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なつめっぐ 保管場所

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恋蝶2

続きです

「カカシの馬鹿者がっ!!!!」

と、遠くで綱手の声が聞こえる中、カカシがナルトの弱った体を抱き上げた。

「おい、ナルト!」

「聞こえ…てる…ってばよ」

まだ言葉が交わせる…それだけでホッと安堵したカカシがニッコリとナルトに
笑顔を向けて、髪を優しく一梳きすると、安心したのか深く息を吐きだした

「ったく…お前は、本当に手のかかる…」

「えへへ…手のかかるのが、良いんだろ?」

腕の中で笑ったナルトが、カカシの頬に手を宛てて言った言葉に
ドキリと胸を高鳴らせた。

「は?」

「カカシ先生の思考は…全部俺の中に流れてきたってばよ」

「…っ!!!!!」

瞬時に頬を染めたカカシが視線を背ける。

(そ、それって、俺の考えてる事がナルトの中に流れたって事だよな?
ちょっと、それはマズイでしょうよ…うわー…もしかして、
ナルトに対しての思いとか感情とか…バレちゃったとか言う奴?
何それ、なんの罠よ…)

だが今はそれどころではない…
ひと呼吸を置いて、カカシはナルトを見やった。

「そ、それはさて置き…どうすれば…お前はここから抜けれるんだ?」

ナルトの答えの前に、九尾の声が響いた。

『無理だな、封印が施されてこの場所から抜ける事は叶わぬ
カカシ、お前はナルトから出来うるだけの話を聞きそれを
あの火影に知らせる事しかできん。』

「っ…、だったらナルト!全て話せ」

少年の事、言われた事、覚えてる限りの事を全て告げ
カカシに、ナルトはニッコリと微笑んだ。

「解ったよ…全て綱手様に伝えるから、ナルト頑張れ!」

『カカシ…お前のチャクラではあと一度しかこちらへは来れん
一度寝てチャクラを貯めてからもう一度だけ道を開く
ナルトの…体力が持てば…の話だが』

「…解りました、では一度戻ります」

『良いか?お前が死んでもナルトは悲しむだけだからな?』

その言葉が遠くで聞こえる中、カカシはハッと目を見開いた
入る時より出る時の方が楽に戻れたことにホッと息を吐き
辺りを見回すと

「うっわ…」

ポロリと漏れた声。

腕組をして眉間に深いシワを刻み、殺気を放っている…
綱手と目があった。

「で?何が解った」

無断で入り込んだことを咎める前に、早く対処法を見つけねば…と言う事なのだとすぐに解り
カカシは、ナルトから聞いた言葉を次々と吐き出していった。

「あ~…とりあえず、夕方の6時頃暗部かもしれない8歳ほどの少年が今回のナルトに術を掛けたこと
それと、九尾の封印の中にナルトはいます…かなり弱ってる感じがしました
俺は…もう少しチャクラを回復させれば、もう一度中へ入る事が可能ですが
その中へ入るのもかなりの負担がナルトにはかかるそうです。
手のひらの呪印に付いては、丸型の呪印から滲み出た墨が広がった感じで
痺れる感覚、痛み、吐き気が伴い、黒くなった部分に関しては痛覚も
感覚もなくなるらしいです。
現在の潜在意識の中でも同じ症状らしく、ナルト自身は殆ど動く事が出来ない状況
それと…九尾が今回は助けてくれようとしている事で、赤いチャクラのようなものが
浮き出ていたのはきっと、ソレが原因だと思います」

捲し立てるように全てを話して、サクラに兵糧丸を頼んだ。
それがあれば時間を少し伸ばせる。

「俺は後でもう一度ナルトの中へ戻ります」
「カカシ!」
「カカシ先生!」
「カカシさん!」

声を揃えて名を呼ばれ苦笑いすると
すいませんと、頭を一つ下げた。

「ナルトの側に…居てやりたいんです」

「だったらここでも一緒にいれるじゃないですか!先生までナルトを追ったら私っ…」

「サクラ…悪いね…ここで一緒に居れても、中に入れる人間は俺しかいない
だったら、俺が中でナルトを支えたいんだよ…解るデショ?」

と、微笑まれたらサクラも言葉をそれ以上紡がなかった。
いつの間にか横に入れられたベットを指差してカカシに寝てくださいと
声を掛けたのはサクラだった。

「眠れないよ?…」

「眠るんじゃなく…チャクラの温存です」

と、言われれば従うしかない。
カカシは苦笑いを向けてありがとうとベットへと上がった。

「カナチを呼べ」

「…はい」

暗部の一人が、間を空けて答えるその名前の人間…
カカシも知らない名前にん?と首をかしげる。
サクラも同様に解らない名前に、誰ですか?と聞くと
一番若年の暗部の子、カナチと言う名の子は成績は優秀だが
かなり擦れた性格の持ち主で、アカデミーで卒業後すぐに中忍になり
そのまま暗部へと移籍になった子供だと言う。

優秀だが、残忍性が高い事から暗部に呼び込んだのだが
それがまさか、ナルトに手を出す仕事を任されるとは思ってもいなかったらしい

「綱手様!」

暗部の一人がスッと綱手の横に姿を現した。

「見つかったか?」
「申し訳ありません!カナチは今日一日姿を見せていないそうです」
「…ええい、探せ!見つからんと言う報告はいらん!」
「ハッ!」

苛立つ綱手にサクラが巻物を何本か見せてお互いに考え込んでいるのがわかる。
カカシはそっと目を伏せた。

まさか入った時に思考を読まれていたとは…
と、溜息すらでる。

(告げる予定はなかったんだけどねぇ…はぁ、厄介事に乗じて気持ちバレるって…どうなのよ?)

ベットに体を預けてギュッと手を握り締めた。
今は体力の温存…カカシは出来るだけ浅くても眠ろうと意識を飛ばすように心がけた。

一刻は過ぎただろうか?
カナチと言う暗部が見つかった。
部屋に入ってくるなり、使った術式を綱手に伝えるあたりすごく胡散臭い感じはするが
綱手は火影、もし嘘などで時間を引き延ばせば、どうなるかくらい分かっているはずだ。

空が既に明るさを放ち、あと少しの時間で
ナルトは生死を分ける。

寝不足の綱手は未だ巻物に目を通していて、恐らくこの術の解決方法は
見つからないのだろう。
暗部の人間も数人書庫を探しに出ては戻りを繰り返し
シズネはナルトの呪印の動きを遅くするために、チャクラを何度かにわたって
渡している。

昼まであと少し…

呪印の種類が理解できたとしてそれを解けるのは
そう簡単には現れるわけもない。


カカシはスッと体を起こして、気怠そうに椅子に腰を掛けている綱手に視線を向けた
それに気づいて視線を絡めれば、ナルトの方を見やり声を掛ける

「…行くのか?」

「…はい 九尾が反応してくれれば…ですけど」

「解った、だが諦めるな…私は、最後まで諦めないからな?」

「…解ってます」

「ベットを添えて、寝ながらにしろ、椅子に座るだけでも体力は削がれる」

と発すると暗部の申の仮面をした男がグッとカカシのベットを奥へと押し込み
ナルトのそれとピタリと添わせた。

「九尾…聞こえる?俺をさっきみたいに呼んで?」

”もう少し待て、呼ぶ時は声を掛ける”

「…ナルトは?」

”半分意識がない”

「…話したいんだけど」

”体力を考えれば今がいい機会だが、助かる可能性はまだある
もう少しだ…だからそれまでチャクラを貯めて待て”

「…解ったよ」

はぁ、と 息を吐き、カカシがベットに倒れ込むとクックックと苦笑いが生まれる
こんなに状況判断に困った事がなかった。
ナルトに逢いたい、言葉を交わしたいそんな思いが優先されるなんて
自分の中の計り知れない思いはどこまで自分を蝕むのか。

「まだ…だそうです」

「九尾との会話…だったのか?」

「ええ」

「九尾は何と?」

「もう少し待てって…言ってました。助かる可能性がまだあるとも」

その言葉に、眉間にしわを寄せたのは綱手だった。

「まて!内から封印術を行えば…もしや」

「え?」

「カカシ、お前に封印術を授ける、それを中で発動させることは可能か?」

「…恐らくは可能だと思いますが俺のチャクラがどこまでもつか…」

「こっちだって、チャクラの手助けくらいは出来る!
そうとなれば、用意を!」

バタバタと慌ただしくなる病室。
カカシは自分の左手を見やり、ハァと息を吐いた。
自分がいつか握り締めた爪の跡がしっかりと残っている。
こんなにも、心乱してしまっている自分にも、うんざりとするが
それくらい何故思いつけなかったのかと…

(あ~なんかちょっと…大概情けないねぇ…)

ハッと薄く笑って、ナルトの顔を覗き込んだ。
周りでは慌ただしく封印術を書き込む数人と、複雑に入り組んだ円を書き始めていて
自分はその封印の寄り代となる事で
ナルトにそれを打ち込む。

一人では決して出来ない事ではあるが、その可能性を見出すことは
出来たはずなのに…やっぱり、忍び三禁に、”女”が入るのが分かった気がする。
否、女ではなく愛する人間…の例えなのだろうが…

と、そこまで考えるとクスッとまた薄く笑った。






「先生!カカシ先生ってば!忍びの三禁って知ってるか?」

と、いきなり問いかけてきたのは、自来也との修行から戻った時だったか…

「は? そんなのアカデミーで習うデショ?」

「え?そうなの?…」

と、返した答えに予想通りの返答が来るともう、笑うしかなかった。

「で?お前はそれを今知ったって事か?」

「うん!」

ニシシ!とか笑いながら自慢げに…言うから堪ったもんじゃない。
女に付いて、そこからナルトと討論になったのだが
いや、傍から見れば討論とも取れないただのじゃれあい…だろうな。

「なんで女なんだってば?そんなに魅力があったって俺達は忍びだろう?」

そんな回答に、その時はアカデミーを卒業させたイルカ先生に文句のひとつでも言ってやりたいと思った。

「女…って言うかね?恋心だよ」

「恋…って?」

サクラに恋心は持っていた時期もあったが、それだけで理解できる事も早々ないかと
カカシが息を吐きながら答えた

「あーお前にはまだ早いか…」

「なっ! 早くないってば!みんなもう知ってるんだろう?」

「知ってる…と言うかそういう意識を持てって事になるだろうね」

「だから、どんな意識だってばよ?俺ってば全くわかんねぇ!」

胸を張って言うから、コンと頭を軽く叩いて、わかんねぇじゃないでしょ?と言ってみても
瞳はその言葉の意味を探るような追求心が見えてくる。

「気持ちが優先されて、相手が騙したりしていても気が付けない…
気が付いても甘んじて受け入れてしまう…そしてその人の事を考えるが故に
自分の最大限の能力が発揮できない…って所かな」

「あ~それはアカデミーで習ったってばよ!」

なんて言うから目を丸くするしかできなかった。
うん、先ほどの無礼を許してくれるかな?イルカ先生は…

「じゃーなにが知りたいのよ?」

と聞けば、二パッとその話題にそぐわない微笑みを返してナルトは言った。

「俺は信じるものはとことん信じる!だから女でも男でも信じる!
それに気持ちを揺るがす事はしない!だって、それが俺の忍道だから。
だから、カカシ先生が嘘を言うのも嘘だと解ってて信じるんだってば!
嘘って解ってても、俺は信じる事が出来るんだってばよ
信じてっから、騙されねぇ!それに間違いと気付いたら俺が間違ってると言えばいい!
解ってもらえるまで話せばいいだけだ!だからなんで女が禁なのかがわからねぇんだってばよ!」

あぁ…この子はそう言う子だった…真っ直ぐで、揺らぐ事のない思いを
そしてその思いに…自分は惹かれたのだと、そんな所でも気付いたんだった。

「だったら、ナルトはそれを貫けばいい…お前は間違えたことは言ってないよ
ただね、お前みたいに真っ直ぐな子だけじゃないんだよ…気持ちを囚われて
そこに引きずり込まれてしまって抜け出れず罪を犯す人もいるって事
そしてそう言う人が多く居たからこそ…禁じられてるんだ」

「へぇ…そっかぁ~なんかやっぱりわかんねぇけど、カカシ先生の言いたい事は
何となく解ったってば!俺は、俺でいればいいんだな?」

「あぁ、そうだ」

そう、こんな会話が成されたんだっけ…
俺はそこで、ナルトに教わったはずだったのに。
まんまと、その”女”に当てはまるナルトお前を思うが故に心を乱したって事か。

(どっちが先生かわからないな?ねぇ、ナルト)

クスッと笑ってカカシはアンダーを脱ぎ素肌を晒した。
下着一枚になると、書かれた円陣に座り、目の前に綱手が立つと
良いか?と聞かれ、カカシは首を上下に一度振ると
瞳を閉じた。


「では始める!」

という声と共に流れてくる術式がカカシの体に吸い込まれていった。
呪詛を無効化する呪術。早い話呪術の上塗りではあるが
これが成功する可能性は高いと言う。

ただし…勿論掛けられる方は呪術を幾重にも重ねるため
その抵抗などがあるからショック状態になりかねない
それで命を落とす者も居るだろう。
カカシに刻まれた呪印は、ただの受け渡しなだけだから
全くと言って良い程体の負担はないが
ナルトに渡す時に恐らく何らかの支障が有るとは思うと言われていたが
そんなのを気にしていたら、あの子を救う事は出来ない

ナルトが信じて付き従った、火影、その言葉を自分も信じるしかできないが
それでも、先程のように乱される事はしない。
自分の思いを信じ、ナルトを信じ、カカシが写輪眼をうっすらと開いた。

”カカシ…呼ぶぞ?”

「タイミング良すぎでしょ」

なんて笑いながら、ベットに体を横たえ腹の腕に手を翳すと
スッと、自分の意識が抜けていった。







渦巻くナルトの中に入り込むと、先ほどよりも精神が安定しているのか
意識が残ったままその場所にたどり着いた。
一度入ってしまえば、ナルト自身にもさほどの苦しみはなかったらしいが
それは、彼を見て打ち砕かれる。

ハッハッハと小刻みに息を繰り返し、目をしっかりと開けず
うっすら開かれた眼から青色が溢れる。

「ナルト?」

「カ…せん…せ」

「っ…ナルト!」

走り寄って抱きあげると

「うわぁあっ!」

と、悲痛な声。

「痛いのか?」

「…ん、結構…キツ…って…ば」

汗でじっとりと湿った…金色の髪を撫でると、受けた呪印をナルトに渡す事を伝える
正直この精神状態でどこまで耐えれるか等わからない。

”呪印に呪印で返すのか…悪くない。
カカシ、その呪印を見せろ”

赤い獣が檻の中で声をかけて来た。
ナルトを揺らさないようにそっと寝かせてカカシが足を進めると
ピタリと、入口の手前で脚を止めた。

”カカシよ…ワシが恐ろしいか?”

「そんなわけ無いですよ。ナルトと仲良しになれた九尾なんだから
怖いとかそう言うのじゃなく、この門をくぐる事でナルトに負担がかからないか
そこが気になっただけです」

ズボンのポケットに両の手を突っ込み猫背のまま開かれた両目が九尾の本来の姿を見る。
溢れるほどのチャクラと、禍々しかった空気が今は穏やかに流れているようにも感じた

”そうだな、今更お前がワシを怖がること等ないか…門には入るな。
そこで俺のチャクラを受け取れ”

スッと出された拳に、カカシが拳を重ねると
急に体が倦怠感を失った。

”ナルトからお前のチャクラを感じてはいたからな…近いものに変換すれば
お前にも渡せると思った、呪印を”

左手の呪印を腕を巻くり上げてみせると、九尾がニマリと笑った。

”流石だな…ナルトへ渡してこい”

「はい」

カカシは再びナルトの元へと足を向けた
そっと抱き上げ、息絶え絶えのナルトの頬をそっと撫ぜた。

「ナルト?これから少し苦しいけど我慢するんだよ?」

「っは…っ、うん」

「いい?必ず一緒に戻るんだよ?」

「ん、ッハッハ…わか…って…てば」

そっと横たえ、カカシはナルトの寝ている横に腰を下ろすと
そっと何かを呟きナルトの左手に手を載せる。
先程とやっていることは、違わないが今度のは呪印封じの呪印。
どちらかの均衡が崩れれば間違いなくナルトは、苦しみの中を彷徨う事になる。

「ふーっ…俺を信じて」

「ん…信じてるっ…てば」

パン!とカカシの両の手が打ち込まれ、ふわんと浮かび上がった丸の中に
呪印がカカシの体からふわふわと浮き出てそれがナルトの中へとゆっくり流れていく。

「あああっ!」

眉間にシワを寄せて汗を滲ませ、声を荒げるナルトに最初の試練。
この違和感をずっと全てが終わるまで耐えなければならない。

カカシも流し込むチャクラの調整に額から汗をしたらせる。
互いに命を掛けて…この作業が行われている中
綱手は二人の滲む汗を拭うしかできなかった。

「カカシ…無理だけはするな」

と、声が聞こえこの場所は外の声が聞こえるのかと
やっと今になって知った。
あぁ…そう言えば綱手にあの事を告げた時には
既に彼にその言葉を聞かれていたのか…
自分の感情を読まれる前から…自分の口でそれを告げていたのだ

(全く不測の事態過ぎて嫌になるよ…)

ナルトにしてみれば、俺の方が意外性NO1とか思われそうだと不意に思った。
けれど、チャクラは乱す事なくカカシからナルトへと注ぎ込まれ
そのチャクラの呪印がナルトの体に薄ら染み込んでいく。

”カカシ…お前のチャクラはもうすぐだ…術を全て入れきれるか?”

あぁ…九尾にはバレちゃうのね?なんて思いながら
首を縦に振るだけの返事をした。

「カカ…せん…無理すんな…てば」
「お前は…気にする事じゃない、甘んじて受け取れ」
「…せんせ…だめ…だぞ?一緒じゃ…ないと」
「あぁ、チャクラ切れで戻るかもしれないけどちゃんと、計算は出来てる」
「…ん…」

白む意識の中、最後の呪印がナルトの中に押し込まれ
ビクンとカカシの腕の中で一際魚の様に跳ねたナルトが息を止めた

「ナル…ト?…おい!ナルト!」

ピクピクと痙攣をすると、流石にカカシが焦ってナルトの心臓へと手をやった
緩やかに動くチャクラは、感じられるが鼓動があまりに、弱々しく
カカシは、自分の口布を下げ、ナルトの首から手を押し込み
鼻を摘むと息を吹き込んだ。
何度かそれを繰り返すと、急にヒュッと喉が鳴り

「げほっ、がはっ…ヒュッ…」

と、呼吸を開始した。
その後に小刻みではあるが規則正しい息がされると、カカシもそこで精一杯使ったチャクラが
底を見せてしまい意識を失ってしまったのだ。

”…おいおい、こんな場所でイチャコラしやがって!”
人工呼吸を知らないクラマのそぐわない言葉は、どちらの耳にも届きはしなかったが

フッと先に意識を取り戻したのは、満身創痍のカカシだった。
目の前に点滴、そして涙ながらのサクラの顔が飛び込んできて
ハッと思い出したようにナルトの居るであろう隣を見やると、胸板が上下に呼吸をしている事を
証明して、それからサクラの声が聞こえてきた。

「カカシ先生お疲れ様です、ナルトは大丈夫です」

「あ~しんどかった…」

と、間の抜けた言葉を発しながらも、グッと唇を噛み締めた

良かったと…心から思えた。

「部屋を移しますからゆっくり寝てください」

「あ~…いや、このままで居たら邪魔かな?」

「…綱手様が…カカシ先生の好きなようにさせろと言ってたのはこの事だったんですね?」

なんて苦笑いするサクラに、アハハと乾いた笑いを向けてしまった。
恐らく、意識を失ってすぐに九尾がこちらへと戻したのだろう
御蔭で、体は動かないほどキツイが、戻れなくなる事はなかった。

里の医療班や、テンゾウまでもが九尾のチャクラにはじかれて
コンタクトが取れなかったらしく
待たずに、侵入出来た自分が側に居れて良かったと安堵のため息を付いた。

入院3日目にして、カカシは明日退院となった。
九尾が分けてくれたチャクラでどうにか回復が早かったらしいと言う事だったが
その九尾の主は一向に意識を戻す気配がなかった。


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