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一括UP( *´艸`)
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「で…ナルトに会いに来たんだけど?」
不満そうに窓から覗かせた銀髪
それに向い合せる様に窓に向かい座っている金髪が
足を組み、組みあがった足をプラプラと遊ばせながらにっこりと笑う。
「お帰りなさいだってばよ!」
「……で?何でナルトじゃないのよ」
「ナルトだろう?」
ぷっくりと頬を膨らませ拗ねると、カカシはそれを見やってから深く溜息を吐き出した。
「また過呼吸でも出たの?」
「あーいや…そんなんじゃねぇけど、カカシ…アンタの事でナルトも色々と考えてる訳よ」
「は?オレの事?」
「そ」
クスッと笑う黒い眼はいつものナルトのモノではない。
闇のナルト…そう呼ばれている者の眼。
「カカシ、アンタの隻眼…綺麗だよな?」
「…何よ、突拍子もなく」
「ナルトが、そう思ってるんだ」
そう言われると、悪い気にはならない。
けれど、会いに来た本人は既に違うナルトと入れ替わっており
カカシは深い溜息を吐き出した。
「で…ナルトの代弁に出てきたの?」
「いや、ナルトが本気なのかと驚いてたけど、アンタさ…本気でオレと付き合うの?」
「…アンタって、ま…いいけど。」
ポリポリと銀髪を掻きながら、カカシが部屋の中へと侵入を果たすと
ナルトの横に腰を掛けた。
「まぁ、本人が驚いてるんだ、ナルトも驚いてても無理はないってこったな」
はぁ…と息を吐いたカカシがシュルリと目を覆っていた額あてを外し
口布をするりと下げると、ニッコリと微笑んだ。
「ナルトに会いたくて、ここに来た。
もう、一種の呪印のようだよ、考えだしたらキリがない…
他に集中しても、ちょっとした隙に出て来やがるから
本当に厄介だよ…恋愛って」
「うっへ~さむぅ」
体を掻き抱くように、吐き捨てた言葉を聞いてカカシはガックリと項垂れる。
「…悪かったね、この年で恋愛のなんたらを語って」
ギロリと睨む視線はそんなに強くはなかったが
ナルトはニッコリと笑ってその視線を受けた。
「ホラ、カカシ任務帰りだろう?まぁ、この家にあるもんだが
ナルトがこれを飲んでるのは見た事がねぇ…恐らくあんたの為に
買ったんじゃねぇのかな?」
と、差し出された黒い液体に、カカシが苦笑いを向けた。
「それを、お前が出しちゃ意味がないじゃない」
「ふん!勝手に飲んだって怒られるのはオレじゃねぇしな!」
そっぽを向いて言うナルトに苦笑いを向けカカシがコップに手を掛けた。
「あ~らら、勘弁してちょうだいよ…でもま、お前が淹れてくれた物だから
ありがたく頂いて、後でナルトに叱られておくよ…」
カタリ…と、その黒い液体を喉に通すとおいしいよと一言付け加えた。
「そろそろ、ナルトを帰して欲しいんだけど…」
「チッ、仕方ねぇな…いいか!カカシ!ナルトを弄んだら
オレが黙っちゃいねぇからな!?心しとけよ!」
結局それが言いたかったのね、とカカシが心の中で思ってからニッコリと微笑んだ。
「解ってるって…そこまで非道な人間じゃないつもりだ…」
クスッと笑ってナルトを腕の中に抱き込むと、驚いたように
見上げて来た闇のナルトの額へとキスを一つ落とした。
「なっ!」
「オマエも、ナルトの面倒見るのに苦労してるのね」
クスクスと笑って居るカカシの腕の中で、ハーッと溜息を落とし
体の力をだらりと抜き去ると、またな…と言葉を残して彼はナルトの中へと
還って行った。
「あらら…キスしたら消えるのね」
クスクスと笑いながらカカシはナルトの体を抱き上げ
ベットへと横たえると、ギシリと音を立てたベットの上に
カカシもそっと身を横たえ、ナルトの頭の下へと
腕を滑り込ませるとギュッと抱き締めた。
「やっぱり…これはナルトのせいだよなぁ…」
早まった心脈、感じる体温が妙に心地いい。
今迄、関係を持った女性にもこんな風にした事がなかったなと
フッと思ったら、なんだか可笑しくなった。
ナルトを起こさない様にクックックと殺した笑いを
ジッと碧い瞳が見てる事に気が付きニッコリと微笑んだ。
「おはよ」
「…おう」
「ごめんね~お前寝てる間にさ…あれ、飲んじゃった」
指をさす先に視線を向けると、小さな声であ…とだけ声を発して
頬を薄く染めると、どうせ先生に飲ませる予定だったってばよ
と、返すナルトをギュッと抱き締めた。
「うぉ!せ…先生?」
「オレの為に用意してくれてたんだ?」
「あ…いや、も、貰いもんだってばよ!」
「……」
この子は、自分で用意したとは言いたくないのか?
そんな疑問と頭で戦ってたカカシの耳に、消え入りそうだが…温かな声が届いた。
「買ってきた…」
「うん、買い物の袋にそのまま入ってたから、解ってた」
「あ~っ…はは、お見通しって事か。」
抱き締められたままで項垂れるナルトへカカシはそっと指先を伸ばし髪を撫でる。
「何でもって訳にはいかないけどね?」
たとえばお前の気持ちとか…なんて耳元で囁いて
それから髪をすり抜けた指先が、ナルトの耳朶に触れる。
「っ…」
「ん?どうしたの?」
「…なっ…なんでもねぇし」
「そ?」
含み笑いをしながらカカシが何度も髪を梳くと
その度にナルトの体がフルリと揺らいだ。
「な、なんか、くすぐってぇ」
「あら、そんなに擽ってないんだけどねぇ?」
「…ぉぅ」
小さく答えるのに、どうやらカカシの腕からは出たくないのか
ナルトは抵抗を見せない。
その無抵抗さを見てしまうと、カカシの本能がちらりちらりと芽吹く。
「っつ…カカシ先生どこ触ってんだよ!」
「え?腰だけど…」
「腰だけどって!!!!ンな所触んなっ…んあっ!」
カカシの手が腰のあたりでゆるりと動き、すり抜けて行くだけのもどかしい
感触に、ナルトの声が上がった。
「うわぁ!オレ…ごめ」
変な声出たと…真っ赤になってカカシの胸の中に納まってしまった。
そんなナルトを愛おしそうに抱きしめて囁いた。
「本当のキスがしたい?」
「え?」
「前に言ったよね…教えてあげるって」
「……うん」
「オレは…したい…ナルトと」
甘い声で、何かの幻術に掛かったように…
二人の絡んだ視線は、外れる事はなく
ただ引き合うように、距離を縮める。
「カカシ…せん…」
最後の言葉が、重なった唇に飲み込まれ
唇の重なった先から、チュッと吸われ、ナルトの体がヒクッと反応をすると
それを楽しむかのように、カカシの唇がナルトの唇を何度も啄んで来る。
「んっ…っふ…」
呼吸がままならず、薄く開かれた唇を狙いすました舌先が
ゆるりとナルトの中へ侵入を果たすと…
「んっ!!!っつった!!!!!」
ガバッとカカシの方からナルトの体を引き離した。
「あっ、わりぃ…なんか、入ってくっから驚いちまって…
だ、大丈夫か…?」
覗き込んで来るナルトを手で制し、涙目でカカシが口元を抑えた。
それからまともに言葉を発する事も出来ず
大人のキスはナルトの意外な行動で不発に終わった…。
◆
数日後。
酒酒屋で皆様に大公表したカカシとナルトが夜の道を歩いていると…
何を思ったのか急にナルトがカカシを追い越し体を乗り出すとニッと笑った。
「な、なによ…」
その不敵な笑みに嫌な予感しかしないカカシが、声を掛けると待ってましたと話し出した。
「ね、先生大人のキスしてってば!」
その言葉にガックリと項垂れる。
「なぁ、カカシせんせーってばぁ~」
「知らないよ~」
「なぁって!もう噛まないからさぁ~」
「そう言って、不意打ちするんだろ?」
「しねぇって!な、キスしてよ!」
「ちょ、ここ大通り!人前なの!そんな話止めなさいよ」
「え~あれから先生一回しかしてくれねぇじゃん!」
「その一回だって、噛んだでしょうよ~ だからぁ~…んもぉ!」
シュンと風が舞った。
その場で話を垂れ流しにしていたカカシとナルトだけが姿を消し
大きな木の上で、幹に体を預け
カカシに甘いキスを受けているナルトを見たと言う噂が
流れたのは、また後のお話。
【神無月 完】
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