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続きでございます!
何だか恋愛少なめ!?あんれぇ~?w
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【紫陽花12】
横たわった二人を取り巻いている、布を被った者達がこそこそと言葉を紡いでは
結界に弾かれる。
そんな中二人は横たわったまま、言葉一つ発さなかった。
◆
体の置かれている場所とは違う空間…
まるで精神の中に居るような…そんな空間でカカシは膝を折り、泣いているナルトの前に
視線を合わせる様にかがむと、ポンと頭に手を置いて聞いた。
「ね?あの子が怖いの?」
話は出来ないかもしれない…
そう思っていたが、すんなりと声を拾う事が出来た。
「…違うってばよ、あの子の心が…泣いてるんだってばよ」
「こころ…?」
「うん、怖いよって…誰も助けてくれないって」
「お前にはそれが解るの?」
「…解るってばよ、オレさ…オレ…も、一人だから」
「……お前は一人じゃないじゃない、サスケにサクラ…サイだってオレだって居るでしょうよ」
「おっさんは、オレの何?」
くらり…と脳が揺れたのだろう…
こめかみ辺りに一度手を当ててから、諦め顔で溜息と共に思いを吐き出した。
「おっ…おっさんって…」
がっくりと、ナルトの目の前で頭を項垂れると、ポフポフと頭に小さな手が乗っかった。
「じゃー兄ちゃんでいいってばよ!」
ニッパリと笑うナルトに、怒る気も起きず、何とでも呼んでちょうだいよ…と諦め声が聞こえた。
「あの子は触れると痛いんだ…」
「痛い?」
「そう、さっき遊んでって言うから…そりゃ、顔無くてこえぇけど…
オレってば、遊ぶって決めたから手を取ったんだ…そしたら」
スッと差し出された掌…火傷のように赤くなったナルトの手を見て
素直に痛そうだと…思ったのだが何かにハッと気づいたように、ナルトは手を自分の後ろに隠してしまった。
「…傷の治りが速いのを見られるのが嫌?」
「なっ!」
驚いたように碧い眼がカカシを射抜いた。
「大丈夫だよ…お前の事は何でも知ってるから…傷の治りが速いくらいで
落ち込まなくていい。」
「…里の皆は怖がるんだってばよ」
「それも、お前がもう少し大きくなれば…皆に認めてもらえるから…な?」
「…うん」
「ほら、あの子がモジモジしちゃってるよ?遊んであげて?」
「お、おう!だったら兄ちゃんも遊ぼう!」
そして3人で遊ぶ事を決めたナルトの行動は早かった。
カカシの手を引き、少女の前に出るとニッコリと笑って遊ぶぞ!と
いとも簡単に声を掛け、少女もその言葉に頭を上下させると
影ふみを始めた。
点から降り注ぐ光は、太陽の光ではない…そのため影が
一方ではなく四方に広がって、すぐに捕まってしまいあっという間に
子供たちは飽きだした。
カカシもすぐに捕まらない様にしながらも、時折は捕まってやろうと
動きを止めるが、ナルトと少女の足ではカカシに追いつくまでに一苦労である。
「兄ちゃんずるい!」
「…ずるいったって、身長差もあるんだから、しょーがないでしょーよ…」
「なーずるいよな?いろは!」
そう呼べば、その子が首を縦に振った。
「え?…いろはって名前なの?」
「うん」
声が響く…
これは…直接脳に語り掛けて来るような…そう、チャクラで通信しているかのような
感覚にカカシが、少女を見やった。
「いろは…君はこの世界が好き?」
優しく微笑んだカカシが、いろはに問うと
首を左右に振り、嫌いだと直接脳に響いてくる。
(こんな近くで声を聴けばナルトが泣くのも…解るな)
感情までが流れ込んでくるようで、自分の気持ちなのか
相手の気持ちなのか解りずらいのだ。
今のナルトは、幼い子供。
そんな子供が、知らない子供の心をダイレクトに受け止めるなんて
自分の考えなのか相手の思いなのか、判断も難しいだろう
「いろは…ね、ナルトは君に触れたいみたいだよ?
その結界を解いて?」
その言葉に首を左右に振った。
「そう…君は触れられたくないって事かな?」
『違うよ…結界は私が張ったものじゃなく先代が張ったもの。
私は結界の巫女って言う者だから人に触れられてはいけないの…
体は、この塔の後ろにある、紫檀の祠っている場所にあって
そこからじゃなければ私は出られない。
そこに貼られた結界がある限り私はここから出られないの』
カカシはその言葉を聞くと、にっこりと笑った。
「じゃー紫檀の祠ってのを壊せばいいじゃない」
『無理だよ…九尾の力がそこに封印を施しちゃって私は一生あの中で生きなければならなくなったの』
「九尾…?」
『うん、九尾の襲来の時私はジジ様にそこで隠れていてくれって
中に入れられて、そこで祈祷していた…この結界の凶元は、この祠だと…九尾がこの祠に封印を施した
だから、ナルトがこの場所に捕らわれたの。』
「君を出すために?」
『うん』
「だったら、ナルトに出してもらおう?どうにか手があるはずだし
今は九尾もちゃんと解ってくれるし、話だってできるかもしれないよ?」
そのカカシの言葉に、何もない空間から意識だけが飛び
次に目を開いた時には、目の前は先程居た塔の最上階だった。
◆
「サスケ…ダイジョウブか?」
「…あぁ、問題ない、蛇からの連絡が来た」
サクラの膝の上から頭をずらしサスケが起き上がると、スッと差し出された水に
視線を向けた。
「飲んでおけ…ちゃんと浄水してるから」
「…あぁ」
受け取った竹の筒から喉へと通すと、ハーッと息を吐き出し
よれた服装を整えると木の葉の額あてをきつく締めなおした。
「サスケオレにも何かできないか?」
「やる事は一杯あるさ…まずはカカシとナルトを出す為に
恐らく結界の源であろう場所…この裏手にある塔の背後の祠
そこに道を作る。
蛇が調べた限りではそこの場所が一番厚い結界だが、そこを開ければ
祠の中が調べられる、そこからナルト達を救出する。
恐らくカカシもそこまでは調べが付いて居るだろうからな」
サクラがその言葉にすっと立ち上がり、コクリと頷くと
その場に広げてあった地図や荷物を纏めグッと背中に背負うと
イルカもサスケも前へと足を進める。
サクラはそんな二人を見やりながら薄く微笑んだ。
先生だったイルカ…里抜けをして一時期は本気で殺さなければならないと
そう思っていたサスケ…そして、カカシ、ナルト…
それぞれに思いがあり、今一つの事を成し遂げようと力を合わせている事
それがサクラにはすごく幸せだった。
現状は恐らく楽観はできない
でも、ナルトにはカカシが付いて居る。
カカシと言う人間も、ずっと7班で見てきている。
どれだけ仲間を大事にするか…
それを考えれば希望も見える。
「ナルトがカカシ先生にチャクラを分けれるから…そう簡単に
やられる訳がない…私は怪我をした人を少しでも早く治療できるように
チャクラを温存しておくわっ!」
サクラが後ろから声を出すとサスケがチラリと横目で見やってから薄く微笑み
イルカも同じように、微笑むとオレも出来る事をやる。と力強く伝え
一か所に、七班が集結しようとしていた。
【紫陽花13】
鬱蒼と茂る林を抜けると、そこに見えるピンク色の薄明かり。
そこに防護結界があるは、サスケの蛇のお蔭で分かっている。
「あそこか…」
木の陰から覗くイルカが呟くとサスケが逆の木の上から首を縦に振った。
「オレが…行けばいいんだよね?」
「頼めるか?」
「あぁ、大丈夫だよ」
ザッと木を蹴ったイルカが、結界の前に立つと印を組みだした。
「イルカ先生凄く正確な印の組み方をするのねぇ~」
と、サクラが関心している。
カカシの印の早さも感心するがここまで綺麗に印の形一つ一つを見て取れるのは
恐らくアカデミーで教えているからだろう。
かなり長い印を数分かけてしっかりと形を成していくと、イルカの手に光が集まってくる。
金色に輝く光がイルカの手首から上を包み込むと
その光を結界に向けた。
まるで焼き切れるみたいに、結界に穴があけられ
その穴の端はまるで焼かれてるかのような溶接されているようなそんな痕跡を見せていた。
「よく覚えたな…」
ポツリと言うサスケにニッコリと笑ったサクラがイルカ先生だから覚えられたんだと
付け足してきた。
医療忍術の、人を治療するときに使う術…
それを自分のチャクラでも、もっと攻撃的に強いチャクラでやらなければならない
神経を集中してその結界の流れを見極めながらの作業は
細かい作業の出来るサクラかイルカが適任だった。
ただし、サクラがこの術を使えば、もし治療する事になった時力加減が
出来なくなっては困ると、イルカが印の組み方をサクラから聞いたのだ。
そしてそれを今実践しているのを目の当たりにしてサクラが
医療忍者になる素質あるのに…なんて人員の少ない己の部署にイルカが欲しいとまで
言い出すからサスケは苦笑いでその場をやり過ごした。
人が一人通れるほどの穴。
ぽっかりと空いたのが見て取れる。
そこに3人が入り込んでも、溶接された結界は元には戻らず
その穴を保ち続けていた。
「恐らく一刻(2時間)しか持たない…その間に探すわよ!」
サクラの声に三人は三方へ散った。
◆
目覚めたカカシが、その空間からナルトを背負って出ると
周りを囲むように布を被った者達か寄って来た。
けれどナルトの体からにじみ出る光がその者達を寄せ付けず
カカシはそれを確認するとすぐに祠へ向かおうと道を探る。
布を被った者どもが追いかけて来るのは構ってる余裕がなかった
カカシは、塔を一度降りようかとも思ったが、窓からフッと横を見ると
その塔から掛かった橋のようなものを視界にとらえ
選択肢は既に決まった。
「後は、お前が起きるかどうかにかかってるからね?
いい加減寝坊すると、キスして起こしちゃうよ?」
眠ってるナルトにくすくすと笑いながら声を掛ける余裕はあったらしい。
だが、その余裕も一気に失せてしまった…
「キスして起こすなんて古典的だってばよ」
その答えが返ってきたから。
「起きてた…の?」
「ん…先生の背中に乗った時、意識が戻ってきた。
でも体がまだしっかり動かねぇんだ」
「失言だったな、すまん」
「ン?何が?」
「いや」
この子は男にキスされると言う事をどう思ってるのかと
一瞬そっちへと頭が向かうが今はそれどころではない
「橋を渡る時は、お前に自力で歩いてもらいたいんだけど…
行けそうか?」
「橋…うん、もう少ししたら戻ると思う、体の感覚が段々戻って来てるし」
「じゃーもう向かうから、お前は背中で体力を戻しておいてね?」
「おう」
カカシに背負われて向かった先、扉を開けばそこは突風の吹く吊り橋が
迎えに聳える岩に続いている。
それを確認するとカカシがナルトを下ろし印を結ぶと5人ほどの影分身が現れて
橋の傍へと二手に分かれた。
「さて…お前の出番だよ、オレはここで奴らを食い止めるから」
その言葉にナルトが食いついた。
「何言ってるんだってばよ!
カカシ先生も行くんだ、影分身はオレが置いていく」
そう言うとカカシの倍の数をだし、カカシの手を取ると吊り橋に足を踏み入れた。
「ちょ、ナルト!!!!」
「早く行こうぜ!あっちにサクラちゃんとサスケ…ん?何でイルカ先生がいるんだってばよ?」
「…あ~お前を心配して捜索隊に参加して下さってたんだよ」
手を引かれながらカカシが言うと、嬉しそうな照れくさそうな顔でそっか…なんて答えられると
カカシも胸元のモヤモヤガひどくなる一方だった。
だが、それとこれは別、今は早くその場所へとたどり着き、どうにか
あの子を結界から出さなければならないとカカシは気持ちを切り替えた。
橋を渡りきる頃には、ナルトの影分身が追っ手を全て殲滅し
影分身が一気に解かれると、ナルトへと情報が蓄積される。
「…あいつら、この橋の中腹までしか来れねぇらしい」
「結界があるって事?」
「気付かなかったってばよ」
「…あの子が、入れてくれたのかもね?」
「おう!早く助けに行こうぜ!」
ニッと笑うナルトに、はいはいと答えてカカシが後を追った。
既に道なんてものはなくなっていて、本当に人が入って良いのか?と思えるような
獣道すらない場所を、カカシとナルトは進んだ。
近づく気配は、サスケと、サクラ、イルカの3名。
カカシはフーッと息を吐き影分身を一体出すと、その3名を迎えに行って
情報を全て伝えて置く事を命じ
ナルトと前へと進んだ。
目の前に聳える岩肌に、赤い紙の封印を見つけ、カカシが印を結ぶ。
解術で解けるとは思っていなかったが、出来る事は全てやらなければと
カカシの知りうる解術を掛けてみるが、それは全て弾かれてしまい
目の前の赤い札は未だそこにあった。
「なぁ、オレちょっと気になるんだけどさ…これって…」
スッとナルトが前へと出るとその赤い札に直接指先を触れさせた。
「ちょ!ナルト!…って、あれ?」
術を解こうとすると、すごい力で跳ね返ってしまうのに
ナルトの触れた途端その紙はサラサラと音でも奏でそうに消えていった。
「お!開けるぞ!先生!」
そんな安易にやっちゃいけないんだけどねぇ~なんて銀髪を掻きながら苦笑いでナルトの言葉に
今回は従おうと、カカシがナルトの後ろに付いた。
押される扉は、ギギギと音を立て数十年と開かれてなかったようで
扉の至る所から、這い出した蔓やツタが扉と離れるために音を奏でる。
「…こんなに開いてねぇなら、中はどうなってるんだ?」
ナルトが中へと足を踏み入れると、カカシも後を追うように進んだが
すぐに目の前で動きを止めたナルトにぶつかりそうになって、カカシが視線を上げた。
「…ナルト?」
「あれ…いろは、だよな」
その言葉に、カカシがナルトの横から顔を覗かせると、目を見開き
そして肩を落とした
「ナルト…」
「九喇嘛…どうにかなんねぇのかよ」
その声に、言葉は帰っては来なかった。
ナルトはそのまま膝を折り、目の前の少女へ手を差し伸べる。
震える指先が、既に生気を失っている少女の頬に触れると
光が少女の体を包み込み、ナルトの体も金色に輝いた。
「うわっ!」
「ナルト!」
光に包み込まれる前にカカシがナルトの体を掴んだ。
そうでもしなければ…この光に連れて行かれそうだと…カカシが思ったから
その光が去った後、ナルトの体を抱きしめていたカカシとナルトだけがその場に残った。
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