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薬を飲む話。
泣く子も黙る新選組
そんな荒々しい場所に一輪の花のような剣士が居た
「えぃっ!」
響く声は高く、声変わりはまだしていないだろうと安易に推測できる
「う・・・うわぁ!参りましたっ!」
「なんだ、だらしのない!」
細身の小さな剣士は、竹刀の先をスラリと倒れこんだ男に向けた
「神谷さぁ~ん!そろそろ夕餉ですよ~?切り上げましょう?」「はい!」
呼ばれた声に、向き直し竹刀を道場の中へと納めた
この人、神谷清三郎は、実は二つの性を持っている
神谷清三郎と富永セイ
女の身で男としてこの場所に居るのだが、それを知るものは隊内では2人しか居なかった
「沖田先生!明日は非番ですね~」
「おや?あなたは、用事でもあるのですか?」
その言葉にぷっくりと頬を膨らまし、知りません!とだけ残し
ずんずんと夕餉に向かった
「・・・・。」(何か怒らせちゃいましたかね?)
頭をぽりぽりと掻きながら、困った顔をしているのが
新選組でも一番隊長と言う名を持つ剣豪沖田総司
セイが怒るのも仕方ないであろう。だって・・・
(3日前の約束を忘れるなんて!信じられないっ!)
そう、3日前に約束していたのだ。
しかも、総司の方から申し込んできた癖に忘れるとは・・・
怒るのも無理はないであろう。
(神谷流を、手解きしてくれると・・・・約束したのに)
悲しげに空を見上げ浸る時間が欲しかったが夕餉の後は、巡察。
甘えたことは言ってられない。
巡察に向けて、気を整えなくては・・・・
そう思いセイはふぅ・・・と深呼吸をし目を伏せた。
沖田先生の側で、彼を守りいつも側に居たい
その願いは狂気でもあるだろう。
精神統一していたのだが、人の気配にその気は絶たれた
「神谷さ~ん・・・怒らないで下さいよぅ」
「3日前のお約束を、お忘れになったのはどちら様ですか?」
意地悪くセイが呟くと、総司がハッと目を見開いた
「神谷流の練習・・・・あぁ、私ってどうしてこうなんでしょう?」
情けない表情をしながら、深いため息を落とす総司に
「思い出してくれたなら良いです!」
と、セイも上機嫌になる。
そのセイの笑顔に急に意欲が湧き上がるのを感じ、薄く微笑んだ
(全く、神谷さんの一喜一憂にこんなに反応する自分に会えるなんて・・・)
イトオシイ
そう思い知った。
だからこそ、守りたいと願い彼女の側を離れない
だけど思いは伝えない・・・伝えれない・・・
「沖田先生!時間ですよ!」
深い思考の中から呼び覚まされ、急いで支度を始めた
「今日は霧が強いです、気を引き締めてっ!」
その隊長の声に一番隊が承知!と声をあげ、巡察に出る。
「二組に分かれましょうか・・・」
総司の声に従うように、6名で編成された一組が
違う方向へと向かった。
総司の班は5名編成、その中の隊員は時と場合で別れる
「神谷さん、行きますよ。」その言葉にハイと返事を返し
総司と並んで前を歩く。
「先生」小さく囁くとセイが鍔に手を掛ける
「反応が早くなりましたね」クスリと笑うと右手を挙げ
他の隊士達も鍔に手を掛け親指で弾き上げた
うぉおおお!!!!!!!!
どこからとも無く聞こえる怒声に、各々剣の届く間合いを作る
「神谷さんっ!」キィィィン・・・金属のぶつかり合った共鳴が夜の帳に響いていく。
「大丈夫ですっ!」
女の身でありながら、剣を覚え池田屋では阿修羅と付けられたほどの腕は持っている。
ヒラリと男の突進を交わし、そのまま黍を返すと男の脇の下から
剣を走らせた。
「ぐはっ。」
「手の空いた者は、捕獲をお願いします!」
剣の先には、鋭い眼差しの男。只者ではない
剣気が総司にそう教えている。
「・・・・。」
(参りましたね・・・・結構強そうですよ。)
総司は、ふぅ・・・と一息入れると、自分の間合いまで
ジリジリと足を摺り寄せていった
張り詰めた緊張が他の隊士達にも伝わる
と・・・
「神谷っ!」
一人の隊士が叫び、総司の背後でトサリ・・・と
人の倒れる音、悠長に構える事は出来ないと、総司は抜き身を
突き出し、かわされると、その瞬間鍔を返し跳ね上げた
「うっ・・・・」男が指先を切り落とされ、剣も握れない状態
総司は、男を捕らえるように促し、セイの元へ駆け寄った
「どうしたんですか!?」
セイを襲った隊士は、既にこの世には居ない
抜け殻だけが、横たわっているがその男の剣には血の跡など無い
セイ自身にも、斬られた場所は見当たらないのだ
「神谷さん!」ペチペチと頬を叩いてみるが反応が無い為
総司は、隊員に戸板に乗せて運んでくれと頼んだ
自分は、この組の隊長。報告もしなければならない
命の危機は無いと瞬時に悟ったからこそ、冷静に判断した
戻った屯所は静に静まっていた「わかった、神谷は後ろ傷ではないんだな?」
「ハイ。」総司の言葉に、ほっと胸を撫で下ろすと
「もう目覚めた頃だろう?総司迎えに行ってやれ」土方が声をかけると
「えぇ、そうですね・・・」と、静にその場を立ち上がった
パタンと障子を閉め、ゆっくりと。。。。。
だが、気持ちだけが逸る
屯所を出た頃には、既に駆け足になっていた
(どうか・・・どうか無事で・・・神谷さん・・・)
がらり・・・
一呼吸して息を整えると重そうな扉が開き、総司はそっと声をかけた
「松本先生、沖田です。」「おう、入れ」
ドスの聞いた声に促されるまま、障子を開くと横になったセイを捕らえた
「まだ、目覚めてはいないのですか?」
不安げな総司の声に、あぁ・・と声を上げると
法眼が無造作にセイの左腕を総司に見せた
「これは・・・吹き矢?」
「あぁ」「まだ使う人が居るんですね・・・・」
総司の表情が曇ると方眼は眉を寄せてポツリと吐いた
「セイは病ではない、この傷から毒が入り込んだとしか考えられねぇ」
「そうですよね・・・・」
「あぁ、まだはっきりはしねぇが熱が高い、きっと吹き矢で
毒を盛られたんだろうさ。」
吹き矢は、忍びが良く使う道具で、筒の中に入れた矢を
自分の吐く息で飛ばし相手に当てるものだ。
滅多には会えないが、こう言う技の使い手もこの時代には
数知れずいたのだ。。
大概は相手を動けなくしてしまうだけの機能だから、そう簡単には死ぬ筈も無いが・・・。
「た・・・助かるのでしょうか!?」
「あぁ、大丈夫だお前の時間のあるときで良いから見てやってくれねぇか?」
「え?」
「毒が相手だと、セイは熱を上げ、苦しむだろう」
「俺はセイだけが患者ではないからな・・・。すまねぇが頼む」
「わ、わ、わ・・・たしが・・・・ですか?」
「ウダウダ言うなら、他の男に頼むぞ!?」
総司の肩がビクンと震えると、下を向いたまま手を握り締める
「おめぇがこいつを良く知ってるんだ、交代で他の奴と代わる代わるでも見てやれ」
特殊な生き方をしているセイを、何の害も無く手当て出来るのは
沖田と里だけであろう。
「あぁ、ハイ・・・承知しました。」
総司は、答えるとセイの近くへと歩み寄った
「では、私は一度屯所に戻り報告してお里さんに文を書きますね」
「あぁ、頼む俺は明日六つには往診に出るからな」
「はい・・・。」
法眼との問答が終わり、気が付けば腕が腫れ上がっていた
「痛いですか・・・・?一度戻ってから又来ますからね?」
答えを待ったわけではない
ただ、痛みがありそうなほどの腫れ具合に
総司がそっと、手を差し伸べた
揺れる前髪
荒い息遣い
熱によって高潮した頬触れる指先にかなりの熱の高さ・・・
「松本先生、神谷さんの熱が凄く高いんですけど・・・・・」
「薬を飲ませたいが、起きねぇんだよ・・・・」
「あ・・・沖田、おめぇだったらセイも許すだろう、薬を飲ませてくれ」
ニヤニヤと笑いながら言う法眼に、良く分からないと言う表情を向けた
「・・・・・・?」
「白湯で溶いて飲ませてやれよ!」
その言葉にビクッと背中の筋が伸びる
「ほ・ほ・法眼・・・どうすれば・・・?」
「薬を飲ませろって言ってるんだよ!熱が下がらなければ衰弱が進むだけだぞ!」
沖田の手の中に一包の三角に織り込まれた油紙
その中に入っている白い粉を飲ませなければならない
「急患だから、しばし席を外す、頼んだぞ沖田!」
「え・・・ぁ・・・」
法眼の見え透いた嘘を信じきる総司にニヤニヤ笑いながら
法眼は部屋を出た
薬の包みを見つめる総司どう飲ませるのだろうか?考えても良い案が全く出てこない
「もぉ~松本先生も、意地のわるい・・・・」
深い溜息を落とし、ぐっと腹に力を入れセイを見る
腕を頭の下に入れ、首をクッと持ち上げると唇が開く
その、なやめかしい姿にゴクリと唾を飲み込んだ。
(ね・・寝てるし・・・大丈夫ですよね・・・飲まないと死んでしまうかもしれないんだし)
総司が心を決め、薬を開こうとした・・・が・・・
「あ・・・私ってなんでこうなんでしょう・・・・」
手に持った薬が、片手では開けられなく、しぶしぶ
セイの後ろに差し込んだ手を抜き去ると、白湯に薬を混ぜ
いざ、挑む・・・・
首の周りに溢してはいけないと、手ぬぐいを置き
開け放たれた口へ、湯のみから少しづつ流し込む
「ぁ・・・」
口から流れ出た薬湯は首筋を伝い落ちキラキラと
蝋燭の炎に照らされている
真っ赤になった総司が、手ぬぐいで拭き上げると
何を思ったか今度は自分が薬湯を口に含んだ
(すいません、こうでもしないと、こぼれてしまうんです
け・・・けして、やましい心がある訳では無いですから)
心の中で呟き、セイの唇へと己の唇を重ねた
(うわぁ・・・やわらかい・・・・)
吸い付いてくる柔肌に、総司の心臓が異常な速さで鼓動を強める
(こんなに苦しいんですね・・・・片恋とは・・・)
そんな思いが駆け巡る中、総司の口の中の苦味を
セイの口内へと押し込む
「んっ・・・」苦しそうに、声を発するセイに総司が飛び跳ねた
袖を口に持って行き、真っ赤になりながら目を見開き
ただ呆然とセイを見ている。
(お・・お・・お・・・起きちゃいました?)
心臓は、口付けを交わす前より高鳴り、恐怖と羞恥が入り乱れ
体がカーっと熱くなってくるのを感じながら
申し訳なさそうに、総司が再びセイを見たが
どうやら、目覚めては居ないようだった。
「・・・・神谷さん?」
震えるような擦れる声で呼んでみても、動かないセイに
総司はホッと胸を撫で下ろし、薬湯入りの湯飲みをもう一度
持ち上げ、恐る恐る口に含んだ。
ズズッと、音が鳴るのを確認し、湯飲みを置くと
セイの体を再び抱き起こし、今度は躊躇いも無く唇へと
己を重ねたていく
(神谷さん、ごめんなさい・・・)
押し込んでいく薬が、口角から流れ出て、行く
口の中の苦味は、全て無くなったのだが
離れる事が出来ない。だが、意識の無い女に無理やりするのは男だったら
誰しもが、卑怯だと思うだろう。
ちゅとセイの下唇を吸い、惜しむように離された
ただ、呆然と総司は自分の唇に指を宛がい柔らかさを思い出す
(はっ!な・・・なに考えてるんですか!全く!)
心の中の自分を戒め、法眼が戻ったら一度屯所へ向かうのだと
再びセイの手を握りながら伝え
寝顔をしばらくの間見つめていた
「また、守って上げれなかった・・・・」
こんなに細い体を一生懸命動かし自分の居場所を守っている
何がそんなにセイを逞しくさせているのかなどと考えても
答えは、どこにも見当たらなかった
無造作に、ガラリと開け放たれた扉に静に振り向いた総司が
その人を確認し、座っていた畳から腰を持ち上げた
「お薬は飲ませましたので、屯所に戻ります」
と、すれ違いざまに言い残した総司に法眼がご苦労だったと
声を掛けた以外は問い質される様子も無く、総司は診療所を出た
翌朝早くに総司は、診療所へ来ていた
今日は非番ですからと、恥ずかしそうに言う総司に
セイの居場所を教えると、方眼は南部と共に、往診の支度を始める
スススッ・・・。
開かれた襖に、まだ昏々と眠るセイの姿を確認し
総司は、すぐ側に刀を鞘ごと抜き横に置きながら腰を下ろした
昨夜は、セイの唇の感覚に寝ることさえ出来ず眠気が襲ってきた
体を横たわせようと横を見ると・・・・
「朝」とだけ書かれた薬が。
「・・・・・。」
ボンと、総司の顔が一気に赤面すると
慌てて、法眼の居る部屋へと走り寄った
「あ~薬今日も頼むわ、お前のお陰でセイの熱も落ち着いてるしな」
「だって、薬はあの・・その・・・どうやって飲ませれば?」
真っ赤になって聞いてくる総司に方眼が、ニヤリと右頬を上げると
昨日はどうやって飲ませたかを聞いた
「え、あ・・あの・・・いや~・・・えっとですねぇ・・・」
朝の時間の無い時に、総司のモジモジはイラ付をも覚えさせる
「おおかた、着物が濡れてねぇ所見ると、口移しだろ?」
「えぇええ!!くちっ・・くちちっ・・・・」
「又ソレで飲ませてやればいいじゃねーか、頼んだぞ~」
法眼は、そう言い残しサッサと往診へ出かけた
「はぁ、私は鬼だと思っていましたが、もっと恐ろしい鬼が居ましたよ・・・・」
とぼとぼと、賄い方へ行き白湯を造ると
更に深い溜息が落とされた
「遊ばれている気がしますよ・・・神谷さん・・・・」
ふぅ・・・・と深い溜息を落とし、セイの部屋へと向かった
額に乗せられた手ぬぐいが、冷たさをなくし
セイのおでこに乗せられていたのを取ると
桶の中に張ってあった水の中へ押し込み絞った
前髪をクッと上げると、タオルを置き、再び白湯に薬を溶かす
(私がやらなければ・・・他の人になんて頼めませんものね・・・)
半ば諦め、再び薬を口の中へと入れる
(!!!にっがー・・・・)
一度で終わらせてあげようとした心使いが薬の濃度を高め
総司の口の中で苦味が、味覚を強く刺激する
(こんな苦いの飲まされるなんて、私は遠慮したいです~(泣)
訳の分からない自問自答をしながら、総司は再びセイの体を抱き上げた
(拷問みたいですね・・・。神谷さんが知ったら殴られそうだ・・・)
緊張した面持ちで、唇をきゅっと引き締め
右手で顎を引き口が開いた状態の中に、総司が再び薬を
押し込んで行く・・・・・
コクン・・・・コクン・・・
セイの喉が鳴る度にゆっくりゆっくり押し込んだ薬を
少しづつ喉に通して行くと、最後にコクンと飲み込んだのを確認し
総司が唇を離そうとした時だった
カタリ・・・・・・
人の気配に、総司が慌てて見上げると
「お、お里さん!」一気に見られた恥ずかしさから
全身に血が巡り、真っ赤になった総司が呆然と里乃を見やった
「お・・沖田センセ、お邪魔だったらうちかえるし」頬を赤らめ里が、
戻ろうとした時
「ちょっちょっと待ってくださいよ!薬、くすり!」
「あっ、あのっ、神谷さん目覚まさなくて薬が飲めないので
飲ませろって松本先生が、その・・・だから・・・・」
しどろもどろになる総司に、ぷっと噴出しながら部屋へと入ってきた
セイの病状は伝えてあり、命に別状はないと聞いていた為
すんなりと、沖田の言葉を受け入れ笑ったのだが・・・・
「まだ、目ぇ、覚まさないんどすなぁ・・・おセイちゃん。」
「えぇ、昨夜から一度も醒めてないと聞きました」
「ほな、沖田センセ、少し休んでください?」
「いえ・・・先ほど来たばかりですし、大丈夫です」
「いややわぁ、セイちゃんの服を着替えさせたいんどす。出てて貰えまへんか?」
「あっ、す、すいません・・・廊下に居ますね・・・。」
かちゃり・・・と、刀の鍔が鳴り、不意に山南を思い出して
里は薄く笑った
しゅるしゅると布が擦れる音に、総司は耳まで真っ赤で
今更ながらに、先ほどの薬を与えていた自分の緊張感がフルフルと
指先を震えさせる
(はぁ、やっぱり、神谷さんには敵いません。)そんな思いを
脳内で弄っている時だった
襖の奥で声がかすかに聞こえた「ぁ・・・お・・里・・さん?」
「セイちゃん!目が覚めはったんね?」
「う・・・ん・・・」
その声に総司が慌てて襖を開け放った
「神谷さん!」声が聞きたくて・・・笑顔が見たくて・・・・
「あぁっ!すすす・・・すいません!」
まさに今・・・晒しが外されようとしていた
白い肌が熱で赤く染まっている、汗が流れ出て
キラキラと光る胸元の深さに、真っ赤になって襖を閉めた
「沖田・・・先生・・・いらっしゃっていたんですね・・・・」
恥ずかしいと思いはするものの、それ以上に会いたかった人
それに、熱のせいで、まだはっきりと自分の感覚が蘇っては
居ないセイに、恥ずかしさを忘れさせるのは安易だった
着替えを終えるとセイが沖田を呼ぶ・・・
それに答えるように申し訳なさそうに入ってきた総司を
ニッコリと笑顔で迎えるセイに、総司も心が温かくなった
「やっぱり、神谷さんは太陽さんですね!」
ニッコリと笑いながらセイの横に腰を下ろすと、里が昼餉を
用意すると、セイの洗濯物を持って、立ち上がった
「沖田センセ、お願いできますやろか?」
「えぇ、私が神谷さんを見てますので、お昼よろしくお願いします」
トタトタと足音が消え、総司がセイの背中を抱き起こし
自分の腕の中へすっぽりと包んだ
「沖田先生っ!」赤くなってもがくセイに、総司が声をかける
「神谷さん、寝てばかりだと、背中が痛むでしょ?私が支えておきますので
昼餉を食べるまで起きていなさい」
「はい・・・。」
ほんのり赤らみながら、総司に背中を預けセイは湯飲みから
白湯を口に含む。
その姿に目のやり場を困らせた総司が、窓から見える空を眺めた
「今日は天気が良いですね、神谷流は流れてしまいましたが・・・」
「あぁ、私そんなに寝ていたのですか?
折角先生が約束してくれたのに・・・行けなくて
すいませんでした・・・。」
しょんぼりするセイの髪をなで上げ
又行きましょうね。約束です・・・と言葉を綴る総司に
ニッコリ笑って、ハイ!と、答えたセイ
そんな二人を、昼餉を運んできた里が優しく見守っていた
「さっ、セイちゃん、沖田センセ、お粥さん召し上がって下さいね」
沖田もセイを愛でている・・・そう感じずには居れない
里が、薄く笑うと、皆でゆっくりとお粥を平らげた
「あっ!神谷さん、饅頭持ってきたんです!お薬の後食べましょう」
ニコニコしながら、持ってきた包みのなかから団子を取り出し
薬を広げると、白湯を湯飲みに注ぎ、セイに渡した
「先生手際が良いですね、クスクス」と・・・笑うセイに
昨夜と、今朝の話は出来ないであろう・・・
何か言いたげな里にシーっと、口をつぐませ
薬を飲ませた
「にっがぁ~い・・・・」
飲み込んだ後に饅頭を食べながら
首をかしげるセイ
「ん?美味しくないですか?」
「あっ、いえ・・・なんか、私薬を今まで飲んでたらしいんですよ・・・・」
ビクリと、総司の背中が粟立つ
「凄く、優しく飲まさせて頂いてたような・・・・そんな気がするんです」
「それはよかったなぁ~おセイちゃん。」
「うん、法眼かな~?なんか、凄く温かかったんだよねー」
「うんうん、沖田センセが頑張って飲ませはりましたもん」
「あっ!お里さんっ!」真っ赤になった総司が里の言葉をさえぎるが
しっかりとセイには届いていた
「沖田先生だったんですね・・・本当にありがとうございます。」
真っ赤になったままで、いいえ・・・と小さく返し
再びセイを布団に寝かせた
2日後、無事に屯所へ戻ったセイが、相も変わらず大暴れ
総司はただ黙って・・・・
唇を指で押しやっていた
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