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短編です
【大蛇】
『しっかりしろ!かごめぇ!!』
何が起きたのだろうか?ただ、苦しくて・・・締め付けられ行く
『っはぁ・・・いぬ・・・っはあ・・・・』
言葉を吐く度、キシキシと骨がなく
数分前まで何事もなかったはずなのに
『かごめ様・・・なんて事だ』『これじゃ・・・鉄砕牙も使えねぇ』
犬夜叉一行はひと時の休息を取っていた
鬱蒼とした林の中に、小さなピクニックシートを広げ
かごめは昼ごはんの為に水を汲みに行った
犬夜叉に頼んだのだが、めんどくさいと拒絶され怒ったかごめが一人川へ向かい
悲鳴と同時に向かった先で目に入った光景
『かごめ?』『くる・・・しぃ・・・・』
身体をなぞる様に身体に巻きつく大蛇
近寄れば、きっと、獲物を取られると思いかごめの頭を口へと運ぶであろう
口は既に開かれかごめの頭部の真上に位置する
『くそ、』『私が・・・』弥勒が七宝をひょいと持ち上げる
『な”何をするんじゃぁぁぁ~~~~みろくぅーーー』
その声に真顔で冗談です・・・と言い、七宝を下へとおろす
その間にもかごめの身体はキシキシと音を強める
『よし、珊瑚・・・』弥勒の提案で二人は草むらへと姿を消した
『っておれには何の相談もねぇのかよ!』『側に居てやりなさい』
その声を最後に気配は消える
『いぬ・・・や・・・・っは』『かごめ!』ザッツと。足を前へ向かわせた時、かごめの頭を飲み込む勢いで
首が振り下ろされ、かごめの頬にすっと赤く筋が出来る
『くそ』(あいつら何やってんだよ)匂いはする、間違いなく居るのは確かなのだ
『かごめっつ、もう少し踏ん張ってろよ?』『っは・・・う・・・ん』
答が段々と薄れ行く
(くそ、これ以上待ったらかごめの身体がもたねぇ)
きち・・・・少しの音と共にゆっくりと抜き出された鉄砕牙
かごめの頬を二つに割れた舌がちろちろと舐める・・・まるで獲物を味見しているかのように
『い、犬夜叉・・・・』震えながら七宝が犬夜叉の衣の袖を引く『あ?』顔だけを前へむけ
視線をゆるりと七宝へ向けると
『お、おい?』
すっと、変わったかごめの姿
『へ・・・へびさん?わ・・・私のほうが美味しいわよ???』
あんぐりと見開かれる犬夜叉をよそに、七宝は震えた手を・・・犬夜叉の裾から離し
一歩前へと出た
『犬夜叉・・・弥勒がさっきやったとおり・・・おらが』
もう一歩前へ出ると大蛇も気になったのだろうか?ゆるりと頭を七宝へ向ける
蛇は本来嗅覚で生きる生き物。ちろろ・・・舌先でかごめに化けた七宝の頬を味見した瞬間だった
シュン
蛇の頭が、身体から切断され宙を舞うそして飛ぶ方向で弥勒が風穴を開いていた
『珊瑚?弥勒!?』
結局犬夜叉は、其の亡骸からかごめを救い出し、意識を失ったかごめを抱き締めることと相成った
『おめーら・・・』『おかしいですなぁ~犬夜叉がおとりのはずでしたのに』『な”』
『本当だよ、七宝にやらすとは・・ったく』『弥勒!珊瑚てめぇら』
其の言葉に聞き入ることもしないで七宝を褒め称える
『犬夜叉?お前もう少し考えろ、あそこは、七宝を引き止めてでもお前が行けばいい物を』
『何でおればっかり責めるんだよ!!』『犬夜叉は・・・』七宝はぽつりと言う
『おらが。男だと認めてくれてるから・・・・じゃ・・・』
いまだ心臓の早い七宝はそう呟きそのまま目を回してしまった
『はぁ・・・七宝にまでかばわれるとは・・・・』
『うるせぇーーーーー』
結局大蛇の話で尽きる事無く犬夜叉は責め続けられていた。
だが・・・・
『犬夜叉?』『!かごめ?大丈夫なのか???』
まだ脇腹が少々痛そうに手を添えてにっこりと微笑み『助けてくれてありがとう』と・・・
『けっ、あいつらに聞かなかったのかよ?おれは何もしてねぇよ』『でも、あの重たい身体から出してくれたじゃない』
其の言葉に赤くほほを染める
『犬夜叉が一番心配してましたしね』『法師様意地悪は良くないよ?』『あんな犬夜叉を苛めたくもなりますよ?』
『だからって相談もしないで勝手に行ったら、犬夜叉の行動は・・・あ!』『そう、七宝が行かなければ・・・恐らく』
『意地悪だね』『そうですか?』
木陰に隠れる珊瑚と弥勒の会話・・・
『てめーら聞こえてんだよ!!』と、遠巻きに犬夜叉が言う
恐らく犬夜叉が・・・己を噛ませてでもかごめを救うであろう事は・・・・誰もが知っていたのだ
だからこそ・・・信じ離れて様子を伺った
犬夜叉がきっと、機会を作ってくれると
皆が信じていた・・・・
だからこそ、
何も告げずに離れたのだが・・・・
『七宝にお株を取られたみたいだね?』
『うるせぇよっ!』ゴン★
『何で私が殴られるんですか?』『おめーが側に居るからでぃ!』
そして一行は、いつまでも戯れていた
===================
【落陽】
白い雲、赤い空・・・見渡す限りを染める夕日は赤く、紅く・・・
その中に同化した様な緋色の衣がポツリと木の上に身を任せ
棚引く風に引かれる髪を戻そうともせず空を見上げる
辺りは鬱蒼と茂る草達で覆われているのに、まるでその場所が聖地と言っても過言ではないほど
紅く輝きを増していた
何を考えるのか・・・
何を思うのか・・・・・
只、落ち行く夕日を眺めボソと、蚊の鳴くような声で紡ぐ・・・
・・・・かごめ・・・・・・・
その甘く囁かれた言葉を掻き消すように
一陣の風が吹いては髪を攫う
数日前に現代へと行ったかごめ
その少女を想う
目を閉じれば、少女の無垢な笑顔
何の代償も求めない少女・・・・その少女の笑顔しか浮かばなかった
流れ行く季節に逆らう事無く生きていた少年
半妖と呼ばれ、それでも一人生き抜いた己
『お前は・・・』
そこまで言うと口をきつく閉じる
ひらり・・・ひらりと少年の衣をなぞる様に落ち行く木の葉が
ふと、彼の手の中に捉えられた
『このまま・・・この手に・・・・』
思いを向ける指先からハラハラと潰れた葉が地へと落ち行く様を見て、少年は苦笑いを浮かべる
そっと手を開き
『縛れれば・・・捕まえて居れれば・・・・どんなに楽なんだろうな?』と・・・・
そっと手に問いかける
そして瞳を閉じゆっくりとその手を胸へ導いた
(想うだけで・・・心臓が破裂しそうだ・・・なぁ・・・お前もそうなのか?)
再び瞳は開かれ、先程の少年とは違う顔へと移り変わる。そして、その場をざぁ・・・と
躊躇う事無く蹴りだした
残された葉が寂しいと再び地へ落ち行く
========おせぇ==========
井戸の底へと届く声
『犬夜叉?あ、来てくれたの?』『てめぇがおせーからじゃねぇか!』
怒った口調ではあるが、其れが本当に怒ってるとは思えない
そんな優しさを含めた怒声にかごめはにっこりと笑う
(あぁ、この笑顔だ・・・・)
『ちょっと待っててね・・・今・・・んっつ・・・重い・・』
どんな荷物を抱えてきたのだろうか?その荷物を犬夜叉は手を差し伸べ受け取ると無造作にひょいと持ち上げる
『ほんと・・・力持ちだね』と、無邪気に笑うかごめ
犬夜叉は再び手を差し出した
『え?』『捕まれ』不器用な言い方ではあるが、その言葉にかごめも有難うと付け加え答えた
ふんわりと乗せられた掌は桜の花のように柔らかく、甘く
犬夜叉の心臓が再び稼働を強める
『ん?』『な、なんだよ?』『ほら・・・』繋がれた掌を犬夜叉のほうへ向けると、かごめの手には
少し濃い葉の涙が残されていた
『待っててくれたんだ?』『ど、どうしてそうなるんでぃ!』赤くなりながらソッポを向くが
かごめはクスリと笑い悪戯げに手を犬夜叉へと向ける
『待ってなかったらこんな草の露付けないでしょ?だからー待ってたんでしょ?』『な”』図星を付かれ
犬夜叉は唖然とするだけ
それでも詰め寄るかごめ
『ねぇ・・・待ってた?』その・・・差し出された手を犬夜叉の手がクッ・・・と、優しく握る
『いぬ・・・やしゃ?』
捕まれた腕は・・・優しく・・・それでも、心なしか強く・・・・
『ね、ねぇ?』もう一つの指かかごめの頬をするりとなぞる
(な、な・・・なに???え、え??)
ゆっくりと近付く犬夜叉の顔に、答は出ていた
(ちよ・・・まだ心の準備が・・・・・)
早まり行く心臓、かごめの中でどんどん自己主張を強める
『いぬ・・・・や・・・しゃ?』
そして・・・その言葉の答えた犬夜叉の声は、甘く切なかった・・・・
=============かごめ・・・・・・・===============
ゆっくりと
落ち行く葉と共に
落ち行く日差し
先程まで熱かっただろうと思えるほどの焼けた太陽を背に犬夜叉はかごめの唇を親指でなぞり
日が落ちると共に・・・・
影は重なった
捕まえる事が出来ない・・・・
縛る事ができない・・・・
でも。
貪欲に欲しいと思う心だけは・・・逆らう事を許さず
目の前の桜色の唇へと唇を寄せてしまった
何を考えていたとかではなく・・・ただ、思いのままに・・・
目の前の桜は、ほんのり色を付け、只驚いた顔を己へと向ける
何を言ってやればいいのだろうか?抵抗をされた訳でもない・・・ただ、
『す、すまねぇ・・・気が付いたら・・・おれ・・・』
『え?したかった訳じゃないの?』『ちが、したかった・・・あ、いや・・・したくなかった訳じゃ・・・って・・わかんねぇ』
赤くなって必死に唇を押さえる己・・・
この柔らかさを、この香りを・・・風に持って行かれそうで・・・
『したかったの?』『あ・・えっと・・・』
==========ありがとう・・犬夜叉==========
少し涙を溜めた瞳が犬夜叉を捉え
かごめの手により解かれた唇への己の拘束を
再び縛り付けたのは・・・
かごめ・・・・
流れる草木の擦れる歌が
ただ
さわさわと耳に響き
触れている感覚を・・・いまだ・・・・感じている己
精一杯背を伸ばし、唇を重ねているかごめを薄目を開けてみてみると・・・・
やっぱり、沈みきってしまった落陽と同じ・・・・
赤だった・・・・
FIN
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