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なつめっぐ 保管場所

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孤城白蓮 3

続きでございます~






ナルトは、ナルトらしく…自分と、恋人を演じてくれているのだ。
本心からの懇願ではないのだと、自分に言い聞かせてから
殿の待つ閨へと足を進めた。

「はたけ様をお連れ致しました。」

前方には、大きな簾で隠れた殿、横で頭を下げ
手を、着物の裾に入れて会釈をすると、下がれとの言葉に従い
男は姿を消した。

甘い香りが、室内に漂い、その匂いの元を知るカカシが
強く吸い込まないように、注意しながら呼吸を繰り返す。

この香りは…

恐らく、麝香。
媚薬とまで称される香りは、鼻の効くカカシには
いくら耐久を付けても、かなりの効力を持つもの。

そこまで、調べられていたのかと思うと、流石に脱力するだけでは
すまないだろうと、予想を立てた。

「カカシ…近う…」

「殿、それは出来かねます。」


カカシの、一言に殿が簾を押し上げた。

「久し振りだと、つれないのう…あの、碧眼の少年を
気に入ったと聞いたが…本気か?」

「はい。本気で御座います。」

「私は、お前を欲しいと申してるのだぞ?」

「有り難き幸せなれど…それよりも、例え、謀反者とこの場で
斬り捨てられようとも…私の心は揺らぎません。」

バサリと、簾が下へと落ち、目の前に夜着を着込んだ殿が
カカシの顎先を引き上げた。

「なら、斬り捨てようか…」

そう呟いて、唇を重ねた。
執拗に唇を重ね合わせ、殿がカカシの下半身へと手を伸ばす。

「っ…お前!」

手が、やんわりと握り込むが、カカシのソレは反応を示さず
押し込もうと、無理に割り込んだ舌先を噛まれた。

「っう…なにをふるっ!」

痛みからちゃんと話せない殿にカカシが
申し訳ありませんと伝え、頭を下げた。

「私の心まで、貴方に捧げる事は出来ません。」

「それ程なのか?」

「はい。」

頑なに拒むカカシの性格は、前回で学んでいる。
ならば、息子に奮起してもらい、ナルトを先に落とそうと
深くため息を付きながら、思索し取り合えず、今日は引くしかないかと諦めた。

「はぁ。諦めぬからな?今宵は、もう良い!下がれ!」

「何度でも…答は変わりませんよ?」

「ええい、ウルサイ!気が変わらぬうちに、帰れ!」

怒声に近い声に、隣で待機していた、付き人が刀を構えて走って来た
話はここまでかと、カカシも一歩引き、失礼しましたと部屋を後にした。

帰り道、脚がフラリと千鳥足になってしまう。
吸い込む時間はさほど長くは無かったものの
酒に酔ったような、脳が痺れを訴え、それを制御するのは
至難の業だった。

トンと、柱に背を預け、空を見上げると雲が月を半分程隠していた。

「きつ…」

ズルリ…と、笑う膝を折ると、尻が床に張られている板の上に落ちた。
肺一杯に空気を取り込み、吐き出す。
それを何度か繰り返すと、やっと、脳の痺れが薄らいでいく。

「あの殿…今頃悶絶してるんだろうなぁー」

くすっ 一つ笑いを零し、立ち上がろうと床に手を伸ばした時。
目の前に手が、差し出された。

「あー情けない姿見せちゃったね…寝てても良かったのに。」


「良いから、早く捕まれってばよ!」

くいっと、更に目の前に手を出されたので、素直にその手を取ると
一回り小さなナルトの肩に背負われた。

「うわっ、ちょ…そこまで動けなく無いよ」

「うっせー! 行くなって言ったのに…置いてった罰だってばよ!」

と…何故か、罰を受けなくては成らなくなったカカシが、苦笑いで
ありがとうと、伝えた。

部屋に戻ると、布団に押し込まれ、ナルトが…
何故か、一緒の布団へと入って来た。

「ちょ、な、ナルト?」

「影分身で行かないからこうなるんだかんな!
オレにはそうしろって、言ったくせに自分はどーなんだってばよ!」

「…あー、スマン…」

「今カカシ先生普通じゃねーから、何かあった時のために
一緒に寝てやるっ!」

手は…繋いだまま。
予想外の温もりに、先ほどの香りがやたらと鼻に残ってて
湧き上がる思いに、ヤレヤレと溜息を付いたが
こんな機会絶対に今後は無いだろうと、ナルトの言葉に従った。

まあ、確実に寝不足だろうな…。

そう思いながら、目を伏せてどれ位過ぎただろう?
一緒に寝ている温もりや、息遣い…二度と来ないであろうこの時
カカシは、静かに時を過ごす。

忘れないように…

そんな思いをしていても、やはり募る思いに終止符を
打ってしまいたい…その苦しさから開放されたい…
この恋人期間の間に何度、この子に愛を伝えれるだろう?

そんな邪な思いをしているとも知らずに、ナルトは
深い眠りに落ちたらしく、繋がれた手も離されてしまい
カカシが、目を開いても、ナルトが目覚める事は無かった。

「クスッ お前、仮にも忍でしょーに…こんな、知らない土地で
爆睡とかどんだけ、無防備なのよ。」

さらりと、一房の金髪を撫でた。

翌朝、スッキリ目覚めたナルトが、キョトンとして
周りを見渡した。

「ナルト?どうした?」

「あえっ!?や、やっぱココ、城だよな…?」

その問い掛けに、自分の家で目覚めたのだと錯覚しているのかと
あまりの無防備さ、警戒心の無さに溜息すら吐けなかったカカシ
だが、そんな事お構いなしのナルトが
更に衝撃発言を落とした。

「んーカカシ先生と寝たからかな?
他の場所に行くと、ほとんど眠れねぇで、何度も目覚めんのに
一度も起きないで、朝だった…」

その、言葉に悶絶しそうになりながら、ナルトを見やると
カカシの意図を知らぬハズのナルトが、更に衝撃発言を落とす。

「コイビトと眠るって…安心すんだな?へへへ…」

流石に、そんな事を言われれば、既にゆるゆるになっている
リミッターなんぞ役に立つ訳もなく…

気が付けば、無意識でナルトを抱き締めてしまっていた。

(ま、まずい…)

腕の中で今は、大人しくしているが…
カカシの頭の中はフル稼働を始めていた。
"言い逃れ"を、必死で考えてると、人の気配を感じ
その気配が部屋の前で止まった。

「く…苦しいって…」

「チョットだから…我慢して」

「失礼します…」

すらりと開け放たれた部屋の中で、抱き合う二人に慌てて襖を閉めた。

「しっ…失礼致しました!あっ、朝餉の準備が整いましたのでお声を…」

「あ~っ、ありがとう。 もう少ししたら、伺います。」

カカシの言葉に返事を返し、パタパタと足音を立てて去っていく
そっと、その音が消えたのを確認してから、ナルトを開放した。

「はい、恋人らしい事、完了!ほら、朝飯行くぞ」

何事も無かったように、カカシは朝食へと向かう準備を始めた。

「おう…」

と、小さく答えたナルトも準備を終わらせ
朝食の膳の前に並んで座ると、ヒソヒソと周りの侍達が
なにやら、噂話をしている。

恐らくは…カカシとナルトが朝から抱き合ってたと言う、噂だろう。
カカシは、気にも止めずに素早く食事をするが
ナルトにしてみたら、気が気ではない。

「ナルト、早く食べて、後で修行でもする?」

カカシの滅多に言い出さない提案に、目をキラキラと輝かせて
ナルトが首を上下に大袈裟に振ると、勢い良くご飯を流し込んでいく。
よっぽど…嬉しかったんだろうなーと、カカシが微笑む中
あっと言う間に、食べ終わったナルトが早く行こうと促してくる。

カカシもそれに従い腰を浮かせてから、城内の人に
修行をするので良い場所は無いかと聴くと
裏にある雑木林と、その隣にある練習場を教えて貰い、二人で向かった。

「なぁ、カカシ先生…」

「ん?どうした?」

「あのさ…カカシ先生は彼女にも、あーやって抱き着くのか?」

「…んー答えにくい質問投げるねー…ない…よ。」

「ない?」

「今まで居た彼女達には一度もした事ない。」

「そ、そうなんだ?」

「なによ?信じられない?」

「あ、いや…そうじゃねーけど。」

もじもじと話すナルトに、苦笑いでカカシは、続けた。

「オレは、ま…お前も知ってると思うけど 仲間を見殺しにした。
その、仲間を…思うと、自分だけ幸せには成れなかったんだ…
けどな?そうじゃない…本当は、本気になれる相手が居なかったからだって
……そう思えたわけ」

ふうーん…と、一度考えてからナルトが、カカシに
じゃー今は本気になってる人がいるって事?と返され
カカシは、どーかなぁー?なんて言葉で濁した。

そんな会話をしている内に、広い場所へと出た二人は
修行の準備を、進めていく。

「クナイ、手裏剣、起爆札…よしっ!行くってばよ!」

広い場所ではあるが、無論木も岩もあり、互いに身を隠して様子を伺った。
昔の様に、立って気配を読みながら相手を待つ事が出来なくなった…
否、
それ以上に、ナルトの成長が目覚ましかった。
幼い頃から上忍をして来たが、ここまで強い相手と
修行をするなど、したことが無い。

昔、強いと思っていた人の息子は、既にその人をも凌駕している。

「ちっ、影分身っ!」

カカシが、その場で分身を作り上げ、三人のカカシは左右に散り
正面から来る、チャクラの塊を待つ。

風を切って、数個の手裏剣が、同時に襲ってくるのを
躱すと、飛び上がりナルトの居そうな場所へとクナイを投げ付け
地面に着地すると同時に、いつの間に仕掛けられたのか
起爆札が爆発した。

「もう、楽には勝たせて貰えない…か」

だが、カカシも負けてはいられない。
知略だけは、戦いのセンスが抜き出て居るだけでは
補えないのだ。

結局、戦いの決着はドローに終わり、ボロボロになった二人が
城へ戻る。

「んっとに、カカシ先生は読めないってばよ」

「ま、そう簡単に読まれても、困るんだけどね…」

「やっぱり、カカシ先生はスゲーってばよ!」

「なによ…褒めても何も出さないよ?」

「ちげーって! なんか欲しくて言ったんじゃねえよ」

そんな言葉の掛け合いを終えて、大きな露天風呂に到着した。
カカシは、先に入ると、身体に湯を掛け、汗を流し
大きな岩で囲まれた露天風呂に入ると、ナルトもそれに次いだ。

ちくちくと、刺さって来る視線に、チラリと極力
見ないようにしていたナルトを見やると、
口まで湯に浸かりながら、頭にタオルを乗せ、ジーッとこちらを見ている

「なに?そんなに見られると穴開くんだけど?」

「かかひへんへーの背中…すげーキズいっぴゃいなんだな…」 

「傷ねー…まあ、身体に傷を付けるのは、間抜けだからだよ」

くすくすと笑いながら、ザバンと身体を湯船から上げ、洗い場で身体を
洗い始めたカカシの横に、ナルトも座り、身体を洗い流していく。

カカシは間抜けだと言うが、そうでは無いのを
一番理解しているのもナルトでは無いだろうか?

傷を負っても、譲れないのは仲間の命。
守って来た命の分だけ傷が増えていく。

「先生の傷はカッコイイってばよ。」

ニッと笑い、カカシを追い越して部屋へ戻っていった。

そんなナルトを見送ると、顔を掌で隠し、その隙間から
はーっ…吐息を吐き出した。

勘弁してちょーだいよ…全く…と、呟いて部屋へと向かった。

一方、殿と子息はどうにか、あの二人を引き離せないかと
互いの意見を、出し合っていた。

木の葉に出した提示では、後2日。
3日で約束の時は、終わる。
それまでに、どうにかして己を守る守護者となり
この地に留まる決意をさせたい。

無論、恋愛感情も込だが、カカシにナルト。
木の葉を代表する、英雄二人がこの城を守れば
襲おうと思う人間も減るし、反逆者も出ることは無いだろう。

「ナルトをどうにか出来ぬのか?」

「カカシが居る以上、ナルトは私に見向きもしません。」

「そうか…カカシも同じ事を言っていた。
だが、奴は頭が切れるからな、もしかしたら、ナルトは恋人関係では
無いかもしれん…ソコを、どうにか打ち壊したいんだが…」

そう言うと、口元を扇子で隠していた妻がクスリと笑った。

「普通の男は、女に迫られればイチコロです。カカシとやらは
年齢を積んでいますが…ナルトはどうでしょうか?」

この城の唯一の女。
その言葉に、親子で目を輝かせた。


「さて…」

パタリと、愛読書を閉じると、カカシが浴衣から忍服に身を包んだ。

「は?どっか行くのか?」

「んー、ま…特別任務だ。」

その言葉に、暇を持て余していたナルトが、目を輝かせた。

「オレも連れてって!」

連れて行けって言われてもねぇ。
と、ひとつ考えてから、影分身を出し

ナルトにその影分身と、イチャついて置いてと言い残し
あっと言う間に姿を消した。

「イチャつけって…何すんだってばよ?」

と、真面目に影分身に問いかける辺り、まだまだ幼さが
抜けていないのかも知れない。

そんな会話を、少し交わすと、人の気配を感じたナルトが、
カカシの、首筋に手を回した。

「ナル…ト?」

「イチャつけって言っただろ?
先生だって、抱き着いてきたりしてんだから、同じだよな?」

そう言われれば…確かにと納得するしか無い。

「はいはい…仕方ないね、なら…もっと、それらしく振舞おうか。」

「はえっ?」

「ちょ、カカシ…先…生?」

スッと、ナルトの顎先を引上げ、唇が触れる寸前で止めると
タイミングよく、襖が開かれ、背後から見られる姿はどう見ても…

「っ…ナルト!」

真赤になって、カカシの腕の中から覗くナルト

「うわっ、何だってばよ!?」

慌てて…気付いてないだろうけど
カカシの唇が、ふるりと、震えた。

ナルトが、声を上げる時に…ギリギリにしていた距離が
ほんの一瞬、触れ合ったのだ。

影分身なのが悔やまれるが
それでも、込み上げてくる幸福感に身を震わせた。


「なっ、何か用か?」

顔は見えないが、声でわかる。
子息が、直接ナルトに会いに来た。
そして、あの場面を見せられて、怒りでも感じているのだろうか?
そうでなければ、ナルトが、未だ自分の身体に身を隠している意味がない。

「これは、御子息…大変失礼致しました。何かご用件でも?」

カカシの、声に舌打ちをした子息がナルトを誘いに来た。
とだけ伝え、カカシの腕の中から、ナルトを引き離し、ズンズンと歩く。
ポツンと残されたカカシがチラリと、横に、備えられていた押し入れに
視線を向けると、間もなく スラリと襖が開かれた。

「お前、変わり身上手くなったな…」

その言葉に、照れ臭そうに笑うナルトが押入れから出て来た。

一方、連れて行かれたナルトは、綺麗な女性の中で、キョトンとしていた。
子息も居るが、女達はナルトにベタベタと擦り寄り、あちらこちらと
いたる所を触れられて、どうして良いかと思い悩んでいた。

普段であれば、そんな事は考えもしないのだが
どうにも、カカシが悲しむかも知れないと言う、思いが生まれていた。
身体が、女性に触れられても
先程のカカシの、触れる寸前のキスの方が、数倍ドキドキしたのだ。

「オレ…変なのか?」

目の前の女性は、艶があるとは思えるのだが。
男として、触れたい気持ちが、全く湧き上がって来ないのだ。
楽しくも無ければ、やはりここに居て気を使うより、カカシの待つ
部屋へ戻り、特別任務の終了を待つ方がまだ楽しい。

「なあ、カカシ先生が待ってるから、用が無いなら帰っていいか?」

それまで、
あまり口を開いてなかった子息が、ジッとナルトを見て口を開いた。

「お前は、カカシがいいのか?」

切なげに苦しそうに押し出された声。
その質問に、どう返せばいいか…出来るだけ失礼のないようにと
五代目からも言われている以上、変な事は口には出来ない。


「カカシ先生が…いや、カカシ先生じゃないと、触られたくない…」

するりと出た言葉は、やはり失礼に値するかも知れない。
けれど、そう思ったのは間違いない。

抱きつかれるのも、触れられるのも…子息では
なんとも思わないどころか、あまり気持ちの良い物ではなかった。

ナルトは、わりぃな…と、一言残して部屋を出ようとした時

「かっ、カカシより気持ち良くさせる自信はある!」

と、またもや食い下がる子息に溜息が落ちた。

「本気で思ってくれるのはアリガタイいってばよ?
でも、オレは、カカシ先生じゃないと、ダメなんだ…
だから、この先何度呼んでも、オレはアンタのもんにはなんねえから」

そう言い残し、ナルトは今度こそ部屋から出る事が叶った。

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