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SSなんて、滅多に書かないのに…
珍しく書いてみました!
うたかたに揺れ踊る水泡が
ぷくぷくと音を立てて天を目指す。
しなやかに伸びた肢体がユラユラと水面に浮かび
表面に浮き出ている場所から水面へと戻る水達が
光を反射させながら落ちていく
【泡沫】―― utakata ――
パシャリ…と、水が揺らいで、水面に浮かんだナルトが
視線だけをそちらへと向けた。
水面にたゆたう姿は、水の波紋に従い揺れる髪。
潜ったのだろうか?
前髪が水から出ているために、そこから鼻筋を横滑りに
水滴が何粒も落ちていく姿が目に焼き付く。
「よっ!」
「……カカシ先生」
「久しぶりだね?」
「おう!って、何してんだ?」
「お前こそ、何してるのよ」
「……行水?」
「なによそれ…ホラ、風邪ひくぞ」
少しの会話が途切れ出された手に、ナルトが手を伸ばし
ゆるりと握りこまれると、グンと差し出した手を引かれ
水面に立っていたカカシと視線が絡んだ。
チャクラを足の裏に集中させ、ナルトも水面に立ち上がると
カカシは水辺まで戻り、置かれていたタオルをナルトへと放った。
「うぉっとっとっと…先生、水に落ちたらこれまでずぶ濡れ
になるってばよ!」
その言葉に、木陰に腰を落としたカカシが緩りと微笑む。
「落とさなかったでしょーよ」
「…まぁ、落とさねぇけどよ、んで、どうしたんだ?」
着ていたへばりつくジャージを、いつもより倍の時間を掛けて脱ぐと
ぐっと絞り込み、豪快な音を立てて水が落とされた。
ナルトはそのジャージをパン!と一度広げてから
カカシの座った場所の少し横へと置き、自分も腰を落とした。
「ナルト…火影、おめでとう」
「は?」
ニッコリ笑うカカシに、ナルトは意味が解らないと
首を傾げた。
「候補、お前の名前が挙がった…推薦者は綱手様だ」
「は?え…ええええ!?」
「…随分驚くねぇ、流れ的に当たり前でしょうよ」
パクパクと金魚のように口を開けたり閉めたり
何かを言いたいのだろうけど、言葉が出ない。
そんなナルトを横目で見るとカカシがニッコリと微笑んだ。
「オレと、お前が名を挙げられたんだ…オレは火影って柄じゃぁ
ないからねぇ~お前は今や里の英雄、木の葉一の忍者。
名実共に、オレに並んだ…いや、それ以上か…
サスケも里に戻り、任務だって
単独で受けれるようになった。
お前はオレの誇りだよ…ナルト」
薄く微笑むカカシの姿に慌ててナルトが待てと言わんばかりに両手を前に出した。
「な、何言ってんだってばよ!カカシ先生が火影でいいじゃねぇか
オレはそんな難しい執務なんて無理だってばよ!」
「なぁに言ってるの…お前は元々火影になりたいと頑張ってきたんじゃないか
まっ、執務付きは、シカマルか、オレか…って所だろうねぇ」
クスッと笑って言うカカシはまるで他人事のように告げ
ナルトはその言葉にウーンと唸るだけだった。
「ナルト…お前に言っておきたいことがあるんだ」
「あ…改まってなんだよ」
「オレは、お前から離れる事はしない。
生涯をお前に掛けるから、お前は大変だろうけど
オレの想いも一緒に持って行って欲しい」
と、空を見上げたカカシに、ナルトが視線を向ける。
なんだか、愛の告白でも聴いてるかのようだ。
その思いに何が返せるだろう…
今まで共に歩み、教えをくれた人。
その人に何を返せばいいのだろうか。
そんな事が頭を巡る。
「何悩んでるのよ」
「はえっ?」
空を見上げた顔のまま己を見たのだろうカカシの
視線だけがナルトを捉え疑問を口に出した。
「眉間にお前らしからぬ、悩んでいますよーってシワが出来てるよ」
「お前っらしからぬって…随分じゃねーの?」
「そう?本来お前は本能に従うタイプだからねぇ~
オレみたいに頭で動く人間じゃないでしょ」
そう言われれば、思い当たるフシが…
と、目を泳がせてから空を見上げた。
「お前から得られるものは、限りなくある…今も
そしてこれからもだ…だからお前のそばを離れないよ」
そう告げるカカシは、なんだかとても嬉しそうだった。
そして、ナルトも…絶対に先生を裏切らねぇと小さく呟いた。
FIN
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