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神無月 前篇

何だかこちらばかり更新してる気がするのですがw
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【神無月】10月のせつなさ

忘れてたよ…恋って言うモノの浸蝕性の早さを。
空を見上げたカカシが深く溜息を吐き出した。

逢いたいと、こんなに胸を焦がしている己に苦笑を一つ零し
街中の電柱の上から姿を消した。

今回は特別任務の為、カカシは里内に居ながら諜報作業をこなしていた。
任務の事は例え仲間でも一緒に遂行する者以外には漏らす事の出来ない定め。
カカシはヤレヤレと溜息を落としたくなるのは

今回の任務先が花街は性を売り、それを買う者が集まる治安の良い場所ではない所。
無論カカシもこの場所に世話になった事が無い訳でもなく、逆に言えば
花街の女を引き受け、自宅へ囲うモノまでいる。

その花街で最近出来た店、松埜葉(まつのは)と言う店の不穏な噂。
カカシの様に諜報に長けた人間はこうやって里内での任務も時折宛がわれるのだ。

カカシにしてみればこの任務に就いてから約一週間と言う期間
この花街に潜み情報を仕入れているのだが…

ナルトとは先日付き合うと決めて、本当のキスを教えてやると言う勝手な約束は
果たされないままだった。

「会いたいねぇ…」

すでに口癖のように呟かれた言葉に反応を示したのは、隣で諜報をカカシと共に受けている上忍だった。

「ここの臭いに当てられました?」

「あ~…ん、ちょっと違うかな、会いたい相手はこんなに強い香りを持たない人だから」

なんて答えると、驚いたように目が開かれた。
それにすぐに気が付き、面白くなさそうにカカシが声を発した。

「…なによ」

「いえ…あの…」

言いずらそうに、しどろもどろの隣の男性にチラリと視線を向けると
はっきり言いなさいよと続きを促した。

「カカシさんに会いたいと思わせるのも凄いけど…
その相手は、噂の…うずまきでしょ?」

そこまで綴られて、あぁ…ナルトに会いたいとばれてた訳ねと苦笑いを零した。
己で撒いた種だから、別段それは良いのだが、この男は続けてこう言ってきた。

「あの…うずまきを抱きました?」

「は?」

「あ、すみません…立ち入りすぎました…」

付き合いだして既に2か月は過ぎている。
大人のキスすら知らないナルトは、既に己に抱かれてると思われてるのか…
と、そこまで思うと急に胸が苦しくなった。

会って抱きしめたい…そんな願いが心を埋めて来る。


けれど…

「ねぇ、オマエさぁ、ナルト狙ってるとか言わないよね?」

「え?とと、とんでもないですよ!」

「でも、気になってるでしょ?」

何か威嚇されているような…そんな圧力に冷や汗を垂らしながら男が声を上げた。

「いや、それは酒酒屋で噂になってるんです…うずまきを好きだった上忍が
どうやら傍に居ていいって承諾したのに、キスをしようとすると逃げるし
時折、己から逃げる様に居なくなるからどうしようって悩んでたら
結局はそんなつもりで言ったのではなかったと言われたらしく酷く落ち込みましてね…
その数日後にはカカシさん、貴方とうずまきが付き合ってるって噂が流れて
アイツ更に落ち込んじゃいましてねぇヤケ酒に付き合わされてたんです…その話を切っ掛けに
うずまきに思いを寄せてると言う数人が集まってあそこで話をしてたんです」

「…話し?」

カカシが首を傾げながら聞くと、男はまたもや言い出しにくそうに続けた。

「うずまきは絶対男を誑かす素質を持ってて、きっとカカシさんもそれに魅了されてるんだって…
いずれ、その…」

もごもごと、言い辛い言葉を出させずにいる男にカカシが溜息を落とした。

「はぁ…そこまで話したなら、続けなさいよ」

「はい、あの…カカシさんもきっと、弄ばれて捨てられるんだって」

その言葉にカカシはクツリと笑った。
最初の頃だったらそれも確かにあったかもしれない…

アイツの天然振りには本気でどうしようかとも思った…
けれど今は違う、ナルトも己を少なからず思ってくれてるし
キスだってナルトからして来た…
一種の優越感がカカシの中を満たすと

「オマエら、暇ねぇ…今度ナルトを連れて酒酒屋に顔を出すよ。
お互い了承して本気で付き合ってるって言いにね」

「え?」

鳩が豆鉄砲を食らった…と言う通りの顔がそこにあり、カカシはポンと男の肩を叩いた。

「さ、任務だよ…ターゲットが動いた」

「あ、はっ、はい!!」

それにしても…とんだ噂が蔓延してるなとカカシが苦笑いを零した。
ただ、ナルトの好きと言う気持ちは、どこまでなのか
そこを測りかねている部分はある。

本気のキスを教えたとして…あの子はそれを受けて喜んでくれるのだろうか?

惰性でしてしまった事が多々あった中、意志をもってした口付けはナルトから行動を起こしてきた。
己だけは違う…そう思い込みたいだけなのかもしれない。



ごろりと、ベットの中で寝返りを打ったナルトが空を見上げた。
カカシとキスをした…そして本気で己と付き合うと言った彼の気持ちは本当に
自分を好きだと思っているのだろうか?

好きだよ…

そう言ったカカシを信じられ無い訳じゃない、けれど
自分は好きになって来てると答えた…
それも嘘じゃない。

けれど、恋愛ってなんだろう?

サクラに恋焦がれてたあの時、ただ、一緒に笑いたい、一緒にデートして話をしたい
そんな事ばかり考えてたと思う。
相手を思う事には慣れているが、思われる事には慣れていない…

会いたいと思っても会いに行けない。

抱き付きたいと思っても…抱き付けない。

それはカカシの行動が極端だったから、余計そう思うのかもしれない。
幼かった頃はそんな事に気を取られた事などなかったのだが…

好きだとは思っている。

カカシと離れたいとも思ってはいないのだが。
なんだか胸がモヤモヤとしていて、ここ数日色々とその原因を考えてみたが
元々考えるのが苦手なナルトは途中で違う事に頭を切り替えてしまった。

「会って話さねぇと…何にも伝わらねぇってばよ」

はぁ

深いため息が室内を埋めた時だった。

カタッと音が鳴った方へ視線を向けた窓辺に置かれた花。
カラリと戸を開ければ、一本の桜の枝。

「…カカシ先生?」

10月に咲く桜。

それを手に持ち、ナルトは窓の外をぐるりと見渡したが
カカシの姿は捉える事は出来なかった

けれど、一瞬感じたチャクラは…

「カカシ先生だったよな…」

深い溜息を吐き出し、空を見上げると…付き合う前に会ったあのカカシを思い起こした。
月に飛び込んでいくかのようなそんな跳躍に見惚れて、あの風景が急に思い起こされると
会いたい気持ちが大きく膨らんだ。

でも、花が置かれてて、その花を黙って抱きしめると
ナルトは薄く微笑んだ。

嬉しい…素直にそう思えて

帰って来るのを待ってようと、そして…
会いたかったって言えば、カカシ先生も同じだって言ってくれるだろうか?
そんな事を思いながら、花を瓶に挿した。

木の枝から綺麗に切られた桜。

それが卓上で2日を超えた頃の任務帰りに
ナルトは任務を終え、自宅へと向かっていた。
一楽でも寄ろうと考えたが、どうにも気分が乗らない。
心が寂しいと悲鳴を上げてるようにも感じるから、その気持ちに蓋をするように
ナルトは首を左右に振った。

メンタルが弱い訳ではない…けれど
どうしても、カカシと言う存在を自分の隣に置いて良いモノなのか…
はっきりとしない漠然とした考えだけがナルトの中を駆け巡っていた。

 

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