…私は自宅へ戻ったら
記憶を失ったと言っても不都合がありませんか?」

「出来れば…記憶は無くした事を知れない方が都合は良いんだが…出来るか?」

「……難しいでしょうね、態度とかも全然違うでしょうし
ま、ナルトが協力してくれるなら…多少なりと出来るかもしれませんけど
子供も、どう言う態度で居れば良いか正直分かりませんし」

ハーッと深く息を吐き出すと、ナルトがカチャリと執務室へ戻ってきた

「協力するってば…」

どこから聞いていたのか、そんな事を言いながら入ってきたナルト
片手には味噌ラーメン…。

執務室にラーメンの芳しい香りが充満する。

「…そうか、頼んだよナルト」

本当ならこんな事頼める事ではないのに…と
綱手が心を痛めるが、ナルトは至って普通な顔で
カカシの横に座った。

「カカシ先生は本当にスイを忘れたのか?」

「……あぁ、悪いが全然思い出せない」

そうか…と、切なげな目を向けてから
ナルトはゆっくりと麺を啜った。
影分身のナルトが直ぐに到着し
カカシ達にもラーメンを配ってから
影分身を解くと、綱手もシズネもカカシもラーメンを無言で啜った。

「ナルト…」

「……なんだってばよ」

「今夜はうちに泊まれないか?」

ナルトには辛いだろうが…これが最善の策だとカカシは思った。

「……む、無理だろ」

「オレはお前と居間で寝るし、様子を伺いたいんだ…
悪いけど、頼まれてくれないか?
人が居るのと居ないのでは態度が違っても違和感は与えないはずだから」

「サイを貸そう…ナルトをこれ以上苦しめる事はしたくない」

綱手が言うとカカシが首を振った。

「スイの事ですよ…」

スイへの言動をどうするべきか…と言う所でナルトに頼むのが一番
近いのだとカカシは言う。

確かに苦しい…けれど、スイを苦しめるくらいならと
ナルトはその申し出を承諾した。

=============================

【贖罪】24 記憶

現在カカシの申し出でナルトは、カカシの家に居た。
妻のウズリは、ナルトを厄介者が入ってきた…と言うような目つきで見ていたが
逆にスイはナルトにべったりだった。

「カワ…」

と手を引いてカカシを奥の部屋へ連れ込んでいくのを見送りながら
ナルトは唇を噛み締めた。

「ねぇ、なんで人が泊まるの?」

「……今日だけだから」

自分が出た時、寝室はこんな風ではなかった…なんて
他人事のように思ってしまう。
至る所にあったナルトの形跡は全て…彼女と子供の形跡に変わっている…。

「だって、この家は私とアナタの家よ?人なんて泊めたくない!
しかも、忍者なのよ?何されるか解らないじゃない!」

「あのねぇ…ナルトは悪さをする子じゃないし、立派な成人だよ?
何をそんなに怯えてるのよ…」

「怯えてなんかない!でも、家に人を泊めるのも上げるのも、私は嫌なの!」

「そう、言われてもねぇ…ナルトには今日泊まってくれって
言い出したのオレだし、一日ぐらい我慢してよ」

「嫌よ!」

「ここはオレの家でもあるでしょ?ナルトと話があってここに泊めるって言うのに
無理だったらオレ、ナルトの家に泊まるけど?」

「……なんでアナタまで行くのよ」

「だぁかぁらぁ…話があって泊めるってさっき言ったよ?」

「だったらさっさと話して帰して!」

「無理だって…」

ナルトに泊まってくれと切り出したのはいいが…これじゃー
ナルトが針の筵の上を歩かされているようなものだ。
カカシは深い溜息を落として、部屋を出るとナルトの手を取った

「スイ、ナルトの家いく?」

「にゃっとーいく!」

「じゃ、明日任務前にスイ連れて帰ってくるから、その間に
少しオレの人付き合いってのも考えてちょーだいね」

ひらり…と手を振ると、スイを抱き上げ
カカシはナルトの手を引っ張って家を出る。

「あなた!」

何かを言いたそうなウズリを無視して、カカシはナルトの腕を掴み
ナルトの家へと向かった。

「ちょ、先生!」

「あそこまで揉めると思わなかったよ…居心地悪かっただろ?
ごめんな、ナルト…」

「…しゃーねーってば、オレ引越しの時にあの人に嫌な思いさせてるし」

道すがら、イチャイチャシリーズの話をされて
それだけで嫌な思いって…と、カカシは頭を抱えた。

ナルトの家に着くと、スイが大はしゃぎで走り回り
ナルトは台所で夕食の支度を始めた。

カカシはスイの扱いに、どうにも慣れず
抱き上げてみたり、突っついてみたりとしていると
ナルトが

「そんなんじゃダメだってば!」

と、一喝を入れて、スイを抱き上げた。

「痛かったか?」

フルフルと首を左右に降ると二パッと笑うスイに、強い子だ…
と、頭を撫でてやるときゃーと声を上げて喜んでいた。
その二人のやり取りを黙って見ていたカカシが
そっと、スイの体をナルトから受け取り、優しく抱きしめてやると
ちち!ちち!と、カカシを呼ぶ。

「ちちって…オレの事?」

「あぁ、スイは先生の事をそう呼んでるってばよ」

「へぇ…」

キャッキャとカカシの腕の中ではしゃぐスイと風呂に入るのは流石に怖くて
ナルトに頼むと、案外簡単に入れてやる事ができた。

「な、なぁんか…オマエ慣れてない?」

袖と足元を巻くりあげ、ナルトの白い肌が顕になる。
今の記憶にしっかりと彼を抱いた記憶が残って居る御蔭で
その柔肌にゴクリと喉を鳴らしてしまうが、気付かれてはならない…

「…そうか?あぁ…任務で子供の世話ってのもあったしな」

「任務…ねぇ」

「そうだってばよ?」

「ま、オレの知らない間にオマエも幾多の経験を積んだんだろうしな」

「ま、そ~言うこと!」

なんて胸を張って言うもんだからカカシがクックックと笑いを噛み殺した。
こんなやり取りでさえ…ナルトには懐かしく、そして新鮮で
甘い雰囲気はないものの、カカシがそこにいると言うだけで幸せだと思えた。

「ナルト…オレは記憶をなくしてオマエに術を習ったんだよな?」

「え?あぁ、そうだってばよ」

「最初はチャクラの貯め方から教えたの?」

「おう!、イルカ先生に相談したら、順序よく教える事が大事だって…
だから、アカデミーで習ったことを最初に教えて、その後で
チャクラを使った木登り、そして術…の順番でカカシ先生に教えて貰った通り
オレは教えたってばよ」

へぇ…と、カカシが微笑むと、ポツリと言った。

「だったらナルト先生だな?」

クスクスと笑いながらテーブルに置かれた食後のコーヒーを口に含んだカカシ

「先生って!!!カカシ先生は優秀すぎて、直ぐにオレの手を離れたかんなぁ~
サスケに写輪眼の使い方を習って、サイに術を何個か習ってた…
オレは影分身と螺旋丸位しか教えれなかったけど…」

「それでも十分自分の命は守れるからね…ありがとうね、ナルト」

照れくさそうにへへっと笑うと
ナルトはテーブルをよけて、布団をベットからおろした。

「え?ベットで寝ないの?」

「スイが寝るならベットは柵がないと落ちるからさ
床に敷けば、寝返り打っても暴れても落ちる心配はねぇってばよ!」

その言葉に、お前にしては随分頭が回るじゃないと、カカシの時折吐き出される毒舌に
苦笑いでお前にしてはってのは余計だと告げた。

「どうするんだ?」

スイを挟んで川の字になって寝転がった三人。
ナルトが思い出したかのように口を開いた。

「ん?スイの事か?」

「それもあるけど…この先」

ナルトの部屋の古びた天井を見ながら二人が交互に話を繰り出す。

「……まだはっきりとしてないけどさ、オレの子であるってのは
髪の色を見れば解る…妻も自宅に間違いなく居る…しかも
命の恩人だしな。もう少し調べたいかな…それからどうするか決めるよ」

もし、彼らを裏切ることを選択すれば…
ナルトはカカシを一生恨むだろうな。
そんな事をふっと思った。

「スイだけは…裏切るなってばよ」

「ん、解ってるよ。
オレはオマエもスイも裏切るつもりはない…
ただ、調べてみなければ何も始まらないからね
ま、出来るだけの事はするつもりだけど…ウズリがあれじゃぁ
オレもあまり出歩けないだろうねぇ…」

「今までもそうだったし…気にするなってば
オレは大丈夫だから」

苦しそうに押し出される言葉のどこが大丈夫なんだと
本来なら突っ込んで甘やかすのに…それすら出来ない自分の立場に溜息を落とした。

翌朝から、カカシは任務前にもかかわらず調べ物をしては
里から離れ、時間が開けば何かをしている状態になり
自宅に帰るのが遅くなるたびに、ウズリに質問攻めに会う事となった。

でも、調べなければ成らない。
カカシはナルトから預かった自分が書き残した記憶のない巻物を開いた。

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