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≪ 狼と私2章⑳ | | HOME | | 【優2】 ≫ |
レンは全てを捨ててくれた。
元から持っていないものを今更手に入れることは
何か違うと言っていた…
国を捨て日本に戻る彼は清々しいのだろうか?
レンとジョイさんとアルさんに、見送られて私はイギリスの空港を飛んだ。
さようならと、イギリスの国から飛び立つ
この国へもう一度足を踏み入れるのは、私が年老いてからの話しになる。
レンに連れられて、2ヶ月前に母親と父親の眠る墓へと一緒に行き
結婚の報告をした。
温かい風に抱き締められた感覚が今でも忘れられない
レンはこの選択が間違いではないと、そう思えるような
温かさだったと言っていた。
私は先に日本へ戻るが
レンはまだ残った残務と、書類の手続きをしなくてはならなかった為
遅れて帰国するとの事。
それまでに私はまたあの家をきれいにして今度はアルに私の寝室を明け渡し
レンと私は二階で生活する事になる。
同じ屋根の下で、家事をしてくれる人が居る生活は
私にはまだ解らないがレンは自宅で沢山の仕事をする予定なので
居てもらった方が良いのかもしれない。
日本に迎に来てくれたのは探偵さんと和香
レンとの事を一応報告し、帰る日を教えていたため
来てくれたのだ。
レンが日本に来たら、私はアメリカ行きのチケットを手に入れることにしている
今度は私がレンの故郷に挨拶に行く番だ
会えるかなんて解らない
けれど、狼の家族に遠くからでも会える事を祈る。
それから2ヶ月が過ぎ
レンは日本にアルと到着した。
おかえり…レン、そしてようこそ日本へ…アル
私の家族が、二人を歓迎してくれた
何度も困難があったし苦しい思いもしたけど
やっと、レンを愛し愛され私達はスタートラインに立った
戻ってくる日常は、アルが居るお陰でかなり楽な生活をさせて貰っているが
バナナは必ずレンが私にくれる。
大学も何事も無かったように通い
私とレンはやっと家の事も落ち着き
アメリカへ連休で飛んだ。
ニューハンプシャー州に降り立つとレンが懐かしさからか目を細めた。
森が、土地の80%以上を占めていて湖が多い土地
マンチェスタで宿泊して私はレンとあの森へと向かった
リュックを背負って、帽子をかぶり
父と出会ったベースキャンプへとたどり着いた
「レン!?」
日本の作業員がレンを見つけて駆け寄ってくる
レンは嬉しそうに抱き合い、沢山の話をしていた
そして私が紹介されるとレンが必要以上に突っつかれてて
面白い事この上ない
今までの彼の経緯は、保身上誰にも語ることをしないで置くと
レンと私は決めていたからその事は墓に入るまで誰にも話さない
夜になり、レンの家族がこのキャンプの側まで来てるという情報が入ったので
私とレンはその場所へと二人で足を進めた
「懐かしい…」
大きく息を吸い込み、レンは目をまた細めて
記憶の糸を呼び起こしている。
大きな岩があったからその岩に腰を掛け
彼らが来るのを待つと、闇が辺りを埋めていく。
こんな場所で…ずっとレンは生きていた
月の光だけが頼りのこの土地で
彼は走り回っていたのだ。
「水希がここまで来てくれるなんて思ってなかった」
「会う為には来るでしょう?」
「ベースまでだと思ってたから会うのは無理だと思ってた」
「ん、私も逢いたいから」
「襲われたら俺が守るから」
「うん解った」
レンの家族は絶対に彼を傷付けないと思えた。
けれど、そう言うことを言うのももどかしいほど
心が高鳴る
カサリと音を立ててそれは現れた。
一匹の狼は、グルルルルと喉の奥で威嚇音を出し
私とレンを黙ってみているようだった。
「レン…」
「あれが俺の父親」
「そう…」
「今来るよ…群れの皆が」
そう言うとレンの背後から目が光り
あたり一面狼だらけ
家族?仲間?
レンはこの仲間達に守られて生きてきたんだ?
「レン、会わせてくれてありがとう」
「うん」
レンは狼達には触れずに腰を落とすとジッと狼達を見た
父親と呼ばれた最初の狼がレンのおなかに顔を埋め
それを切欠に数匹の狼がレンの顔を舐めたり匂いをかいだりと
スキンシップを図っているのが解る。
「水希…母だよ」
指をさされた狼は、凄くきれいな目をして私の側まで歩いてきた。
こんなに近距離で狼を見るのは初めてで気持ちが浮き立つ。
「レンと結婚した水希です…よろしくお願いします」
と、挨拶をすると、彼女は私の側に来て頭をグリッと私の身体に押し付けた。
認めてくれたのかな?
そっと指先を伸ばすとレンを見て
レンが頷いたのを確認してそっと頭を撫でた。
温かい体温に、この体温にレンは守られていたんだと思うと
涙が自然に溢れた。
狼の子供が、この森に捨てられ
そして日本イギリスを回り、また帰ってきた
狼の目は優しく力強く私とレンを見据えてくれた。
「水希…」
「ん…?」
二人狼に囲まれて空を見上げた
狼達も今は怖いとさえ思わない。
恐らくレンが居なくなれば食い殺されるのかもしれないが
今彼は…私の横に居る
満天の星空、地上に光が無いだけでこんなにも星は綺麗に輝く
「もう一度、君にプロポーズをしたいんだ」
「え?」
「最初に会った時から君意外見えない
俺は、君を手に入れる事に上手く行き過ぎて
良く自分を見失ってた…。
そのたびに嫌な思いもさせてるし、辛くもさせてると思う
でも、言われれば考えるし一緒に治して行けると嬉しい
こんな、中途半端な人間が君を愛する事を
神は許すだろうか?」
両足を前に出し、空を見上げる傾いた体を支える為に
後ろに回していた手を、レンとそっと握りあった。
「レンが私を変えたんだよ…私は恋愛なんて面倒だと思ってた
愛って?好きって?って何度も何度も思ってた
実際レンの行動にもかなりわからない事が多かったし
それを理解するのも人から言われてとかレンに聞いてとかしか
解らなかった事もある
私で…いいのか?本当に」
「ふふ…俺さ…すっげー水希に惚れてるから!」
「ありがと」
「キスしようか?」
「え?」
「家族に誓わなくちゃ…」
「はい」
共に命ある限り…
愛し合う事を
アメリカの空の下
誓う。
朝方まで皆が囲んでくれていた。
レンも最後の挨拶をしているのだろう
私とレンが戻ったのは明け方でベースキャンプの人たちが凄く心配をしてくれていた
そして、全てが終わった。
レンと私は、日本へ戻り
結婚式の準備に取り掛かる事となる。
それはレンの希望
私のウエディングドレスをどうしても見たい…なんて言い出してくれて
レンの持ち金でドレスを買ってくれた
レンタルで良いのに…。
幸せがやっと手に入った。
大好きなレン、彼と私は共に歩む道を選んだ。
☆
コンコン
部屋のノックに答えると、はにかんだレンの白いタキシード姿
身長が高いのとイギリス人特有の目の色髪の色をした彼は
私を見て破顔する。
「水希、愛してるよ」
「レン…私も愛してる」
皆が参列してくれる中、私とレンは正真正銘の夫婦と言う
誓いを立てた。
喜ぶアル、イギリスから駆けつけてくれたジョイ、アメリカから来たノアは
私に離婚したら教えてとか言っちゃったもんだからレンが警戒を解こうとしない
皆に助けられ、皆に愛され…私はこの狼と生涯を共に過ごす事を決めた。
=【1年後】=
レンとの生活も、元に戻り私は大学帰りだった。
ここ最近の体調不良がどうも気になって、保健室へ行くと
症状を聞いた先生がクスッと笑った。
「水希さんは、新婚さんだもんね?」
「え?」
「子供が出来ている可能性が一番高いと思う」
その言葉に驚いた。
確かに結婚してからは避妊は然程前みたいに警戒はしていないが…まさか?
薬局で検査薬を買い、反応が出ると何だか嬉しくなった
私の中に、レンとの結晶が出来たのかもしれない
まだ、彼に言うのは早い…レンに言う前に確りと検査をしなければ
「水希…」
ベットの中で私を抱き寄せるレンに
私はギュッと抱きついた
「ねぇ、そろそろ…子供欲しいね?」
うわ、何だこのタイムリー!
ばれた?まさか…でも、野生の感か?
「そうだね」
きっと望まれた子だから…
私は迷う事無く翌日検査に行った。
「3ヶ月目に入ったばかりですね」
その診断に、嬉しくて涙が溢れた
母親になる…それは私の中であまりにありえなかった事だったのに
今はすんなり受け入れられる
レンが辛い思いをした分、生まれてくる子には
幸せを沢山上げれたらと思う。
大学へ戻り、私の様子がおかしい事に気付いた平賀が
そっと耳元でおめでとう、良い子を産んでくださいね
とか言い出して、何故解った!?と聞くと
最近の私の様子が、平賀の奥さんと被ったそうだ。
だから気付いた
平賀に言われてしまったら
恐らくは父母も気付くのも時間の問題か…
夕食の時、アルとレンが座った席で
「話しがある」
と、切り出し二人の視線を浴びながら…
「子供が出来た」
と、淡白に言ってしまったが、アルはやはりそうでしたか…と
どうやら気付いていたらしい
って…あれ?
「レン?」
ポロポロと涙を流して私を凝視するレンに手を振って
レンを何度か呼ぶと
慌てて席を立って私を抱き締めてきた
「こ、こら!」
「水希!!俺の子供、水希!父さんになれるの?俺」
「そうだ、お前が父親だ」
「愛してるよ水希」
もう、寝るまで終始ベタベタで先が思いやられる…。
アルは、テーブルの上のものが零れないように必死に食べ物を守り
クロが下で落ちてくるのを待っている。
そんな家に子供が増える。
見る見る間に腹が膨らみ、レンは胎動を感じられるようになると
仕事を休んだら?とか、俺がやるとか言いながら
ベタベタに甘やかし、挙句に母と父とレンで名前の権利を奪い合うという始末。
深い溜息を落としお前らになど決めさせるものかと言うと
ニッコリ笑ってレンが水希が決めるなら譲る。
なんて言うもんだから、本当にベタベタだ
子供の性別は私だけが知っているイヤ…実はアルにも話してある。
子供の用意をしてくれるとの事と、ベビーシッターも、できると言うことで
彼に協力してもらう事が生まれる前に決まったから。
母は男の子、レンと父は女の子を希望しているが
もう、臨月が近くなると
アホかと思うくらい腹に話しかける。
「話しがある」
レンを連れて寝室へと行くと
彼は何の躊躇いも無く私のお腹に耳を当てながら
私の腰を抱き締める
もうベタベタは慣れた…忙しい時とかは
確りと線を引いてくれるし私には嬉しいベタベタ感。
クスッと笑ってレンに声を掛けた
「名前は拘らないのか?」
「ん?うーん…こだわると言うか…どうしようって考えてた名前はある」
「教えて?」
「男なら、雷神!女ならジャンヌ!」
「あー…却下だな」
「だよね…父にバカにされた」
「アホかお前は、当たり前だろう」
「ん…でもさ水希が決める名前が良い」
「え?」
「俺の考えた名前じゃなく水希が考えた名前が良いんだ」
そっと、私をベットに横にするとそっと髪を撫でてくれる。
アレから髪を切りに行ってない。
既に肩を越すほどに長くはなっていて
その髪を梳くのがレンは好きだと言う
「じゃ、どんな名前でも怒らない?」
「うん…大丈夫」
「解った」
そして、いよいよ陣痛が私を襲ってくる。
腰の圧迫感に耐えながら、額に汗を滲ませハーハーと息を吐き出すと
レンが異変に気付き、側にやってきた
「水希?」
「ん…もう少しで会えるよ?」
「え?」
「っ…今、10分だから、もう少し」
っは…っ…
声を抑えようとしても、無理で恥かしいけど
かなり痛い!
「水希を苦しめないでね?」
と、優しくお腹に語りかけるレンが可愛くて
大丈夫だからと答えると、父を呼んでもらい
車に乗った。
「生まれるの?」
おどおどしながら青ざめるレンに
大丈夫と語りかける
病院に着くと陣痛室と言う所で、少しの時間を過ごす
腰が重くなり圧迫感が酷い
骨が軋み、出ようと子供が必死に頑張っている。
「レ…手…んっ…」
誰かに側に居て欲しくて、レンを呼ぶとすぐに彼は
私の手を握り締め腰を摩ってくれる
「はっはっは…っ…うー…」
「水希、ゆっくり息して」
「はっはっは…ん、そのつも…り」
「俺ここに居るから…大丈夫」
「っふ…はっは…もうダメ、看護婦さん呼んで」
中の違和感が凄くて、いきみたい…もうさっさと出してしまいたい
呼ばれた看護婦さんが私を隣の分娩室へと連れて行ってくれた
「レンは?」
「旦那様は、立ち会いますか?」
「っは…本人に…」
「解りました」
座っている台の上で、力を逃がそうとするのに
うまく逃げてくれなくて、力が入ってしまう。
「来ちゃった…」
隣に立ったレンにニッコリと微笑んだ…つもり
でもね、そんな余裕ないのーーーー
慌しく先生達が私の回りを囲んで、レンが私の身体を
ゆっくりと摩る。
生まれるまでは凄く死にそうなほどだったのに
一気に何度かいきむと子供がずるりと、外へ出る感覚に
涙が込み上げてきた。
ンッギャァア…オギャァ…オギャァ
元気な声にレンの頬から涙が落ちた
「生まれた…」
「あぁ、生まれたな」
「水希ありがとう…お疲れ様」
「ん…」
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」
私の前に子供が置かれ、真っ赤な赤ちゃんを見て
ニッコリと笑った所を写真に収められた。
「少し…寝たい」
「うん」
疲れ果てた私はそれから8時間も寝たらしい。
私が目覚めた時、病室は凄い事になっていた…
探偵さんにまで連絡したらしく
忙しいというのに見に来いとレンが引かなかったらしく
集まったのは和香、平賀夫婦、ウチの父母、レン、探偵さん
和香と探偵さんに至っては…仕事に戻るらしい…。
「ごめんね~」
と私が言うと皆口を揃えておめでとうと言ってくれた。
レンはデレデレしながら子供を抱きあやし、その香りを嗅いでは
喜ぶという変態的な行動に出ていた。
「レン、その子ちょっと私に」
「えー…仕方ないな、ちょっとだよ?」
仕方ないって私の子だぞ?
何だその玩具取られた子供みたいな顔は…
「名前ここで言います」
と、言うとレンが私の手をそっと握った
「かなり悩んだんだけど、コレが良いと思うの 皆聞いてくれる?」
コクンと頭を上下させたみんなの前で
ニッコリと笑い、レンの顔を向けた
「名前は、カイル」
「え?」
「レンの名前…カイル」
「ちょ…その名前は捨てた名前だよ?」
「うん、捨てたと言うより…それがレンの本当の名前でしょう?」
「水希?」
「レンの名前は、レン…そしてカイルの名前はカイルとして
私はこの子にこの名前をあげたいの…そして今度は
人として日本人とイギリス人のハーフになっちゃうけど…
私とレンが育てて行く名前…漢字は父と母で字画でも調べながら付けてくれる?」
レンの驚いた顔がまだ抜けてなくて
回りは涙ながらに笑ってくれてるのに…
「レン…捨てた名前じゃなく、貴方の本当の名前なんだよ?」
「う、うん…」
「だから、今度はカイルをちゃんと愛を与えながら育てよう?」
「水希…愛してるっ!」
「うわぁ!カイルが驚くからくっ付くな!」
「ヤダ」
と、後半はてんやわんやだったけど
今後の課題は嫉妬レンを制御する方法でも探さないとならないかもしれない
漢字は
桑本快流 と決まった。
爽快に流れると言う名前で、父とは母字画すら考えないで
思いつくまま付けたらしい。
そしれそれがインスピレーションだと偉そうに話す父に
レンが漢字書けないとぼやいていた。
【5年後】
「快流!いくぞ!」
「え~パパやだー」
「だぁめ!」
「パパァ…」
「ダメだって、ほら…行くんだ」
「ママーパパが苛める~」
「快流、行きなさい」
「……はぁぃ」
快流は幼稚園へ通い始めた。
アルと行く時はそんなに甘えないのだが
どうもレンが連れて行くときはてんやわんやになる。
瞳は薄い緑、髪は色素が薄くなったみたいで金髪に近いが
今はクオーターやハーフなんて珍しくも無いし
留学生なども居る世の中
レンと私の大事な快流は、着々と育っています。
いつか…私たちが年老いで死を迎える時まで
私もレンも、貴方に愛をあげる。
時には怒ったり泣いたりする事もあると思う
この5年間もたくさん悩んで、苦しんで、楽しんで育ててきた
レン、貴方が捨てられた年まで快流は育ったよ。
これからももっともっと育つだろうね
だから、もう…レンは私の側を離れないで
私も貴方の側を離れないから
「水希?」
「ん?」
「二人目は女の子かな?」
「どうかな?」
クスッと笑いながら、もうすぐ臨月を迎える私のお腹は
まん丸になっていた。
レンが私を何度も抱き締めてくれる
たくさんの愛を注いでくれる。
だから、私も沢山の愛を貴方にあげるよ
狼だったあの時、彼は何を思い過ごしたのだろう
性格を閉ざしたあの時、私は助けになっただろうか?
愛してる、愛してると何度言葉にしても、それはもう言葉でしかなくて
悩んだあの時が懐かしくもある。
「水希、元気な子産んでね?」
「うん」
「三人目は双子が良い!」
「お前は私の身体を壊す気か!」
「え~?だって出来る事一杯したら…そうならない?」
何故ここでエロ魔人…キスをせがんできた…
「ちょ、道端でって…んっ」
パコン!と頭を叩いて逃げると
ちょっとした刺激でお腹が張ってくる
「もぉ~お腹張ったじゃない!」
「え~?大丈夫?」
「お腹に聞いても答えてくれませんから!」
私は家までの道をレンと歩く。
この子が生まれたら家を改築する予定。
部屋は子供部屋を作らなくては成らないから
土地一杯の家を建てる。
レンの仕事は相変わらずPC業務だけど
最近は町内会なんてものもやらされている。
こんな、ありきたりな生活で良い…
私は今、幸せだから
「レン!早く」
「水希!次は双子!」
「はいはい」
FIN
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