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葉月の続きだったり?
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【長月】9月の思い
カカシとの付き合いは、これと言って何かが変わる訳でもなく
時折会っては一緒に食事をしたり、時折泊まり掛けでどちらかの家へと行く
そんな事を繰り返していた。
男女の付き合い方とは全く違う行動に、このままでいいのかと
悩むナルトをよそに、カカシは全く何のアクションも起こしては来ない。
ただ、周りに人がいると嫌に傍に来たり、ベタベタすることはあれども
それ以外はカカシに何ら変わりが見えない事にナルトは少なからず不安心があった。
本当に己を好きで、付き合うと言ったのであれば
何故手を出してこないのか…
この数日本気で悩んでいるネタはそれだった。
珍しく己を指名した男の名をコウガと言った。
その男の身辺警護がナルトともう一人…サイの受けた任務で
サイは終始、どうしてナルトが任命されたのかをブツブツと言っていたが
ナルトの名は既に第四次忍界対戦で知れ渡り時期火影とも称されている。
それが何を意味するのか…
今のナルトには予想も付く事はなかった。
ただ、カカシに今回の任務に就いて言葉を掛けられていた…。
「いいか、オマエは何故自分が指名されたかを知らなければならない
そして、それが良いモノなのか悪いモノなのかを自分で判断して遂行するんだ。
そしてツーマンセルとは言え油断は一切するな。
油断してしまえば、身をもって苦しまなければならなくなるかもしれない
サイを頼らないで自分で切り抜けてこい」
その言葉の意味するところは、正直理解できなかった。
今のこの現状を、目の当たりにするまでは…。
獲物を狙うような目…上がった息。
これが何を意味するのか…ナルトはそれを理解した途端気持ちが急降下で落ちていった。
「コウガさん、もうやめろって」
「お前の肌が綺麗なんだよ…吸い付いて来るようだ」
ざわりと、背筋に冷たいものが走る。
太ももの、股間に近い場所を触り、撫でる男が異常に興奮しているのだ。
サイと交代で外と中の警護に当たっていた。
今夜はサイが外当番…。
本当は依頼主と食事をとるなんて、してはいけなかったのだが
一人で食べるのは寂しいと訴えた男に、ナルトは常にそれを感じれる世界に居たため
それがどれだけ寂しく空しい食事なのかが解っていた。
少しでも、楽しい時間を作れたらと…そんな思いから食事を一緒にする申し出を受けたのだが。
それから間もなく、体が急に痺れを感じ、動く事が出来なくなった。
それを知ったコウガは最初心配そうに傍に来たと言うのに
今は…
体のあちらこちらに触れてくる。
ジャリ…と、中に着込んでいた鎖帷子が音を奏でると、ナルトの額からツーッと一筋の汗が伝った。
「うっ…」
急に手が股間に宛がわれ、力も持っていない柔らかなそれをゆるゆると撫で始めたのだ。
「やめ…ろって」
「まだ、誰ともしたことない?」
「なに…を?」
「こういう事」
痺れてて、手も足も体も思うように動かせず
ナルトはこの状況から逃れるには、と頭をフルに動かしてみる。
ただ、下半身に与えられる刺激は己からの発信ではなく他人からの発信
それを制御する方法があるなら教えて欲しいものだ。
コウガは、するりとナルトのズボンを下ろすと、ゆるく立ち上がったそれを
握りこみ、口をぱっかりと開いた。
「ちょ!やめろって!」
「残念ながら…君をオレのテクニックで陥落させなくちゃならないからね
最初だけだよ、嫌悪感を抱くのは。後はされるがまま君も楽しめばいい
良ければこのまま…オレの影にならないか?そうすれば火影の座もすぐに手に入るよ」
コウガはそう伝えると握りこんだソレを口へと入れようとした時だった。
ボヒュンと風が唸り、手の中に感じていた暖かなものが消え
椅子に座って動けずにいた碧目の少年の姿が消えたのだ。
「なっ…」
「そー言う事だったんだな…」
キョロキョロとしている男の背後から、かかった声には怒気が孕んでいて
その声に恐る恐る振り返ると腕を組んだ、動けないはずのナルトがこちらを睨んでいた。
「なっ…」
「任務にオレを指名したってのは…こういう事をするつもりだったのか?」
「っ…バカな!あの弛緩剤はそう簡単には解けないはず!」
「飲んだのは影分身だからな…それに、こんな事するのはおかしいだろう!
アンタの影をするつもりもねぇし、火影はアンタにしてもらわなくても自分でなって見せるってばよ!」
その言葉に男は大きく頭を項垂れた。
結局はナルトの時期火影と言う名前と、自分を守る忍びが欲しかった。
そして、忍界対戦で知れ渡った名前の査定と言うところか。
それに見事合格して、その男の手足にさせられそうになってた…と言うのが今回のあらすじだと
帰り際にサイが言っていた。
3日間の護衛の任務は一日残した形となり
随分早い帰還だと綱手に大目玉を食らう覚悟で里に戻ると
カカシが門の前の大きな木の上で本を読んでいた。
相変わらずいかがわしい本ですね…とサイに毒を吐かれながらも
お帰りと言ってくれたカカシに視線を合わせる事を出来なかったナルト。
ただいまと小さく答えて、綱手の待つ火影執務室へ向かった。
「…やれやれ、やっぱり狙われてたんだな、仕方ない…今夜はラーメンでも食わせてやるか」
と一言呟き、カカシも今日は待機を言い渡されていたので、待機場所へと戻った。
気になって仕方がない。
お子様のお付き合いみたいな事を繰り返すうちに湧き出てくるようになった衝動にカカシは少なからず戸惑っていた。
前に呼吸を促すために重ねた唇が、時折その柔らかさを思い出すのだ。
ナルト指名の話を聞いてから、落ち着かない心と、でも、忍びとして人の真意を見抜き汲み取るのも
仕事のうちだと自分に言い聞かせていたが…
まさか、いきなりの初指名であっさり、カカシも時折有ったと言う”庇護者の私怨”と向き合う事になるとは…
それだけ彼の名前が知れ渡ったってのもあるだろうが
名前だけだったらこんなにお金を払って任務として呼びつける事もない。
ナルトの九尾すら、己のモノにしようと…
そこまで考えてハッと周りを見渡した。
上忍待機所は沢山の上忍がそこの場所で寛いだり、報告書を書いたりとしているのだが
カカシが思いふけっている間に殺気が辺りを包み込んでいた。
お蔭で影からカカシを見るもの
冷や汗を流しながら、固まってるもの…
「あ~…ごめ~んね?ちょっと考え事してただけだから気にしないでね~」
へらりと笑って、昔良く一緒に待機していたアスマを思い出す。
きっと、この殺気を皆が気付く前に止めてくれただろうアスマ
殉職してもなお、傍に居て欲しいと願う忍びの一人でもある。
空気は凍り付いたままだったので張本人がその場を明け渡すことで事なきを得た。
見上げる空は、いつもより高いと感じた時に、フッと感じた気配。
深くため息を吐き出し何を問い質されるだろうと身構えた。
「カカシ…」
待機所の屋上、久しぶりに見た紅に頬が緩む。
「久しぶりだね…子供、大きく育ってるね」
紅の腕の中で眠る子に一度視線を向けてからにっこりと笑う。
「アンタが殺気をただ漏れにしてるって、苦情が出てるわよ?」
「は?苦情って…勘弁してちょうだいよ、殺気ったってそんなに振りまいちゃいないし
機嫌が悪かったわけでもないんだからさぁ~…」
「感情を隠すのが上手いからこそ、時折制御できない事態が起こると
ホント、アンタは鈍くなるんだから…アスマも言ってたわよ?カカシは
普段感情をあらわさな過ぎだって」
その言葉にハハハと笑い、まぁねと続けた。
そんな軽い感じのカカシに紅は気後れする事無く確信を問うた。
「ナルトと…付き合ってるって聞いたけど」
「…あ~うん、付き合ってるよ」
「…ガセだと思ったのに」
「なによ、そんな事問い質すために、子供連れてこんな場所に来たの?」
「…そうね。アンタが人と付き合うなんて思ってなかったし、もし付き合うとしても
カカシは男は選ぶ範囲に入れてないって思ってたからね。
だとしたら、うずまき側に事情があるって踏んで調べたの」
「…暇人だねぇ~」
薄く笑うカカシに茶化さないでと紅は続けた。
「あんた、うずまきが狙われてるから付き合ってるだけかもしれないけど
あの子が本気になったら、どうするつもりよ?」
少しの間が空き、手すりに寄りかかっていたカカシがそのまま
振り向きもせずに声を発した。
「紅…人の心はその人にしか測れないでしょ?
オレの何を知ってるんだ?本気じゃないって誰が言った?」
風に乗った声は、紅の耳にしっかりと届き目を見開いた。
「本気って事?」
「さぁね…どう転ぶかはオレにも解らないよ…
でも、嫌じゃないってのは間違いない事実だよ。
ま、あまり気に病むんじゃなーいよ、お前はアスマ二世をシッカリと育てなさいね?」
と言い残しその場所から姿を消した。
都合が悪くなれば逃げると言うカカシが、その言葉の都合の悪さを
正面から受け止めて答えた事に、紅は呆気にとられていた。
飄々としてて、常に上手くやり込めて逃げるカカシの言葉ではない…
それだけ相手を大事にしているのだろうか…。
だったら、もしナルトが本気になれなければ
カカシはどうなってしまうのか。
ナルトに今以上に思い入れが出来てしまったら
カカシはナルトに別れを告げられた時、どうするのだろうか…
そんな不安が胸の中で小さくざわめき立っていた。
◆
一方ナルトは自宅で座り込み大地の気を一身に受け止めていた。
無心…それが出来なければ仙人モードに切り替わる事が難しくなる。
モヤモヤと考えるナルトが深く溜息を吐き出せば
既に瞑想の世界には入れず、ゆるりと浮かんでいた隈取が消えていった。
「あら…仙人も失敗することあるの?」
人の気配は感じていたが真後ろからかかる声に、ナルトはもう一度息を吐き出した。
「雑念が入ったからだってばよ」
「え?オレ?」
「そう、カカシ先生が雑念なの!」
八つ当たりもいいところだ、本当はそうじゃない
カカシがなぜ自分と付き合うと言い出したのか…そしてなぜあれ以来
触れ合いすら持たないのか…
そんな事を考えてしまえば、雑念が入るのも当たり前と言うモノだ。
自分が解決できていないから悪い…それが例えカカシのことであってもだ。
「わりぃ…カカシ先生悪くないってばよ」
しょんぼりと自分の非を認めたナルトが声を発せばポンと頭の上に降ってくる衝撃
その衝撃が今度は優しくワサワサと髪を乱すと、ナルトも悪い気はしなかった。
「オレの事を考えてて雑念が入ってるって事ね」
「うっ…いや、その…」
「何が気になる?それとも、そろそろ一か月が過ぎるし、別れ話でも考えてた?」
そんな事を言い出すから、ナルトとしてみれば考えても
居なかったことの期限がすぐそこまで迫ってる事を思い知った。
「あ…そっか、一か月過ぎちまうんだ…考えてもなかった」
「あら、だったら何を考えてたの?」
「う…」
藪蛇だと、ナルトが苦虫を噛みしめた。
説明をするにも、どうして触れ合わないのとかどうして、もっと一緒に居ないのとか
まるで、昼ドラのような私と仕事どっちが大事なの!みたいな言葉にしか変換できず
ナルトは答えを言葉に乗せる事が出来ず、スクッとカカシの前に立った。
「…どうした?」
「カカシ先生、オレってば今から、ち…チューするからな!」
「え?」
カカシが触れて来ないなら自分から…そう、お互いに男だ
そういう事をするのがどっちとか、主導権が誰とか…そんなのはどうでもいい。
ナルトはカカシの肩をガッシリと掴んで、首を少し横に傾け
心の底で願った。
(頼むから…避けないでくれ)
と、唇に当たる感触に目を見開いた。
カカシの手が、己と自分の唇の間に入り込んでしまい、唇を重ねる事が叶わなかったのだ。
(…やっぱ、ダメなのか?)
落胆するナルトにクスッと笑うと、カカシは思いもよらない言葉を綴った。
「お前がキスしたがるとはねぇ…でも、口布したままだったら出来ないでしょ?ホラ」
と、するりと綺麗な顔が曝け出され、ナルトの心拍数が一気に跳ね上がった。
「え?し、していいの?」
「あれ?する気じゃなかったの?」
質問返しに、ナルトはまだキョトンとしたまま。
そんなナルトに今度はカカシから唇を降らせてくると
その温もりはすぐにナルトの体に染み渡った。
一度目は過呼吸を治す目的があった…
今回は、ナルトがしたいと、意思表示しただけで
唇を重ねる事が叶った…
「…ってばよ」
「は?なに?」
「なんでカカシ先生は平気でキスできるんだってばよ!」
目を潤ませて聞いてくる姿は、なんだか幼い子供のようで
なんだか、そんなナルトに心が安心をしてるのが解る。
「なんでって…お前がするって言ったから」
しただけだよ?と回答を落とされればそこに噛みついて来る
「なんで、オレがしたかったらいいんだよ!カカシ先生はしたいと思わないのかよ!
なんでオレだけこんなにカカシ先生の事意識しなくちゃなんねぇんだってばよ!」
「…意識、してくれてたの?」
「あ…あれ、オレ」
慌てて混乱する頭を整理しようと己の殻に閉じこもり
考え込むナルトを横目で見てクスッと笑った。
カカシだって初めは、闇のナルトの言い分が一番手っ取り早くナルトを守れると思ってたから
それは、否定は出来ないが、普段ほとんどナルトとの接点がなかったカカシにしてみれば
ナルトと付き合った一か月は凄くナルトの知られざる世界を見た。
夜に会いに行けば嬉しそうに迎えてくれる事。
食卓に野菜ばかりを並べても文句は言うが綺麗に食べる。
風呂上がりには必ず牛乳を飲む…たったそれだけの生活習慣
それがナルトなんだと、知って来た。
無論、上司と部下だけでは知らない事をナルトにも見せて来たつもりはある
素顔から始まり、日常の食生活は和食中心だとか
酒は結構飲むだとか…そこら辺は一緒に生活をしている人間にも
教えれる人と教えれない人がいる。
時折ガイの懇願で飲み比べをすると必ずガイが潰れるまで飲ませ続けるのも
今のナルトは知っているはず。
一か月と言う期間で知った互いの事を受け入れ
それでも一緒に居ても良いと思えたのは、ナルトが自分の生活を押し付けて来ないから。
そしてカカシも押し付けようとはしないから。
ただ、ナルトがノーマルで男を恋愛対象に見れない場合…
どう足掻いた所で、カカシは振られる
それを、どっぷり嵌まり込んだ状態で抜け出せなくて胸を焦がすよりは
手を出さないで綺麗なままのナルトで、自分を踏み台にしてくれればと願った結果なのだ
だが、ナルトから求めて来るとなるとその気持ちは簡単に揺らぐのも事実。
既に…
(あぁ…もう、どっぷりかも)
なるべく…考えないようにしていたんだけどなぁ~と
カカシは髪をポリッと掻いた。
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