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泡沫の続きみたいなSSです。
なんだか、あまり時間と脳みその回転数をクルクル出来ないので
単発続きです^^;
のほほんと、行きましょう!と、書きました。
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春の息吹
チチチ…と、鳥が囀り
のどかに朝が幕を開けた。
早朝から任務帰りの忍や、逆にこれから出立する者と
他者多様な風景が見て取れる木の葉の里。
無論その場で商いを営む者も、既に仕事を終えて朝のランニングをする
人間もいる。
「なぁ、そろそろ起きろって」
その言葉は、火影岩に顔がひとつ増えたその顔の一年後の今
精悍な顔立ちに育った、金髪の青年が発する声だった。
「もう少し良いじゃない…オマエ今日休みでしょ?」
「だぁめだっ!んっとに…やっと貰えた休みなんだぞ?
シカマルに、昨日なんて…いや、今日まで仕事させられて
やっと開放されたってーのに、カカシ先生寝過ぎだって!」
「オマエさぁ、寝すぎって…昨日の任務でオレがどれだけ
写輪眼使ったか知ってるでしょうよ」
「…チャクラ分けてやったじゃん」
「…はいはい、そーでしたね
んでは、動くとしますか…」
やれやれと、頭を掻きながらぬぼーっと目覚めた男
傍に居ると…前回彼に告げ、なぜか同居のような生活になっているが
ここは火影邸。
一人で住むには大きすぎるからと、昔の家を出る事を拒んだ彼を
説得した綱手が寂しいなら、シズネのような付き人を付けりゃーいいと
そこに名が上がった人間が、現在この場所で目覚めたのだ。
独身貴族で通っていたカカシも、その綱手の申し出には
渋る事なく快諾した。
それは周囲もいい迷惑だろう、きっと誰もが断る選択をすると
踏まえての話だっただけに、快諾した返事を聞いた綱手でさえ
熱がないかと疑った。
そんな二人は、共に生活をするようになったが
何も変化はない。
ただ、同じ時間を共有することが多くなっただけに
何かをするのは一緒になる事が多くなり家族生活のような
モノになっている状態ではあった。
最初の頃は気を使って居たナルトも
カカシが相手と言うのも相乗してか、随分と
自分のしたいことを言い出すようになった
1年の歳月が流れたと言うのに、互いになんの変化もなく
ただ、静かに仕事の要領だけは上手くなっていった。
「んで、今日はどこ?」
「西の鉱山かなぁ…」
「へぇ、あっちまで足伸ばすんだ?」
「ん~東の里も気になってんだけど、カカシ先生ならどっちがいい?」
「…西かな?鉱山跡地は今探索者も出てるからね
帰らないと噂だった事も数年前にあったし、そっち優先にするかな?」
「んじゃーやっぱ、西で決まりだってばよ!」
休みになれば自分のことをすれば良いのだろうが
ナルトは決まって、暗部にでも任せておけばいい探索を
自らやりたがる。
その時は、カカシも無論同行するが、旧7班の人間は
何かに付けて用事の無い時は同行をしてくれる。
その切っ掛けは、些細な里の人間の言葉だった。
”トマリの里で、人が喰われる…もしや妖怪や幽霊か?”
そんな噂。
幽霊が苦手なナルトがそこに食いつく訳もなく
その場を立ち去ろうとした時、火影様!と噂を言い出した女が
ナルトの傍に来て懇願した…主人を助けてくれと。
ナルトは当初対処法など知りもしない、火影で
そのトマリと言う里も実在するか分からなかったため
傍に居たカカシが代わりにその事への回答を答えた。
「トマリは既に去年里を崩壊させ、現在は廃墟になっています。
捜索をするにもトマリの人間の大半はこの木の葉へ流れてきており
その他の人間の行方を調べるとなれば莫大な時間と費用がかかります
ご主人が喰われたと言うのを実証する事は出来ないと思いますが
その里の、現状を調べる事はできます…それで良いのであれば
任務依頼を火影様へ申し出てください」
あぁ…何と言う無知な自分。
己の身の回りの人間だけを必死に追いかけてきて
嫌いな勉強をないがしろにした結果だ。
ナルトは深い溜息を落とした。
勉強は苦手…だったら己で出向き調べれば
頭に残るだろう。
だから、出来るだけ近隣は己で足を向けるようになったのだ。
トマリの事は、結局火影まで上がってくる事がなかった。
あれからどうなったのかも解らない。
カカシは気にしていたら、次に進めないと言うが
気になり出したら、その思いは止まる事がないのも
事実で…
「あ~やっぱさ…トマリの里、廃墟になってるんだろ?
そこ、取り壊すかなんかしねぇとやばいんじゃねぇの?
トマリ見に行くってばよ!」
「……そう、気になってたんだ?」
「え?」
「去年だったか、道端で言われたアレでしょ?」
「あ~…うん」
「あそこは既に暗部が調べ上げてるから、一度書斎から
資料取ってくるよ、お前は出る用意しといて」
「お、おう!頼んだぞカカシ先生」
「はーいはい」
こんな…頼りない火影でこの里はいいのだろうか?
己がどれだけ頑張っても、この里は…己では不安に陥れてしまうのではないだろうか?
守りきる事が…こんなに自分に重責を載せるなど
当時は思ってもなかった。
不意に我愛羅の言葉を思い出した。
”影の名を背負う覚悟”と…
あの時は、自分では解らなかった…影の名を背負うという事。
ただ闇雲の中のサスケを助け出すだけに全力を注げたのは
火影じゃなかったからだと。
火影として当時サスケを助ける事が出来ただろうか。
否それでも、サスケを裏切る事はできない
きっと、どうにかして自分の意思を貫く
けれど、無知なままその意思を貫くのはただのわがままだ。
周りにどれだけの被害を加え、どれだけの思いを背負わせ
それでも…助けたいと思わなければならない。
はぁ…小さなため息を落とし、ナルトは忍のベストに袖を通した。
額あてをギュッときつく縛り上げ、緩りと微笑む。
「いつも、ありがとな、カカシ先生」
書斎へ向かったカカシへ労いの届かぬ言葉を吐くと
ナルトは火影邸を出る。
目の前にはサイとサクラ
「遅い!」
「遅いよナルト」
どうやら、遅れた事にご立腹のようだ。
時間なんていつも決めてなど居ないのに
当たり前のように出立時間が決まってる。
それが心地いいのは確かだけど…
「時間なんて決めてねぇだろう?遅いと思うなら家に
来たら良いだろ…カカシ先生が寝坊しなけりゃ、オレだってもっと
早くでたっつーの!」
と、答えると二人が一斉に息を吐きにっこり笑った
「今日はどこに行くのよ」
サクラがナルトの前でニッと笑って聞くから素直に答える
「トマリの里だってばよ」
「あ~あの幽霊の?」
どうやら、噂を知っていたサイが、聞いてくると
身震いが起きる…未だに幽霊ってのは、苦手だから。
「幽霊でもないっぽいよ~?」
と、遠くから聞こえたカカシの声に一斉に振り向くと
屋根の上から手を上げて、いつものように”よっ”と声を掛け
4人で木の葉の里を出る。
春の息吹が吹き荒れる中
心が温かくなるこの里を、守りたいと願う
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