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続き
★番外編<総司と麻耶2>★
【 -優- 】
巡る季節、麻耶16歳となっていた
総司が忙しいと、そう伝えて来たあの時を思うと
携帯には何度も手が伸びていたが、メールや発信をする事をしなかった
否、出来なかったのだ
また
断られるのだろうか?
そんな不安が、押し寄せてくるから
「ねぇ、剣道部の事でちょっと相談あんだけど」
同じ二年の三橋が、麻耶に話しかける
麻耶は基本男子とは話をしないのだが
部活動の事であれば仕方が無い。
「なに?」
「放課後、道場で話したいんだけど」
「部活は休みじゃない?部長でもない私が話しだなんて、無理ね」
「いや、部費の事と、男子部の存続の事も有るんだ…」
会計をやっている麻耶は、眉間に皺を寄せた盛大に溜息を落とし
了解せざる終えなかった
<放課後>
授業終了の鐘がなると麻耶は道場へと入り男子が来るのを待った
「あぁ、遅くなった…」
予定の時刻より、15分ほどの遅刻
目くじらを立てるほどではないが、ごめんの一言も無いのだろうかと
麻耶は溜息を落とし、話って?と切り出した
「男子部なんだが、先輩が今まで怖くて何も出来なかったんだ」
そんなのは厭と言うほど見てきている
今更取り繕ったって、変わる事は無いだろうと思った
「で?」
「あぁ、先生がコーチみたいな人が居ないかと聞いてきたんだよな…」
「あぁ…」
前々からその話は出ていた。
麻耶に相談を持ちかけられたが、そんな人思い当たりさえしなかったが…
今は
「なぁ、誰か居ないか?」
「……。」
「いっ、いるのか?」
「まぁ、一人思い当たるけど…」
その言葉が災いして、結局麻耶は、初めての連絡を取る事と成った
部費の件は、部長と相談しなければ、何処を削減させれば良いかなど
決められる訳が無いと断りを入れると、携帯を片手に持ち、深く溜息を吐いた
今の自分は、あの動物園で遊んだ、無邪気なままではいられなかった
冷たくなったと…最近特に言われるのは
この部活のせい
実力が有ると総司に言われ浮かれていただろうか?
たった一言の忠告を、皆で捲くし立て、一人だけ弾かれている
けれど、それでこの道場を去るのは嫌だった
だからこそ、今もまだ、大会には出してもらえなくても
この部に居続けているのに
『あなたの実力だったら、大将でも良い位なのに』
総司の言葉を思い出すと、涙が滲み出てくる
もう、あの大会以来、練習試合すら出させて貰えない自分が
総司を呼んだ所で、自分は指導を受けられるのだろうか?
そんな疑問さえ浮かんでくる
RuRuRu…
10回目のコールで、あの穏やかな声が耳に響いてきた
「はい、沖田ですけど」
「あっ、えっと…」
「麻耶ちゃん?」
「はっ、はい!いきなり電話でスイマセン」
「あはは、気にしなくて良いですよ。どうしましたか?」
言葉にならなくて、麻耶は次に吐く言葉を脳内で羅列してみる
元気でしたか?
今は練習忙しいですか?
うちの部の指導を…お願いできますか?
どれを…彼に伝えたらいいのだろう?
「麻耶ちゃん?」
「え?あっ、すいません」
「ん~もう少し待ってくれれば時間できるけど、会って話する?」
意外に総司から麻耶を誘った
夕暮れ、自宅に一度帰り着替えると
母に遅くなると伝え、麻耶は慌ただしく自宅を飛び出した
自分から誘うのは気が引けていたから
とても嬉しかったけれど、部活の事を考えると、やっぱり気分はズンと重くなっていく
待ち合わせのファーストフード店に入ると、ウーロン茶を頼み
二階の禁煙席に座った
と…
「麻耶だ!」
声が聞こえて、驚いた
剣道部の三人組。
いつも仲良く遊んでいるうちの二人が麻耶の席に自分の飲み物を持って来た
「へ~アンタでも、こんな所に来るんだ?」
「人と待ち合わせしてるから…席外してください」
麻耶が、キッと睨むとその言葉は簡単に流される
「はぁ?待ち合わせ相手が来るまで良いじゃん」
「ねぇアンタ遊んでくれる人いんの?」
「ぷっ、彼氏だったりして~?」
「きゃははは~ありえねぇよ~」
言葉がドンドンと、麻耶の心の温かさを奪っていく
クラスでは、別にどうって事無く過ごせるのだが、やはり部活となると
そうもいかない・・・
先輩に妬まれ始めたのは一年の、入部の時だった
練習で、先輩達を叩きのめしたのが事の発端
先生はやはり、実力の有る人間を大会に出そうとする
そして、大会前のレギュラーの座をあっさり取ってしまった事に
とうとう、部の人達が反発を起したのだ
「先輩、すいません、本当に…人と待ち合わせしているんで」
「なんだよ、折角仲良くしてやろうと思ってんのに」
ただ、バカにしたいだけでしょう?と、心で思うが
麻耶は、その後一言も声に出さなかった
先輩と呼ばれる二人組みが、一人で座っていた先輩の方へ戻ると言い出し
ホッとした
もし、このまま居続けたら
自分は平気でも、沖田さんが嫌な思いをするのは
正直勘弁して欲しい
「電話…してみようかな…」
この場所には彼女達が居る
自分は良い…
言われる事にはなれている
けれど、沖田の前で、同じ事をされたら
きっと、大人しくなんて出来ないだろうから…
RuRuRu…
チャッチャッチャ~♪
携帯を耳に当て、目の前で白い沖田の携帯が鳴り響く
「ぷっ、何か用でしたか?」
「え…あ、すいません…」
携帯を切ると、出ませんか?と総司に促すも、今来たばかりだしと、座り込んでしまった
ちらりと、大きい総司の横をすり抜け、視線を彼女たちにやると
三人とも、沖田総司を見てあっけに取られている
「…ちゃん?」
「麻耶ちゃんっ?」
「あっ!すす…すいません」
「どうしたの?」
麻耶の視線の先が、気に掛かり振り向いてみると、三人の見覚えの有る女性
(あの時の三人か…)
剣道の大会で麻耶の事を殴った人達
(だから、出ようって事ですか…全く、幼稚ですねぇ…)
「麻耶ちゃん?ここで話すのは辛いかい?」
「え?あっ、いえ…すいません、黙り込んじゃって」
「で…久しぶりですね?」
「あ、ええ、お久しぶりです。」
「急に呼び出して迷惑ではなかった?」
「迷惑だなんて!」
クスっと総司が微笑むと、先程まで凍っていた心が温かく溶ける感覚に
麻耶もニッコリと微笑んだ
だが、時間が食事時と重なったせいか、店が幾分混んでくると
会話も聞き取れなくなってくる
「出ようか?」
麻耶はその言葉に、嬉しそうに、ハイと答え、二人連なって階段を下りた
下まで降りると、車を移動してくるので
10分ほど中で待っていてと言われ、麻耶は自動ドアの近く佇んでいた
「麻耶!あの男誰?カッコイイよね~紹介してよ~」
さっきの態度とは大違いの三人が、麻耶を取囲んだ
店の中でこれは不味いだろうと、麻耶は自動ドアを抜けて店の横に移動すると
「あの人は、簡単に紹介出来る人ではありませんから」
と、言葉を紡ぐと、総司に付いて一番しつこく聞いてきた女が手を振り上げた
「二年の癖に生意気言うな!」
その振り上げる手が何処へ落ちるのか…
一瞬で判断し、歯を噛み締めた
「はい、そこまで」
振り上がった手が落ちてくる事は無く、代わりに総司と視線が絡んだ
「沖田さんっ!」
「あ…ちょ、麻耶のゴミを取ろうとしただけですけど…?」
瞳一杯に涙を潤ませ、総司に身体を向き直ると、ニッコリと微笑む彼女に
嫌悪感が生まれる
さっきまでの態度との違い
女を全面に出して、彼を誘惑しようとしている
残りの二人も、総司に釘付けと言う言葉が相応しいだろう
「麻耶ちゃん、行きましょうか」
総司にグッと腕を掴まれ、歩き出した
残された三人は、ただ呆然と去っていく二人を見るしか出来なかった
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2011.3.29
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