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てふてふ~お友達に送った作品です

★蝶★





【蝶】
ちかも、プレゼンツ。クリスマス企画(勝手にw)


色とりどりの着物が立ち並ぶ商店、一人の少女がその場所で
店主と口論を投じていた。

そこに、お使い帰りのセイが通り掛り、様子を伺っていた。

揉め事ではなさそうだったが、どうも少女の言葉が気に掛かったのだ。

「私に、似合う色を…」
そう告げながら、店主が持ってくる着物を大した見もしないで
断ってしまうのを何度も何度もやっているのだ。

小柄で、後ろから見る少女は可愛く華奢な感じがあり、セイは
ポツリと呟いた

「藤色に緑の鳥の絵が入った、あの生地だったら似合いそうなのに・・・」

その声は届く事は無いだろうとセイは小脇に抱えていた包みをもう一度握り締め
屯所へと向かい、足を滑り出したと同時だっただろうか?

「お侍様、今おっしゃった事を、店主に伝えてはくれませんか?」
袖を掴まれたセイが驚きながら、聞えてしまった事に申し訳なさを感じた
「え!?あ・・・申し訳ありません差し出がましいような言葉を発しました。」
セイはペコリと頭を下げると、少女は可愛く微笑みを返してくれた

「いいえ、違うんです私、13の時水疱(水疱瘡)に掛かってしまい
目に色が映ってこないんです…ですから、色をお聞きしていたんですが
店主さんは、その受け答えが面倒なようで…。」

しぼんだ少女の顔を見ると、なんだか切なさが込み上げてきた
自分の中の色が失われたら…
そんな事を考えると、きっと居ても立っても居られない

綺麗な着物を纏い、せめて色の見える人には綺麗に映っていたいと言う
そんな切ない女心までもが理解されてしまう自分が
手伝わないわけにも行かなかった。

店主に話し、色の分別が付かないと説明すると、店主は
数枚を持ち出し、セイの前に並べだした

「では、お侍様が選んで下さい。私どもは商売人
色のみえぬお客様に高価なものを売りつけたと因縁をつけられても
困りますので…。」

確かに、言ってる事も確かではあるが、色を一つ一つ説明し
この少女の答ええるがままの物を売れば良いだけではないのだろうか?
低の良い逃げ言葉なのだろうと思うと、セイの胸が痛んだ。

半時は、話していただろうか?
流石にお使い帰りなのに、遅くなってしまえば
土方の雷が落ちる。セイは良い感じに決まっていた反物三巻きを店主に預け
日を改めると伝えた。

少女の名は、”菊”年は17で、家は武家だと言う
自分が新選組の隊士と告げると少女の顔色が変わった。
京の都で、この名前を聞けば、脅えるのは無理も無い事だと
セイは、翌日の約束を取り付け、その場を離れる事にした。


屯所に帰ると、無論土方が怒鳴り散らしてくる。
大切なお使いさえも出来んのかと、散々な言われように、スイマセンと
謝るだけだった。
無論、いつも彼女は理由を告げる。
だが今回は全面的に自分が悪いと言わんばかりの黙りようだった
謀反の心があるとか、他と内通していると言うあらぬ疑いは掛けられないほどに
彼女自身の立場は、良い位置に置かれてはいるのだが、それを聞いていた
沖田総司だけがその彼女を不穏な目で見ていた。

何時もなんでも真っ先に話してくれる彼女が、今回戻った時に
視線を反らしながら何でもありませんと伝えてきた事が気に掛かったのだ。

セイ自身も、それをどうこうするつもりもなく
ただ、目の見えない彼女に手助けをする事が、女の心から生まれてきている事に
罪悪感と言うものを産んでいるのだろう。
無償で手助けする事は、苦ではないのだが、女の気持ちを前面に出す事に
多少なりと抵抗を感じていたのだ。

翌日は、朝の巡察があり、その後は翌日も含め休日となる
セイは昼過ぎに菊と逢う約束を取り付けたので
全てを朝のうちに済ませる必要があった。

「神谷さん、何をそんなに慌ただしくしてるんですか?」
早朝皆が起き上がる時間だと総司の声で知り
今しがた終わった洗濯物をパンと広げた。
「おはようございます!今日は出かける用がありますので
洗濯を終わらせていました!」
何時ものようにニッコリと微笑みながらセイが総司に身体を向き返ると
ピリッと空気を裂く様な雰囲気を肌に感じた。

(あ、あれ?先生…怒ってる?)
不意に投げられた怒りのような空気に一瞬引き攣るが、総司は
そうですかと、すんなり言葉を投げて井戸へと向かった

先程の総司の態度に腑に落ちないセイが、むむっ…と、頭を捻らせた所で
所詮人の考えること。
全てを理解できるわけも無く、深い溜息を落とすだけとなった。

巡察が終わり、昼餉を終えるとセイは大急ぎで支度を済ませ
屯所を出た。

総司は、置いて行かれた寂しさと、何も言わないセイにちょっとした苛立ちを覚えていた
けれど、その苛立ちは自分がセイを女として見ている
だからこそ、それを前面に出す事は叶わず先程も引く形となったのだ。

恋を知ってから弱さを知った。
そしてその弱さに、時折食い殺されるのではないだろうかと言う
不安と言う名の恐怖に支配される。
無意識でやっていたときは可愛かった。
なにせ嫉妬や、苛立ちを理解する前に忘れられたのだから

(神谷さん…)
不意に心で名前を呼ぶ。
返事が返ってこない不安が、今ならば判る

あぁ…あの時、側に居なさいと命令したあの時には既に心は彼女に囚われていたのか

不意にその思いに囚われる。

今彼女はどこで何をしているのだろうか?
誰と逢い、誰を思っているのだろうか?
そんな些細な事が繰り返し総司の脳内に棲み付くと
とめどなく溜息の連鎖

青い空、澄み渡った空気が冬の寒さを強める。
まだ雪は落ちては来ないものの、身震いするほどの寒さの中
彼女は…

パンと、両頬を叩くと、総司は徐にその場から離れ、ちょっと出てきますと
屯所を出ることにした。
それでなくても彼女の事を考えてしまう自分を打ち消せないのだ。
それならば一層の事、甘味でも食べて時間を潰し戻った頃には彼女の笑顔が又見れるだろうと

それを願った。

一方セイの方は、彼女の着物の柄が決まり、色も希望に沿う反物に出会えて
菊の家へと招かれていた。
武家の出とは聞いていたが、門構えを見て、セイの方がしり込みをする
松平家の系統の家
何らかの形で将軍との、接点があるのは家紋を見たときに理解はしたが
まさか、こんな大きな家だったとは…と、あっけに取られるセイを気にも留めずに菊は腕を引き
部屋へと上がらされる形となった。
菊姫と呼ばれる彼女は、恐らく目が色を失う前はここの場所で将軍の妻となるべく
勉強をしていたのではないだろうか?

「神谷さん本当にありがとう御座います」
目の前で指を綺麗に揃え頭を下げてくる彼女に、いえいえと返し
面を上げてくださいと告げると、綺麗な笑顔がセイへと向けられた
笑談をしながら、夕餉の時間までもう少しだと知ると、セイは屯所へ戻らなければと
思い始めるが、彼女の話はいつまでも尽きる事がなかった。

そろそろ、本格的に不味い。

闇が迫り来る前の焼けた太陽が既に沈み掛かっているのだ
夕餉に帰らなくても、さほど問題にはならないのだが
今朝の総司の様子が何よりも気に掛かっていたセイは
ここで話を区切ろうと思い、声を上げようとした時だった。

「お菊! 菊はおるか!!」
ドスドスと、地を踏みしめる音が慌てている感じを表し、
声の張り上げが、余裕の無さをあらわしていた

開け放たれた襖の裾から、まだ青年と思われる男性が現れた。
「兄上?」その言葉で彼女との関係がすぐに理解でき
セイはペコリと頭を下げた
「何だ!?嫁ぎ先も決まっていないのに男を連れ込むなんて!」
その言葉にセイが、全てを説明し、もうこの先逢いに来る事は無い事を
やんわりと伝えると、菊は悲しそうな表情を見せるが、セイは
こんな場所で揉め事を持ち帰り、総司や組みの皆に苦労を持ち帰るほうが
苦しかったのだ。
一礼を済ませると、セイは何事もなかったように、その門をくぐり抜け
帰路へと付いた。

夕暮れ時、烏がカァカァと鳴きながら飛び立つ様を見上げながら
総司に甘味でも買って行こうと思い、甘味屋を経由した帰路に向かった。

「神谷さん?」
空を見上げながらふわふわと歩いていたセイが
不意に名前を呼ばれ、その声にじんわり心が温まった。
「沖田先生!?」
フッと振り向くと、そこには総司と…そして歩いてきた後ろからも…

「神谷殿!」

先程の菊の兄が後を追ってきたのだ。
「ど、どうされたんですか?」セイが慌てて彼に振り返る
総司の心臓が強く拒絶反応を示すのは、きっとセイには伝わってはいない。
けれど、セイを追ってきた男と、それに返答したセイを見ると胸がきつく締め上げられる。

彼女の幸せを願い、この子が幸せになるのであれば身を引くと…
そう斉藤に告げたのは、何時だったか・・・?
不意にそう考えながら、総司は少しはなれた位置でセイを待つことにした。

(だって、神谷さん何にも教えてくれないんですもん…
どうしようも出来やしないじゃないですか!)

プックリと頬を膨らませると、総司は足元の小石をポンと蹴った。
つまらない・・・そんな思いなのだろうけど
本心はそこではない


「先生?」横から、そんな総司の邪念を知らぬセイが声を掛けると
ビクッと身体を震わせて、慌ててセイへと身体を向き直す

「もう、良いんですか?」
「あ、はい。大丈夫です!お待たせして申し訳ありません」
本当に申し訳なさそうにしているセイに、フッと微笑み、二人で屯所へと向かった
その道筋であの男の正体を教えてもらえるだろうか?
そんな不安を抱きながらセイの様子を見つつ、道を進むと
セイが不意に大きな声を上げる
「え?どうしました?」
思考に囚われ、セイの声を聞き逃したのかもしれない
そんな事を一瞬で考えるが、それは違うと言わんばかりにセイがその
思い出した事を口に出したのだ

「少し遠出したので、帰りに先生に甘味を買って帰ろうと思ったんですよ」
プックリと頬を膨らませたセイが、それに続いて、なのに買う前に出会ってしまい
忘れてしまっていた事を続けると、総司が自分を忘れている訳ではなかったのだと
頬を綻ばした。

「では、神谷さんは私に甘味を買ってくれようと思ってたんですね~?」
その言葉にセイがハイとはっきりした答えを返してくれる
なんだかそれだけで心が優しくなれる自分がなんだか可笑しくて
総司がフフッと笑うと、セイが不思議そうな表情で見上げてきた

「今日は…どこに行っていたんですか?」
すんなりと出た問いかけだった…なんだかんだともやもや考えていた自分が
なんだか、嘘のように晴れやかだった・・・なのに

「あぁ、今日はお買い物を付き合ってたんです」とだけ答え
それ以上には声を発さなかった
「買い物ですか・・・?」と付け加えても、ええ…とだけ返答され
あの男性との関係や、何故行ったかの理由さえ口には出さなかった

その行動が、総司の心に深く溝を作っている事は解ったが
理解しようと思っていた。
だからこそ、翌日に甘味屋へと誘ったのだが

それも、断られる結果となった

「すいません、松平様と、用がありまして…」
先程であった武家の男性との私用…
自分の知っている人間だったらどんなに楽だっただろう?
総司は焼け付くような思いに蝕まれていった。


翌朝は、昼からの用事だと言ってセイは頓所でバタバタとしていた
不安と言う思いを胸に秘めた総司の事を知らずに

その用件とは、菊との買い物…
男性だからと言う理由だけで、セイを帰してしまったが
結局は菊が困っている場面で助けてくれた事を知らないままで居た為
セイが帰宅後、菊から聞かされて、申し訳なく思い
明日も買い物に付き合ってくれと言う事になったのだ
だが、セイもそんな事を何時までも続ける気は無く
その場で明日だけだったらと言う条件をつけての買い物の約束となったのだ

無論菊は納得するのを渋ったのだが
セイに言われ、仕方なしではあるが了承したのだ

これで、この先彼らと関わる事も無く過ごせると思っていた

だが、セイの中の問題は解決を見せていても、総司の方は
何も知らされないまま、未だに心にしこりが残っていた。

夕餉の時刻、やっと総司と顔をあわせるも視線をそらされてしまい
セイは、何か悪い事でもしたのだろうかと考えるも思いつかず
今までどおりに過ごそうと、総司の夕餉のお代わりを聞きに行った

「いいえ、今日はもういいです」
棒読みで冷たく放たれた言葉に、セイは眉間に皺を寄せる

けれども、何もナシに怒る人間ではないのを自分も理解しているつもりだし
今までも理解してきた
だから今回も自分が何か知らないうちに、やったのだろうと思うと
胸のあたりが苦しくもなってくる。

夕餉の後、総司を呼び出し、真相を聞こうと思ったのだが
切り替えされた言葉は

「神谷さん、間違わないで」

一体セイは総司の何を間違えたのだろう?
不意に不安が襲ってくる。
「私が何か悪い事をしたのでしょうか?」
続けて放たれた言葉にフーッと深い息を落とした
「違いますよ、貴女は悪くなんかありません」
総司が、庭先でその言葉を吐きながら、木の枝をパキリと手折った。

「あの・・・でも・・・」

セイは十分に自分を考えてくれているんだ
それ以上を求める事がどう言う事か…それくらいは総司にだって解らないはずも無い
「私は怒ってなど居ませんよ?貴女が、今日何をして何を聞いて何で笑ったのか…
たった其れだけの事が、私は気に成っていたんです。」
その言葉は、まるで自分を一日一杯考えていたと言う告白のようで
セイの身体が甘く痺れるようだった。
だが、この野暮天がそんな事をするわけも無いと勝手に思い込んだセイは
今日までの経緯を全て彼に伝えた

女の心が、手を貸したのに結局は、翌日まで会う嵌めになったこと
彼は兄であり、一緒に居たのは妹の菊だって事

とうの昔に捨て去ろうと願った心がまだ自分の大半を占めていることに
嫌がおでなくても、気が付かされる出来事だったので
総司に伝える事すら戸惑われたこと。

「神谷さん、貴女は女の自分も忘れてはいけませんよ?」
え?と、返された言葉に苦笑いを向ける総司がつぎの言葉を綴った

「女で居ながら戦う術を学んでいる貴女が、女性の部分を忘れてしまったら
ただの無鉄砲な人です。
女性だから気が付ける部分に私達はかなり助けられていますし
それだけではないんですが、神谷さんは女性の剣士なんですよ。」

一呼吸あけただろうか?
セイの目を真っ直ぐに見据えた総司が、セイの肩を両手で押さえると

「迷わないで」

と、言葉を重ねた
甘い言葉でも、優しい言葉でも無い
ただ、自分の進んでいる道は間違いなんかでは無いと
そう、彼は告げているのだ

「先生…」

肩に置かれた手が、やけに熱く感じた

「貴女は、さなぎなんです。」

総司がニッコリと微笑み、そこに腰を下ろすとセイも座れと
横の草地をポンポンと叩いて自分の横に誘った。

「さなぎ・・・?ですか?」

「貴女は、蝶になって羽ばたいていく前の…さなぎなんですよ。だから
いずれ…」

彼女は飛び立つだろう
自分の前から姿を変えて、飛び立っていくだろう
それは、男性との結婚かもしれない
または、自分の新しい道を見つけるかもしれない
年齢がかさめば、きっと彼女も
蝶のように羽ばたき、自分の手をすり抜けていくのだろう。

総司は黙って自分の手を見つめて呟いた

「貴女が微笑むまで、私は貴女を守っていきますから」

そう、今回は勘違いから生まれた嫉妬だと
総司は自分で認めることにした。
そして、いずれは自分では無い誰かと同じ時を生き
同じ空間を生きていく人が現れる
無論、斉藤も然り
だが、自分の誓いは
彼女の重荷にしかならない
だから決して、気持ちを伝えはしない

けれど、何よりも大事だから

何よりも愛おしいから

貴女が最高の微笑を与える人間が現れるまでは

「私があなたの側に居ますから」

そよそよと、優しい風が吹きぬける
もう、冬だと言うのに寒さよりも、この優しい風に包まれて
心も身体さえも暖かく感じる。

「はい。私も…先生のお側に居たいです」

セイの言葉が熱く胸に染み渡る
身体の昨日が止まりそうな嫉妬を、いとも簡単に解きほぐす彼女の言葉が
総司の心もまた、温めてくれるのだ

「寒くないですか?」
総司に返事を返す前に、肩を抱き寄せられて目が丸く見開かれた

「神谷さん、蝶になるのは…もう暫く待ってくださいね?」
意味が解らず、セイが考えていると、プッと噴出した総司が
セイの身体をギュッと抱かかえた
「え?え?え??先生?」
「私が寒いんですよぅ~」
セイの体温、セイの香り、セイの身体…全ては
自分の為に心に焼き付けよう
その思いを抱いて逝ける時が来たら、きっと自分は満足できる

嫉妬に苦しんでも
黒い考えに支配されても
きっと・・・・


「貴女が微笑むまで・・・・ですから」


その言葉は小さく小さく吐き出され、側に居たセイにもはっきりとは届かなかった

けれど、セイの心に暖かい感情が染み渡った


羽化するまでもう少し

私のセイで居てください…

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