忍者ブログ

なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

蕾/桜色の禊

短編

【蕾】


小春日和の穏やかな昼下がりだった
のほほんと昼寝をしていた犬夜叉を、七宝が叩き起こしたのだ
「な、何しやがる!!」
気の荒い犬夜叉が怒るのも無理はないであろうが、連日連夜、戦い通しだった。
やっと、一区切りをつけた犬夜叉一行は、楓の小屋へと戻っていたのだ
「かごめがおらんぞ?」「あ~あいつは国へ帰ったぞ~」眠そうな瞼を擦りながら答える犬夜叉に
七宝が何故返してしまったのだと駄々をこねだした

うるさい

いつもなら、そう言いながら場所を変えるのだが・・・・
今回限りは其れを許されない状況だった

「?犬夜叉は怒らぬのか?」「あんだよ、怒ってほしーのかぁー?」七宝の頭をぐりぐりと掻き毟ると
流石に機嫌が悪くなっていると察知し、一歩、又一歩と後ろ足で下がりだした
「かごめに・・・そんな短気じゃ、かごめに振られるぞ!この二股犬!!」
と、七宝らしい言葉を残し、ぽん・・・と、変化をして空高く舞い上がっていった
流石の犬夜叉も、木がなければ、その位置までは飛び上がれない・・・仕方なしにドカリと腰を落とした

いつもの場所。

ありきたりな風景

暖かな日差しにまどろみながらポツリと呟いた

「二股犬ってかよ・・・・」
彼なりに、気付いてはいる。どんなに忘れようとしても、忘れてはいけない女
どんなに欲しても、どんなに手を伸ばしても、彼女を掻き抱く事は・・・叶わなかった
「桔梗・・・か。」
フッと微笑み、犬夜叉は再び目を伏せた
桔梗と別れて、50年・・・かごめが現れるまでは封印されていた
そして・・・とかれた封印は・・・まるで
生きろと、そう告げている様だった

「かごめ・・・・」

その名を口に下途端、がささっと木々が揺らいだ
その方向を、軽く鼻を引く付かせてチッと呟き声を掛けた

「いつから居やがった・・・・」
「先程からおりましたけど?」「喰えねぇ奴だな・・・ったく」

犬夜叉の声に、くくく・・・と、鈍い笑いを向けて横へと腰を下ろした男
「なんでい、弥勒」
「かごめ様の事ですけど・・・今回は流石に疲れたのでは?」
桔梗と何度か出会い、かごめに助けられた桔梗を・・・己は探した・・・・
出合った数だけかごめは傷を深めてる・・・・そんな事は

「おれは疚(やま)しい事なんぞしてねーぞ?」「はぁ。していなくても、二人で逢うのは・・・どうですかねぇ?」
犬夜叉は、お前だけには言われたくないと、言い残しその場を去った
去ったと・・・見せ掛けた・・・と言う方が正しいだろう
その場から弥勒が去るのを見て、再び戻ったのだ
「ったく・・・何だってかごめは、皆に庇われるんだよ」
などと、口に出しながらも、心の中では、おれが悪い・・・と、思っていた


「ん?」鼻に香るいつもの香り
井戸を抜けてくる少女の香りが、段々と濃くなってきた
(来た・・・な?)
何もなかったように、犬夜叉はその場に座り込んだ。
そしてあたかも寝てるように・・・瞳を伏せる

「犬夜叉?」甘い声に・・・フッと胸が高鳴る
「寝てるの?ねぇ・・・犬夜叉?」反応のない犬夜叉にかごめはそっと横へと腰を落とした
ごそごそと何かを探してるような音だけが、ひっそりとした井戸に響き渡り
犬夜叉はそっと薄目を空けて、かごめを視界へと導いた
「あれぇ?」ごそごそ・・・
(・・・。なにやってんだよ?)
「おかしいなぁー」
(だからなんだってんだよ!!)
「ねぇ、犬夜叉・・・知らない?」「知るか!!!あ!!」「やっぱり起きてた」
「はい♪これ」「な・・・だ、騙したのか?」「あんたが先に狸寝入りしてるからじゃない!」
「っつ・・・おれを、騙したのかよ!?」「もぉーうるさいなぁー」「うる!!うる!さいだとぉー」
「はい。これ・・・開けて」
かごめが犬夜叉の手にそっと、手渡したもの。
小さな。小さな小瓶
「なんだよこれ?」
「この中に、四魂の欠片入れてたんだけどね?最近・・・集まらないから・・・・」
「奈落の野郎が・・・・集め切っちまったからな。」「この一つだけだから・・・」
かごめはそっと、胸元から同じ小瓶を取り出した
「で、何でこの入れ物をよこしたんだよ?」
「ん~良くわかんないけど・・・これは犬夜叉に持ってて欲しいと思って。」
「おれが持ったって、意味ねぇじゃねぇか!いらねぇ」
かごめにそのまま返した小瓶を、かごめはつまらなそうな顔で受け取り、もういい!と
言い残してその場を離れた


(私と・・・犬夜叉を繋ぐ何かが欲しかった・・・なんて・・・言ったら受け取ってもらえないのに
なんて言えばいいのよ!分かる訳無いじゃない!犬夜叉の鈍感!!!)
心の中で叫びながら、楓の小屋へと向う途中に、小さな花の蕾があった。既に人に踏まれて
咲く事の無いであろう蕾・・・・何の花かはわからない
どんな諺(ことわざ)もあるか分からない
だけど、そっと・・・・小瓶にその蕾を忍ばせた

「あーあ。こんなに可愛いのに。」蕾を何度か揺らしてみると、光に反射した小さな蕾が
綺麗に光り輝いていた。その光が急に影を生み、かごめが慌てて振り返った

「犬・・・夜叉?」「よこせ」「え?」「花が・・・咲くまで持っててやる」

咲くはずの無い・・・小瓶の中の蕾。
其れを解っていて、彼は持っていてくれると言う。其れが、彼なりの・・・・優しさ

犬夜叉は徐にかごめのリュックを探り、中から、紐を取り出した
かごめが顔を洗う時などに、元結の代わりにと持ってきたリボン。
いつも使っていて使い慣れた物を犬夜叉はいとも簡単に引き裂いた
「何するのよ!」「うるせぇー紐がねーんだから仕方ねぇだろう!」
犬夜叉の指から、細く出来上がっていく紐。結んでは編んで行く
「へぇ、器用なんだね?」「へっ、紐くらい結べねぇでどうする!」
あいも変わらずの口調ではあったが、かごめにしてみれば、嬉しくもあった。
小瓶は綺麗に紐で結ばれて犬夜叉の首に掛けられた

中の小さい蕾が、犬夜叉の動きに合わせてコロコロと動く。
その動きを、かごめがジッと見るものだから、恥ずかしがり屋の犬夜叉には溜まったものではない
慌てて胸の中へとしまい込み、素知らぬ顔で小屋へと戻っていった
そんな犬夜叉を、かごめはにっこりと笑いながら追いかけていく・・・

(ありがとう・・・犬夜叉)
小さな蕾に感謝しながら、かごめも小屋へと戻っていった


「かごめぇー心配したんじゃぞ?」七宝がかごめを見るなり飛びついてきた
「犬夜叉に、すぐ帰ってくるからって言ったんだけど・・・」「そんな事おらきいとらん!」
怒る七宝に、犬夜叉は「誰も聞いてこねぇからだ!」と、声を荒げると
「ほぉ、だからあの場所から離れたくなかったんですね?」と、核心を突いた声が上がった
「み!!弥勒てめぇ!!」
「犬夜叉が怒ったぞぉー」
と、七宝も含めての追いかけっこが始まった時、犬夜叉の首から覗いた小瓶の花。
其れを、楓と珊瑚が見てしまった
「アレって・・・かごめちゃんのと同じ物かい?」「うん、無理言って・・・持ってて貰ってるの」
少し嬉しそうに言うかごめに、楓がそっと呟いた


「あれの花言葉は・・・・尽きない思い・・・って言うんじゃ。知っておったのか?」
「へ?そうなの?」真っ赤になったかごめが、楓に答えると「犬夜叉は西国育ちだったら知ってると思うけどな?」
と・・・・珊瑚が声を掛ける
「あっちでは結構咲いてるって聞いたからさ?それに、アレは、咲く前がいいんだよ?」「へ?」
かごめがぽかんと話を聞いてる間も、弥勒と犬夜叉はじゃれあっている
「蕾の時は・・・揺ぎ無い心・・・・咲けば、尽きない思い・・・・なんだよ。」
その言葉にかごめの顔が一気に赤くなった
「かごめちゃんの方が花みたいになってる」くすくすと、笑う珊瑚に、もぉー と、照れ隠しをした後に
かごめは犬夜叉を見つめる

白い花の蕾は、犬夜叉の胸の中で・・・
揺ぎ無い心として・・・残ってくれているんだと

薄っすらと沈む夕日に染まった犬夜叉は、かごめを見つけるなり大声で叫んだ

「飯食うぞ!!」

無邪気に笑う犬夜叉・・・
そんな犬夜叉を、好きだと・・・そう思って言う事を再確認して微笑んだ

「犬夜叉?」「あ?」「ありがとう」「はぁ?」

皆が一斉に間抜けな返事をした犬夜叉に笑いかけ、沈む夕日を見つめた
また。
始まる・・・明日へ向けて

「明日・・・晴れるかな?」
「晴れるさ!夕日が綺麗だったからね」
「おれの鼻には、雨の匂いはしねぇぞ?」
「かごめが笑ってれば、いっつも晴れじゃ!」
「おー其れもそうですな?かごめ様が笑っておられれば、晴れでしょう」
「どういう理屈でぃ!」
と、

一行は又朝を迎えるのだった



=========================

【桜色の禊】

しっとりと湿気を孕んだ風が、宙を舞いながら通り過ぎていく
その風に攫われながら草木が揺れ動き、時間をやんわりと過ごさせて行く


ここは、楓の居る村。
法師と子供そして、緋色の衣を纏う妖怪とも言えない
人間とも居えない、生き物が生息している

この男、緋色の衣を纏っているが立派な?半妖
人とあやかしの間に生まれし、男
その横に居る紫の袈裟を掛けた男は法師・・・・

傍から見れば、不思議な組み合わせであろう二人は、共に戦う仲間

少し大人びた二人は、数年を越え未だこの地に足を留めていた

「犬夜叉?」そう呼ばれ半妖が、振り向くと其処には紅色の袴を纏いし巫女
背中に背負われた弓矢がいかにこの場所が危険かを知らすようである。


「なんでぃかごめ」巫女を見やってそう呼ぶと
スタンと目の前に飛んで行くではないか
あまりに人離れしている行動に、無論仲間の人々も巫女も驚く事をしない

「今日は禊の日なんだけどね?ちょっと、雲行きが危ないかなって・・・」
犬夜叉は、その言葉を聞くと空を見上げ目を細めながら鼻をクンと鳴らした
「あぁ、今日はやめときな、この分じゃ夜半には強く降る」
そう、とだけ返すと3棟の小屋の一つへと吸い込まれるように消えていった
「犬夜叉、禊は大事な行事だ、お前が付いていく訳には行かないのか?」
法師が問うと、すんなりと答えは帰って来た
「おすわりって言わねぇなら付いて行っても良いが・・・・無理だろ。」
「お前が手を出さなければ大丈夫でしょう」
はっはっはと笑う法師を睨むが効果は無い様子である。
禊とは、古より伝わる伝統の行事でもある
巫女の気を清め、洗い流す事が当たり前とされている

イヤでも・・・水に浸かる白い着物は薄く肌を露にし
体のラインが見事に浮き立つ
一度だけだが、妖怪に襲われそうになり犬夜叉が飛び出した
その姿のあまりの美しさに囚われ、彼自身妖怪を切り裂く事をスポンと飛ばしてしまった
お陰で、巫女のかごめの身体を攫われそうになり逆に、それを叱り飛ばした事がある
3日は口を聞いて貰えなかった・・・・

無闇に怒りたくは無いが

彼女は自分の最愛の人なのだから

無防備にしていれば、叱りたくもある
ましてや、人一倍どころか、人の10倍は嫉妬深いのだ

大人しくなる訳も無い。

押し問答をしている最中に、かさっと簾を上げる音が聞こえ犬夜叉は其処へ視線を向かわせると
「っ、お前行くのかよ?」
かごめが、禊の用意を終わらせ、その場に立っていたのだ
「えぇ、だって決まり毎のような物だからこれは私がしないと落ち着かないのよ・・・」
罰が悪そうに答えたのは、きっと彼が怒り出すかも
知れないという思いが在ったからだろうか?
だが、かごめも又、それに対しては思い入れがあった

(桔梗が・・・ずっとやって来た事だから)

犬夜叉には想い人が居た。
話すと長くなるので、この内容を知っているかのように語らってしまうが
その相手が桔梗であり、その中から生み出されたかごめである。

かごめは桔梗が逝き、自分がこの犬夜叉の側に居ると心を硬くした時から
巫女として、桔梗と同じように進むと決めてきた
だからと言って、桔梗の真似ではなく自分らしく、そして桔梗を誇れる自分であった
だからこそ、巫女の仕事を真っ当したかったしそれに付いては手を抜く事など
彼女の中ではありえないに分類されるのだ

「だぁ、も~・・・わーったよ。言い出したら聞かなねぇし・・おれが・・・付いてく」
その言葉にかごめが満面な笑みを浮かべ、お願いねと付け足すと
かごめはその姿を翻し、見つめる二人を背に歩き出した
「かごめ様、お気を付けて」法師に声を掛けられ一度振り返ると
ありがとうと返し、また前を見据える

その姿に犬夜叉は深く溜息を落とし、法師に背を叩かれると、ちっと舌打ちを鳴らし
かごめの後ろを黙って進んだ


鬱蒼と茂る林の中を通り抜け、砂利道を少し歩くと其処には小さな滝壺があった
清浄な空気がかごめの身体を纏う。
規模はかなり小さいが、打たれれば体を支えるのでやっとの水圧はある
10日に一度はそれを繰り返すかごめだったが、雨の日の経験はまだ無かった

現代で生きてきた彼女を襲ったのは時間の罠
そして流れ着いた先は、この時代
店も無ければ、カラオケも無い。勉強も無ければ何もない
だけど

愛だけは此処にあった

犬夜叉を愛し、この場に戻ったのはかごめ自身なのだ

ちゃぷん・・・と、袴を脱ぎ去り長襦袢のままでかごめが禊の為に
その滝壺へと向かう
楓に教えられ、気を高めるのにはこの方法が一番良いと聞いた
だから、かごめは向かう。
仲間を守るため、村を守るため、そして
犬夜叉を守る為に


「うわっ、今日は凄く冷たい・・・・」
腰ほどまで浸かると、背中から滝を押しやり、かごめの頭上から降り注ぐ水に
身体を震わせるが、その一段高い場所に足を掛けると
登った先で正座をし、目を閉じる

辺りに漂う暖かな気が見ている犬夜叉をも包み込み、暖かい空気が流れる

「あ・・・・」
その言葉を発すると犬夜叉は慌てて目をかごめから反らした
浮かび上がる肌色
    そして、その胸元に見える桜色の口付けの痕・・・・・

2日前の夜に交わした睦言を思い出し、顔が真っ赤に染まる
禊の前日からは、穢れを払う為に食事も草や米など血肉の無いものに変え
無論、睦言などはさせてもらえず、抱き締めて眠りに付くのだが
その前後は、どうしても何時もより強く求めてしまうのだ

「ありゃーやりすぎか・・・・」
赤く散らばった花弁がかごめの身体から浮き上がり
ハラハラと・・・今のも舞い散りそうな美しさを誇っていた

ぽり・・っと頬を掻くと、高い空を見やった

「夫婦・・・ってもんも、いいもんだな」
父と母を思い浮かべ、犬夜叉は再び目を細めた
「おふくろ、おやじ・・・守りたい者が居るってこんなに幸せだったんだな」
独り言のように口が開いていく

「かごめをこの場へ連れてきてくれてありがとう・・・・」

桔梗に一言声を掛け、再びかごめを見やる

濡れた着流しを脱ぎ、その水で身体を最後に清める
腰巻き一つで、肌を惜しげもなく晒すかごめに、苦笑いを向ける

「なんで、閨の時は恥ずかしがるのに禊の時は恥ずかしくねぇんだよ・・・」

ただ単に、かごめ自身は禊と言う仕事をする上での行動なのだ
最初は戸惑いや恥ずかしさもあったが、そんな事では務まらない
だからこそ、禊の時は恥ずかしさも外聞も捨て去るのだが

閨に入るかごめがあまりにも恥ずかしがる節があり、それはそれで自分の中では
可愛いとは想うものの、こうも目の前で肌蹴られている彼女を見ると
それもまた妖艶に見えてしまう
男って奴は・・・・

「犬夜叉~?雨来なかったね~?」
木の下から声を掛けてくるかごめの側に行き、その言葉に返事を返す間もなく抱き上げた
「ちょ・・・犬夜叉?」
驚き、慌てふためくが、彼の行動は大概は予想できる
きっとまた、彼は何かを深く考えそして自分の温もりを欲したのだろうと

かごめは、犬夜叉の首に腕を回し、抱き締める

「今日はダメよ?」
クスクスと笑いながら告げるかごめに、真っ赤になりながら解っていると答える犬夜叉

二人は同じ道を選んだ

二人は愛を誓う


年を取っても一緒に居てね?と問いかけられ
おう!以外の答えは・・・この先もきっと無いであろう


=====================================FIN

拍手[0回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]