倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 魂3 | | HOME | | 風2 ≫ |
死ネタ注意:お二人共労咳です2009.10.3
あなたを揺らし続ける風でありたい・・・・。
★~風~★
うぐっ・・・・げほげほっ・・・・
最近、咳が続く・・・・微熱が治まらず
暗雲の影が、恐ろしく松本にも相談は出来なかった
(沖田先生・・・・)
空を見上げセイは涙を溜めた
局長は、休憩所に身を置いている
自分が消えた所で、一番隊とは然程問題も無い状態ではあった
だから・・・・
「局長ご相談が・・・・」
なんだい?と優しく問いかけると、不意にあぁ・・と何かを思い出した
「明日一番隊に戻れると辞令を出すのが、不安なのかい?」
剣を振るっては居るが、精神を張り詰めて巡察に出る状態にはすぐに戻れないだろうと
そう考えていた近藤に、セイは首を振って答えた
一番隊に戻れる所までは良かったが、どうやら
既に発症していたかもしれない 重い口調で語り始めた・・・。
「恐らく、神谷は労咳かと思います、明日松本先生の受診をお願いしたく
勝手ながら、局長にお話させて頂きました。」
「総司には相談もしないままでいいのかい?」
最初は驚いた表情を向けた近藤だったが、咳をしている姿を何度も見てきた
そして、治りが遅いとも、思っていた
そんな思いを巡らせる中、セイが口を開いた
「はい、申し訳ありません、ご内密にお願いしたいと思います。
幸い、まだ肩の傷も完治しきっては居ません
ですから。このまま局長小姓のままで居させて頂いても宜しいでしょうか?
結果次第では、一番隊の皆様にも、迷惑が掛かりますし、
局長にも診察を受けて頂かなくては成りませんゆえ・・・。」
「思い違いを祈るよ・・・・」
「ありがとうございます。今夜より、法眼の診療所へ行き明日には
結果をお知らせ出来ると思いますゆえ、一日お休みを頂きたく思います。」
「どれ、では送ろう」
すっと立ち上がった近藤を両手で止め、一人で行けますのでと
悲しそうな瞳を近藤に向け、頭を垂れると、提灯に火を灯しスッと近藤の家を出た
「休暇だぁ~?神谷なんて休まず働いても、まだ足り無そうじゃねぇか」
笑いながら言う土方に、苦笑いで近藤は続けた
「後、神谷君をもう少し小姓として置きたいので、
本日で一番隊復帰と言う辞令を出さないでくれ」
土方は眉をグッと顰(ひそ)めて近藤を見上げた
「理由は、話してはくれないのか?」
「あぁ、後で話すよ・・・。」
恐らくは、土方に知れれば、総司も知るだろう、口止めをする位だったら
確実に病だと診断が下ってからでも遅くは無いと思っていたのだ
「総司にもまだ辞令は出してねぇし、好きにしな」
土方が、自分は蚊帳の外かよと心の中で悪態を付き、書き物を始めた。
陽だまりの下、ゆるりと時間を過ごす総司が、目でキョロキョロ辺りを見回す
日に何度も出会う訳でもない、だが一日に一度位は姿を見掛けていたのに
(神谷さん、今日は見ないなぁ~)
あぁ、そう言えば・・・・・
クスリと微笑み頭に浮かんだ言葉は・・・お馬
自分の前から姿を消すのは、いつも、そう言う時だと
総司の中で結論が出た。
セイを探していた自分に気が付き、目覚めた恋心がまた
総司の胸を優しく撫で上げる
(神谷さんも、すっかり大人びて、綺麗になったなぁ・・・
斉藤さんが、神谷さんに惚れているのは吃驚だったけど
私が、神谷さんを愛しく思ってるのも吃驚でしたし・・・・)
心の中の温かさを大事に抱えるように、総司は胸を抱きしめた。
場所は変わり、ここは松本法眼の居る診療所
正座をし、向き合いながら二人は口を開かない
ただ、重苦しい空気がそこらじゅうを埋め尽くし、耐え難い沈黙に
セイが口を開いた
「私、隊を辞めるしかないですね・・・・」
悲しげに一言呟き、その言葉に法眼がコクリと頷いた
「近藤先生に文を書かないと・・・・」
震える手で、筆を持ち上げ、紙に書こうとするが指先が落ち着かなく
ポタタッ・・・と、墨が落ちる
「書かなくちゃダメなのに・・・・っ・・・・」
溢れる涙を、落とした墨の上に落とし、墨が滲む・・・・
「近藤先生も、見てあげてくださいね・・・染ってたら困りますから・・・っ」
胸が引き裂かれそうに痛み、呼吸さえもままならず
緊迫した心音だけがドクドクドクと早鐘を打つ
「字もまともに書けないのかっ!」
怒りをどこにぶつければ良いのか・・・・
悲しみを何に置き換えれば良いのか・・・・・
逃げ場のない苦しみに、もがく事しか出来ず、法眼に文をしたためて貰った。
近藤局長へ
どうやら結果は労咳だと判断されました。
つきましては、局長と、副長の診察をお願い致します。
これからの事に付いてもお話をしたいと思いますので
明日、法眼の診療所へご足労願えませんでしょうか?
本来私がお伺いして、お話をさせて頂くのが筋と言うものなのでしょうが
沖田先生を始めとする皆様に感染の恐れがある以上
私は出歩く事も許されませんゆえ、よろしくお願い致します。
神谷清三郎
「セイよ、これからどうしたい?」
法眼の問いかけに、薄く笑うと武士で居たいと思う、そう一言残し
部屋へと閉じこもった。
「なんだ?」人の気配に、土方が襖の向こうへ声を掛けた
「神谷から文が、局長宛てに届いております」
障子の隙間から差し出された文に、土方が手に取り、近藤の元へ出向く
「あれぇ?土方さん~?どこへ行かれるのですか?」
「あぁ、野暮用だ、てめぇは、巡察だろう?さっさと行け!」
総司が、ハイハイと答えると漆黒の隊服を翻し、表情を硬く結ぶ
「さぁ、一番隊行きますよ!」「応」
これからは、死と隣り合わせ、総司も、心の中で神谷さん行って来ますねと呟き
力を込めると、先頭を切って街へと向かった
「ありがとう、歳」文を受け取り、経緯を話すと土方の目が丸く見開かれた
「って事は、この文は神谷の結果が書かれているって・・・そう言う事か?」
近藤が、横に来る土方をよそに。ぱらりと開いた途端だった、
二人が深く息を呑むと
「くそっ・・・・あんな元気が取り得の奴がなんで・・・・」
二人とも握りこぶしをぐっと握り締め、遣り切れない思いで爪を食い込ませる
「とりあえず、行くぞ歳っ」
飛び出すように、駆け出した二人。
松本診療所
其処へ辿り着くと、少々乱れ気味の呼吸を整え、戸を開いた
巡察中の沖田に、見られているとも知らず・・・・。
「神谷君、私と歳は大丈夫だったよ?」襖越しに声を掛けてくる近藤の声に
奥で人知れず泣いているだろうセイに声を掛けた
「申し訳ありません・・・申し訳ありません・・・・」
何度も何度も、頭を下げ声に出す
「開けて良いかい?」「申し訳ありません、感染させたくは無いのです」
クッと、開こうとしたが戸は棒のようなもので閉じられ、開く事を拒んだ
「神谷、てめぇも聞いただろう?俺は労咳に負けなかったんだ、お前だって
死ぬとはかぎらねぇじゃねぇか。」
「そうだぞ、神谷君、どうか顔を見せてはくれないか?」
そっと、優しい声に釣られて開いた戸
体が見える距離で、奥へと座り清三郎が刀を手にしていた
「早まるな、神谷!」「え?きゃっ!」土方が声を荒げると、戸を蹴り倒しセイへと
飛び掛り、剣を手から弾いた
その時だった、ドタドタと足音が響き、バン!と、抜き身を持った総司が
部屋へと飛び込んできた。
「あ・・・あれ? 敵は?あ・・・あれぇ?」キョロキョロと見回し素っ頓狂な声を上げた
土方の怒声に、総司が何かあったのだと思い、飛び込んできたのだ
「あ・・・神谷・・・さん?何をしてるのですか?」
襖の奥に正座するセイ
総司の目に入ったのは、抜き身を、足元に落とし土方の剣先が向けられて居る
「なっ、何をしているんですかっ!」
総司が足を進めてくる・・・・
だめ・・・・
来ちゃダメ・・・・・
「沖田先生、入らないで下さい!これは私の問題ですっ!」
「何を言ってるんです!? 何があったんですか?神谷さんっ」
「総司。」奥へ進もうとする総司を手で止めたのは、近藤だった
総司の血がカーッと頭上まで届くと、感情を剥き出しにして叫んだ
「局長まで呼び出して何をしているのかと、聞いているんですっ!」
(また・・・悲しい表情をさせてしまった・・・・二度とさせたくないと思っていたのに・・・)
セイが下唇をかみ締め、涙を堪えた。そして
「私が、女子だと、話をしておりました。」
その言葉に、ドクンと、総司の胸が熱を持った
「なぜ・・・何の為に・・・・」
言葉のやり取りに、土方も近藤も目を見開き、どう言う事なのかと問い質したかったが
土方がそれを堪え、声を荒げた「総司隊務中だぞ、戻れ、詳しくは戻ったら話す。」
断れるわけが無い。新選組なのだから
断れるわけが無い・・・自分は・・・・・武士なのだから・・・・
踵を返し、総司は隊務へと戻って行った。
「さぁて、何から聞けば良いんだ?女狐さんよ」
土方の皮肉に、セイが視線を畳の縁に這わせ話し始めた
沖田先生は、私が脅したのです、女の涙で・・・・
仇討ちを果たし、女子に戻れと何度も何度も
私を隊から出そうとしてくれました・・・・
でも、私はこの新選組を離れては生きる希望が見出せなかったのです。
隊士として、非力では在りましたが必死に今まで戦ってきました
私が同士と言えば、新選組を馬鹿にした言葉にしか聞こえないかもしれません
ですが、今まで隊士としての志だけは守って来れたと思います。
近藤が、そっと遠くからでは在るがセイを見据えた
「神谷君?君は女だと言いたくて私を呼んだのかい?」
その言葉に、体がビクッと跳ねた
「いいえ・・・・」
「総司を守りたくて言った言葉なんだよね?」セイは答えを出せないで居た
「おめぇ、如身遷が進んで、心まで女になっちまったんじゃねぇか?」
笑い出す土方に、首を何度も横に振った
堪りかねた、松本が「すまん、それは・・・「松本先生は黙ってて下さい!」
言葉を遮ったのは、土方だった。
「女が、月代剃ってまで隊士をするなんざ~前代未聞だ、ある訳がねぇ」
近藤の思いを読み取った土方が、セイは女ではないと
そう伝えてくれているのだ。だが・・・
「私は・・・隊士の方々に迷惑を掛けるつもりはありません
沖田先生を始めとする一番隊に残れば、きっとこの病に掛かる人も出て来ると思います
なまじ医者の家系を生きるものでは在りませんね・・・・
この病の恐ろしさも、完治する人間が一握りしかいないと言う事も
新選組に残れないと知った今、私が出来るのは
尼になり、この病と闘いながら、俗世を捨てようと思います。
沖田先生が何度も守ってくれた命を、私の勝手で絶つ事は出来ません
沖田先生はきっと、死ぬ事を望まれないでしょうし、あの優しい先生に
私の死までも背負っては欲しくないのです。」
悲しみに泣き崩れたい
沖田に、全てを話したい・・・・だが
(私には隊以外帰る場所は無い・・・・)
セイの決意が土方に痛く強く響き渡った
(本当に女かよ・・・)
己も一度はこの病で苦しんだ、幼い頃の自分を不意に思い出してクッと苦笑した
「お前には個室を与え、隊に残してやるよ」
その土方の言葉にセイの瞳が見開いた
(総司の危なっかしさが消えたのがお前のお陰だと知ってるからな。)
≪ 魂3 | | HOME | | 風2 ≫ |