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続きです
【贖罪】4 疑惑
「おい!ナルト!」
サスケと影分身数体で家の荷物を寄せ集めていると
サスケが台所から声を上げた。
台所の上にある天井が歪んでると…押して見付けた黒い塊。
引き出すとゴツリ…と、音を立てて床に落とされ
広げてみれば…上忍服に、ポーチ…数はかなり減っているが
カカシ先生の私物に間違いない物だった。
「カカシは何も持たずにこの家に転がり込んだって…言ってたぞ?」
「…じゃーあの、奥さんが隠したって事か?」
「可能性は大きいな…それにこれ…」
「空の財布…先生がいつも使っているモノだっ」
「怪しくねぇか?」
「…で、でも、先生の子供まで出来てるんだ!今更怪しいとか…
先生が傷つくってばよ…」
火影に報告はするぞと言いながら、サスケはそれ以上
それには触れず、巻物にそれをしまって他の荷物を集めだした。
先生は…騙されているのか?
でも、あの銀の髪の子は…間違いなくはたけの血を引いてる…
だって、砂の里で今は亡きチヨが…髪の色で言ってた…
先生の父親と間違えてたみたいだけど…
だからあの子供は先生の子供に違いなく…
それ以前、先生の正体を隠したかった…のだろうか?
そんな事を考えてると、背後から足蹴にされた
「いってーな~何するんだってばよ!」
「アホ顔してっからだ!さっさと終わらせるぞ」
「…ぉぅ」
サスケにどやされながら、どうにか始末を終えたのは既に日が暮れた頃だった。
◇
検査も、引越しも…
全てを終えたカカシは、家を出て辺りを見て回る。
記憶が戻る事を望んでいない妻に違和感を感じながら…
明日から、ナルトにチャクラの練り方や忍の心得等の事を教わる。
忘れた記憶を詰め込まなければならない。
報酬は家族を養う程はくれると言っていた綱手の言葉に嘘はないだろうが
自分の預金通帳を見て驚いた。
報酬を貰わずとも、一生を食べていける程には貯蓄があるという事
ただし、その通帳の内容は任務の度合いがあるので家族にも内緒にしなければならない
だから、妻は毎月持ってくる金額を指定してきた。
一ヶ月の金額は普通の家庭が2ヶ月は暮らせる額。
今まではそんなこと一切言わなかった妻がだ…。
忍のはたけカカシと言う名に相応しい給料だと…彼女は言う。
けれど、忍の世界は…そんな甘いものではない
ナルトに借金をして買った家具たちは預金から支払うとしても
自分の稼ぐ額以上に出せばこのお金を切り崩すしか出来なくなってしまう。
自分がどこまで憶えていけるのかすらわからない状態で
その額は難しいと討論をして、今に至る。
散歩をしていると、時折忍と思われる人間が
上空を走り抜けたり、そこらじゅうに忍服を着た人達が歩いている。
自分がいた小さな村ではありえない事だったが
こんな大きな里を守ってきた自分と言うものに興味が湧いた。
「カカシさん…お帰りなさい」
急に背後から掛けられた言葉に、慌てて振り返ると
人当たりの良さそうな笑顔の青年がそこにはいた。
「あぁ…えっと…」
「うみの…イルカと申します。
ナルトのアカデミー時代の講師をしていました」
「あっ…そう、ごめんなさいね、オレ記憶が全く無くて」
「ええ…ナルトから聞いています。
アイツ教えるの下手なんで…心して下さいね?」
なんて苦笑いしながら言う彼に、はぁ…としか答えられない
どうやらナルトは、この先生に教え方を聴きに行ったらしく
ハニカミながらそんな事を言ってきたので、なんだか場の勢いに任せて
彼と少し昔話をした…と言うより、聞いた。
アカデミー卒業後から彼を既に何年も見てきた事
中忍に上げるために彼と衝突した事なんかも聞かされたが
一向に思い出す事は出来なかった。
塗り替えられた自分の人生の中に、あのナルトは
深く深く関わっているんだという事だけは、この里に来てから
どうにか認識するまでになった。
翌朝、集合時間ぴったりに行くと
彼は苦笑いしながら、時間通りだってばよ…って悲しげに言った。
普通、仕事をするのに時間をずらすなんて有り得ないでしょ?
と、思ったが…それよりも、まずはチャクラの練り方に付いて
講義が始まった。
「でな?こう…は~っ…ってしてると、ぐわってなってな?
でぇ…腹の辺りに意識を集中すると…グググッてなってな?」
「……。」
先生、分かりません!
と、言ってやりたいのを必死に堪え、言われたままに自分の体内に
チャクラと言うものを練りこむようにしてみる。
自分の中に流れる血液や気の流れ…そういう物を感じながら
目を深く閉じ、息をゆっくり吐き出しては吸い上げる。
3度目の呼吸の時に、吐き出していた呼吸から腹の辺りが
急に熱を持ったような気がして、その熱に自分の神経を集中すると
あっと言う間に、腹に何かが溜まって行く感覚を感じた。
「うぉ!すげーってば!先生出来てる!」
「そ?」
「おう!流石先生!オレの解りにくい言い方で良く出来たってばよ!」
自分で解りにくいと言っているあたりが可愛いというか何と言うか…
カカシがクスッと笑うと、わからない質問を投げかける。
「で…これって、どうやって貯めるの?」
「…ん~それを常にやってる状態にするんだってば」
「え?」
と、驚いた拍子に一気に力がガクンと抜けた。
「あれ?」
「…にゃはは、チャクラ放出しちゃったな。
大丈夫だってばよ?毎日やる事だから…気が付いたらそれを続けて
そしたら無意識に出来るように成るってばよ!」
二人で演習場という場所で座り込んで話していると、木がガサッと揺れた。
「ナルト」
背後の声に、振り返る前に名前を言い当て、ニッコリと笑ってそちらへ視線を向けた
そのナルトの視線を追えば、木の上に黒い塊。
「サスケ?どうしたってばよ」
「明朝任務来るぞ」
「んあぁ~もぉ!カカシ先生チャクラ練れるように成ったってのに!
2・3日は入れない約束だっただろ?」
「…ナルト!」
「…解ってるってばよ」
「ふん!カカシはサイにでも頼め」
と、姿を消した。
ナルトは深い溜息を落としながらカカシの方へと振り返ると
ごめんな…と、続けたが
逆にこっちが時間を拘束しているようなものだ…気にしないでって
答える意外何も言葉が見つからなかった。
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【贖罪】5 眼
一通り説明を受け、チャクラは常に練っている状態にすると
左目が痛みに似たモノを与えてくる。
それに付いて、ナルトに聞いたがそれは自分の範疇外であり
カカシはそれに付いては貰った経緯しか語っていないと言う…
「貰った?」
「あぁ、先生の上忍祝いだった眼だよ、その写輪眼は」
悲しげな目をするナルトにそれ以上聞けなくて
そう…とだけ答え、頭の中で情報を整理する。
祝いだとくれた人間が今どこで何をしているかなんて…
判らないが、目の玉を人に渡すという事は、それだけの覚悟
それだけの思い…それだけの行動が伴わなければ
そう言う事には成らない…だとしたら既に死んでいるかもしくは
片目がない状態だろう。
真っ直ぐに切り込まれた眼の傷をそっとなぞってみると
ナルトがニッカリ笑った。
「チャクラ…ちゃんと温存出来るようになってんの
先生解ってる?」
「え?あ…」
腹の底で力の源のような何かが蠢いている感覚。
なんだかそれが当たり前の毎日だっただけに、その習得には
時間も掛かる事はなかった。
ナルトが、そのチャクラを安定して使えるように、足へと流す方法と
それを使って木登りをする方法を教えてくれた。
ナルトはひょいひょいと何事もなく木上まで歩いて上がって行き
上からせんせー!なんて呼びながら手を振ってくる。
それに合わせて手を振ってみると、ナルトがその場所から飛び降り
その行動は忍者ならば怪我すらしないのに、危ない!っとナルトに駆け寄ると
「イッシッシ!オレってば忍者!先生も出来るように成れば分かるってばよ!」
と、平然とした顔でこっちを見ていた。
そこに、サクラとサイと言う少年が来て、4人で輪を書く様に座り
何やら雑談が始まった。
修行は?と…思ったが、どうやら其々にチャクラを練りながら
何気ない話をしたりするのも、当たり前に出来なければならない事らしく
今日は緩くてイイだろうと、サクラもサイも同意していた。
「知りたい事…答えられる範囲で答えますよ?何かありますか?」
と、サクラに問われ…
自分はこの里でどんな存在だったのか等を色々と聞いた。
サクラも、サイも、視線を時折ナルトに投げかけながら話すのは
何でだろうかと思ったが、それよりも、己が強かった忍だったことに驚いていた。
まぁ、確かに…あの金額を見れば、命懸けの任務をこなして居たのだろうとは解る。
と言う事は…この10以上年下の子達は…
「ね、君たちも…ランクの高い任務受けてるの?」
「まぁ、そこそこに…」
と、サクラが言うと、サイがナルトは例外だけどねと告げた。
「ナルトはランクが低いの?」
「あ~…逆だってばよ」
「え?」
見た目、物静かな感じもあまりしないし、教え方も…上手いとは言えない
しかも…アカデミーの先生が未だに心配するほどの子なのに?
と、疑問を抱くが、先程の暗部と呼ばれる青年がどう言う存在なのか
と言うのを知ったら、その青年が誘うと言う事は、そういう事なのだろうと
頭の中で結論づけた。
現在、ナルトはカカシの抜けた穴を補充する要因として
S~Bまでの任務を受けている。
Sは流石にまだまだ下っ端だが、カカシに勝る攻撃力は買われているのだ。
特にシカマル辺は、攻撃要員に必ずと言っていいほど、ナルトを指名してくるのだ。
感知能力もずば抜けていて、攻撃力もずば抜けている。
ちょっと足りないのは冷静さと思考する事…それを差し引いても
お釣りが出るほど、木の葉には無くてはならない存在となっているのだ。
「君達は凄い忍者なんだね…」
「カカシ先生に教わりましたからね」
と、笑うサクラに、照れ笑いしながらありがとうと伝えた。
自分がそんな凄い忍者を生み出せるなんて…今の自分では信じられない。
まだ、腹に溜まっているチャクラはそんなに大きな物ではないけど
それでも、これを積み重ねれば恐らくは自分も…否
それを思い出し、この里のために働かなければならないのだ。
「ちょっと…木登り頑張ってくるよ」
座ってた場所を立つと、カカシは足にチャクラを貯める。
それを見ていたサクラが首を左右に降ると、ナルトは影分身を出して
カカシの救出に向かう。
左右のチャクラが均等に行き届いてないのが目に見える程で
サクラが助言し、サイも色々とアドバイスを送りながら
解散時には、カカシの服は汚れてドロドロになっていた。
「歩けるか?先生」
「うん、悪いね…送らせちゃって」
「何言ってんだよ、先生はまだやり始めなんだから
こんぐらいボロボロになってくれねぇとオレの立場がないってもんだ!」
「何よそれ…」
片腕をナルトの首にかけられ、ヨロヨロと支えられながらの帰還。
肉体的に2年もの間トレーニングなどをしていなかったせいか
少し肉付きが良くなっていた自分を呪った。
確かにチャクラも大事だが…恐らくは筋力や体力も桁外れでなければならない。
ナルトの体に引き寄せられた時にそれを思ったのだ。
「オレの訓練の時は、サスケと競い合ってて…飯吐きながらやったもん!」
なんて、偉そうに言うけど…。
「飯吐くってのは…どうかと思うけど?」
「あぁ、そうだな…そん時先生もそう言ってた」
なんてカラッと笑ったナルトの横顔に、何だか胸がきゅっと締め付けられる気がした。
明日の集合時間は、サイに言われており、この説明足らずの子よりは
先に進めるかな?なんて思いながらも帰宅し、ドアを開けると
妻が険しい顔でナルトを見やった。
「こんなにボロボロになるまで酷い!」
「…いや、でも」
「カカシ!忍なんてやめてよ!」
「…オレはこれを生業にしていたんだよ?
今更じゃないか…それに聞いたでしょ?
オレの体は、忍の情報を沢山抱え込んでる体だから
この里を出る事は出来ないんだよ…」
サンダルを脱ぐと、ナルトにありがとうって伝えて
夕飯でも一緒にどう?と誘ったが、揺れた碧眼はゆっくり閉じられて
首を左右に降って断った。
それから、サスケに写輪眼の使い方を教わるまで
一週間…忍の成長としては早い方らしいが、任務もこれで受けれるようになる。
写輪眼を使うようになったら後は実践で覚える方が早いと
五代目に言われ、翌朝ナルトとサイのツーマンセルに同行する事が許可された。
走るのは早くなったが…それでも
カカシの足はナルト達のソレとは大いに違い
サイの出した鳥に載せてもらい運ばれると言う状態。
足で纏にしかならない…それなのに、感覚を思い出せばすぐだと
ナルトは笑い、鈍足のカカシさんなんて滅多にお目にかかれませんからね
と、サイが毒を吐き出していた。
任務ランクはCランクらしく、人の追跡。
元々、カカシの得意分野だったのだが、ナルトとサイが手本を見せてくれる。
あれだけ騒がしかったナルトが真面目に任務をこなす姿を見て
あぁ…やっぱり彼も忍者なんだな…と、漠然とカカシは思った。
無事任務を終え、報告をすると、ナルトはカカシを火影岩の上へと誘った。
強い風が髪を攫い、里の全貌をみやれるその場所に立つと
なんだか胸が締め付けられる思いがした。
「カカシ先生…明日から技の訓練に入るけど…オレってば教えれる技なんて
殆ど持ってねぇし、出来たとして分身位だからさ…写輪眼でコピーしたら
ある程度は会得出来ると思うし…オレの講習もこれで終わりかもしんねぇ…」
「…そう、沢山ありがとうね 記憶無くしちゃって…ごめんな?」
「うん、カカシ先生…たとえ記憶が戻ったとしても
後悔はすんなってばよ?」
「…後悔?」
「そ、後悔はしちゃいけねぇ…苦しむ必要もねぇし
もし記憶が戻っても、過去に何があったかを思い出しても
先生は先生だ…今も昔も、はたけカカシだって覚えててくれよな」
「…ん~?まぁ、良く解らないけど…後悔はするなって事でしょ?」
「そ!だから、忘れてごめんとか、そう言うのも…もうこれで最後だってば
先生は今から忍としてオレらと一緒に歩んでいくんだ…」
「あぁ…そうだね、早くナルト達に見合う実力が付くと良いんだけどね…」
「先生だったら、あっちゅーまだってば!オレがホショーする!」
二人で笑い合って…そこで別れた。
一人、額あての裾を揺らしながらナルトはまだその場所を離れずにいた。
先生の子供、名前を はたけスイと言う。
まだ、0歳の彼がこの先どのような成長を遂げるかはわからないが
カカシの希望であり、彼に託す物は大きなものになるだろう。
だったら、その子供を、ナルトが教えたっていい。
上忍師の資格を取れれば、きっとそれも叶うはず。
(火影の前に上忍師かな…)
なんて思い描くと、クスッと笑った。
はたけ家の血統を考えれば、きっと息子は目覚しい成長を遂げるに違いないと
ナルトは痛む胸をグッと堪えた。
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【贖罪】6 パックン
カカシが里に戻り、既に半年を越えようとしていた。
妻と呼ばれる女性は殆ど会う機会も無く、任務続きのナルトにしてみれば
胸を痛めている暇すらないと言う状況は心底ありがたかった。
けれど、休暇が出来てしまい、ナルトにとって久しぶりの休みとなった今日
家の掃除を終えると時間を持て余して第3演習場へと足を進めた。
カカカッツ…
クナイの音が聞こえて視線を向ければ、真剣にクナイを投げつけるカカシ。
ドクリ…と脈を強めて眉間にシワを寄せた。
好きだ…
傍に居て…
オレに触れて…
オレを…愛して
伝えられない言葉の羅列に、一筋涙を流すと
ナルトは踵を返し、その場を後にするはずだったのに
「ナルト?」
既に、チャクラコントロールや写輪眼を使えるカカシに
イトも簡単に発見されてしまい項垂れた。
「お、おう、カカシ先生が先客だったんだな」
「…なにかあった?」
「え?」
「何だかすごく悲しそうだから…」
貴方を思うとこうなるんだ…なんて言える訳もなく
苦笑いしながら乾いた涙を瞬きで確認して振り返った。
「先生こそ…子供の面倒見なくていいのか?」
「あぁ…午前中に散歩に行ってきたよ。」
「…そっか」
「うん、あ!そうそう、ちょうど良かった」
ゴソゴソとポーチを探ると、カカシの手の中に握りこまれたモノ
「これって何に使うかわかる?」
「あぁ…それか…」
カカシの手の中にあった犬用のジャーキーを見て
ナルトがフッと笑った
(そう言えば…パックンに全然会ってないってばよ)
「良く分からないんだけど…自宅にあったポーチに入っててね…」
「先生は忍犬を使うんだってば」
「忍犬?」
「あ~契約期間とか解んねぇけど…呼んでみる?」
「出来るの?」
「…多分?」
「え?じゃーナルトも何かと契約しているの?」
「え?あぁ…オレは蛙だってばよ」
「へぇ~…蛙…オレは犬、かぁ~」
なんてマジマジと手元のジャーキーを見つめるもんだから
苦笑いしながら、呼び出し方を教える。
基本…口寄せは全て同じ。
チャクラ量で呼べる大きさも違うが…
「先生見てろってば」
シュッとクナイに親指を宛て横へ引くとジワリと血が滲み
その血液を掌へグッと塗りつける。
「口寄せの術っ!」
ナルトの声と共にボフン…と、現れた大きな黄色いカエルにカカシが目を見開いた。
そして、そのカエルが口を開く。
「なんだ、ナルト…戦ってる様子でもなさそうだな?」
「おう!ちょっと…練習で呼んだだけだってば!」
「え~?練習だけで呼ばれたのぉ~?」
「お菓子やっから、我慢してくれってば!」
「お菓子~?わぁぃ~♪」
なんて会話を終わらせると、ポフン…と黄色いカエルが姿を消した。
「凄いねぇ…オレもそれを呼べるってワケ?」
「あぁ、先生は犬だけどな」
「やってみていい?」
「おう!掌にチャクラを貯めて、血で呼ぶんだってばよ!」
「解った…」
カカシはナルトと同じように、口寄せの術!と声に出し
掌を地面に押し当てると、ボフンと…久しぶりの眠そうな目と視線があった
「久しぶりじゃの…カカシ」
「うわっ!喋った!」
「ぶはっ、先生!さっきオレのカエルも話せてただろう?」
ケタケタと笑うナルトに恥ずかしさがこみ上げて
視線を眠そうな目の犬に向ける。
「あ、あぁ、そうだった…お前名前は?」
「…パックン」
「そう」
ニッコリと先生が微笑んで、パックンの頭をグリグリと撫でると
ジト目でオレを見てくるパックンに、ナルトが事と次第を説明することにした。
「ほぅ…じゃ~ナルトはカカシを教育しておるのか?」
「…教育ってほどじゃねぇってばよ?思い出すのを手伝ってるだけだってば」
「そうか…それにしてもカカシが記憶を無くすとは…」
「パックン!」
ナルトの強い視線に、あの事は言うな…と言う言葉が篭っているのを
パックンが悟り、コクリと首を上下させると
カカシに契約時の話や2年間呼び出しがなかったため、数匹の犬が
引退をした話などをすると、ナルトは積もる話もあるだろうからと
その場を後にした。
演習場で、カカシとパックンが並んで腰を落とし
今までにあった事等を話すと、何故かナルトは何と言っていた?と
質問され、ここでも自分に関わってるナルトの話になるのかと
深い溜息を落とした。
「忘れちゃ…イケナイ存在だったのかな?」
「何がだ?」
「ナルトの事…」
切なげな目を向けて言うカカシに、パックンが続けるよう投げかけた。
「何故?」
「だって、皆…オレが記憶をなくしたって言った時も、妻を迎えたって時も
必ずナルトを見るんだよね…それに、パックンオマエも…」
それはそうだろう…カカシに近い人間だったら知っている。
二人の関係は、そんな簡単な先生と生徒ではない事を。
だったら、その深い関係は…恋人と表現しなくても、カカシと共に
生きてきた証くらいは、カカシに刻みつけてやろうとパックンが口を開いた。
「……深い仲だったからな」
「へ?…深い?」
「あぁ、師弟と言うより…お前とナルトは家族のようなもんだった」
「やっぱり…じゃーオレとナルトは一緒に行動をしてたりしたワケ?」
「そうじゃな、戦いの時も、互いに背を預け合える信頼関係は
お互いにあったし、オマエも孤独な戦いをしなくなったのも
ナルトのおかげだとワシは思っておる」
「孤独…?」
「あぁ…オマエは人と関係を深く持つ事を避けて通っていたからな」
「…そう」
「イルカだったか…奴に頼んで任務経歴書を読ませて貰えば
お前とナルトがどれだけ一緒に居たか分かるのではないか?」
「ん…そうなんだけどね、オレさ記憶を無くしてしまったでしょ?
全てを忘れたんだよ…それこそチャクラの練り方まで
だからどうやってこの時代をどう言う忍として生きて来たか
それは聞けるけど…任務内容は一切極秘になってしまうんだ」
「そうか…では、ワシに聞くがいい…呼べばいつでもオマエの元に現れるし
お前への協力は…まだ続けるつもりもある。
だから、ワシに聞けばいい…答えれる範囲はあるだろうが、オマエをずっと
近くで見てきたナルトかワシがオマエの事を答えれるだろうからの」
「ありがとう、パックン…」
手元にあったジャーキーをあげると、嬉しそうに咥えて
用を足しに行くと、彼はナルトの消えた方へと消えていった。
空は高く、雲ひとつない。
カカシがギュッと目を閉じてバタリとその場で寝転がると
パックンの言葉が頭の中を何度も巡った。
ナルトは、自分にとって家族のような存在…。
では、どんな関係だったのか?
弟のように可愛がっていたのだろうか?
年の差14…男同士で恋人関係はありえないだろう…
けれども自分の心に焼き付くそれは、恋情に似た感情。
きっと、それは家族へ対する思い…ではないだろうか?
カカシはその場から体を起こし、妻の待つ自宅へと足を進める。
きっとまた…問われる。
記憶は戻った?
昼はどこにいた?
忍はもうやめて…
毎日のようにその言葉が帰る度に降り注ぎ
それに同じ答えを何度も答える毎日は正直窮屈だった。
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