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最終話
★番外編<総司と麻耶>★
【優】最終話後編《完全なる補完計画》だと、イイナ(殴
2日の休日が得られたその日、拓海の自宅へと向かった
寄宿舎からは、そんなにかからないのだが
早めに出た為か、拓海はまだ、安眠の世界に身を置いていた
「おーい?拓海?」
揺すっても、叩いても、うーんとは唸るものの、瞳を見る事は無かった
溜息を落とし、机の上にある漫画に手を伸ばした
「全く、拓海はいつも漫画しか読まないんですから…」
『浅葱の風』と言うタイトルの漫画
時代物で、刀を振り戦うと言う少年漫画
同じ名前の主人公…
やけに心脈が早くなり、いつの間にか魅入られたように
読み耽った。
拓海が起きて、横に座っているのも気が付かないほどに…
読み終えて、ふーっと深く息を吐くと、持っていた本を手から滑り落とした
寝ているはずの拓海が横で面白くなさそうな顔をしていたから
総司は慌てて、話しをしに来たんだと伝え
本を机に戻すと、ゴメンと呟いた
「面白れ~よなぁ~それ。総司同じ名前だしな~」
「え?あ、はい…」
本を読んでから更に胸がざわついてはいた
その正体はまだ解る所ではなかったが
何か嫌な予感と、言い知れぬ恐怖
そして、亡くなった病にやたらと気持ちが落ち着かなくなり
拓海と外で話をする事とした
「総司、麻耶と逢っても平気か?」
「え?あ…今はまだ、あの子も辛いでしょうから…」
その言葉に、拓海は溜息を落とすと話を始めた
総司が調べてきた対策を伝えると、どうにか
理解できたらしく、彼なりに、出来る限り助けたいと言う
無論総司とて、麻耶の危機ならば、絶対に助けたいと願っていた
「じゃーこれから麻耶ん家行って来るわぁ」
ダルそうに立ち上がった拓海に、頼みますねと伝え
総司はその場を後にした
何かあったら、必ず電話をするように
そう、麻耶に伝えてくれと電話番号を渡す事を頼み
総司は自宅へと戻った
その夜…
鳴り響いた着信は、麻耶のものだった
「麻耶さん!?どうかしましたか?」
電話番号を教えて居たのは家族と、拓海、麻耶だけ
登録されていない番号は麻耶しか居なかった
「え?」
素っ頓狂に出された声に、総司も”は?”と、返した
「えっと、沖田ですけど…」
「えっ!?す、すいません…あ、ごめんなさい私が間違えましたっ」
その間違い電話で、なんだかお互いに可笑しくなり、プッと
噴出した
「久しぶりですね?」
「あ、っはい!」
「電話…掛けなくて良いんですか?間違え相手に」
「あっ!そうだった、ごめんなさい、そ、それと
心配かけてスイマセン!ストーカー私の勘違いかもしれないので
気に病まないで下さいね!?」
「ええ、大丈夫ですから」
「本当にスイマセン、それでは…失礼します」
短い間違い電話
なんだか、心が温かくなったようで
電話を切った後も、その携帯を握り締めている総司とは他所に
麻耶は、電話相手と口論になっていた
付き合ってくれと言われ、その結果を伝える電話だったのだが
断ると決めていたのに、相手が納得をしてくれなかったのだ
好きだから、付き合ってくれと電話番号を渡され
その場で断るつもりが、その思いを告げた男は
その場所には居なかった
だから、電話で断ったのだが
断られる事に納得がいかないと、怒っているようで
何を言っても聞いて貰える状況ではなかった
だが、麻耶も気性ははっきり物を言う物を持っている
そのお陰で、お互いに話が通らずに
付き合わないと言い続ける状態となっていた
決着が付かないから、逢って話をしようと
夜の10時に呼び出され、麻耶は渋々その場所へと向かった
単身で乗り込んだ自分がバカだったと
気付いたのは、男に力任せに押し倒された後
人気の多い場所を選んだはずが、歩きながら話そうと言われ
歩いているうちに、その場所へと誘導された
男が、押し倒された麻耶に跨ると、”おい”と、麻耶とは違う方へ視線を向けた
「あっ!あなたがた!!!」
押さえ込まれた状況で、人の気配を感じ見上げれば
先日因縁を付けて来た男二人
ニヤニヤとイヤらしい微笑を向けながら、男と言葉を交わす
「頼むぜ?」
「あぁ、何時ものように人払いしとくぜ」
そう言い残し、彼らは少し離れた場所で
音楽を大きく掛け、ダンスを始める
麻耶は唖然とした
計画的にも程が有る
これじゃ、今の状況がやばいもの以外の何でもないじゃないかと
イラ付を感じ、男の腕を噛んだ
痛みに、腕の力が抜けた時に、その場所から這い出て
逃げようとして足を掴まれた
自分の場所へと引き戻そうと足を引っ張った時に
麻耶のポケットから携帯が落ち、更に引っ張られると、男が再び跨った
「ちょっと可愛いからって、気取るな!」
パンと頬を殴られ、顔が横を向いた時
そこに見えた携帯
男にばれないように、電話を掛ける事が叶えば…と
思った矢先に、着信音が響いた
男が慌ててそれを拾うと、着信名を見る
『神谷』と表示されたそれは
家族だったら、こんな時間に戻らないのはおかしいと言い出すかもしれない
だったら、電話に出て、遅くなると伝えれば良いだけ
男が、電話を渡し、遅くなるからと伝えて直ぐに切れと
伝えて来た
首元に、痛いほど押し付けられたナイフに、青ざめて
麻耶は電話を取った
「あ、麻耶?今日は…「あっ、おかーさん、ゴメン帰り遅くなるから!」
拓海から掛かって来る定時連絡
先日総司の提案で始めたばかりのソレ
拓海と解ってて、母と言ったら何か感づいてくれるだろうと言う願いだった
GPS機能は、先日拓海に言われるがまま、開放状態
検索してくれれば、一目瞭然だ
麻耶は時間稼ぎの方法を考え出した
だが、男がソレを待つわけも無く
麻耶の上に圧し掛かると、一気にブラウスを引き裂いた
「キャ!」
その声に、男がポケットにあったハンカチを口へと押し込んで
ナイフで麻耶のブラの中央を切り裂くと
胸元が風を感じる
男の舌が這いずり回る事に嫌悪感を抱きながら
何度も名前を呼んだ
助けて
たすけて
沖田先生…
拓兄ぃ…
と、フッと音が止んだ
男が、チッと舌打ちをして、麻耶の口に布の上から手を置いた
「静かにしろよ」
ナイフを首へ押しやり、緊張のせいか、上の男の呼吸が荒く感じた
と…
男が急に「いてっ」と、声を発し立ち上がった
麻耶はその隙を付いて、逃げ出すことに成功し、前から駆け寄ってくる
拓海を見つけて、抱き付いた
男はそのまま、何処かへと逃走し、事なきを得た
「麻耶っ!」懐かしい声に、拓海の胸から顔を上げる
否、先程間違えて掛けたのだ…懐かしいはずが無い
だが、凄く逢いたくて
凄く逢いたかった人が
自分の側まで走ってくると、躊躇う事無く抱き付いた
その麻耶の身体に総司が着ていたジャケットを羽織ってやり
ギュッと抱き返してくれた
「怖かったね…大丈夫ですか?」
コクコクと必死に頭を上下させると
総司がポンポンと頭を撫でてくれる
拓海が、総司は人が悪いとブツブツ文句を付けてはいるが
麻耶にしてみれば、念願の総司の胸に収まれている…
それだけで心が浮き立った
「拓海、今日は私が麻耶さんを送りますから
帰って休んでください?」
「はいはい、全く良い所全部掻っ攫いやがって」
「あはは。石投げのコントロールは私の方が良いですからね~」
「言ってろ!ったく…麻耶、気にスンナよ?」
そう言い残し、彼は帰路に付いた
久しぶりの総司の車
助手席に乗ったはいいが、破かれてスースーする前が気になって
モジモジと総司のジャケットを引き寄せた
「聞かれるの、嫌かも知れないけど警察に被害届け出しましょう」
「……」
「ナイフで脅されたんでしょう?頬と首に傷がありますよ」
「……」
「被害者なんですから」
「私、先生に間違えて掛けましたが、あの人に付き合ってって言われてました
断ったら、逢って話さないと決着が付かないほど口論になってしまったんです
告白されて嬉しかったかとか、付き合ってもいいかなと考えたとか
根掘り葉掘り聞かれるのは知っています。
ただ、私っ、誘ったかとか、そう言うの聞かれるのは凄くイヤなんです!
だから…警察には行きたくないです…」
その言葉に、総司が唇を噛んだ
逮捕する権利はまだ、持ってはいないのだ
現行犯で逮捕してやりたいほど、怒りが有るというのに
自分は何もしてやれないのか?
一体…何の罰が自分を陥れてるのか
総司は、車を止めると、深呼吸して言葉を発した
「解りました…余計な事言ってごめんなさい」
「…沖田先生、私まだ先生と付き合うこと、諦めていませんから」
「え?」
「私、別れたくないんです。自然消滅でも良い
ただ、付き合っていると言う思いだけ下さい!
好きな事をするのを邪魔したりしませんから!」
「……ちょ、っと…それは、今は関係ない事です」
「私には、襲われた事より、そっちの方が大事なんです」
「……」
しんと、静まった車内
互いに一言も発さなかった
ダメだと、言い聞かせたはずなのに
自分の身体より、大事な事が自分?そう考えると
総司の頭の中は混乱した
魂が惹かれあう
そんな言葉を聞いた事があった
それなのだろうか?
だが、自分は漠然としか解らない
スキか嫌いかで言えば、スキだとは言える
だが、自分の好きな事を止めてまで、彼女を優先した事は無かった
だから・・・
自分の解らない思考だから、答えるのを戸惑った
「まだ、別れませんから」
降りる時に彼女が言った言葉
それから、連絡が来るとか、メールが来るとかも一切無く
ただ漠然と一年が過ぎ、神戸へと転勤した
彼女に答えを出さなくても良いのだろうか?
考えても答えは出ず
時は過ぎた
そして…答えを先延ばしにした事を後悔する時が遣ってきた
音も無く静かにその時は動いていた。
拓海から掛かって来た一本の電話…
「麻耶が、事故で意識不明だ!」
その言葉を、遠くで聞いた気がした
何も、してやれてない
彼女を振ることも
彼女を幸せにする事も
していない
何が刑事になりたいだ
あの子を傷つけて
他の誰が守れると言うんだ
確かにあやふやだった
けれど、別れた状態なのは確か
総司は、現地に駆けつけれるのは二日後とだけ確認して
再び仕事に戻った
気を抜けない仕事
思い起こせるのは彼女の笑顔
好きなのだろう…きっと
けれど、夢中には成れなくて
大切なのに、突き放してしまう
やっと、麻耶の入院している京都の病院に到着すると
人工呼吸器に繋がり、まだ赤く腫れ上がった左頬が痛々しく見えた
「沖田さんでしょうか?」
目を真っ赤にして、頭に包帯を巻いた女の人が
総司に声を掛けてきて、すぐに母親だと解り、ペコリと頭を下げた
「声、掛けてもらえますか?」
その言葉に、コクンと頭を上下させ部屋へと入った
痛々しい彼女は、襲われた時のように青ざめていた
総司は、麻耶の手を握りゴメンと何度も呟いた
「麻耶…起きて?起きて下さい…」
何度も彼女を呼ぶ姿に、母親が、部屋を出た
「逃げた私が悪いのでしょうか?」
「ねぇ、麻耶…」
私はこの先…誰も好きになどなりませんから…
戻って来て下さい…
約束します
今度はちゃんと、貴女と向き合うと…だから…
帰って来て下さい……
麻耶…
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FIN2011.6.12≪補完!≫
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