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贖罪9

続き

【贖罪】25 二人のカカシ

記憶を失い、自分を知る術を失ったオレ。
もしまた記憶を失ったらと言う恐怖と向き合うために
この巻物を残す。

解印で、中にある巻物を見れば、オレを知れる。
そう書かれた巻物を全て開くと、中には術式が記載されていて
それを解の印で開くと

3本の巻物が出てきた。

シュルリ…と開かれたそこには
カカシの過ぎた過去を記載しており、術の習得や
ナルトに習ったこと、そしてナルトへの…思いまでもが綴られていた。

「はっ…記憶をなくしても、ナルトに惹かれたって訳か…」

はははと、から笑いをしてから、二本目の巻物を開いた。
妻ウズリに付いての記述。

術のかかったものが3つ…
一つは綱手に既に送っており、残り二つは自宅にまだ置いてあり
場所を移動していなければ…

「へぇ、前のオレも頭結構回ってたんだな…確実に無くなったのを
分からなせないためのダミー…か、タンスの裏ね…後で見てみるか」

これを記載した当時より自分の力も、能力も倍以上に違う
頭の回転だって忍を知らない男より数段嗅覚が働くはずだ。

カカシの日記のようなその巻物が置かれていた場所は、自宅ではなく…
ナルトの家だった。
何かあった時は、この巻物を渡してくれと…
伝言を残していてその伝言通り、カカシの記憶が戻り、泊まりに来た日に
渡されたのだ。

何故かその場で見るのは戸惑われたため、ナルトとそうも取れない共有の時間を
堪能しようと思った…と言うのもある。

本日は休日で、目の前ではスイがチョウチョを追いかけてキャハキャハと楽しそうだ。
散歩を言い訳に出て来たはいいが…最近は出かけるのに何処へ行くのか
何時間で戻るのか…そう聞かれることが多くなっている。
前までは帰ると、どこにいたのか何をしていたのか…で終わっていたが
曖昧な返事と、帰る時間のズレに妻が束縛を強めたのだ。

カカシは本来忍として自分の時間を十二分に持てたこと等なかった。
現在はカカシの身代わりにナルトがその状況である。
それも、実際は頂けないと思っているし
その任務は自分がやりたいと言い出したが、綱手もナルトも反対してしまい
カカシは、今まで通りの時間の過ごし方をするしか出来ずにいた。

その御蔭で、あの女の事を調べることに時間を裂けるのだが
どうあがいても。ナルトとの時間を取り戻す難しさに
苛立ちは募る一方だった。

ただ、この日記のようなものの記載の中にあった
自分の命を狙った男の正体…それがウズリの兄だと言う情報を手に入れたため
そこから突破口を見つけ出そうと
木の葉の重要機密の部屋へと足を向けた。

「はたけカカシです、予定時間は2時間ほどで…」

「…貴方は記憶を失ってAランクの書物しか見せれないはずでは?」

「…いや、記憶が戻ったんです。
暗部に在籍していた事も覚えていますし、なんでしたら…
この中の書物の中央に置かれたものの名前でも言いましょうか?」

「…まぁ、それを言うのが通る証明でもあるから、聞かせてもらいましょうか」

”木の葉歴代火影の術と家系図”

と、答えるとスンナリと扉の前を守っていた忍たちが体をずらした。

「はたけ上忍お帰りなさい」

「ん、ただーいま…じゃ、ちょーっと時間貰うね」

きぃぃ…と開かれたドアの奥に置かれた書類
そこに目もくれず向かったのは、木の葉の忍一覧。
そして、その中には今は亡き友の名や勿論四代目となる前の波風ミナトの名前も
記載されている。

「顔は覚えてるんだよねぇ…って!小さかったな…ナルト…」

若い忍者は前のページに載っていてサスケ、サクラ、ナルトと
12歳当時の写真がしっかりと残されていた。

写真は、2年に一度更新されるため
現在21歳のナルトのページには4枚の写真が残されている。
だんだん顔の輪郭がふっくらしている子供らしさを抜けていく様が
まざまざと目に入り、懐かしさに頬を緩める。
サスケに至っては3枚だったが、ちゃんとこの国へ戻った証とも取れて
ナルトが頑張ったからなぁ…なんて懐かしい思いに浸っていると

「あぁ、いかんいかん…目的を忘れる所だった…」

と、ページを素早く捲っていった。

「これか…」

声を上げてそのページに手を止めると、すすっと指先を走らせ
文章を読んでいく。

木の葉忍者認識番号0087397 ジャノメ
家族構成 妹、ウズリ 母ウルハ 父マイガ

中忍
アカデミー主席卒業
下忍時代が少なく、すぐに中忍に上がる。
但し、身体上の都合により上忍に上がる事は叶わず

うちはの助けを借り里抜け
追跡を送るも、感知タイプの彼を見つける事が容易ではなく
未だ追跡中。

幻術、瞳術に長けていて封印術を多用する。
結界術はかなりの強度を持つ。

と記載されていて、あぁ…それであの里を丸ごと幻術に陥れたのか…
と納得する。
この部屋の情報は、持ち出し禁止の書類ばかりで一般の人間には入れない
カカシが入れるのは暗部時代に培った努力の御蔭でもあるのだが
暗部に二度と戻りたいとは思わなかった。

「よし、これだけ情報があれば…ま、なんとかなるでしょ」

カカシは元の場所に本を戻し、一緒に中に入った監視の男に
出ますと告げると、自宅へと向かった。

本来今日は任務が休みだったのだが…カカシは時間が欲しいために
任務だとウソを告げて出てきている。
時間通りに戻らなければ何かと言われるのが目に見えてるため
自宅へと戻ると、彼女が迎え入れてくれた。

実際…一緒に住んでみると
あまりに絡んでくる事も少なく、スイさえ構っていれば
彼女は何もしてはなこない。
夜だけは…何度か誘われる事もあったが、カカシは頑なに疲れてるからと
断る事をしていた。

否…きっと、あの時と心持ちが違うのだから
彼女を抱く行為が出来ないと思った。
任務でするのとは全く違う心のない交わりなど
自分には必要のないもの。

カカシはそういう割り切りが強いために
自分の欲しいものじゃないモノには興味すら示さないのだ。
前のカカシは…それでも、彼女とナルトを天秤にかけていたのだろうか?
ナルトを思いながら…彼女と交わっていたのだろうか?

そんな事を思った。

自分の中で妻のウズリは敵と言う思いがちらつくと
一緒に眠る事も出来ずに、カカシは深い溜息を落とした。

敵ではないかもしれないが…自分の希望、思い、愛する人間まで
全て打ち砕いたのは、彼女であり
ナルトを苦しめるくらいなら、死んだ方がマシだったかもしれないとまで
思って舌打ちをした。

こんな考えではいけない…。
昔の自分に戻ってしまいそうな、そんな恐怖。
周りをを信じれず、戦ってきた悲しい過去は
未だにカカシの心を蝕んでいきそうだった。

(いい加減…寝ないとまずいよな)

既に4日程、マトモな睡眠をとっていない。
変な思考もそのせいだろうと頭を一度振った。
ナルトの家で眠った以来、ゆっくりと体を休ませるだけのために
布団へ入るのだ。

翌朝、いつもより早い時間に任務だと家から出ると、まっすぐナルトの家へと向かった。

「よっ!」

額当てをグッと締め付けている時に、背後から聞こえた声に
ビクッと背筋を伸ばしジト目で窓際を見ると
案の定、想定していた通りの銀髪が何事も無かったように
ニコニコと手を上げていた。

「んぁ!朝っぱらからどうしたんだってばよ」

「あーナルトはこれから任務だよな?」

「?…そうだけど」

「悪いけどさ…部屋貸してくれないかな?」

「は?」

「悪さはしないから…さ?」

「……まぁ、良いけど、何するんだってば?」

「寝るだけだよ」

「はぁ!?」

「ちょ~っと、寝たいだけ。
ホラ任務遅れるでしょ?さっさと行った行った!」

「ちょ、カカシ先生!」

「あ~鍵は…昔の合鍵、持ってるから締めて出るから安心してね?
気を付けろよー」

と、まぁ強引に話を進められて部屋を明け渡したが
ナルトは任務に向かう途中にハタと思いだした。

カカシの習性。

彼は、敵と見なした者の前や、任務中は殆ど眠らない。
自宅でも強力な結界を張ってから寝るほどの男だった。
基本他人と居る時は深く眠りにつく事が出来ないのだ。

(まさか、奥さんとスイが居るから…寝れねぇんじゃ…?)

自分の家にスイと泊まりに来たあの日から5日。
もしナルトの想像通りであれば…
流石に不眠だったらどこかで眠りたいと願うのもありうる話…

スッとナルトが立てた指を交差させ影分身を生み出すと
今来た道を、逆走しだした影分身に、頼むってばよ!と
伝えると親指を立てて、速度を早めた。


「うわ…ナルトの匂い…」

ベットにそのままベストを脱いだ状態でごろりと転がると
昔の落ち着く場所だったソコでゆっくりと目を伏せた。
そのベットで何度彼と交わったか…
何度愛してると、思いを伝え合ったかわからない

「オマエを思うと…キリがないな」

苦笑いを浮かべ、深い眠りに入る寸前

カタン…

物音に、結界を張らずに寝るつもりだったのか?
と驚いた自分の視線は、窓から自分のように入ってきたナルトに向けられた。

「先生…この部屋でいいなら
いつでも寝に来いってばよ…
先生全然寝てないんだろ?」

「あら…バレてたのね…
ちょっとねぇ、悪いけど本当に使わせてもらうよ?」

「おう!いつでもどうぞだってば!」

「オマエ影分身だよね?」

「え?あぁ、そうだけど…」

「ちょっとだけ、眠りに付くまででいいから…
傍にいてちょーだい」

グッとナルトの腕を引き、カカシの腕の中へと
あっさり引き込まれたナルトが逃げようとするけれど
逃げれる訳がないのを思い出し、すぐに大人しくなった。

「すぐ…だ…から、そした…ら、戻っていい…から…」

途切れがちの声は確実に睡魔によって、口の動きを制限されていると
解るほどで、痛々しいカカシの言葉に従い
そっと髪を撫でた。

「クスクス久しぶりだねこうやって…撫でられるの…擽った…い」

「ゆっくり寝ろって」

「ん…」

すぅすぅ…心地よさそうな寝息を確認して、ナルトがクスッと微笑んだ。
昔のままのカカシを見る事が叶うなんて無いだろうと諦めていた。
けれど…彼は今も自分の傍が一番安心するんだと、そう言っているような行動に
愛しさがこみ上げてくる。

「先生…おやすみってば」

頬に唇を寄せて、ポン…と、ナルトがカカシの腕の中から消えた。

=============================

【贖罪】26 解決の糸

サイと通常上忍に戻ったサスケとナルトの3人は
Aランク任務に向かっていた。

木々を疾走していると
急にナルトがピクリと体を揺らし、急に甘やかな笑顔を零した。

「どうした?」

「え?あ…んにゃ、なんでもねぇってば!」

タン…と木の枝を蹴り上げると、サスケがフンと鼻を鳴らした。

カカシがカカシとして戻ってからナルトの表情は辛いだけの表情以外の
笑顔も見せるようになった。
けれど、現状は未だ解決の糸口は…カカシの握っている情報だけ。
妻とも折り合いをつけて、一緒に住んでいるとは言ってたが
ナルトはそれでも、嬉しいのかもしれない…

自分の昔を思い出してくれただけでも
愛し合った記憶を、思い出してくれただけでも…

「よかったな」

ポツリと前を疾走するオレンジに吐き出して彼に追い付いた。

「ヘマするんじゃねぇぞ!」

「だ、誰に言ってるんだってばよ!」

「…ヘマで連想出来るのってナルトぐらいしかいないよ」

「さ、サイ!お前までっ!」

あははは…と笑い声が漏れる中、任務場所まで駆け抜けた。



「ん…」

意識が覚醒してくると直ぐにナルトの香りが鼻に入り込んで
ポンポンと手だけで姿を探す。

「あ…そっか、影分身抱きしめて寝たんだっけ」

ポリッと頭を掻いてから、体をうーんと伸ばして
ジャケットを着込み、額当てを斜めに掛ける。
顎まで下げられていた口布を戻し、ナルトの部屋を出て
火影邸へと向かった。

「カカシか?」

「はい」

入れと続けられた言葉に従い執務室へ入ると
綱手がバサリと、カカシの前に5センチほどの厚みのある
紙の束を投げた。

「それが巻物の内容だ…
写輪眼が今回の原因だったぞ」

「ええ、抜け忍のジャノメ…うちはに手を引いてもらい
里を抜けていますね…そこまでは調べが付いていたので
当時のうちはの人間と、関係性を調べましたが…
私の中でははっきりした答えには辿りつけませんでした」

「それも、お前ら夫婦の答えにはたどり着かんだろうが…
お前がなぜ狙われたかは…記載されている。
オビトの目を盗んだと…思われてたらしいからな」

「でしょうね…そう言う関係だってのは
関係者の名前で解ってはいましたが…」

はぁ…と、深く溜息を落とし、その書類を持って
カカシは執務室を出た。

巻物の報告…と書き出されたそれは
ペラペラと読み進めていくに連れ、うちはとジャノメが何故
関係を深くしていたのかと言う物を見つけた。

「やっぱり、ウズリの母ウルハは一度”うちは”に嫁いだのか…
結婚後直ぐに子を成し、生まれた子は写輪眼を期待させるどころか
忍として致命的な目の病を先天性で患いそれが原因でその子…ジャノメと共に
うちはから、縁を切られている…。

で、連れ子と共に…父マイガに嫁ぎウズリが生まれたって訳ね…
再婚した、元ジャノメの父は再婚後子を成し…オビトが、生まれた…
って事は、オレが殺したジャノメはオビトの兄に当たるのか…」

どれだけ深い因縁なのだと、カカシは溜息を落とした。

「ま、目が悪くても…瞳術に長けてるって時点で
うちはも早まったって事だよ…ね
でも、”うちは”の血を継いでいないウズリがオレの子を
生んだって…写輪眼は得られないだろうに…」

ペラリ…ペラリ…読み進めていくと
カカシを狙った理由は、オビトを死なせ、写輪眼を自分の目に移植した
それが原因だった。

写輪眼は本来うちはの物であり、それなのに
写輪眼を開眼出来なかったジャノメがカカシの写輪眼を
自分の悪い目に移植すると言う算段だったらしい。

そうする事で、ジャノメはうちはを名乗る事を許されると
思っていたフシがあったらしい…

「はぁ、んじゃ ま…巻物は返して今度は手帳でも
持ってくるか…」

カカシが懐に、巻物をしまい込むと昼から宛てがわれた任務に向かった。
帰り着いたのは、夜も結構遅い時間。
手間取って帰還時間をずらしての帰里となった。

帰る時間と約束した時間を等に越した時間帯。
カチャリと戸を開けば、寝室からお帰りなさいと声が掛かった。

「任務で時間を食っちゃってね…遅くなってごめんね」

「……いいわよ、気にしないで」

食って掛かってくると思っていたのに拍子抜けしてしまい
ひょっこりと寝室に顔を覗かせると
マスク取って…と言われ、口布と額当てを外して
ベットに腰をかけ、そっとスイの頭を撫でた。

「カワ…ごめんなさいね、今日アナタの帰りがあまりに遅いから
ナルトって子の家に行ったの…」

「は?」

「そしたら、任務で時間がずれるなんて当たり前だし
ずれる時間だって、下手したら一週間とか一ヶ月とか掛かるって…
それを時間内に帰って来れる貴方は、凄い忍者なんだからもう少し
信頼してやれって怒られたわ…。」

「……ナルトが?」

「貴方、あの子の事最初っからかなり気に入っていたから
家に帰りたくなくてウソを付いてるんだって思ったの。
今日も任務が朝からなかったって思ってた…
けど、ナルトって子が朝から同じ任務についてその後に
アナタが別の任務を受けてたって聞いて…帰ってきたのよ」

「……そう、ま、解ってくれたならいいよ」

なぜ、ナルトがあの、真っ直ぐな男が嘘など吐いたのか…
それが気に掛かったが、この状態で家を空けることも出来ず
カカシは布団の中で彼の嘘に思考を巡らせた。

ナルトは基本、嘘など付かないし、付けない。
いきがってみたり、物事を大きく言う癖はあっても
嘘としてではなく、自分で確実にやり遂げると、そういう信念を持って
彼は言っている。
だからこそナルトの言葉は、自分の中では嘘のない真実だと
思えていたのに、何が彼をそこまで言わせたのか…

それが気になって、カカシは朝になったらまた
ナルトの家を訪問しようと考えて目を伏せた。

朝になり、ナルトの家へ訪れると、待っていたかのように
窓が開け放たれていた。

「ナルト?」

足を進めると、室内から待ってたってばよ…と
怖いほど睨んでくるナルトと目があった。

(なんか怒ってるねぇ…こりゃ、かなりご立腹か…)

雰囲気で、ナルトが何かに怒りを感じているのは解ったが
それがなんなのか…と言うのがカカシの頭には思い浮かばない。
妻がこの家に乗り込んだ…って事ぐらいしか。
ナルトはコーヒーを淹れ終わると、カカシに顎でその場所を示す。

「座れってば」

「…あぁ」

ギシッと座った椅子が軋み、カカシがフーっと息を吐き出すと
ナルトの目を真っすぐに見やった。

「先生、オレ先生の奥さんに嘘ついた」

いきなり、真打が吐き出され、遠回りの言葉ぐらい覚えなさいと場に似合わないことを
考えていると、それがバレたのか、再び睨まれた。

「知ってるよ…聞いたから」

「だったら、オレがなんで嘘ついたか分かってんの?」

「いや…解ってないね」

「なんでそんな平然としてるんだってばよ!」

「ナルト…お前に嘘を付かすほど、オレは間違った行動をとってるか?」

「そうじゃねぇ!カカシ先生が誰にも頼ろうとしないで突っ走るからじゃねぇか!」

その言葉に、危うく飲みかけたコーヒーを零しそうになった。
きっと、妻が怒鳴り込んできて、ナルトに根も葉もない事を綴ったりしたのだろうと
多少は考えていた。
けれど、何を言われてもどんなに刷り込まれても…
本人の言葉以外は、彼は信じない…
それに、その人を噂や聞いた話だけで鵜呑みになどしない。
だからこそ、こうやって話に来たのだが

どうも、全然違う方向に話が進んでしまい、目を点にする。

「どう言う事?」

「綱手のバーちゃんから、聞いたってばよ
先生が記憶を無くす前にウズリさんの兄を殺したってのも
その人が木の葉の忍で、カカシ先生を恨んでた事も…
聞かされて帰ってきたら、あの人が居て…

先生を匿ってないかって言われたんだってばよ」

「聞いたの…そっか、ごめんね…
自分の不甲斐なさを人に頼む訳にはいかないでしょ?
だからオレ一人でどうにか出来る所まで解決したかった…
ウズリは本当にただの妻としてオレに嫁いだのか…スイの出生に秘密はないのか
ま、家族を疑うって事は、ナルトには嫌な思いでしかないでしょ?
だから…言えなかったんだ」

コトンと半分に減ったコーヒーカップを机に置くと
目の前で手を組み両手の上に顎を載せて溜息を吐いた。

「先生、そうじゃねぇってばよ…
寝れねぇんだろ?もう、奥さんの傍じゃ…」

「え?」

「先生の落ち着ける場所が、もうここしかないんだろ?
なんで辛くなる前に一言頼ってくれなかったんだってばよ…
確かにオレは前先生と付き合ってたし、気まずいのかも知んねぇけど
先生を否定する事はしたくねぇんだってば…
調べ物なんてオレには出来ねぇし、先生の過去に踏み込む事だって
するつもりはねぇ…ただ、先生が辛い時、頼れるのがオレであって欲しいのは
今でも変わらねぇってばよ」

「…オマエ」

「正直…わかんねぇ、家族で一緒に居る事が幸せだって…
オレはずっと思ってたしまだ思ってる。
でもさ、家族が一緒に居れない状態だったら…仕方ねぇってのも
十分わかってるってばよ。
カカシ先生はウズリさんの兄を殺したんだろ?」

「あぁ、その時は知らなかったけどね。
こっちも写輪眼を狙われてたから、木の葉の同胞だってのも
調べるまでは解らなかったよ…」

「そんな因縁をスイに押し付けて欲しくねぇってだけだってば…
ウズリさんは、ちゃんと奥さんをやってるんだろ?」

その言葉に、カカシは深く息を吐き出すと、悲しげな目でナルトに問た。

「……答えなくちゃダメ?」

「……」

沈黙が痛かった。
カカシにしてみれば、ちゃんと奥さんをやってると答えたくはなかったのだ。
自分のそばにいて欲しいのは、妻ではなく…お前なんだと吐露してしまいそうになるから。
折角、抑えて抑えて…ナルトの苦しみの分まで自分は我慢をしようと思っているというのに…

「せんせ…ごめん、言いすぎた…
オレさ、頭悪りぃからちゃんと言えてねぇかも知んねぇけど
カカシ先生の事…大事だって思ってる。
今、先生さスッゲー辛そうな顔してるんだ…
家族の事に口は出せねぇけど…先生のそんな顔見たい訳じゃねぇし
ここでゆっくり休めるなら、いくらでも使っていいって
そう言いたかっただけなんだってば」

ションボリとうなだれるナルトにカカシが苦笑いを零した。

「ナルト…嘘はオレのためについたの?」

「先生の寝る時間ぐらいオレにも作れるってーの!」

「…そっか、その為に、嘘を殆ど付かないお前が、嘘まで付いてオレを
守ってくれてたんだ?」

「………」

「ありがとうな…でもね、嘘はダメだよ」

その言葉に碧瞳がぐっと見開かれた。

「え?」

「ここで寝てるって言っても良い…それはオレが解決しなくちゃならない事だから
オマエが背負う必要はないんだよ?オレはナルトを頼ってここに来てる
眠るのも、ここに居れば結界を張ることすら忘れるダメ上忍なんだよ
オマエは人に恨まれながら生きなくていい…これはオレの業だから
オマエはオレを黙って見守っててくれればいいんだよ。」

「なんだよそれ…」

「オマエ、オレの思いを甘く見てるだろ?」

「え?」

クスッと笑ったカカシがグッと手を伸ばしナルトの黄色い頭に手を掛けた。
ぐしぐしと撫でるとうわっと言いながら逃げるナルトを再びぐしぐしと撫でた。
観念するか…と、心で一言漏らすと、カカシはナルトに告げた。

「惚れた人間に、オレが原因での嘘を付かせたくない」

きょとんとしたナルトに、ニッコリと笑ってカカシがコーヒーカップを手に取り
そのカップに、インスタントコーヒーを淹れる。
ただ、ぽかーんとしているナルトの前に座ると、再びカップに口をつけて
コトンとテーブルにカップを置いた。

本当にこの子は考えをまとめるのに時間がかかる子だなぁ…
なんて、未だにどこかの世界へ飛んでいってるナルトを見やった。
ジッと見ていると視線が絡んで
絡んだかと思うと、急に頬を染めてガタンと席を立った。

「ななななな、何言ってるんだってば!」

「記憶を無くす前の…はたけカカシの本音ですけど?」

「っ…先生っ!」

「ハイハイ、スイに悪い…って言いたいんでしょ?」

図星を付かれて口ごもる。

「うっ…」

「だからオレはオマエにこういう事は決着が付くまで言わないでおいたのに
オマエはオレの予想を遥かに超えるからねぇ~…参ったよ」

ハーッと溜息を吐き出し、疲れたように言い出すカカシに
ナルトが目を剥く。

「なっ…」

「いい?良く聞きなさいよ…
スイはオレの子だから、否定はしない。
それに、ウズリが何を考えているか、何を企んでいるか
それを全て調べ上げるつもりだ…
現時点で、ウズリがオレを憚(はばか)って、オレの正体を隠し
スイだって、生まれる少し前まで出来た事を知らされなかった…
もう、その時点で嘘に塗れてたんだよ…

オレは、忍として生きているしこれからも生きていく
元々、オレは恋だの愛だのって言葉は、必要なかったからね
ナルト…オマエに会うまでは。
オレがどれだけナルトに惚れてたかなんてオマエが身を持って知ってるだろ?
それをいきなり、記憶がなかったからって
オレがその家族を受け入れれると思う?
無理にでも受け入れろとナルトは言うだろうから、これは言わないでおいたけど
正直無理」

ハーッと深く息を吐き出し、カカシが苦笑いをナルトに向けた。

「責任だけで傍にいる家族なんて、あっと言う間だよ…オレに戻ってから
妻とすら思えない女の横でオレが寝れると思う?
子はいいさ…純真だからね、それにオレに似てる…
けどね? オレの思い人はオマエな訳よ…
ま、オマエに捨てられてもオレはこの気持ちは生涯貫くつもりだったし
火影に成れば、そういう事も支障が出るって前に話しただろ?
その時に既に腹は括ってたからね。
もし、今が逆の立場なら…どうよ?」

ナルトは黙って下を向いたまま
何も言わないでカカシの言葉を聞いていた。
自分の中にある家族の理想像ばかりをカカシに押し付けてきていた
もっと早くにウズリを調べ、動いていれば何か変わったのかもしれない
自分がもし記憶を無くして、子が出来たら…
その子に何をしてやれる?自分はカカシを捨てられるのか?
こんなに思ってる相手を…忘れられるのか?

「オレ…」

「無理でしょ?」

「うん…」

「はぁ…良かった、これで理解してくれなかったら
オレもどうしようも出来ないからねぇ…
ま、彼女に策略などもないって解ったら…オレは彼女に本心を伝えるつもりだし
それでも傍にいるか、別れるか…決めるのはオレとあの人の話になってくる
実際、オレに戻ってから彼女との性交は一度たりと無いからね…
それでも、明るい未来が見れるのかと問われれば愚問にしかならないでしょ」

ナルトはポロポロと涙を流し始めてしまった。
何が彼を苦しめるのかなどわからない
家族へ対する切ない思いなのか、カカシに対する思いなのか
ただ、このままで居るには無理があるのだというのを
カカシは伝えたかった。

「カカシ先生、ごめんな…」

「いや、ナルトが謝る事じゃないよ…
記憶のないオレがしでかした事が元凶なんだし
オレが解決しなければならない事だから、逆にオレの任務を
任せてしまってるナルトに申し訳なく思ってる
ま、お前は持ち前の明るさで周りに笑顔を見せてくれれば良いさ」

その言葉にニッコリと笑ったナルトが目に涙を貯めたままで
しんみりした空気を打ち砕くように言葉を発した

「世代交代だってば!オレは全然このくらい平気だってばよ!」

「世代交代ってオマエねぇ…ま、確かにそうなんだろうけど
オレだってまだまだイケル口よ?無駄に木の葉一の忍と呼ばれていた訳じゃぁ
無いからねぇ~…」

と、クスッと笑った。

実際、記憶のないカカシが自分との関係に気付いた時点で
カカシの思いに気付ければ良かったんだと…ナルトは思った。
自分を想い続けてると言ってくれたカカシ…自分は同じ想いだと
伝える事は出来なかったが…カカシだけをちゃんと見て
彼を信じてみようと思えた。

自分の凝り固まった家族観は、あくまでも自分の理想であり
それ以外の生き方をしている人間だって多々いるのだ。
無論カカシだって生まれて間もなく母を亡くし、その後に父を亡くし
一人で生きてきた時間も長かった。

サスケだって、そうだ。

それを考えれば、カカシが今の妻と一緒にいようが
別れようが…スイには道が開けると思い至った。
喧嘩ばかりの家庭や冷めた家庭に居る事が苦痛になる事だってある
両親共にいての家族と言うには語弊があるんだって
カカシの口から聞かされた事で思った。
無論、その後も綱手とも話したり、アカデミーで色んな生徒を持つイルカ先生に
色々と聴いたりもし、完全に納得する事となるのだが。

「カカシ先生と話せてよかった…オレってば少し自分の考えを押し付けてたってばよ」

「ま…オレはまたこの家に寝に来るけどね?」

「おう!いつでも来いってば!んでもって、奥さんに言ってやるんだ!」

「あ、いやいや…ワザワザ言いにいかなくてもいいんだよ?」

慌てたようにカカシが掌を前に出し、フルフルと降ると首をコテンと傾けたナルトが
目を煌びやかに輝かせて言う。

「だって嘘付かないでって言ったじゃん!」

自慢げに言うナルトに苦笑いしながら答える。

「あ、いや…聞かれた時の話なんだけど?」

「あ、そうなの?」

今までの話はなんだったの?と、カカシが内心ごちるが
仕方ないなぁと、微笑んでナルトの頭をもう一度撫で上げた。

============================

【贖罪】27 手帳と石

ナルトとの話し合いを経て、時折カカシがナルトの部屋で仮眠を取るようになった。
自分を頼れと言ったナルトに成長を見たが
最終的な締めくくりで脱力を隠せなかった。

だが、これで自分も決心を強く出来たのも確かだった。
ナルトを諭して居たつもりが、結局は自分がナルトに説明する事によって
自分のあるべき道を、確認できたし、色々と気付いた。

任務が早く終わった今日。
妻が出かけている間に事を終わらせようと
カカシはタンスの裏に隠された手帳と石を取り出し、その場で解印した。

「解!」

開かれた手帳には、前の里の集団催眠に付いて書かれていた。

自分の式紙を用いて、その式紙にチャクラを貯め
封印術で仕掛ける…前にナルトとカカシが戦った相手と
同じ術式だった。
ナルトのように体内に飼う妖のチャクラとも綱手のように体内で収めておく
チャクラとも違うもの。

体内に貯められるチャクラの量はある程度決まっている。
それを超えると、体が何らかの異変を齎す為
修行などで余ったチャクラを放出するのが大抵の忍の修行なのだが
式紙にそのチャクラを貯めておいて
後で放出する事が出来れば、技の幅も広がるし、ましてや…
この使い方をしているのが木の葉の忍だったと言う所が引っかかる。

「ん~これは綱手様行きだなぁ…」

他にも多くの術が書き込まれているが
カカシの知っている術の方が多く、それ以上の情報は得れないと
今度は石に着目した。

「これって…」

解印するとチリチリとチャクラのようなものを放出している石。
指先を触れさせてみると、強く弾かれた。

「下手に触れられないねぇ…」

カカシは布にそれをくるみ、代わりの物をその場に忍ばせると
火影の元へと急いだ。

「カカシですが少し宜しいでしょうか?」

火影の執務室へと向かうと、なんだ…と、女傑が相変わらずな口調で
告げてくる。

「ほぅ…このチャクラを貯めておくって言う式紙がこの前の四方封印か」

「ええ、私の記憶はそこは全くないんですけど…
とりあえず聞いた報告と同じだったなと思いまして」

ペラリペラリと何ページか進んで綱手が手帳を置くと
カカシの手から包が下ろされた。

「で…全く手がつけれないのがこれです」

パラリと布を解くと、中からチリチリと音を立てて
チャクラのようなものを放出している石。

綱手がジッと見つめるとハーッと息を吐き出した。

「これは、チャクラ石と呼ばれる特殊な鉱石で
そうだな…黒曜石とかも言う名があったな…
これにチャクラを貯める事が出来るんだが、掛けた術の…
効力の維持のためのものだ…
もしかしてこれが、巻物とかと一緒にあったのか?」

カカシがコクリと頭を上下させるとうーんと頭を捻った。

「どうされました?」

「あ~いやな、これは封印術には無縁のものなんだよ」

「え?」

「この石は、例えば…そうだな
影分身の時間を維持する事は可能だが、生体反応のないモノの術には効かん。」

「それって、結界類には利かないってことですよね?」

「あぁ、そうだ」

「ウズリが幻術に掛かってたとしたら!?」

「……恐らく、効力は効いていたはずだな」

「では、ウズリが幻術で操られていたとしたなら、今頃…」

「掛けられた術の効力にもよるが…解けている可能性もある」

失礼しますと、カカシは声を荒げて自宅へと帰っていった。
帰っている間の道すがら、自分にはどうだったか…と肝心な所に
思考が辿りついた。

記憶喪失など、滅多に起きる物ではないし
文献なども殆ど見た事がないが、記憶が戻った時に
それまで過ごした記憶をすっぽり落としてしまっているのは
おかしいと、カカシは思考を巡らせた。

もしかしたら、あの石は…自分にも効力があったのではないだろうか?

カチャリと扉を開くと、まだ誰も帰ってきていなくて
カカシは机に腰を下ろした。
妻が居る間は書けなかった任務報告書でも書こうと
筆を持った時に、ピリッと頭が痛む。

「頭痛が…まだ治らないか…」

シカクから貰った頭痛薬と書かれた袋を開けると
一粒を口へとほおり込んで、報告書は出したままの状態で仕舞う事にした。

目を伏せ、カカシはこれまでの経緯を色々と頭の中で整理する。
なぜ自分の記憶が戻ったのか…それをフッと想い、ナルトに話を聞こうと思った。
その時、妻が帰宅し…その変化を見守ってみることにした。

頭痛はある程度収まったが、じゃれてくるスイは
「ちちぃ~」と、甘えてくるいつもどおりの反応
ウズリの態度も殆ど変化を見れずその日を終えた。

では何故、あの石があったのか…対人とすれば
自分にか!?

カカシは、目を伏せて眠れもしない布団の中でスイの
体温を感じていた。

その時にすっと伸ばされた指先に、カカシは
寝たふりでやり過ごそうとした。

「カワ…」

ゆるゆると揺すってくる彼女に無視を決め込みカカシは
頑なに目を開けようとはしなかった。

「起きてくれないの?」

「カワ」

何度も呼ばれ、彼女の手が己を握りしめてきて
驚いた…口内に引き込まれ、”参ったねぇ”などと思うが
自身が起き上がると、彼女は自分の下着をスルリと下ろす。

(あ~まずいなぁ…)

男として反応はしてしまうのだ、それは触れられれば誰もがなってしまう現象だし
仕方がない事だが、忍びとしての自分は…流石に寝込みを襲われましたなんて
恥ずかしくてたまったもんではない。

「ん…ちょ、何してるのよ」

「しよ?」

「明日早いんだよ…」

「いつもそれじゃない」

「ん~…でも、ごめん、体が付いていかないんだ」

「私が動くから」

「ちょ、待ってちょーだいよ…」

「も、待てないよ…んっ…」

彼女が己を包んで来る感覚に、グッと体を起こし、目を見開くと
クタリと力を失った彼女が腕の中へと落ちてきた。

写輪眼で幻術に掛けてしまうのもどうかと思ったが…
まずは、この先一緒に寝る事は出来ない。
家族だから過剰反応はしなかったが…こうやって襲われれば
まかり間違って、抱いてしまう恐れだって無い訳じゃない…。

「ねぇ、お前はホント…何を考えてるのよ…」

腕の中でスースーと寝息を立てて眠った
彼女に問いかけても答えなど帰ってくる訳はなかったが
それでも聞かずにはいられなかった。

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