忍者ブログ

なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

紫陽花6

続きです~


【紫陽花 10】

ぴちゃり…ぴちゃり

高所から落とされる滴が、石に弾け飛び、その飛沫がナルトの頬に当たると
その滴がツーッと流れ落ちるが、瞳を閉じたまま彼は目覚める事をしなかった。

階段を登り、目の前に結界の玉のようなものを見た。

そこまでは記憶にあるが、そこからは体の重さが急に伸し掛かって来て
地面に足を落とし…




目覚めたナルトは赤い血のような湖の上にいた。

辺りには人もいなく、音さえも拾わない。

いつも感じる九喇嘛の感覚さえ失い、キョロリと辺りを見渡す。

「結界のせいか?…それとも、幻術…」

ナルトの足元の水がチャクラの乱回転によりふわりと風を巻き込み波立つが
何一つ風景も人間も変わる事がなく、ふーっと息を吐き出し
この場所ではチャクラを使わなければならないからと
陸地を探して前へと足を進めた。

実際前なのか後ろなのか…
右なのか左なのか…

湖の上、波一つ立たない場所で
ただ、ナルトは前と思う方向へと足を進める

けれど…いくら進んでも

「……くそっ! 陸が見えるどころか、進んでるのかも解らねぇってばよ!
どっちへ進めってんだよ!クソーーーッ!!!!!!」

今来た道を戻ろうか…
そんなことが浮かんでは消え、頭を左右に振った。

そして空を見上げて、ん?と一つ疑問を持った。

「太陽が…ない?」

キョロリと見回し、月を探すも見つからないのに
この場所は明るい。
光は上から射しているのに、見上げても光源が見当たらない

「やっぱ、幻術」

もう一度チャクラを乱回転させたが変わらない風景に
諦めて影分身を生み出し、己に触れてチャクラを流し込んでもらうが
変わらぬ風景に、苦虫を噛んだ。

”オレが手本を見せる…”

そんな言葉を、幻術相手にやってのけた男…

「カカシ先生…」

ふいに思い出したのは、カカシと我愛羅を救い出すために向かった先に居た
うちはイタチとの戦い。

あの時のカカシの様子を、ゆっくりと思い出した。


「やってみる価値はあるってばよ!」

スッと…足に貯めて上手く使っていたチャクラを切り
水の中へとドボンと落ちていく。

見回しても周りは赤い水で透明度は期待できなかったが
それでも、間違いなく水だと言うのは解る…。

ただ、それが幻術なのか本物なのか…その判断は付かないが
無駄に水上でチャクラを乱回転させたりして居るよりは遥かに効率はいい。

水から上がったナルトが、滴る水をそのままに
また前を見据えて歩き出した。

時折足を止めてキョロリと見回してから、一呼吸置き前へと進む。

それを数十回と繰り返し、ナルトがニッと笑った。

「ここを真っ直ぐ行けば…間違いなく陸地だ」

そう呟くと煙と共にその姿が水上から消え
ナルトの姿がその世界から消えた。




ふいに目を開くと、先ほどまで
影分身に任せ自分は水中で地面に足が到達したのを確認し、そこから這い上がるために水中から
体を持ち上げようとした途端、フッと意識が攫われ
目を開けば目の前には深紅に染まった結界を作っているであろう玉が視界に入った。

「へへっ…這い上がってきてやったぜ?」

人の気配も感じる、が…視界にはその気配の主は見えずにいた。
だからこそナルトは声を発し続ける。

「なぁ、誰か居るんだろう?九喇嘛がやった事は許せねぇだろうけど
悪りぃがオレは九喇嘛を手放す気もねぇし、殺されてやる事も出来ねぇ…
最後まで抵抗させてもらうってばよ!」

ググッと足に力を入れて立ち上がろうとするが、未だ体の力は抜けたままで
ふらりと体が揺れる。

それを背後から何かに支えられて、ナルトは目を見開いた。

”やべ…”と思ったのは一瞬で、ギュッと抱き締められて、その温もりに懐かしさを感じた。

「オマエねぇ…一人で突っ走りすぎちゃダメでしょうよ」

その、柔らかな声、安心する温もりにへへへっと笑ってナルトは声を上げた。

「へへっ…やっぱ、カカシ先生が来てくれたってばよ。
オレさ、絶てぇ来てくれるって思ってたってばよ」

だらりと、体の力をすべて抜き切るナルトを支えながら、深くため息を落とした。

「来てくれるって信頼してくれてるのは嬉しいけど、ちょっと無謀だろ?
この階まで上がる前で待っててちょうだいよ…ったく」

ホッとしたようなカカシの口調と、柔らかな物言いにナルトが目を細めた。

「なぁ、後ろに4人前に二人…全然動かねぇんだ」

「うん、解ってるよ」

「先生が何かしたのか?」

「オレじゃぁないね…しいて言えばこの結界かな」

「結…界…?」

その言葉を最後にナルトの体がカカシの腕の中でクタリと力を失い
ナルトの意識も遠退いていった。

「ちょ、ナルト!?」

支えている腕からするりと抜けて、倒れそうなナルトを腰を折って
どうにか支えなおしたが完全にナルトの意識は飛んでしまっていた。


「……厄介だな」

写輪眼は多用はしていなかったが、あまり使ってしまうと
脱出の時に困難を極めそうだとも考えていた。
そしてこの結界…仲間までも受け入れない結界…

「この結界、一体なぜオレとナルトを受け入れた…?」

緋色に輝く結界の玉の中、ゆるゆると揺らいで見える結界は入る時はすんなりと
受け入れられた。

だが…

スッとナルトを地面に横にするとカカシは結界の石へと手を伸ばす。

”触れるな!”

その声は結界の外から聞こえて来る。
カカシはその声の方へと視線を向けると、黒い布を頭からすっぽりかぶった
正体の解らない、いや…声だけは男性だと言っている低さだったが
それ以外は背丈は175ほど…それ以外は見た目から情報を引き出す事は出来なかった。

「なぜ触れちゃいけないんだ?」

”その玉は…我らが宝…お前らのような下賤な人間が触れていい物ではない”

その言葉にカカシは肩でフッと笑った。

「その、お前の言う下賤な人間を受け入れたのはこの玉だよ?」

”今、その九尾が食われている…お前はその後で食われるだろうよ”

「は?食われてる?」

慌ててナルトを見やったが、薬のせいでナルトのチャクラは不思議な動きを見せていたが
それ以上に、何ら変わる事もなく、ナルト自身も苦しんでいる様子はなく
目を閉じていた。

けれど、もし食われるという言葉が本当であれば
この結界からどうにかしてでも出さなければならない…。

カカシは、ギロリと相手を睨み付け、玉へと再び手を伸ばした。

”触れるな…触れるな…”

うわごとの様に、数人の声が聞こえて来る中
カカシはその声を全て無視して指先を玉へと触れさせた。

「っく…」

ぐらり…体が浮く感覚に襲われ、慌てて手を離そうとしたが
意識とは別に体が勝手にその玉を鷲掴みにしていた。

emojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemoji

【紫陽花11】

赤黒い空気の中、体がふわりと浮かんでいるような錯覚に
カカシは目を見開き、幻術に捕らわれたのだろうかと、解術を掛けるも
その行動は何の意味も持たなかった。

ただふわふわ浮いていたかと思うと

急に体に重力を感じ、どこかに落ちている感覚にカカシは態勢を整えようと
体を動かそうとしたが、それすらも叶わない。

「どういう事よ…」

辺りを見回しても何も変わらない風景

時折感じる重力のようなもの…

カカシは見開いている眼は必要ないと感じ目を伏せると
目の前に小さな男の子が立っていた。

シクシクと泣き、膝を抱えて頭をその膝の間に押し込んだ金色の頭。

まるで…遠い昔のナルトだなと、心で思うとそっと手を伸ばし
ふさり、と柔らかい髪に触れた。

「何泣いてるのよ…?」

「……」

パクパクと口は開くモノの、その口から言葉は耳に届くことはなかった。
何度聞きなおしても、相手は話をしている風で、困ったカカシがギュッと
その小さい体を抱きしめた。

「ごめんね…オマエの声…聴いてやれない、聞こえないんだよ。解るか?」

その言葉に抱きしめられた小さな子が首を縦に振ったのを見て
カカシは質問をいくつかした。

「ね、お前はずっとここに居たの?」

左右に振られる首で、”違う”という回答を貰い
続き手質問を投げかける。

「お前は、どうした小さくなったかわかる?」

それも首は左右に振られ、カカシはキュッと軽くではあるが抱き締める手を強めた。

「お前は…ナルトでしょ?どうしてここに居るの?本体に帰れないの?」

その言葉にはじかれた様に金の頭が揺らいだ。
グイグイとカカシの手を引き、どこかへ一緒に来てくれと
そう言わんばかりの行動に、カカシは素直に従った。

少し足を向けるだけで風景がコロコロと変わっていく。
真っ赤な空間から青空だけの空間
そして、小さな部屋のような場所に急に視界が変わると
そこに小さな女の子が膝を抱えて座っていた。

その子へ向けてカカシにナルトでしょうと呼ばれた子供が指を出す。

「…あの子をどうすればいいの?話すればいい?」

と言う問い掛けに、ナルトは首を縦に振った。

カカシは、スッとナルトとつないだ手を離し、一歩一歩と足を進める
何もない空間なのに水の中を歩いているような…そんな抵抗を体に感じながら
カカシは少女の前に腰を落とした。

「どーしたの?」

ポン…と頭に手を乗せた瞬間だった。

辺りが光に包まれ、その手から伝わってくる温かさに全身が包まれる感覚に陥ったが
カカシは、意識をシッカリと保ち、目の前の少女を見やった。

「…顔が」

泣いているでもない、笑っているでもない…

少女らしい風体だったが、その子には顔がなかった。
目も口も…何もない彼女から何を聞き出せばいいのか。

「話は出来るのかな?」

出来るだけ刺激しない様に…柔らかな口調で問うと
少女は首をゆっくりと縦に振った。

「君もここに一人なの?」

縦に振った頭を確認して、そう…と、声を上げて頭をくしゃりと撫でた。

「寂しかったんだ?」

その声にも、素直に”うん”と首で肯定して
ギュッとカカシの捲り上げられていた袖口を掴んだ。

「戻り方は解る?ナルトは戻してあげないといけないよね?」

その言葉に、袖口を掴んだ手がキュッと強く握り締められた…

「そっか…寂しくて戻したくない?」

その言葉の意味するところは…あの球の正体は彼女ではないだろうか…
と言うカカシの中の想像。
それを確信にするために質問を続けた。

「ごめんね…静かだったこの場所に急に人が入って来て驚いた?」

その言葉に素直に首を縦に振った女の子をもう一度頭を撫でやってると
背後から温かい小さな体がカカシにギュッと抱き付いてきた。

「あ~らら、オレモテモテ?」

クスッと一つ笑ってから背後から抱きしめてきているナルトの周り切っていない手を
ポンポンと撫でやって、待っててね?と声を掛ける。

まずは目の前の顔のない女の子をどうにかしなければならない。
その子次第ではもしかしたら戻れない可能性も出て来る。

カカシは極力刺激しない様にゆっくりと話を続けた。

「この場所は…君の中なの?」

返事をしなくなった少女だったが、カカシの袖口は掴んだまま。
その手が時折ピクリと揺れるので、その回答を推し量った。

「どうしてナルトを呼んだのかな?もしかして遊びたかった?」

見た目、まだ4・5歳の子供…無論ナルトも同じ年頃の姿。
自分は大人のままだが、彼女に呼び寄せられたのではなく
己が自ら球に触れたから…それでリンクしてしまった可能性がある
それを考えれば、”遊びたいから呼んだ”と言うのは
的を当ているかもしれない。

少女は…その回答をはっきりと示した。

首を縦に振り、ナルトの手をグッと取ったのだ。

泣き叫ぶナルト…

恐らく顔のない少女が怖いのだろう。

「ちょっと待ってね?ナルトに聞いてあげるから手を離してあげて?
少し話をしてみてあげるよ」

その言葉に少女は強めていた力を抜いた。

ありがとうと、カカシが伝え、ナルトと話をするように体をナルトへと向き直した。

拍手[3回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]