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続きです。
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7:捕縛
「…んっ……」
暖かい布団の中で眠りについたはずだったのに。
急に体が寒さを訴え、ユルリと碧い瞳が開かれた
「…ここは?」
まだハッキリとしない頭をトントンと手で叩いて覚醒を促すと
寝た時と全く違う風景に目を見開いた。
慌てて起き上がって、自分よりも奥の方に転がっている人間に視線を向けた
「っ…カンザ…さんか?」
相手も眠っているのだろう。
後ろ姿しか目に入らず顔を確認するべきだと
ナルトは起き上がってそこへと足を進めようと前へ出した瞬間
ビリっと痛みが走り、その後にグンと伸ばした足が何かに捕まっている事に気がつく前に
転んでしまった。
「って~…これ、何だってばよ…」
引っかかった足を持ち上げ、繋がれたソレを見るとジャラリと
太い鎖が3本…足枷と、地面を繋いでいる。
しかも、確りとチャクラが流れていてそう易易と逃れる事は
出来ないと物語っている。
「捕まった…って事か?」
自分は眠っていた…それにカカシやサクラやサイだって傍にいる中
自分たちを起こさずに攫う事は可能なのだろうか?
ナルトが頭を何度巡らせても答えは出ず
取り敢えず寝転がっている男に声を掛けた。
「おい!おいってば!起きろってばよ!」
カンザだって、暗部か上忍か…自国の宝を取り戻すチームに
配置されているという事は、実力はあるはずなのだ。
しかも、4人の中で生き残れる強さを持ったカンザ
彼に聞けばなにか打開策が思いつくかもしれないと
ナルトは大きな声でカンザの名を呼んだ。
「カンザさんってば!」
「ん…」
背中がピクリと反応を示し、ナルトがホッと胸をなで下ろした。
「捕まっちまった見たいなんだ…カンザさん起きてってば」
「…え?」
素っ頓狂な声…きっと彼も自分と同じ状況に
目を白黒ささせてるのかも知れない。
「カンザさん!」
「ナルトくん?」
ムクリと起き上がり、カンザがナルトを見やると
額あてもしていない、寝る時のままのナルトの姿が目に入った。
そして辺りの異変に首を傾げながらも、慌てて胸に仕舞い込んでいた
刀の無事を確かめる。
「……ない」
「え?」
「氷刀…が」
「っ…取られたって事か?」
「どうしてここに?貴方が術か何かを掛けたんですか?
氷刀を返してくれ!あれは仲間の命!俺が守る命なんだっ!」
胸元にあった刀が見当たらず、取り乱すカンザに
ナルトが落ち着くように伝えるが、何も感じずこの場所にいる事や
他の忍が居ない事…ソレを考えれば
ナルトがカンザを止めて、カカシ達が氷刀を持って逃げたと考えてもおかしくはない
だが、飛びかかろうとしたカンザを止めたのは、ナルトの言葉ではなく
ナルトと同じ様に繋がれた鎖によってだった。
「なんだこれ…だって、オレ達寝てただろう?
お前とオレを運ぶのに、何でカカシさんやサイ君が気が付かないんだ?
そんなのオカシイだろう!」
苛立つカンザにナルトが”そう慌てるなって”と伝えると
スッと座り込み、辺りの自然エネルギーを取り込んだ。
せめて…この状況を少しでも理解しようと
ナルトは仙人モードへと切り替えていく。
ユルユルと、ナルトを包むように集まる自然エネルギー
それを、時間をかけてナルトの中でチャクラと融合させていく
カッと開かれた目が碧から金に変色し目の周りに隈取が出来上がると
カンザも目の前で起こったナルトの変化に息を飲んだ。
「それが…九尾の力か?」
「ん?あ~これは違う…ってか、なんだ…
ちゃんと居るじゃねぇか」
転がっていた小石を投げつける先、カンザの目には何も写り込んでは居なかった。
ビシッと当たった石が、跳ね返らずその真下に落ちた。
人がいる…そう確証出来る石の跳ね返りに
カンザも目を開いた。
「へぇ、俺が見つかるなんて…お前変な力使ってやがるな?」
低い声が響き、暗闇の壁がもそりと動きを見せると
見る見る間に男が姿を現した。
口布をして額当てを中忍試験の時のイビキのように頭に綺麗に巻きつけ
見えるのは目だけ。
その目から放たれる怪しげな光は淀みをあからさまに見せつけてくる。
「お前がうずまきナルトだね…で、お前が最後に生き延びたカンザ…
氷刀はこちら側の手に無事収まったよ…だからお前は用無し。
国になんて持ち帰らせないよ」
「っ…返せ!あの刀はっ!あの刀は無知な人間が使っていいものじゃないんだ!」
「無知?君も変なことを言う…無知なら、あの刀はただの巨万の富が手に入るだけの
金づるにしか成らないだろうね。」
「っ…」
男たちのやり取りは、ナルトには理解できなかったが
この男が氷刀と言う守らなければいけないもの…を奪った事に変わりはない。
ナルトがジャラリと鎖に手を掛け、引きちぎろうと力を込める
「無駄だよ…チャクラが流れてる鎖なんて
そんな簡単に切れやしない、それに…その鎖はね
お互いに繋がってるんだよ。
どちらかが無理に切れば、もう片方に全てのチャクラが流れ込む
他人のチャクラを受けた体がどうなるか…其れぐらいは解るでしょ?」
クスクスと笑う男にカンザが声を荒げる
「返してくれ!その刀はそれだけでは使い物にはならないんだ!
使い方を知りたければオレをその刀の元へ連れていけ!」
カンザの叫びに、ピクリと男が反応を示した。
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8:合流
木の葉の里、カカシ班が出立して数刻過ぎた頃。
やっと捜索していた暗部より連絡が入った
氷刀の本来の使用方法…それは…
「何だって!?それは、間違いないのか?」
「はい、先代の水影が所持していた刀です」
綱手の前で片膝を付き、面をした男が頭を下げたまま話が続けられた。
「では、あの忍はとんだ食わせ物という事か…」
「解りませんが、アレは逆らう事を許さないと聞きました…このままではまずいかと」
「…チッ、あいつらを呼べっ!」
舌打ちをした綱手が叫ぶと、膝を付いた男が”はっ”と、答え姿を消した。
「綱手様…」
話を聞いていたシズネが綱手に声を掛けると
ギリッと唇を噛み締めて一言、声を漏らす…
「ナルト…」
◆
カカシ達は、ナルトの行方が解らない状態に
苛立ちを感じていた。
チャクラも感じなければ、この街を出た形跡もない。
鉱山は確かに怪しいとは思うが、中は至って普通の炭鉱跡地
カカシは額当てをずらすともう一度写輪眼を開き中へと侵入を試みた。
写輪眼は使い続けると、カカシのチャクラが足りなくなる。
その御蔭で全てをくまなく捜索するにはかなりの時間を有する事となる。
「マズイねぇ…オレ一人じゃ限界かもしれない」
グッと開かれた目を閉じると、同時に襲ってくる頭痛に目を顰めた。
指先を目頭に当てると、グッと力を込めてハーッと息を吐いた。
「カカシ…随分手間取ってるみてぇじゃねーか。」
その声にビクッと振り返ると、逆光で顔は確認できないが見慣れた姿…
やっと、闇の世界から抜け出た復讐に囚われていた男…
「サスケか?」
「あぁ…暗部の調べでチョット厄介になったらしくてな
事が起きる前にアンタらに連絡を入れる積りでテンゾウと動いてたんだが
宿に行ったらサクラが既に事が起こったと…ま、アンタは休んどけ」
サスケがギラリと赤い瞳を開くと
グルリと辺りを見回した。
「白眼じゃねぇから…効力は劣るが…
チャクラの流れくらいは見極められるさ…だからアンタも
その眼を使ったんだろ?」
「あぁ…」
額当てを斜めに戻し、カカシがふぅと小さく息を付くと
サスケがピクリと身を動かした。
「へぇ…隠れるのは上手いらしいな」
ニッと笑ってサスケが炭鉱の中へと足を進めていく。
サスケが里に戻ってから一度も共に仕事をした事がない。
懐かしいな…なんて感傷に浸りたいが今はそれどころではない
「あったぜ」
サスケの指先がツーと岩をなぞる。
「亀裂?」
「この中から、何か感じる…少し離れてろ」
刀を背中から抜くと、チリチリと音を立ててサスケの千鳥が
音を響かせる。
刀に十分なチャクラを流すとその割れ目にザン…と刀を振り切れば
ゴゴゴゴ…と音を立てて、割れた岩が床へと落ちた。
人が出入りできるように綺麗にくり抜かれた道…
それがその隙間から現れ、サスケがフンと鼻を鳴らした。
「流石だねぇ…んじゃ、行きますか」
カカシがフーっと息を吐き、中へと足を進めると
人が独りで歩くスペースに出て、サスケ、カカシの順で先へと進む。
岩肌はひんやりと冷たさを持ち、外の暖かい空気と触れ合って
空気中の水分を岩肌に蓄え、堪えきれず水がポタリと落とされる。
少し歩くと、広い場所に出てそこに残された鎖にサスケが近寄った。
「おい、これって…」
「こっちにも、多分ナルトの螺旋丸…だろうね、痕跡がある」
鎖を持ち上げたサスケ、岩に変なふうに出来た削れた跡を
じっと見るカカシ…二人が一斉に入ってきた場所と逆の道に視線を向けた。
「行くぞ!」
サスケが飛び出して、カカシが螺旋丸の痕を指で辿りながら
手を握り締めサスケを追った。
(螺旋丸のようで…あれは螺旋丸にはなってない…
岩が渦を書いたように削れるだけの威力なわけがないんだ…
だとしたらなんだ?
幻術か…いや、その可能性は低い…
ナルトの力が、弱ってるって事か?)
カカシが頭の中で情報を纏めていると、サスケが徐に声を上げた。
「カカシ、五代目の伝言だ…あのカンザとか言う男の持つ刀は
元々尾獣を操作する力がある。」
「え?尾獣の操作…?」
「あぁ…ただ、使い方は本体に刺し込んで遣うんだ」
「……って事は」
「あの鎖の場所に、血痕があった」
「チッ、急がなくちゃならないって事か!」
「操られてたら…オレが出る」
サスケがグンと足のチャクラを増やし蹴り上げると
フォン…と、一歩が大きくなる。
それに併せ、カカシも足を進めていく。
早く…助け出さなければならない…
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