倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 孤城白蓮 壱 | | HOME | | 孤城白蓮 3 ≫ |
続きUPでございます!
「あーもぉ! カカシ先生ってば、何でしてもいない約束作るんだ?
お陰で、夕飯食いっぱぐれたじゃねーか!」
プリプリと文句を言うナルトに、カカシは薄く笑い
そっと、ナルトの腕を掴み、部屋を出た。
「え?は!? カカシ先生?」
「夕飯、食べに行くぞ。お前の希望は?ラーメン?」
くすくすと、楽しそうに笑いながらもナルトの腕は離さずに
ズンズンと歩くカカシに、仕方ねーな…と、一言吐き出したナルトは
その先は、何も言わずに付いて来た。
「なあ、肉とかでもいいの?」
いきなり、ナルトから発された声に、いいよ?と返すと
嬉しそうに目を輝かせた。
「オレさ、実は今日出る前に一楽行って来たんだってばよ!
たから、肉の方が食べたくなってさぁー。」
なんて、言ってくれるだけで、頬が緩んだ。
「オレさ、カカシ先生と焼肉とか行ったこと無かっただろ?
なーんか、一緒に行ってみたいなぁーって、思ってたからさ!
ちょっと、嬉しいかも!」
なんて、頭の後頭部で、腕を組みながら笑うナルトを見て
そう…なんて、気のない台詞を吐き出しながらも心が、浮き足立っていた。
好きで…どうしようもない。
そんな思いが、どんどん膨れ上がってる事に
はたと、気が付いた。
(このままじゃ…本気で勘違いしそうだ…)
参った…と、頭を掻きそうになったのを
ピタリと手を止めて、苦笑いを零した。
また、ハゲるとか言われたら立ち直れないかも知れない…
「カカシ先生?」
「あら、さっきは呼び捨てたくせに、また先生呼ばわりに戻すの?」
何気に思い出した事を口にしてみると、みるみる間に慌てるナルトが
視界に入り、ナルトの言葉を待つ間も、こんなにも
暖かな気持ちになれるのだと、胸の辺りに握り拳をあてがった。
「あっ、そ、それは…カカシ先生が、女役になんなら、オレが
先生って言うのはおかしいからと思って、呼び捨てたんだけど…
やっぱ、慣れねー事するもんじゃないってばよ!
後から、メッチャ恥ずかしくなった……」
思い出したであろう、ナルトの頬が、ほんのり赤みを帯びると
カカシが、クスッと笑って、手をそっと握り締めた。
「な、なんか…本当に…コイビトみたいだな…」
「えっ!?」
本当に、この子には叶わない。
惚れた弱み…でもあるのだろう。
冷静沈着、寡黙で、冷徹とまで言われた暗部時代が
今や、嘘のようだと笑った。
「うん、この任務中は、オレのコイビト…だろ?」
「え?」
きょとん…と言う、言葉がピッタリくる表情を見せている彼を
そっと、後ろから抱きしめ、ナルトの首の前で両手を交差させて
抱きつくと、耳の真横でカカシが、囁くように声を掛けた。
「ナァールト?お前が言ったんだよ?オレの恋人になってって」
「言ってな…あ、そう言ゃー言った…」
綱手の前で…言った事を思い出したナルトが、確かに言ったと
苦笑いを零した。
「そ、だから今は、オレの大事な愛するナルトって事」
もう、叶わない望みに、打ち拉がれるより
今を、この大事な時間を、本当の恋人のように扱おう。
例え、ナルトに引かれたとしても…演技だと済ませられる今を
ひと時の、楽園と割り切り、全力でナルトを愛したい。
「なっ、なんか…恥ずかしいんだけど…」
「良いの、恥ずかしがっても、オレの恋人だから。」
「…う、ま、まぁ…そうだけど…」
なんて会話をしながら、抱き締めた拘束を解いて
カカシが再び手を繋ぐと焼肉屋を目指した。
カカシがここの支払いを持ってくれると
言われたためいつもの倍は食べただろう。
食い過ぎたーと騒ぎながら、城内に戻ると
ナルトに恋情を抱いている子息が、中で待っていて
呼び出された。
影分身に行かせるため、一度部屋に戻ってから行くと伝え
カカシと、部屋に戻るとナルトが、カカシに問いかけた。
「こ、こう言う事…なんだよな?
オレ、カカシ先生が好きだからって、断りゃー良いんだろ?」
その言葉に、ズキリと胸が痛む。
我侭を言わせて貰えるなら、行かないで欲しい…
例え、影分身だとしても…ナルトが、他の人に触れられると思うと
気分は、落ち込んで行く。
「お前が…断りたいと思うならね。
そう、思わないなら、オレは自分でどうにでもなるから
その思いに、真剣に向き合っておいで?
そうじゃなきゃ…相手にも悪いだろうしね…」
何を言ってるんだ…そう思うのに
先生として、ナルトの事を考えずには居られなかった。
断られる相手が、自分と重なったと言うのもあった。
「解ったってばよ! 行ってくる」
指先を、クロスさせると、ポンと一体の影分身が生まれ
本体は、この部屋の中に残った。
「なあ…先生は、あのお殿様に答えんの?」
いきなり、振られた質問に、カカシが首を左右に振った。
「答えないよ。」
「それは、なんで?」
お前が好きだから…そう答えられたら、どんなに気持ちが楽か…
「真剣に考えて、殿とは付き合えないと結果が出た。
だから、答える訳には行かないし、
思わせ振りな行動も取らないようにしている。」
そう答えると、ナルトもそうか…と、納得したらしい。
一刻程待つと、ナルトの影分身が戻ったのだろう。
ピクリと体が何かに反応した後に、急に顔を真っ赤に染め
手が、口元へ宛てがわられた。
「本気…なんだな。」
その、呟かれた言葉に、ビクッと肩を揺らしたのは
カカシだった。
伝えられるなら、伝えたい…自分も本気なのだと。
けれども、ナルトの邪魔になる事は出来ないと、気持ちに蓋を何度も
しながら、今まで過ごして来たのだ。
「ナルト…大丈夫か?」
「あ、大丈夫だけど、カカシ先生を好きだからって
断ったから、何か言われっかも…」
「うん、解った…ま、言われたらオレの方でどうにかするから
お前はあまり、気にしなくていい」
そう言うしか、言葉は浮かばなかった。
火影になるのだ、こんな屋敷に縛り付けられる生活を彼は、望まないだろう。
そう…理解していても、恋情に焦がれた気持ちは
あっけなく、そんな事をも覆すのは身を持って知っている。
己とて、恋などしないと…そう思い生きてきたのだから。
けれど、その思いは目の前でまだ、赤みを、拭えていない
そんな、幼い少年に侵食され、我を…失っているのは確実である。
ナルトと枕を並べて、布団に潜り込んだ。
なにも、する訳ではないし、気を沈めカカシは、目を閉じると
横から聞こえて来る寝息に、心臓が早鐘を打つ。
駄目だ…眠れない…
カカシは、むくりと身体を起こすと、窓に腰を落とし
空を見上げた。
月が美しく円を描き、目下には木々の揺らめき。
空は満天の星。
人々はこの星を見つめ、願い乞うのだろう。
もっと、良い世界を…混沌としたこの世界からの
脱出を…
ピクッと、カカシの肩が何かに反応し、浴衣の胸元に
すっと、手を滑らせると場違いな、金属音が響く。
「誰だ!」
その声に、小さく失礼しますと襖を開いたのは
先ほど案内をしてきた男だった。
「何用ですか?」
「夜分に失礼します、はたけ様…殿がお呼びで御座います。」
まぁ、想定内だと
カカシは、首を上下に振り、布団に丸くなってるナルトを横目に
通り過ぎようとした時だった。
「行くなってば…」
小さく聞こえた声に、目を見開いて、布団を見ると
ゆっくりと起き上がったナルトが、もう一度…
「…1人に、されんの嫌だ。」
そう、言われてカカシの心臓が異様な速さを奏でる。
けれど、ここで決着をつけて置かなければ、今後また、この場所に
赴く事になるのは、正直勘弁して欲しかった。
「ごめんな、殿が呼んでいるからね…さすがに無視は出来ない。
すぐに、お前の所に帰って来るから、待ってて?」
優しい口調で話し掛けると、頬を赤くして少し戸惑いながらも
首を縦に振った。
「行ってきます」
そう言い残し、カカシは、後ろ手で襖を閉めた。
≪ 孤城白蓮 壱 | | HOME | | 孤城白蓮 3 ≫ |